この研究の内容はライフサイエンス分野の学術雑誌Cellに「Development of CRISPR as an Antiviral Strategy to Combat SARS-CoV-2 and Influenza」として公開された。これはCRISPR-Cas13ベースの治療技術で、PAC-MAN (prophylactic antiviral CRISPR in human cells)と呼ばれる。PAC-MANは、CRISPRが肺に侵入した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を検知し、Cas13がこのウイルスのRNAを切断し、ウイルスの増殖を抑える。更に、A型インフルエンザウイルス(influenza A virus)にも有効でウイルスの増殖を抑止する。
One Skinはこの老化細胞を取り除く技術を開発している。肌のアンチエイジングに焦点を当て、肌に蓄積する老化細胞を取り除くことで、皮膚を若返らせる技術を開発した。膨大な数のペプチド(Peptide、アミノ酸で構成された短い分子)を調べ、OS-01というペプチドが老化細胞を取り除く効果があることを発見。研究室での実験でOS-01は皮膚の老化細胞を25%から50%取り除くことができその効果を実証した。また、人体に適用しその効果を確認した。(下の写真、老化した肌(左側)にOS-01を12週間適用すると張りのある肌(右側)となった。)
シリコンバレーの識者の間で健康寿命の捉え方が変わりつつある。老化の研究が急速に進化しており、100歳まで健康で活躍できると考える人が増えてきた。革新的なアンチエイジング医療の研究が盛んで、健康管理を怠らなければ、我々は新技術の波に乗り、余命が大きく伸びそうだ。「100 is the new 60」という言葉をよく耳にする。これは、これからの100歳は従来の60歳という意味で、100歳まで元気に働ける時代は目の前に迫っている。
[OS-01の開発手法]
遺伝子と細胞年齢
One Skinは生物学と機械学習を駆使しOS-01の開発に成功した。One Skinは、研究室でヒトの肌を培養し、このプラットフォームの上でアンチエイジングの研究を展開。また、機械学習の手法で細胞の年齢を推定するアルゴリズムを開発。遺伝子のマーカーを細胞年齢の指標として使った。このアルゴリズムを使い、開発したペプチドで細胞がどれだけ若返ったかを推定した。(下の写真、アルゴリズムの結果を示し、縦軸が細胞の年齢で横軸がその推定年齢。)
ノーベル化学賞受賞の理由は遺伝子の編集技術「CRISPR-Cas9」の開発(for the development of a method for genome editing)。受賞者はマックスプランク感染生物学研究所(Max Planck Unit for the Science of Pathogens)のEmmanuelle Charpentierとカリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のJennifer Doudna。
Jennifer Doudna talks during a press conference at UC Berkeley in Berkeley Calif. on Wednesday, Oct. 7, 2020. Doudna received the Nobel Prize in Chemistry for her work with CRISPR Cas9.
CRISPR-Cas9とは遺伝子配列を高精度に編集する技術を指す。従来から遺伝子編集技術(ZFNやTALENなど)が使われてきたが、CRISPR-Cas9は容易に遺伝子を編集できることが最大の特徴で、瞬く間に世界で利用が広がった。CRISPR-Cas9を使った編集技術はカリフォルニア大学バークレー校(University of California Berkeley)のJennifer Doudna教授らにより開発された。