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ベンチャーキャピタルの技術発表イベント、音楽ストリーミングにブロックチェーンを導入

ベンチャーキャピタル500 Startupsはサンフランシスコで発表イベントを開催し、スタートアップは開発した最新技術を披露した。カナダ・バンクーバーに拠点を置く新興企業Beatdappは音楽ストリーミング回数を計測する技術をブロックチェーンで開発し、そのデモを公開した(下の写真)。音楽ストリーミングサービスがブームであるが、配信企業と音楽制作会社の間で音楽配信回数が食い違い、訴訟に発展することも珍しくない。

出典: VentureClef

音楽ストリーミングサービスとは

音楽ストリーミングとは、音楽制作会社(Record Labels、レーベル)やアーティストが制作した音楽を、配信会社(Digital Service Provider、DSP)が消費者にオンデマンドで配信するサービスを指す。レーベルはWarner Music Groupなど大手三社と数多くの独立系(Indie Label、インディーズ)からなる。また、DSPではSpotifyがトップで、それをApple Music、Amazon Music、Tencent Musicなどが追っている。

音楽ストリーミング事業

音楽ストリーミングサービスでは音楽や音楽ビデオの配信回数で収入が決まる。この事業の収益は視聴者のサブスクリプションと広告収入で構成され、配信回数に応じてDSPがレーベルやアーティストに売り上げを分配する。しかし、Beatdappによると、世界600社の音楽ストリーミングサービスを調査すると、DSPが報告した配信回数と実際の配信回数の間に隔たりがある。DSPはレーベルやアーティストに過少申告し、その金額は$4.5Bに上るとしている。

音楽配信アナリティックス

この問題を解決するためBeatdappは音楽配信アナリティックス技術を開発した。レーベルやアーティストはBeatdappを利用することで、音楽配信情報を把握し、販売金額を正しく掴むことができる(下のグラフィックス)。具体的には、特定アーティストの音楽配信回数がグラフやテーブルで示される。例えば、The Poetというアーティストの曲が今月は1234回配信されたことが分かる。また、DSPごとの配信回数がグラフで表示され、SpotifyやApple Music経由での配信回数を掴むことができる。

出典: Beatdapp  

ブロックチェーン構成

音楽配信回数をカウントするためにはDSPがBeatdappをシステムに組み込む必要がある。DSPとしてはBeatdappを統合することで不正使用を検知でき、また、経理監査プロセスを自動化できるメリットがある。Beatdappはブロックチェーンを使ってシステムを運用している。システム構成は公開されていないが社名(Beat + dapp)にヒントがある。「Dapp」とはブロックチェーン「Ethereum」の上で稼働する分散アプリ「Decentralized Application」を指す。Dappは「Smart Contracts」とも呼ばれ、インテリジェントな契約機能を持つ。Beatdappのケースでは人間の介在無しに(人間がデータ集計でミスすることなく)Dappが契約(事前に設定されたルール)に基づき、音楽配信回数を正確にカウントする。

音楽産業の斜陽化

音楽産業は斜陽化の時代を抜けストリーミングで生まれ変わろうとしている。1980年代にCDが導入され音楽産業が大きく成長した。音楽がデジタルに記録され音質が上がり、1999年には売上金額がピークに達した。しかし、同年、P2Pファイル共用サービス「Napster」の登場で、デジタルに記録された音楽が不正にコピーされ、これ以降、音楽の売り上げが毎年低下することとなった(下のグラフ、Physicalの部分)。

出典: Financial Times  

音楽ダウンロードが転機になる

しかし2001年、AppleがiTunesを投入し、この流れが変わった。iTunesはメディアプレーヤーで音楽やビデオファイルをダウンロードして再生する。iTunes Storeで音楽ファイルを購入することで音楽の売り上げが少しずつ増えてきた(上のグラフ、Digital Downloadsの部分)。ついに、2013年には減少を続けてきた音楽収入が上昇に転じ、音楽産業は底を脱した。

ストリーミングが音楽産業を再生する

更に、この頃から音楽をダウンロードではなくストリーミングで聞く方式が人気となってきた(上のグラフ、Streamingの部分)。この先陣を切ったのはSpotifyで、著作権で管理された音楽を配信する事業を広げていった。2015年にはApple Musicがこの市場に参入し、音楽市場が一気に拡大した。この勢いでストリーミング事業が成長すると2026年には過去最大の売り上げを記録するとの予測もある。

