■ 補足情報:Waymo自動運転技術まとめ
【自動運転車のセンサー】
多種類のセンサーを併用
安全性を評価するためにはWaymoの自動運転技術を把握する必要がある。WaymoのセンサーはLidar System (レーザーセンサー)、Vision System (光学カメラ)、Radar System (ミリ波センサー)、Supplemental Sensors (オーディオセンサーやGPS) から構成される (下の写真)。

出典: Waymo |
ミニバンの屋根に小型ドームが搭載され、ここにLidar SystemとVision Systemが格納される。別タイプのLidarはクルマの前後と前方左右にも搭載される。クルマ四隅にはRadarが設置される。Lidarとカメラを併用する方式はSensor Fusionと呼ばれる。(これに対しTeslaは、Lidarを搭載せず、カメラだけで自動走行する技術に取り組んでいる。)
Lidar System
Waymoは独自技術でLidarを開発している。クルマは三種類のLidarを搭載している。「Short-Range Lidar」はクルマの前後左右四か所に設置され、周囲のオブジェクトを認識する (上の写真、バンパー中央と左側面の円筒状の装置)。クルマのすぐ近くにいる小さな子供などを把握する。解像度は高く、自転車に乗っている人のハンドシグナルを読み取ることができる。

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「Mid-Range Lidar」と「Long-Range Lidar」は屋根の上のドームの内部に搭載される。前者は高解像度のLidarで、中距離をカバーする。後者は可変式Lidarで、FOV (視野、レーザービームがスキャンする角度) を変えることができ、特定部分にズームインする。レーザービームを狭い範囲に絞り込み、遠方の小さなオブジェクトを判定できる。フットボールコート二面先のヘルメットを識別できる精度となる。
Vision System
Vision Systemはダイナミックレンジの広いカメラの集合体。8つのモジュール (Vision Module) から構成され、クルマの周囲360度をカバーする。信号機や道路標識を読むために使われる。モジュールは複数の高精度センサーから成り、ロードコーンのような小さなオブジェクトを遠方から検知できる。Vision Systemはダイナミックレンジが広く、暗いところから明るいところまでイメージを認識できる。
【自動運転の仕組み】
位置決定:Localization
Waymoが自動走行するためには3D高精度マップが必要となる。マップには道路の形状が3Dで詳細に表示され、セマンティック情報 (道路、路肩、歩道、車線、道路標識などの情報) が埋め込まれている。クルマは搭載しているセンサーが捉えた情報と、3D高精度マップを比較して、現在地をピンポイントに特定する。この位置決めをLocalizationと呼ぶ。
周囲のオブジェクトの意味を理解:Perception
クルマのセンサーは常時、周囲をスキャンして、オブジェクト (歩行者、自転車、クルマ、道路工事など) を把握する (下の写真)。オブジェクトは色違いの箱で表示される。クルマは緑色または紫色、歩行者は赤色、自転車は黄色で示される。

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ソフトウェアは、これらオブジェクトが移動している方向、速度、加速度などを推定する。また、信号機、踏切標識、仮設の停止サインなどを読み込む。ソフトウェアは、オブジェクトの意味 (信号機の色の意味など) を理解する。
動くオブジェクトの挙動予測:Behavior Prediction
ソフトウェアは路上のオブジェクトの動きを予想し (下の写真、実線と円の部分)、その意図を理解する。ソフトウェアはオブジェクトの種類 (クルマや人など) により、動きが異なる (クルマの動きは早く人の動きは遅い) ことを理解している。また、人、自転車、オートバイは形状が似ているが、その動きは大きく異なることも理解している。

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更に、クルマは道路状況 (工事など) により、これらの動きが影響される (工事でクルマが車線をはみ出すなど) ことを理解している。これらは試験走行でアルゴリズムが学習したもので、ここにAI (Machine Learning) の技法が使われている。
最適な経路を計算:Planning
ソフトウェアはオブジェクトの動き予想を元に、最適なルートを決める (下の写真、幅広い緑の実線)。ソフトウェアは進行方向、速度、走るレーン、ハンドル操作を決定する。ソフトウェアは「Defensive Driving」としてプログラムされている。これは安全サイドのプログラミングを意味し、自転車と十分間隔を取るなど、慎重な運転スタイルに設定されている。クルマは周囲のオブジェクトの動きを常にモニターしており、それらの動きに対してルートを変更する。

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AIではなく人間が経路を決める
重要なポイントはPlanningのプロセスにAIは適用されていないことだ。Planningのロジックはコーディングされており、クルマの動きは人間がプログラムで指定する。人間が自動運転アルゴリズムを把握できる構造になっている。このため膨大なルールが定義されており、それを検証するためには、大規模な試験走行が必要となる。
AI Carというアプローチ
一方、NvidiaはPlanningのプロセスをAIが司る「AI Car」を開発している。AIが人間の運転を見てドライブテクニックを学ぶ先進技術に取り組んでいる。AI Carは道路というコンセプトを理解し、車線が無くても人間のように運転できる。膨大なルールの定義は不要でアルゴリズムがシンプルになる。しかし、AIの意思決定のメカニズムは人間には分からない。信頼性の高いクルマを作るため、Nvidiaはこのブラックボックスを解明する研究を進めている。
Waymoは安全なアプローチ
WaymoはLidarとカメラを併用 (Sensor Fusion) する、手堅い手法を取っている。アルゴリズムの観点からは、AIが周囲のオブジェクトを把握するが、ハンドル操作は人間がコーディングして決定する。Waymoは極めて安全な技法で開発されたクルマといえる。