シリコンバレーでオフィス警備ロボットが登場した。ロボットは多種類のセンサーとAIを搭載し自動走行する。施設内で異常を検知するとオペレータに通知する。不審者を見つけると身分証明書の提示を求める。警備を担うロボットであるが威圧感は無く、形状は流線型で親しみやすいデザインとなっている。自動運転車で培った技術がロボットに生かされている。

出典: Cobalt Robotics |
屋内警備を担うセキュリティロボット
このロボットはシリコンバレーに拠点を置くCobalt Roboticsにより開発された。ロボットは「Cobalt」という名前で、屋内警備を担うセキュリティロボットとして登場した (上の写真)。ロボットは多種類のセンサーを搭載し自律的に移動する。ここにはComputer VisionやAIなど先進技術が使われている。プロモーションビデオをみるとCobaltはロボットというより家電に近いイメージだ。
施設を自動走行し異常を検知
ロボットは事前に設定されたルートを巡回して警備する。また、ロボットがランダムに施設内を移動することもできる。ロボットは経路上で人物や物を認識し、問題と思われるイベントを検知しこれを管理室に通報する。例えば、ドアがロックされないで開けられた状態であれば、これを異常事態と認識しオペレータ(Human Pilotと呼ばれる)に対処を促す。
環境をモニタリング
ロボットはオフィス環境をモニタリングし、水漏れなどの異常を検知することもできる。また、オフィスに不審物が置かれていれば管理室にアラートを上げる。備品管理機能があり、倉庫での棚卸や資材管理にも利用できる。更に、オフィス内のWiFiシグナル強度をモニターする機能があり、不正アクセスポイントを検知できる。
社員とのインターフェイス
ロボットは人間を認識でき、オフィス環境で共存できることを設計思想とする。ロボットは正面にディスプレイを搭載しており、社員が直接オペレータとビデオを介して話すことができる。また、非常時にはオペレータがロボットを遠隔で制御し社員を安全な場所に誘導する。更に、ロボットは定時以降オフィスに残っている人に対しては身分証明書の提示を求める。社員は身分証明書をロボットのリーダーにかざし滞在許可を受ける (下の写真)。

出典: Cobalt Robotics |
多種類のセンサーを搭載
ロボットは多種類のセンサーを搭載している。光学カメラは360度をカバーし全方向を見ることができる。暗闇での警備のために赤外線カメラを搭載している。Point Cloud Cameraで周囲のオブジェクトを3Dで把握する。Lidarと呼ばれるレーザースキャナーで周囲のオブジェクトを3Dで把握する。遠距離まで届くRFIDリーダーでオフィス備品などに張り付けられているタグを読み取り資材を管理する。
自動運転車で培われたAI技法を採用
ロボットはAIやMachine Learningの手法でセンサーが読み込んだデータを解析する。周囲のオブジェクトを判別し、安全に走行できる経路を計算し、ロボットが自律的に走行する。また、Computer Visionで水漏れなどの異常を検知する。更に、ロボットはマッピング技術を実装しており、走行時にLidarで周囲のオブジェクトをスキャンし高精度3Dマップを生成する。生成された3Dマップを頼りにロボットは自動走行する。多くの技術は自動運転車で開発され、Cobalt Roboticsはこの成果をロボットに応用している。
家電に近いロボット
Cobaltは警備ロボットであるが外観は人間に親しまれる形状となっている (下の写真)。これは著名デザイナーYves Béharによりデザインされ、表面は金属ではなく柔らかい素材が使われている。また、Cobaltはヒューマノイドではなく、下に広がる円筒形のデザインとなっている。ロボットというと鉄腕アトムのようなヒューマノイドを思い浮かべるが、Cobaltは家電とか家具に近いイメージだ。自動走行する家電と表現するほうが実態に合っている。

出典: Cobalt Robotics |
若い世代が考えるロボット
Cobalt RoboticsはErik SchluntzとTravis Deyleにより創設された。Schluntzはハーバード大学在学中にインターンとしてSpaceXとGoogle Xで製品開発に従事した。Deyleはジョージア工科大学でロボット研究を専攻し、Google XでSmart Contact Lensの開発に携わった。二人とも大学を卒業して間もなくCobalt Roboticsを創設した。若い世代がロボットを開発するとCobaltのように優しいイメージになる。
警備ロボットは既に社会で活躍
実は警備ロボットは既にアメリカ社会で活躍している。シリコンバレーに拠点を置くベンチャー企業Knightscopeはセキュリティロボットを開発している。このロボットは「K5」と呼ばれ、多種類のセンサーを搭載し屋外の警備で使われている。Microsoftがキャンパス警備でK5を採用したことで話題を集めた。Knightscopeの敷地内をK5がデモを兼ねて警備にあたっている(下の写真)。

出典: VentureClef |
屋内向け警備ロボットを投入
Knightscopeは小型ロボット「K3」を投入した。K3は建物内部を警備するためのロボットで、K5に比べて一回り小さな形状となっている。サンフランシスコで開催されたセキュリティカンファレンス「RSA Conference」でK3が紹介された (下の写真)。人間に代わりオフィスを警備するロボットで、高度なセンサーとAIを搭載し自律的に移動する。K3は形状が小型化しただけでなく、対人関係を考慮したキュートなデザインとなっている。

出典: VentureClef |
ロボットは商用施設に向かう
いまロボットは、オフィス、銀行、病院、高齢者介護施設、ホテル、小売店舗など商用施設で受け入れられている。警備機能だけでなく、ここでは既に多種類のロボットが稼働し企業の効率化を支えている。これら企業環境はロボットにとって自動走行しやすい場所である。企業のオフィスを例にとると、レイアウトが固定で通路が明確で、そこで働く社員は社会的な行動を取る。ここがロボット適用のスイートスポットで事業が急速に拡大している。
最後のフロンティアに向かっての準備
反対にロボット最後の市場は家庭環境といわれている。家庭のフロアには玩具や衣類が散在し、子供やペットが走り回る。WiFi通信は不安定で通信は頻繁に途切れる。AI家電のAmazon EchoやGoogle Homeは対話するロボットして位置づけられるが、移動する機能はない。一般家庭が最後のフロンティアで、商業施設向けロボットはその準備段階として重要な意味を持つ。