ブロックチェーンはトライアルから実用段階へ

ブロックチェーンはBitcoinなど暗号通貨だけでなく、サプライチェインなどで適用が広がっている。ただ、多くの企業はブロックチェーンを試しに使ってみるだけで、これは「Blockchain Tourism(ブロックチェーン観光)」と揶揄されてきた。しかし、今年からブロックチェーンをアプリに組み込み基幹業務に適用するケースが増えてきた。ブロックチェーンはトライアルの段階を抜け実用段階に進んできた。技術の成熟度に敏感な新興企業はブロックチェーンを使ったアプリの開発を始め、今年はブロックチェーンが開花する予兆を感じた。

Libraショックが広がる、中国は対抗する暗号通貨を開発し年内の運用を目指す

FacebookのLibra(リブラ)が世界に衝撃を与えているが、各国の対応は分かれている。フランスとドイツはLibraを認めないとする共同声明を発表した。ユーロ圏内で統一してLibraを規制する方針を示した。一方、中国はLibraを規制するものの、対抗する暗号通貨の開発を急いでいる。この暗号通貨は数か月以内に運用が始まるといわれ、フィンテック市場でも中国が米国に対峙する形となる。

出典: People’s Bank of China

発表概要

中国の中央銀行にあたる中国人民銀行(People’s Bank of China)は、暗号通貨を開発しており、数か月以内に運用を始めることを明らかにした。同行のデジタル通貨研究所「Digital Currency Research Institute」の責任者Mu Changchunが明らかにし、上海証券報(Shanghai Securities News)が報道した。

暗号通貨とデジタルワレット

中国人民銀行が開発している暗号通貨はDC/EP(Digital Currency and Electronic Payment tool)と呼ばれる。DC/EPは流通している通貨をデジタルにしたもので、支払いツールとして機能する。専用のデジタルワレットをスマホにダウンロードしてDC/EPを利用する。

利用方法

支払いの際にはネットワークは不要で、スマホ同士をタッチするだけでトランザクションが完了する。通貨と同じくネットワーク環境が整っていない場所でも使える。ただ、スマホに近距離通信機構などが必要になると思われるがシステム要件については公表されていない。また、DC/EPは銀行口座を持たなくても使うことができる。ただし、DC/EPにお金をチャージする際は銀行口座とネットワーク環境が必要となる。

システム構成

DC/EPは二階層で運用される。中国人民銀行がDC/EPのコアシステムを運用し、ここに金融機関が加盟し、それぞれのシステムを運用するかたちとなる。7社が加盟する予定で、この中にはAlibaba、Tencent、UnionPayが含まれている。金融機関がシステムを運営する際には、ブロックチェインまたは従来の経理システムを使うことができるとしている。ブロックチェインを使わないケースではDC/EPは暗号通貨の定義から外れることになる。

中央銀行と金融機関の役割

DC/EPの運用は通貨の運用に類似しており、金融機関は中国人民銀行に口座を持ちDC/EPを購入する。利用者となる個人や企業は金融機関からDC/EPを購入し、それをデジタルワレットで使う。Libraと対比すると、中国人民銀行がLibra Associationに相当し、加盟している金融機関がFacebookなどに相当する。またデジタルワレットはCalibraのような機能を持つ。

国家が暗号通貨を運用する目的

中国では既にAlibabaやWeChat がデジタル通貨を運用しておりキャッシュレスの社会が出来上がっている。キャッシュレスの処理金額は59兆元(2019年第一四半期)で、Alipayがその1/2を、WeChat Payがその1/3を担っている。このような環境に暗号通貨を導入する狙いは、中国政府が通貨主権を守ることにある。また、民間企業が国家の通貨運用を担うと、会社が倒産した際に社会に与える影響が甚大となる。更に、仮にLibraが中国で普及すると、ドルやユーロや円に裏付けられたLibraが人民元(Renminbi)の価値を脅かすことになる。

出典: Alipay

Libraが開発を加速させた

中国人民銀行は2014年から専属の研究チームを設け暗号通貨の開発を進めてきた。その目的は、通貨の流通量を減らし運用コストを下げ、また、マネーサプライ政策を効率的に行うことであった。FacebookがLibraを発表したことでDC/EPの運用が早まった。Libraが中国の暗号通貨開発を加速させたことになる。

