AmazonはAIカンファレンス「re:MARS」で配送ドローン「Prime Air」の最新モデルを公開した(下の写真)。ドローンはAIで映像を解析し、周囲のオブジェクトを正確に判定する。Prime Airの航続距離は15マイル(24㎞)で5ポンド(2.3㎏)までの積み荷を搭載でき、注文を受けた商品を30分以内で配送する。発表当日に米国政府の認可を受け、Amazonはドローン商用運行を数か月以内に始めると明言した。

出典: Amazon |
設計コンセプト
Prime Airが飛行する様子はビデオで公開された。Prime Airはハイブリッドデザインで垂直モード(Vertical Mode)と飛行機モード(Airplane Mode)の二つの形態で飛行する。垂直モードは、ヘリコプターのように、離着陸時に垂直に飛行する(下の写真上段、ドローンのフレームが地上と平行)。上空でドローンは飛行機モードに移り、水平に高速で飛行する(下の写真下段、ドローンの本体が地上と平行)。Prime Airは垂直に離陸したあと、機体を傾け、本体が地上と平行になる状態で飛行する。
高度な自動飛行技術
いまでは多くのドローンが自動飛行機能を搭載し目的地まで自律的に飛行する。しかし、想定外の事象が起こると(着陸地点に障害物があるなど)、ドローンは自律的に判断できず、監視センターのオペレータの指示に従って動作する。一方、Prime Airは高度なAIを搭載しており、ドローンが自律的に問題を回避する。例えば、着陸地点に人が立ち入れば、降下を中断し、人が立ち去るのを待つ。また、飛行中に障害物に接触する恐れがある場合、ドローンはそれを把握し回避措置を取る。

出典: Amazon |
センサーとオブジェクト認識
ドローンは複数種類のセンサーを搭載し、それをAIで解析することで周囲のオブジェクトを高精度で検知する。飛行中は、静止しているオブジェクト(煙突や電柱など)はStereo Vision(3Dカメラ)で検知する。また、動いているオブジェクト(パラグライダーやヘリコプターなど)はAmazonが開発したComputer Vision(AIカメラ)で検知する。Prime Airは自動運転車のように静止及び移動するオブジェクトを認識する。
着陸時のオペレーション
Prime Airは敷地に着陸してパッケージをリリースする構造となっている。そのため、着陸地点に人や動物がいなく、障害物がないことを確認する必要がある。ドローンに搭載されている赤外線カメラと光学カメラ(下の写真、左側)のイメージをAIで解析しこれらを検知する。ただ、この方式では電線や洗濯物ロープなどは検知することができない。このため、Prime AirはStereo Vision(3Dカメラ)を使い電線などのラインを検知する(下の写真、右側、斜めのライン)。

出典: Amazon |
Amazonは配送過程で排出する二酸化炭素の量をゼロにするプログラム「Amazon Zero」を展開している。2030年までに配送プロセスの50%で二酸化炭素排出量をゼロにすることが目標で、ドローンがこれに大きく貢献すると期待されている。クルマで商品を配送すると大量の二酸化炭素が排出されるが、バッテリーで飛行するドローンはクリーンに商品を配送できる。
商用運行にめど
Amazonは、発表と同じ日に、アメリカ連邦航空局(Federal Aviation Administration)からPrime Airをパッケージ配送業務に使用することの認可を受けた。Amazonは数か月以内にPrime Airの商用運行を始めるとしている。これに先立ち、Alphabet子会社Wingは2019年4月、米国で初めてドローンによる物資配送の認可を得た。Amazonが認可を受けた二番目の会社となり、いよいよ米国でもドローン商用運行が始まることになる。

出典: Twitter @ Jeff Bezos |
Re:MARSとは
MARSとはMachine Learning, Automation, Robotics and Spaceの略でAIとロボットと宇宙をテーマとするカンファレンスで、2019年6月4日からラスベガスで開催された。この模様はLive BlogやTwitchでリアルタイムに配信された。カンファレンスでは最新のAI技法が議論され、ロボットのデモが実施された(上の写真、Bezosが手袋インターフェイス(Haptic Gloves)で二台のロボットアームを操作している様子)。また、Bezosのロケット会社Blue Originの宇宙船「New Shepard Capsule」が展示され注目を集めた。昨年まではBezosが主催する閉じられたイベントであったが、今年はAmazonのカンファレンスとなり一般に公開された。