Drive.aiはシリコンバレーに拠点を置くベンチャー企業で、社名が示す通り、AIを基軸に自動運転技術を開発している。スタンフォード大学人工知能研究所発のベンチャー企業で、元所長Andrew Ngが役員として経営に参画している。Drive.aiはステルスモードでの開発を終え、2018年7月からテキサス州で実証実験を開始した。

出典: Drive.ai |
開発コンセプト
当初、Drive.aiはAIをフル実装した”AI Car”の開発を目指していたが、AIの限界を把握し、AIの弱点を補完するクルマを開発した。業界最先端のAIとDeep Learning技法を実装しているが、AIだけでは安全なクルマを開発できない。このため、クルマと人間とのインターフェイスを工夫した安全なクルマをデザインした。
テクノロジー
自動運転車はミニバン「Nissan NV200」にセンサー(Lidar、カメラ、レーダー)を搭載した構成(上の写真)となる。Drive.aiはオープンソースを最大限に活用して自動運転ソフトウェアを開発した。ソフトウェアは「Robot Operating System」 (ROS、ロボットや自動運転車制御ソフト)をベースに構築され、画像認識システムは「Director」を使っている。Directorとはロボット向けのコンピュータビジョン開発環境で、DARPA Robotics Challengeでマサチューセッツ工科大学により開発された。
実証試験
Drive.aiはテキサス州フリスコ市と提携して、自動運転車の試験走行を進めている。街中のオフィス街で、事前に定めた経路を走行する自動運転シャトルとして運行している。Drive.aiはクルマが安全に走行するだけでなく、周りのクルマや歩行者も安全に移動できるよう工夫を凝らしている。自動運転車は人間とは違い特異な挙動をするため、クルマは目立つようデザインされ、周囲に注意を喚起している。同時に、セミナーなどを通じて、地域住人に自動運転車について教育を実施している。
インターフェイス
自動運転車はソーシャルインタラクション(社会とのコミュニケーション)の問題を抱えている。ドライバーは他のドライバーや歩行者と視線を交わし意図を伝達する。自動運転車は視線を交わす代わりに、車両前後にディスプレイを搭載し、クルマの意思を表示する。例えば、横断歩道では「Waiting for You to Cross」と表示し(下の写真)、歩行者が横断するために停止していることを示す。

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遠隔監視
自動運転車は自律的に走行するが、監視センターで運行状態をモニターする。クルマは自動運転中に問題が発生すると、監視センターに連絡し、人間の支援を仰ぐ。これを「Tele-Choice」と呼び、自動で運行できない際は、クルマは安全な場所に停車し、オペレーターが走行方法を指示する。AIはこれらの情報を学習し、アルゴリズムは運転テクニックを向上させる。
オブジェクト認識
クルマは周囲のオブジェクトを把握し、経路を選択し、自動で走行する。Lidarで捉えたイメージは3Dポイントクラウドで、また、カメラで捉えたイメージはビデオ画像として車内のディスプレイに表示される(下の写真)。乗客はこの画面で、クルマは周囲をどう理解しているかが分かり、安心して乗ることができる。

出典: Drive.ai |
走行データを解析
走行状態を可視化したデータはAIソフトウェア開発や教育でも利用される。走行データは人間による運転とAIによる運転で収集される。これらのデータを早送りしたり、巻き戻したりしながら、走行状態を検証する。問題が発生すると可視化データで走行状態を再生し、原因を究明する手順となる。
自動運転シャトル利用法
クルマを利用する時は、スマホアプリで配車をリクエストし、指定された場所で乗車する。クルマに乗りドアを閉めて、スタートボタンを押すと発進する。クルマは指定されたコースを走行し、目的地まで乗客を運ぶ。クルマが走行するルートは事前に3Dマップが製作され、これをベースに自動走行する。
ロードマップ
当初、Drive.aiは高価なLidarを使わないで、低価格な光学カメラを使った自動運転車の開発を進めていた。カメラで撮影したイメージをDeep Learningの技法で処理し、オブジェクトを識別する。また、オブジェクト認識からクルマの経路計算までをAIで実装する予定であった。今回の発表では、高度なAIを実装したAI Carは登場しなかったが、背後で開発は継続していると思われる。次はどんなクルマが登場するのか、注視していく必要がある。