課題を抱えての船出

DC/EPが投入されると世界最大規模の暗号通貨エコシステムが構築されることになる。DC/EPはビットコインと異なり、価値が安定し、安全に利用できる。また、ビットコインのように匿名で使うことはできず、資金洗浄や人民元の海外への流出を防止できる。一方、DC/EPが銀行やAlibabaなどの事業にどう影響するのか見通せない部分も多い。また、キャッシュレスが普及している社会で本当にDC/EPが使われるのかも疑問視されている。様々な課題を抱えて中国人民銀行の暗号通貨プロジェクトが稼働することになる。

Apple Cardを1か月使ってみた、アップルがデザインするとクレジットカードがこんなにも魅力的になる

Appleは2019年3月、自社ブランドのクレジットカード「Apple Card」を発表し、8月から運用を開始した。早速、Apple Cardを試してみたが、使い易さとお洒落なデザインに感銘を受けた。毎日使っているクレジットカードだが、単に支払いツールとしてとらえているだけで、特別な思い入れはない。しかし、Apple Cardはその常識を破り、インターフェイスが洗練され、カードに親近感を感じる。クレジットカードは無機質なプラスチックからインテリジェントなアプリに進化した。

出典: VentureClef

Apple Cardの概要

Apple CardはiPhoneのおサイフ「Wallet」に登録して利用する(上の写真左側)。既に、クレジットカードなどを登録して使っているが、ここにApple Cardが加わった。Apple Cardにタッチすると初期画面が表示され、ここに買い物のサマリーが示される(上の写真右側)。Apple Cardは物理的なカードも発行しており、これはチタン製のお洒落なカードで「Titanium Apple Card」と呼ばれる。表面は銀色でカード番号などは印字されておらず、安全性を重視したデザインとなっている(下の写真)。手に持つと、プラスチックのカードとは違い、ずっしりと重い。

出典: VentureClef

Apple Payから利用する

Apple Cardはモバイル決済「Apple Pay」で利用するのが基本パターン。Apple Payに対応している店舗やアプリで利用する。使い方は従来と同じで、サイドボタンをダブルクリックし、Face IDなどで認証し、デバイスをリーダにかざす(下の写真)。アプリ内決済では認証が完了すると決済プロセスが起動される。

出典: Apple

Titanium Apple Cardを使う

Apple Payを使えないケースではTitanium Apple Cardを使う。Apple CardはMastercardのネットワークを使い、カードを発行する銀行はGoldman Sachsとなる(下の写真、カード裏面)。Appleブランドのインパクトが強いが、Titanium Apple Cardを使うときはMastercardを取り扱っている店舗となる。通常のカードと同じく、Titanium Apple Cardをリーダーに差し込んで使う。

出典: VentureClef

オンラインショッピングでは

Apple Payを取り扱っていないオンラインショッピングでApple Cardを使うときは手間がかかる。Apple Cardのカード番号を決済サイトに入力する必要があるからだ。カード番号を見るには、Apple Cardを起動して(下の写真左側)、「Card Information」のページを開く。ここに表示されるカード番号、有効期限、PINを参照し、それらをオンラインサイトの決済画面に入力する(下の写真右側)。いつもは、クレジットカードに印字されているこれらの情報を入力するが、Titanium Apple Cardにはカード番号は印字されていないし、セキュリティの観点から、この番号はApple Cardの番号とは異なる構造を取る。Apple Cardの番号は「Card Number」と呼ばれ、オンラインショッピングではこの番号を使う。

出典: VentureClef

購買履歴のサマリー

Apple Cardで買い物をすると、購買履歴は綺麗に整理されて表示される(下の写真左側)。買い物の一覧表が企業ロゴと一緒に示され分かりやすい。買い物の内容を確認する際は各アイテムにタッチすると、店舗名やその場所が画面に示される(下の写真中央)。また、購買アイテムをカテゴリーごとに表示する機能もあり、週ごとに購買金額とそのカテゴリーがグラフで示される(下の写真右側)。カテゴリーは色分けされ、黄色はショッピング、緑色は旅行、青色は交通費、紫色はサービス、赤色は医療などとなる。

出典: VentureClef

キャッシュバック

Apple Cardの魅力は買い物をするとキャッシュバックを受け取れること(下の写真左側)。キャッシュバックは月ごとではなく、買い物をした日に受け取れる(下の写真右側)。キャッシュバックは「Apple Cash」に振り込まれ、送金や買い物で使うことができる。Apple製品を買うと購買金額の3%のキャッシュバックを受ける。また、Apple Payで買い物をすると購買金額の2%を、Titanium Apple Cardで買い物をしたら1%のキャッシュバックを受ける。

