バラ色ではないシリコンバレーの在宅勤務、地方都市に移住すると給与が減る

米国で都市閉鎖が解除され経済活動が徐々に再開しているが、コロナと共棲するために、企業は在宅勤務を取り入れた企業戦略を策定している。多くの企業はオフィス勤務と在宅勤務を併用したハイブリッド勤務を導入している。また、企業は在宅勤務に最適なポジションを新設し、幅広く人材を募っている。在宅勤務がコロナ社会を生き抜くカギとなるが、企業の狙いは人材採用やオフィス費用削減にある。

出典: Facebook

Facebookの在宅勤務

シリコンバレーのIT企業は他社に先駆けて在宅勤務を採用した。Facebookの社員は在宅勤務を続けているが、CEOのZuckerbergはこれを正式な勤務形態とすると発表した。また、今後5 年から10 年のレンジで、社員の半数が在宅勤務となるとの見通しを示した。社員はオフィス勤務か在宅勤務かを選択でき、来年1 月までにこれを会社に通知する。

地方に移住すると給与が減る

在宅勤務を希望する社員は審査を受け、基準に沿っていると判断されるとこれが認められる。社員はシリコンバレーに住む必要はなく、他の地域に引っ越すこともできる。生活費の高いシリコンバレーから、郊外のサクラメントなどに引っ越しすることもできる。ただし、給与は当地の物価により調整され、郊外に引っ越しすると実質的に給与減額となる。

狙いは地方の人材採用

Facebookは今後の人材採用計画について明らかにした。在宅勤務を導入することで、シリコンバレーだけでなく、全米の主要都市で優秀な人材を採用できる。当面は、本社オフィスの近郊(クルマで4時間以内)で在宅勤務ができるエンジニアを採用する。次に、アトランタ、ダラス、デンバーで在宅勤務エンジニアを採用し、最終的には、カナダを含め全米の都市で採用を進める。つまり、Facebookは北米全域で優秀なエンジニアを雇い入れることを目論んでいる。更に、本社オフィススペースを縮小でき、Facebookは本社キャンパス増築計画を見直すとしている(先頭の写真、増築された本社ビル「MPK21」)。

Facebookの在宅勤務ツール

Facebookは在宅勤務が広がる中、新しいコミュニケーションツール「Workplace」を発表した。これは社員間でコラボレーションするためのツールで、共同の作業スペース「Group」、チャット「Chat」、ビデオ会議「Rooms」(下の写真)などから構成される。RoomsがZoomに相当する機能で、Workplace全体はSlackの対抗製品として位置付けられる。今月からサービスが開始され企業で導入が始まった。

出典: Facebook

社員全員が在宅勤務

コロナのパンデミック以前から在宅勤務を取り入れている企業は少なくない。その中で、Automatticは社員全員が在宅勤務をしている。Automatticはサンフランシスコに拠点を置く企業でブログソフトウェア「Wordpress」を開発している。世界75か国で1200人の社員がいるが、全員が在宅勤務をしている。オープンソース・ソフトウェアをベースにした製品を開発しており、社員は遠隔でコラボレーションし、プロジェクトがうまく進んでいる。(Automatticは数年前まで、サンフランシスコにオフィスを構えていた(下の写真)。社員は出社勤務か在宅勤務を選択できたが、出社する社員はわずかで、Automatticはオフィスを閉鎖した。)

人間関係が仕事のベース

しかし、Automatticはチームワークや社員同士の交流を重視しており、定期的に社員が集うイベントを開催し、チームスピリットを育んでいる。在宅勤務で仕事は進むが、そのベースは人間同士の信頼感や親近感である。顔を合わせたことのない社員と円滑に仕事を進めるのは難しく、このような場が必要になる。因みに、Automatticは世界のウェブサイトの35%で使われており、企業価値は30億ドルのユニコーンに成長している。

出典: Medium  

社員の反応

市場調査などによると、社員はオフィス勤務に戻りたい人と、そのまま在宅勤務を続けたい人に分かれる。在宅勤務を続けたい理由は、ワークライフ・バランスで、通勤時間がゼロとなり、家族と過ごす時間を持つことができる。また、上司や同僚との人間関係を気にしないで仕事をできストレスがたまらないという声も聞かれる。一方、オフィス勤務に戻りたい社員は、他の社員とのコミュニケーションや交流を求めている。また、クールなオフィス環境で働けることや、無料の食事やスナックなどがあることも魅力となる。更に、在宅勤務だと目立たなくなり、出世に影響することを心配する声も聞かれる。若い社員は出社勤務を望み、45歳以上の社員が在宅勤務を希望するとの調査結果もある。

在宅勤務に適した職種

多くの企業が在宅勤務専用のポジションを新設しているが、これを見るとテレワークに向いているのとそうでない仕事がある。在宅勤務に向いている職種としては、医療、情報通信、顧客サポートなどで、これらのポジションで募集枠が広がっている。ソフトウェアエンジニアはこのカテゴリーとなり、IT企業で在宅勤務が広がることを裏付けている。また、コロナの後で需要が増えた職種は教育関連で、学校がオンライン授業に移り、在宅勤務のインストラクターやアシスタントが求められている。

Googleは在宅勤務に慎重

多くの企業が遠隔勤務に移る中、Googleは慎重な姿勢を見せている。Googleは今月からオフィスを再開し、全体の10%程度の社員が職場に戻ってくる。ソーシャルディスタンシングをキープしながら仕事を再開するが、遠隔勤務は緊急措置であり、その延長は計画されていない。Googleは在宅勤務で生産性が上がるとは考えていない。クリエイティブな仕事は人間同士のインタラクションで生まれるとし、遠隔勤務でイノベーションを生むのは難しいと考える。今後、Googleは在宅勤務で生産性が上がり、問題を解決できるのか、データサイエンスの手法で検証するとしている。

出典: Google

新しい企業戦略

やはり、在宅勤務では社員の仕事をどのように評価するかが最大の課題となる。仕事の定義であるJob Descriptionを明確にし、仕事の成果を公平に評価する指標が必要になる。一方、在宅勤務が広がる中、それを支援するテクノロジーの開発も進んでいる。上司に代わりAIが社員の生産性を評価する方式も登場している。社員にとって在宅勤務というオプションは必ずしもバラ色ではないが、シリコンバレーの企業は新しい会社戦略を模索している。