米国で白人至上主義団体の活動が拡大、しかしDNA解析により活動家の多くは純粋な白人でないことが判明

米国で白人至上主義団体による抗議活動が激化している。バージニア州シャーロッツビルでは白人至上主義者がクルマで反対集団を襲撃し死者と多数の負傷者がでる惨事となった。白人至上主義団体や極右団体が台頭し社会に不安が広がっている。同時に、DNA解析サービスの普及で白人の定義が明確になり白人至上主義の価値観が揺らいでいる。

出典: Google  

DNA解析サービスの結果は

白人至上主義 (White Supremacy) 団体の活動が拡大する中、活動家はDNA解析サービスを利用し自身が純粋な白人であることを確認する動きが始まった。純粋な白人であると思っていた活動家がDNA解析を受けると白人以外の人種が混ざっていたというケースが相次いで報告されている。活動家の多くは”白くない”という事実が判明しそのアイデンティティが揺らいでいる。

白人至上主義者の研究

この事実はカリフォルニア大学ロサンジェルス校のAaron PanofskyとJoan Donovanの研究で明らかにされた。研究結果は「When Genetics          Challenges a Racist’s Identity: Genetic Ancestry Testing among White Nationalists」として公開された。この研究は白人至上主義者の交流サイト「Stormfront」を追跡調査したもので、ここに投降される記事からDNA解析に関連するものを抽出し内容を分析したものとなっている。活動家の多くがここで意見を交換するが最近ではDNA解析に関する書き込みが目立っている。

純粋な白人は少数

論文によると白人至上主義者は純粋な白人であることを確認するために23andMeなどを利用してDNA解析による家系解析検査 (genetic ancestry test) を受けている。しかし、純粋な白人であることを確認できたのは1/3に過ぎず、残りの2/3は異なる人種が混じっていると報告している。純粋な白人でないと判定された人たちはこの結果をどう受け止めるべきか葛藤が続いている。

研究結果の具体的な事例

その一人がノースダコタ州に住むCraig Cobbという男性である。DNA解析サービスを受けたが、その結果ヨーロッパ人種 (European) である割合は86%で残りの14%はアフリカ人種 (Sub-Saharan African) であることが分かった。Cobbはテレビ番組に出演し独自の意見を展開した。この結果を受け入れることはできず「統計エラー」であると述べている。また「DNA解析技術はジャンクサイエンス」で「結果は仕組まれたもの」と奇異な解釈を示した。Cobbは黒人から友達と呼ばれ握手を求められるがこれを断るシーンも放送された。また、別の会員は「鏡を見て白人に見えれば問題ない」とか、「テスト結果ではなく本人の心情が重要」などと苦しい見解が目立っている。

出典: 23andMe  

23andMeの人種特定サービス

23andMeは遺伝子による人種特定サービス「Genetic Ancestry Composition」を展開している。被験者のルーツを辿るサービスでDNAを解析して人種を特定する。被験者の多くは複数の人種から構成されこのサービスはその割合を示す (上の写真)。対象となる人種の区分は「European」、「South Asian」、「East Asian & Native American」、「Sub-Saharan African」、「Middle Eastern & North African」、「Oceanian」の六種類からなる。日本人は「East Asian」に区分され、ここには「Japanese」の他に、「Korean」、「Yakut」、「Mongolian」、「Chinese」が含まれている。(Yakutとはロシア連邦サハ共和国に居住するヤクート族。)

世界の国々からサンプルを収集

23andMeは人種を特定するために被験者の遺伝子と特定地域に住んでいる人の遺伝子を比べる手法を取っている。まず、世界の国々からサンプルを集め人種と遺伝子を関係づけたデータベース (Referenceと呼ばれる) を生成する。被験者の遺伝子をReferenceと比較して人種を特定するプロセスとなる。Referenceの総数は10,000を超えるが、その多くは外部研究プロジェクト (スタンフォード大学のHuman Genome Diversity Projectなど) 結果を引用している。これに加え、23andMe会員のデータも利用している。

白人至上主義とは

白人至上主義は過去のものと思われていたが日々のニュースで登場する回数が増えた。白人至上主義とは白人が他の人種より秀でているというイデオロギーで白人が社会をコントロールすべきという考え方を示している。色々な団体があるがクー・クラックス・クラン (Ku Klux Klan) が有名で今でも活動を続けている。

南北戦争と関連する

米国の白人至上主義は南北戦争 (Civil War) に関連している。エイブラハム・リンカーン (Abraham Lincoln) は大統領になる直前、奴隷制度の拡大を禁止した。南部11州はこれに反対しアメリカ合衆国を離脱し独自にアメリカ連合国 (Confederate States of America) を設立した。連合国は1861年、サウスカロライナ州のサムター要塞 (Fort Sumter) を攻撃し南北戦争が始まった。連合国の大統領がJefferson Davisで、連合国軍を指揮した将軍がRobert E. Leeであった。連合国は合衆国に敗れ1865年に戦争は終わった。

連合国の彫像を撤去

戦争には敗れたものの、連合国を回想する目的でJefferson DavisやRobert E. Leeの彫像が数多く建立された。一方、人権団体からこれらは人種差別を象徴するとして彫像を撤去する声が高まり、各州や市は撤去作業に向けて動き出した。シャーロッツビル市はRobert E. Lee将軍の彫像 (先頭の写真) を撤去することを表明し、これに反対する白人至上主義団体は彫像を守るために集会を開き、これが惨事につながった。

歴史の解釈は難しい

この衝突を繰り返さないため他の州や市はJefferson DavisやRobert E. Leeの彫像の撤去作業を急いでいる。人種差別を象徴するシンボルは公の場には相応しくないというのがその理由である。一方、識者の中にはアメリカの歴史を後世に伝えるため、暗い事実を葬り去るのではなく過去の教訓として残すべきという意見も少なくない。事実、米国の国会議事堂 (United States Capitol) には50州を象徴する彫像が100体展示されている (下の写真)。ここにはJefferson Davis (ミシシッピー州を代表) とRobert E. Lee (バージニア州を代表) も含まれており、撤去すべきかどうかその取扱いについて議論が続いている。

出典: National Statuary Hall  

白人至上主義者はアイデンティティが揺らぎ活動が減衰するのか

白人至上主義団体や極右団体の活動が活発になっている理由はトランプ大統領のポジションが影響している。トランプ大統領は白人至上主義団体の過激な活動に寛容な態度を見せており、これが活動を暗に支持していると受け止められている。抗議活動には参加しないもののこの動きを支持するグループが存在しこれがトランプ大統領の支持基盤となっている。トランプ政権のもとで極右勢力が広がるのか、それとも白人至上主義者はアイデンティティが揺らぎ活動が減衰するのか、その動きが注目されている。