出典: VentureClef

Apple Cardの印象

既に、Apple Payで他社のクレジットカードを使っているが、これに比べてApple Cardは圧倒的に温かみのあるデザインで、機能的にも優れている。買い物履歴が分かりやすく表示され、出費を管理しやすい。また、Apple Cardはカテゴリーごとの支払いを反映し、表面が虹色に変化する(下の写真)。今月はショッピング(黄色)や交通(青色)やサービス(紫色)などに支出したことが視覚的に分かる。また、キャッシュバックがApple Cashに溜まっていくのが見え、買い物の特典が実感できる。一方、Apple CardはAppleデバイスでしか使えないので、最近は常にiPhoneを携帯している。いつの間にか、Appleのエコシステムにロックインされた感はぬぐえない。

出典: VentureClef

Appleのフィンテック戦略

Apple CardはApple Payで使うことを前提に設計されている。このため世界のiPhone利用者9億人が潜在顧客となる。Appleはこの巨大なネットワークでフィンテック事業を展開し、Apple Cardのトランザクション量に応じて手数料を徴収する。ブランドもMastercardではなくApple Cardで、カード会社とAppleの位置関係が分かる。これからのクレジットカード事業はデザインや機能性が重要になり、IT企業がそれをけん引する流れが鮮明になってきた。

キャッシュレス市場動向

Facebookは安全な暗号通貨「Libra」を開発しており、政府関係機関の承認を得てこの運用を始める。Amazonは独自のクレジットカードを発行し、オンラインサイトの顧客に提供すると噂されている。GoogleはApple Payに対抗するモバイル決済事業「Google Pay」を展開している。GAFAがペイメント事業で存在感を高めており、金融機関との競合が一段と厳しくなってきた。

Libraに戦々恐々とする世界の金融システム、Facebookが世界最大の銀行になる日

Facebookが発行を予定している暗号通貨「Libra」(リブラ)に世界の金融機関が戦々恐々としている。米国連邦議会は公聴会でFacebookに証言を求め、Libraの実態解明を進めている。FacebookはLibraを送金ツールと説明するが、Libraのようなステーブルコイン(Stablecoin)は有価証券であるとの考え方もある。また、Libraと送金アプリPayPalやVenmoとの違いも議論となった。Libraの本質が見えない中、Libraは世界の金融システムに重大な影響を及ぼすことが予想され、政府や銀行は警戒を強めている。

出典: House Financial Services Committee

米国連邦議会下院の公聴会

米国連邦議の上院銀行委員会(Senate Banking Committee)に続き、下院金融委員会(House Financial Services Committee)でLibraに関する公聴会が開催された。下院でもFacebookのデータ保護対策に関し厳しい意見が出されたが、同時に、Libraの本質に迫る質疑応答が展開された。FacebookはLibraを支払いツール(Payment Tool)と主張するが、その実態は有価証券(Security)と考え方もある。

LibraとCalibraの位置づけ

FacebookのDavis Marcusは2019年7月17日、下院金融委員会で証言した(上の写真)。この中でPatrick McHenry議員との質疑応答でLibraに関し興味深い議論がなされた。Facebookの主張を整理すると次のようになる。FacebookとLibra Associationは暗号通貨「Libra」を管轄し、スイス国内法に準拠して運用する。また、Libraの基本指針についてはG7(Group of Seven)で議論される。一方、デジタルワレット「Calibra」(カリブラ)はFacebookのアプリで、米国国内法に準拠して運用される。CalibraはPayPalのような送金アプリとして位置付けられ、資金洗浄などの不正使用を防止するための規制に準拠する。

Libraはステーブルコイン

Calibraの位置付けは明快であるが、Libraをどう解釈するかが問題となる。Libraは技術的にはブロックチェイン(Blockchain)上で稼働するデジタル通貨で暗号通貨(Cryptocurrency)として区分される。暗号通貨の中でもステーブルコイン(Stablecoin)としてデザインされている。ステーブルコインとは価格変動を最小限に抑えた暗号通貨で、Libraの場合は通貨(ドル、ユーロ、ポンド、円)がその価値支える構造となる(Fiat-Backed Stablecoinと呼ばれる)。Libraの価値が大きく変動することはなく、安定して運用できると説明している。つまり、Libraとドルの交換レートが一定に保たれる(Pegされる)ことを意味する。

