自動運転シャトルに試乗したが次世代モビリティを担うクルマだと感じた。シャトルは大学構内を巡回し、キャンパス内の移動手段として使われる。今はドライバーが搭乗しているが、無人シャトルとなる計画だ。無人シャトルは近距離を移動する車両としてデザインされている。高齢化が進む日本社会に向いているのかもしれない。

Driverless Shuttle
このシャトル (上の写真) は「Driverless Shuttle」と呼ばれ、シリコンバレーに拠点を置く新興企業Auro Roboticsが開発している。シャトルはクルマとカートの中間領域の車両で、ここに自動運転技術を搭載している。シャトルは先月からSanta Clara University (サンタクララ大学) 構内で営業運転を開始した。
シャトルに試乗
大学構内でこのシャトルに試乗した。シャトルはキャンパス内のルートを自動で走行するが、今は専任ドライバーが搭乗し運転を補助する。Auro RoboticsのEric Weberが運転席に座り、Driverless Shuttleの説明を聞きながらルートを周回した。自動運転技術の完成度は高くほぼ自動で走行できた。
3DマップとGPS
シャトルは事前に設定されたルートに沿って自動で走行した。キャンパス内の3DマップとGPSの位置情報を使い自律走行する。経路上で噴水のあるロータリーに差し掛かったが、シャトルはそれを迂回して問題なく走行した (下の写真)。

ジョイスティックで操作
別の場所では路上に大型容器が置かれていたがシャトルはこれを認識した (下の写真)。シャトルは自分で障害物を避けて走行できるが、Weberがジョイスティックを使って手動で操作した。大学との取り決めで、シャトルは事前に設定したコースだけを自動走行するよう定められている。経路を逸脱する際はドライバーがマニュアルで操作する規定となっている。厳しいとも思えるが、安全性に配慮された運行ルールとなっている。

Deep Learningでインテリジェンスな走行
路上には道路標識があり、一時停止標識でシャトルは停止し、安全を確認して発進した (下の写真)。シャトルはプログラムされたルールに従ってこの一連の操作を実行した。しかし、シャトルの自動走行技術はAIで強化されつつある。Auro RoboticsはDeep Learningの技法で自動運転技術を開発している。事前にプログラムするのではなく、AIが自ら道路標識の意味を学習する。更に、Deep Learningの手法で障害物を把握し、その動きを予想する。例えば、シャトルの前を人が横切ると、アルゴリズムは人であると判定するだけでなく、人の次の動きを予想する。シャトルは人間のドライバーのようにインテリジェントになる。

Lidarを中心としたセンサー
シャトルにはLidar、カメラ、GPSが搭載され、クルマの周り360度のオブジェクトを把握する。測定できる距離は100メートルで様々な明るさの元で動作する。二種類のLidarを使っており、屋根の上にはVerodyne社製を、バンパーの下にはLeddarTech社製を搭載している。バンパーの下にLidarを設置しているのですぐ前を子犬が横切っても検知できる。カメラはフロントグラスの内側にマウントされている。今はLidarがクルマの眼となっているが、Deep Learningの開発が進むとカメラがセンサーの中心となる。

スマホアプリで無人シャトルを利用
定められたコースを巡回する方式に加え、利用者がオンデマンドでシャトルを利用する方式が開発されている。利用者はスマホアプリで無人シャトルを呼び、向かっているシャトルの位置はアプリに表示される。無人シャトルに乗ると備えつけのタブレットで降車場所を指定する。無人タクシーのように、スマホアプリで無人シャトルを利用する。

工場や空港やテーマパークに導入
シャトルはミニバスの代替手段となり、大学キャンパスだけでなく工場敷地内や空港などでの利用が計画されている。更に、ディズニーランドのようなテーマパークでも需要があるとみられている。米国では退職者のコミュニティが各地にあり、ここでの利用も検討されている。これらは私有地で道路交通法が適用されないため、無人シャトルの運行では自由度が高い。自動運転技術の導入の最初のステップとなる。
大企業に先んじて自動運転車を運行
Auro Robotics創業者たちはインドの大学で無人シャトルの基礎技術を研究した。その後、Y Combinatorを経て、2016年5月、大手ベンチャーから200万ドルの出資を受けた。大学での人気の科目は自動運転技術で、今では高校でこの教育が始まり話題となっている。Auro Roboticsはその魁で、大学での研究がDriverless Shuttleとして結実した。大手企業から製品が登場していない中、新興企業が自動運転シャトルを運行していることの意義は大きい。
生活のラストマイル
生活に密着し小回りの利く無人シャトルはむしろ日本社会に向いているのかもしれない。試乗してそう感じた。高齢化が進む中、自分で運転する代わりに無人シャトルで移動する。政府の観点からは公共交通網を無人シャトルで補完するという選択肢がある。道路整備や安全性の確保など多くの課題はあるが、無人シャトルは生活のラストマイルで活躍が期待される。