Amazonは宅配ロボット「Scout」の運用を開始、人に代わりロボットが商品を配達する

Amazonは配送ラストマイルを担うロボット「Amazon Scout」の実証実験を始めた。Amazonで購入した商品は人間ではなくロボットが配送する。既に多くのベンチャー企業が配送ロボットを開発しているが、Amazonの参入で技術競争が激しくなる。同時に、AmazonがScout投入したことは、商品の宅配をロボットが担う時代が到来したことを意味する。

出典: Amazon

Amazon Scoutの概要

Amazonは2019年1月、配送ロボットAmazon Scout (上の写真)を発表した。Scoutはクーラーボックスに車輪が六つ付いた形状で、自動運転車のように自立走行する。Scoutは歩道を人が歩くくらいの速さで進み、注文を受けた商品を消費者宅まで配送する。プライム会員向けのサービスで、Amazonで買い物をして同日配送などのオプションを選択すると、Scoutがその商品を無料で配送する。

トライアルを開始

Amazonは6台のScoutを使ってSnohomish County(ワシントン州)でトライアルを始めた。Scoutの運用は月曜日から金曜日までの日中に限られる。注文を受けるとScoutが最適ルートを算定し、自動走行して商品を宅配する。当初は、Amazonのスタッフが安全確認のためにロボットに随行する。

商品の受け取り

Scoutが配送先に到着すると消費者宅の玄関前の歩道に停止する。消費者のスマホにメッセージが送信され、Scoutが到着したことを知らせる。消費者はアプリを操作(PINの入力か)してScoutの貨物ベイのカバーを開き、商品を取り出す(下の写真)。Scoutは商品が取り出されたのを確認して、カバーを閉めて、自律的に帰還する。

出典: Amazon

住民サービスの向上

Scoutはシアトルのアマゾン研究所で開発された。Scoutは歩道を自律走行し、路上のペットや歩行者をよけて安全に移動する。Snohomish CountyはScoutによる商品配送を歓迎するとのコメントを出している。住民サービスが向上するとともに、環境にやさしい方式での配送に期待を寄せている。

地方政府の評価が分かれる

一方、配送ロボットを歓迎しない自治体も少なくない。サンフランシスコは配送ロボットが歩道を走行することを禁止している。市街地では歩道の幅は狭く、配送ロボットが高齢者や身体障碍者の通行を妨げる、というのがその理由。反対に、配送ロボットを積極的に受け入れる自治体は多い。上記に加え、シリコンバレーのMountain ViewやSunnyvaleは配送ロボットが次世代インフラを支える基礎技術と評価し、実証実験を進めている。

技術的課題課題

Scoutなど配送ロボットは歩道を走行して商品を配送する仕組みとなる。歩道の走行は一般道路の走行より難しいとされる。歩道は狭く歩行者で込み合っている。更に、人は歩道を整然と歩くのではなく、ロボットが予測できない行動を取る。歩道を集団で歩いたり、商店から歩道に飛び出すことも珍しくない。歩道にはカフェのテーブルや自転車などが置かれており、配送ロボットはこれらの事象を理解して対応することが求められる。

受け取り手順の問題

更に、人間でなくロボットが商品を届けると、受取手順が問題になる。高級住宅地では敷地に入る際にマニュアルでゲートを開ける必要がある。また、アパート形式の建物では配送ロボットは玄関先まで行くことができない。戸建ての住宅であっても、到着した際に、受取人が不在の時は配送ロボットは荷物を玄関先に置いておくことができない。配送ロボットが通行人によりいたずらをされるケースも報告されている。今後、実証試験などを通してこれらの課題を解決する必要がある。

実際に事故が発生

ロボットが生活に入ってくる中、全米各地で事故が報告されている。Washington(コロンビア特別区)のショッピングモールGeorgetown Waterfrontで、警備ロボット「Knightscope」はステップで転倒し池に転落した(下の写真)。警備ロボットの厳格なイメージが傷つき、企業はハードウェア以上のダメージを受けた。

また、配送ロボット「KiwiBot」はBerkeley(カリフォルニア州)で配送中に突然火を噴きだし火災となった。消防が駆け付ける前に周囲の通行人が消し止め大事には至らなかったが、企業イメージの低下は避けられない。これらの事故が示しているように、ロボットの技術完成度はまだまだ未熟で、抜本的な技術革新が求められる。

出典: Bilal Farooqui

ロボット配送時代に

Amazonはラストマイルの配送ではドローン「Prime Air」の技術開発を早くから始めているが、ロボット配送では市場参入が遅れた。AmazonがこのタイミングでScoutを投入したことは、配送ロボット市場の機が熟したと判断したのかもしれない。解決すべき課題は多いが、Amazonの参入で市場が活性化し、一気にロボット配送の時代に突入する予兆を感じる。