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イーサリアムは歴史的なアップグレード「Merge」を完了、省エネなブロックチェーンに進化し二酸化炭素排出量が激減、暗号通貨が再評価され本格的に普及するか

ブロックチェーン「イーサリアム(Ethereum)」は、取引を認証する方式を改善し、電力消費量を大きく抑えたシステムに進化した。この改良は「マージ(Merge)」と呼ばれ、無事に移行作業が完了し、今週から新しいイーサリアムが稼働している。暗号通貨は、マイニングの処理で大量の電力を消費し、地球温暖化の要因となっている。イーサリアムはこの問題を解決し、暗号通貨が本格的に普及するのか、新世代のブロックチェーンに注目が集まっている。

出典: Ethereum

イーサリアムとは

イーサリアムはビットコイン(Bitcoin)に次ぐ、二番目の規模のブロックチェーンで、2015年から運用を開始した。ロシア系カナダ人であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)が考案し、今ではオープンソースとして開発者団体「イーサリアム・ファウンデーション(Ethereum Foundation)」で管理されている。イーサリアムはブロックチェーンとして、分散型アプリケーション「Decentralized Application (略称はDapp)」を運用する基盤として使われ、その代表が暗号通貨「イーサ(Ether、略称はETH)」となる。

マージが完了

イーサリアムは、9月15日、検証方式を改良する移行作業「マージ(Merge)」を完了した。マージとは、取引の正当性を検証する方式を「Proof-of-Work (PoW)」から「Proof-of-Stake (PoS)」に移行するプロセスを指す(下のグラフィックス)。ブロックチェーンは、取引の記録を取引台帳「ブロック(Block)」に書き込み、これを複数のノードに分散して保管し、安全に運用する。ブロックを生成する方法は二種類で、これがPoWとPoSとなる。イーサリアムは創設以来、PoWを使ってきたが、マージによりPoSに移行した。

出典: Ethereum

PoWからPoSに移行する理由

PoWはマイニング(Mining)とも呼ばれ、難解な数学問題を解いた最初のマイナーに、ブロックを生成する権利が与えられ、この対価として報酬を受ける仕組みとなる。このため、マイナーは競い合って、高性能プロセッサを使い、難解な数学問題を解く。この結果、多数の高性能プロセッサが稼働し、大量の電力を消費し、これが地球温暖化の原因となっている。イーサリアムは、エネルギー問題を解決するため、検証方式をPoWからPoSに移行し、消費電力を99.95%削減できるとしている。

PoSの検証方式

新方式のPoSは、ノード運用者が暗号通貨イーサ(ETH)を担保として差し入れ、検証者(Validators)になる方式を指す。検証者は、取引内容を精査し、正常に処理されたことを確認する作業を実行する。検証作業が終了すると、検証者はブロックを生成し、その対価としてイーサを受け取る。PoS方式では、難解な数学問題を解く必要はなく、通常のプロセッサで処理を実行でき、電力消費量が大幅に低減する。なお、検証者が不正行為をした際は、担保は没収され、検証者の権利を失う。このため、SoWは担保を根拠に公正な取引ができる仕組みとなる。

新しいイーサリアム

システムの観点からは、マージは次のプロセスで実行された。従来のブロックチェーンは「Ethereum Mainnet」と呼ばれ、ここに新しい認証方式「Beacon Chain」を組み込む作業となった。Beacon ChainがPoSのエンジンで(下のグラフィックス)、これを従来システムにマージした形となる。先頭のグラフィックスがこれを模式的に示している。宇宙船全体がイーサリアムで、その本体(円形の部分)がEthereum Mainnetを示し、ここに新しい認証方式(エンジンの部分)「Beacon Chain」を組み込んだ。従来は、地球を周回する人工衛星であったが、新たなエンジンを搭載したことで、他の惑星まで飛行できると形容している。

