Google系Calicoはヒトの寿命の伸ばす研究を進める

CalicoはAlphabetの子会社でSouth San Francisco(カリフォルニア州)に拠点を置き、ライフサイエンスの研究を進めている(下の写真)。老化と健康な生活がテーマで、ヒトの寿命を延ばす基礎研究を展開。Calicoは2013年に設立され、Apple社の会長であるArthur LevinsonがCEOを務めている。

出典: Google  

ミッション

Calicoは老化とそれに関連する病気の解明を目指している。ヘルスケアとライフサイエンスに関する”アポロ計画”で、人々の健康を改善することをミッションとする。Calicoはベル研究所(Bell Labs)に例えられる。ベル研究所で半導体が開発され情報処理産業が誕生したように、Calicoの寿命を延ばす研究がライフサイエンスのブレークスルーとなることを目指している。

組織構造

Calicoは加齢(Aging)をバイオロジーの分野で解決されていない基礎課題と位置づける。Calicoは大学のような研究機関を企業が運営する構造で、事業化ではなく基礎研究が活動の中心となる。Calicoは製薬企業と提携し、研究成果を実際の製品に応用する。研究資金はAlphabetと提携企業が拠出する。Calicoは現代版ノアの箱舟(Noah‘s Ark)ともいわれ、酵母、虫、希少動物などを集め加齢の研究を進めている。

研究成果を公表

Calicoは研究内容を殆ど公開しておらずステルスモードで活動してきたが、2016年頃から論文の公開が始まり、研究の一端が見えてきた。Calicoは2018年1月、論文「Naked mole-rat mortality rates defy Gompertzian laws by not increasing with age」を公開し、ラットを使い加齢の研究をしていることを明らかにした。

Naked Mole-Ratの研究

論文によるとNaked Mole-Rat(ハダカデバネズミ、下の写真)はGompertz’s Mortality Lawに従わず長寿であることが実証された。Naked Mole-Ratとはネズミの一種であるが際立った特性を持っている。体には殆ど毛が生えておらず奇妙な外見をしている。地中で生活し、体温は外気の温度に従って変化する外温動物(Ectothermic)である。Naked Mole-Ratは殆どガンを発症することなく、18分間、酸素無しで生存できる。

出典: Jedimentat44 on Wikipedia

長寿のメカニズム

一般にネズミの寿命は6年程度であるが、Naked Mole-Ratの寿命は30年を超えることが知られている。Naked Mole-Ratは閉経が無く、一生にわたり生殖し子供を産むことができる。心臓や骨は老化することなく、若い状態を保っている。CalicoはNaked Mole-Ratを対象に長寿のメカニズムを解明する研究を進めている。

年齢と死亡率

CalicoはNaked Mole-Ratを3000匹調査し、その多くが30年生存することを把握した。哺乳類の死亡率は生殖期間を過ぎると幾何級数的に増大する(下のグラフ)。この現象をGompertz’s Mortality Lawと呼ぶ。人間の場合は30歳を過ぎると、8年ごとに死亡率が倍増する(下のグラフ右側、水色の線)。しかし、Naked Mole-Ratはこの法則には従わず、年齢を重ねても死亡率が変わらない(下のグラフ右側、緑色の線)。(下のグラフの横軸は相対年齢(子供を生める年齢を1とする)で、縦軸は死亡率を示している。)

出典: J Graham Ruby et al.

メカニズムの解明

論文はNaked Mole-RatはGompertz’s Mortality Lawに従わず、年を取らないと結論付けている。Naked Mole-Ratは実験で使われ、その途中で死亡することが多く、長期間飼育したデータが不足している。次のステップは、これを確認するために、多くの検体を長期間飼育し、その実態を明らかにすることとなる。更に、Naked Mole-Ratの長寿のメカニズムを解明することが最終目的となる。

AbbVieとの共同研究

CalicoはAbbVieと密接に共同研究を進めている。AbbVieとは製薬大手Abbott Laboratoriesから分離独立した会社で、バイオ医薬品会社として基礎研究を推進する。Lake Bluff(イリノイ州)に拠点を置き、シリコンバレーなどに研究施設を持っている。  

研究予算

Calicoは2014年からAbbVieと加齢に関し、ガンや神経変性疾患(neurodegenerative diseases)を対象に研究を推進している。2018年6月には、両者は共同研究に10億ドルを出資することで合意し、累計研究予算は25億ドルとなった。両社は既にガンや神経変性疾患に関する20件以上の研究プログラムを進めている。

研究と商品化

両社の間で役割分担が決まっており、Calicoは2022年までに基礎研究と初期ステージの開発を司る。また、Calicoは2027年までにPhase 2(小規模な臨床試験)の開発を担当する。一方、AbbVieは後期ステージの開発を受け持ち、製品化を担当する。加齢に関する研究はバイオ医療企業にとって重要なテーマで、老化に伴う病気を治療する技術の確立を目指している。

Oracleの試み

加齢に関する研究は多くの著名人が資金を投じ、その解明を進めてきた。Oracle創設者Larry Ellisonは非営利団体「The Ellison Medical Foundation」を設立し、医療技術の研究を推進している。中心テーマが加齢に関する研究で、Ellisonは3億ドル超を出資しブレークスルーを目指した。しかし、この研究は中止となり、研究資金はポリオに関する研究に振り向けられた。加齢に関する研究に注目が集まるが、動物が年を取るメカニズムの解明には至っていない。

リスク要因

人間の平均寿命は150年前までは40歳程度であったが、今では80歳程度に倍増した(下のグラフ)。これはワクチンの登場や食生活の改善によるところが多い。しかし、現在ではガン、心臓疾患、脳卒中、認知症が最大のリスク要因となり、これらが平均寿命の延びを抑えている。これらの病気はいずれも加齢により発症する。

出典: Our World in Data

加齢プロセスの解明

これらの病気を一つづつ解明して、治療方法を探る研究が続いているが、この研究は上手く進んでいるとは言い難い。その理由は、生物学的な加齢のメカニズムが理解されていないためで、病気治療は加齢のプロセスを抑えることでもある。Calicoはこのゴールに向かい、加齢という最大のリスク要因を解明するための研究を進めている。

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