Waymoはカリフォルニア州で自動運転車を無人で運行するための認可を受けた。自動運転車の試験走行ではセーフティドライバーの搭乗が義務付けられているが、これにより無人の車両を公道で走らせることができるようになった。Waymoが認可を受けた最初の企業となり、無人タクシーの営業運転が視野に入ってきた。

出典: Waymo |
Waymoの開発経緯
Waymoはカリフォルニア州で2009年から自動運転車の走行試験を展開してきた。当時はToyota PriusやLexusに自動運転技術を搭載し開発が進められた。2015年に、Waymoはハンドルのない自動運転車「Prototype」を開発しLevel 5の自動運転技術の開発を始めた。2017年には、WaymoはFiat Chryslerと提携し、Pacific Minivanをベースとした自動運転車(上の写真)の開発に方向転換した。
アリゾナ州での実証試験
Waymoはシリコンバレーだけでなく全米25の都市で試験走行を展開している。アリゾナ州フェニックスでは、既に、セーフティドライバーが搭乗しない無人タクシーの実証試験を進めている。今年末からは、有料サービスを開始するとしており、無人タクシーの商用運行が始まる。今回の認可でWaymoはカリフォルニア州においてもこれに追随する形となる。
カリフォルニア州での試験条件
カリフォルニア州においてWaymoは限られた条件の下で無人タクシーの試験を実施する。走行地域はWaymoの拠点であるMountain Viewを中心とした地域に限定される(下の写真、青色のシェイドの部分)。自動運転車は昼間だけでなく夜間も走行できる。また、気象条件としては霧や小雨の時も走行できる。これらの条件が発行された認可証に規定されている。クルマは許可された域内であればどこでも走れるが、Waymoは最初は走行場所を限定して試験を始め、自信がつくと試験範囲を拡大するとしている。

出典: Waymo |
問題が発生すると
試験走行中に無人車両で問題が発生すると、規定された手順に従って対応策を取る。もし、自動運転車が状況を理解できない状況に陥ると、クルマは安全に停止して規定のプロセスに従う。クルマが自分で問題を解決できない際は、監視センターにコンタクトして、サポートを受ける仕組みとなる。具体的には、センターの監視員が遠隔操作でクルマを路肩など安全な場所に移動させ、道路の通行を妨げない措置を取る。クルマは無人で走行するが、監視センターが運行状況をモニターする。
カリフォルニア州政府の判断
カリフォルニア州では既に60社近くが自動運転車の走行試験を展開している。自動運転車を運行する際はセーフティドライバーが搭乗し、緊急事態に備えることが義務付けられている。カリフォルニア州は2018年4月、これを改定し、無人車両が公道で走行試験を実施できる法令を制定した。一部の識者からはクルマを無人で走行させることに対する懸念が表明されるなか、カリフォルニア州は技術進化と安全性のバランスを取りながら法令制定に踏み切った。全米では既にアリゾナ州やフロリダ州で無人車両の試験走行が認められている。多くの自動運転車ベンダーが拠点を置くカリフォルニア州はハイテクで首位の座を守るためにもこの措置に踏み切った。
消費者の反応
技術開発が進む中、米国の商品者は自動運転車を信頼していないという厳しい事実がある。元々、米国の消費者は自動運転技術に懐疑的であったが、UberやTeslaの自動運転車が相次いで事故を起こし、この流れが決定的になった。最新の世論調査によると、消費者の40%は自動運転車に乗りたくないと答えている。米国は技術先進国であるが、同時に、消費者の多くは技術を信用していない国でもある。
Waymoの対応策
Waymoは安全なクルマを開発する他に、如何に消費者の信頼を得るかが課題となる。自動運転車開発当初はWaymoは情報を積極的に配信し、著名記者をクルマに乗せ安全性をアピールしていた。しかし、2015年頃から方針を変え、Waymoは自動運転車についての情報発信を抑制的に行っている。自動運転車の新機能や達成した目標などはブログで情報発信するにとどめ、目立ったイベントなどは実施していない。無人タクシーの商用運行で実績を積み、消費者の安心感が広がるのを待つ戦略のようにも思える。

出典: VentureClef |
ロボットカーと一緒に走る
シリコンバレーは自動運転車の実験場で、クルマを運転していると様々な種類の自動運転車に出会う。走っていて一番よく見かけるのはWaymo(上の写真、中央の車両)で、試験車両の台数が多いことが分かる。Waymoの試験走行距離は1000万マイルを超え、技術完成度は他社を大きく引き離しトップを走っている。Waymoの自動運転車と毎日一緒に走行しているが特に不安を感じることはない。しかし、これからはセーフティドライバーが搭乗しないロボットカーが街を走ることになり、何か落ち着かない心持となる。今までと同じアルゴリズムで走行するが、本当に仕様通りに稼働するのか心配でもある。これからはロボットカーと供に暮らすことになり、ドライバーとしては心の準備も必要となる。