出典: Calibra

ステーブルコインは有価証券か

Libraをステーブルコインと認めることについては共通の理解があるが(Facebookは「stable digital cryptocurrency」と説明)、ステーブルコインの実態については議論が分かれている。Facebookは送金ツールと主張するが、ステーブルコインは有価証券(Security)と解釈することもでき、米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)が調査に乗り出した。SECはLibraの構造は上場投資信託(Exchange-Traded Fund、株やコモディティなどをグループにした証券)に近いとみておりその判断が待たれる。

米国証券取引委員会の認可が必要か

もし、Libraが有価証券と認められると、米国でLibraを使うにはSECの認可を受ける必要がある。SECは債券取引を監視する連邦政府組織で投資家保護のためその運用には厳しい規制を課している。Libraの運用でSECの認可を受けるのは多大なコストと時間が発生するため、Facebookとしては是が非でも避けたいところである。

Libra運用に関する協議

FacebookはLibraの運用基本指針についてG7で協議を始めるとしている。これに先立ち、フランスで開催されたG7財務相会議でLibraについて強い懸念が表明され、その運用は厳格なルールが必要との見解が示された。また、Facebookは拠点を置くスイスでSwiss Financial Market Supervisory Authority (FINMA)と協議をするとしている。FINMAはスイス政府機関で銀行や証券取引所などを監視し、Libraの運用ではFINMAの法令に準拠する必要がある。

Calibraの運用指針

デジタルワレットCalibraについてはPayPalなど同様に送金アプリと解釈される。Calibraは金融サービスであり、Facebookは米国財務省(US Department of the Treasury)とFinancial Crimes Enforcement Network (FinCEN)から認可を受ける方向で検討していると表明した。FinCENとは財務省配下の組織で資金洗浄やテロ組織への送金を監視・分析する任務を担っている。Facebookはこれらの規制に準拠しLibraを使った不正送金を防止するとしている。

出典: The Libra Association  

金融市場激変の時代

FacebookはLibraを国を跨る送金や金融インフラの整っていない発展途上国での送金に使うと説明した。Libraの本質は見えないが、Facebookは銀行の基幹事業である送金サービスを脅かす存在になろうとしている。各国の政府機関や中央銀行はこの動きに警戒感を強め、主要銀行は戦略の見直しを迫られている。JP Morgan Chase最高経営責任者Jamie Dimonは、Libraがすぐに事業に影響することはないが、数年先は考える必要があると述べ、対策が必要であることを認めた。Facebookが銀行としての色合いを強め金融市場が激変の時を迎えている。

Facebookが連邦政府公聴会で証言、米国が暗号通貨Libraを規制すると中国が世界の金融システムを支配する

Facebookは発行を計画している暗号通貨Libraについて米国連邦議会で証言した。上院と下院の委員会で議員の質問にFacebookが回答する形式で進み、LibraとFacebookについて厳しい意見が相次いだ。Facebookは議会の理解を得るまではLibraを発行しないと明言したが、同時に、米国がデジタル通貨の開発を制限すると中国が金融システムを支配すると警告した。

出典: U.S. Senate Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs  

米国連邦議会の公聴会

暗号通貨Libraに関し各国政府や金融機関の懸念が広がる中、米国連邦議会は2019年7月16日と17日の両日、公聴会を開催しLibra責任者であるDavid Marcusに証言を求めた(上の写真)。上院銀行委員会(Senate Banking Committee)と下院金融委員会(House Financial Services Committee)で議員からFacebookの姿勢とLibraの安全性が厳しく問われた。質疑応答を通して、Libraの概要が明らかになり、また、議会が問題視しているポイントが明確になった。(公聴会の様子は各委員会がウェブサイトに公開している。)

米国がデジタル通貨のルールを制定

Libraという新しい金融サービスに各国政府が戸惑っている中、Facebookは米国が世界に先駆けデジタル通貨に関する指針を示すことが必要との見解を示した。また、Libra Association(Libraの運営組織)をスイスに設立した理由は、米国政府の規制を逃れるためではなく、世界の金融組織がここに集まっているためであると説明した。

Libraのビジネスモデル

FacebookはLibraを運営してどう事業を構築するのか、そのビジネスモデルを説明した。Facebookは27億人の会員があり、9000万社がFacebook上で事業を展開している。企業がこれら会員を対象に事業を展開し、買い物の支払いにLibraが使われると事業規模が拡大する。これにより、企業はFacebookに広告を掲載し、広告収入が増えると見込んでいる。これが当面の事業計画であるが、その後は銀行などと提携し金融サービスの提供を検討している。

Facebookの信用問題

FacebookはCambridge Analyticaによる個人データの不正使用に関し50億ドルの制裁金を米連邦取引委員会(Federal Trade Commission)に支払うことで合意した。議員からFacebookが個人情報管理という問題を解決できないまま、なぜ暗号通貨という難しい事業に手を出すのか厳しく問われた。Libraはどのように個人情報を守るのかについて質問が集中した。

個人情報はCalibraに留まる

これに対しFacebookはCalibraで収集したデータをFacebookが共有することはないと回答。CalibraとはFacebookの子会社で同名のデジタルワレット(下の写真)を運用する。多くのデジタルワレットが登場する予定で、Facebookはその一社にすぎず、他社とともに責任をもって運営される。具体的には、消費者がFacebookでCalibraを使って買い物をすると、会員データや購買データはCalibraが管理する。Calibraは別会社でこれらデータはFacebookに渡ることはなく、Libraのトランザクション情報をFacebookが広告などに使うことはないと説明した。

出典: Calibra  

Libraを使った不正送金

委員会のLibraに関する懸念はLibraが不正送金の手段となるという点に集中している。公聴会に先立ち、連邦準備制度理事会(FRB)議長Jerome Powellもこの懸念を表明している。米国政府はイランや北朝鮮に経済制裁を科しているが、Libraによる送金手段がその抜け道になると懸念されている。また、テロリストや麻薬密売などでLibraが使われる可能性も指摘された。既に、Bitcoinのトランザクションの殆どがマネーロンダリングで使われているとの報告もあり、FacebookはLibraを使った不正送金をどう防ぐかが問われた。

Facebookがやらないと中国が手掛ける

Facebookは、米国政府がこれらの問題を回避するためLibraを規制すると暗号通貨の開発が停滞し、別の勢力(固有名称は示されなかったが中国を指す)が暗号通貨を開発し、世界に二つの金融ネットワークが造られると警告した。インターネットが二種類存在すると世界が混乱するように、金融ネットワークが二種類誕生すると経済の発展が阻害される。そもそもブロックチェインでのトランザクションを金融当局は管理できないため、その上で稼働するアプリケーションであるLibraを正しく規制し、世界の基軸ネットワークとすべきと主張した。

出典: Calibra  

Facebookが通貨を発行すべきでない

公聴会に先立ち、トランプ大統領はBitcoinやLibraについて批判的な見解をツイートしている。Bitcoinなど暗号通貨は本当のお金ではないとし、Libraは仮想通貨であり、Facebookが銀行になりたいなら認可(Banking Charter)を受けるべきとの見解を示した。議員からもなぜFacebookがデジタル通貨を発行するのかとの質問が出された。

Libraは通貨ではなく送金手段

これに対してFacebookは、多くの懸念があることを見越して事前にLibraホワイトペーパーを発行した。関係機関がLibraに関する懸念を払しょくするまではFacebookは暗号通貨事業を始めないことを明言した。更に、Libraは通貨ではなく送金手段であることを改めて説明した。海外送金では通常7%の手数料がかかり、3-4日の時間を必要とするが、Libraは無料で即時に送金できる。インターネット上で少額資金を送金する構想は早くから議論されてきたが、Libraがこれを始めて実現したと説明した。

Facebookの警告

Facebookは米国で暗号通貨の開発が停滞すると中国が金融ネットワークを支配すると警告し、Libra事業を進める意義を強調した。これはFacebookの脅しであるが、同時に、世界の情勢でもある。中国の中央銀行である中国人民銀行(People’s Bank of China)はLibraを注視しており、Libraが成功すると世界の金融システムに重大な影響を及ぼすと発言している。

世界で暗号通貨の開発が進む

中国人民銀行はBitcoinなど暗号通貨の研究でトップを走り、Libraに対抗する技術を開発するとみられている。また、カナダやノルウェーやスェーデンなども中央銀行が暗号通貨の開発を進めているとの報告もあり、主要国で暗号通貨が運営される日は遠くない。もう後戻りすることはできず、今までに経験したことのない技術に対し、消費者保護とイノベーションのバランスを取った規制が求められる。