出典: Ethereum

マージ後の運用状況

イーサリアムはブロックチェーンで暗号通貨イーサ(Ether)を運用しており、ビットコインに次ぎ世界で二番目の取引量となる。マージが完了し、ブロックチェーンの構造は大きく変わったが、一般消費者は継続してイーサを使うことができる。特別なアクションは不要で、イーサ向けのワレットで売買処理を実行できる。ただ、米国の金利上昇に伴い、暗号通貨が売られ、イーサの価格はピークの4,644.43ドルから大きく下落している(下のグラフ)。

出典: Google Finance

分散アプリについて

イーサリアムは、ビットコインとは異なり、ブロックチェーンで多彩な分散アプリケーション(Dapp)が稼働している。イーサリアムは「Smart Contract」という機能を提供しており、これを使って分散型アプリケーションを開発する。その代表がメタバースで、イーサリアムに3D仮想都市が構築されている(下のグラフィックス、Decentralandの事例)。土地や施設や商品は、イーサリアムに構成されるトークンと位置付けられ、ここで独自の暗号通貨を使って売買する。また、多くのNFTはイーサリアムに展開され、デジタルアートやデジタルグッズを売買する。マージにより、イーサリアムで稼働している分散アプリケーションは、最小限の変更で継続して利用できる。

出典: Decentraland

PoSの検証者になると

前述の通り、新しいイーサリアムでは、検証者になるために担保を差し出す必要があり、その額は32ETH(約700万円)からとなる。検証者になると、検証作業をする順番を待ち、指名されるとそれを実行する仕組みとなる。指名の順番は、担保の金額により決められ、多額の担保を積むと順番が早く回ってきて、収入が増える。また、以前のイーサリアムと同様に、検証者は、プロセッサやストレージの使用量として「ガスフィー(Gas Fee)」を受け取る。これはシステム運用にかかる費用への対価で、検証者はトランザクション毎にこれを受け取る。

電力消費量が激減

マージ後に、イーサリアムの電力消費量のデータが公開され、実際に大きく低下したことが明らかになった(下のグラフ)。イーサリアムが運用を始めた9月15日は、電力消費量が激減し、年換算で3.40TW(Tera Watt Hour)となった。前日は77.77TWで、削減率は95.63%となる。因みに、従来のイーサリアムの電力消費量は人口1,960万人のチリに相当する。

出典: Digiconomist

ビットコインのマイニング

これに対し、ビットコインの電力消費量は97.11TWで、フィリピン一国の電力消費量に相当する。2021年5月、中国が暗号通貨のマイニングを禁止したため、システム運用状況が一変した(下のグラフィックス)。それまでは、マイニングの中心は中国であったが、規制を受けてマイナーは中国を脱出し、米国に拠点を移している。今では、世界の中で米国がマイニングの中心地となり、エネルギー問題が深刻化している。米国の中でもジョージア州にマイナーが集中している。同州は原子力発電所を運用しており、マイナーはこの電力を使ってビットコインのマイニングを実行している。

出典: Visual Capitalist

マイニングの問題

ビットコインのマイナーは、大量の二酸化炭素を排出していると、社会から厳しい批判を受けている。このため、マイナーは原子力発電や再生可能電力でマイニング処理を実行し、この批判をかわしている。しかし、PoWのマイニングという処理は、ビットコインのブロックを生成する権利を確保するためのもので、社会的な恩恵は無く、無駄な処理として認識されている。ビットコインが社会的に容認されない理由の一つがマイニング処理で、企業や社会にとっては、持続可能な社会を実現するための概念ESG(環境・社会・ガバナンス)と相容れないものになる。

ブロックチェーンの再評価と危険性

このような社会環境の中で、イーサリアムはマージを実行した。電力消費量は激減し、地球環境にやさしいシステムとなり、企業から暗号通貨が再評価されるとの期待が広がっている。一方、ブロックチェーンは銀行など中央組織を必要としない分散型金融システムとして誕生したが、マージによりイーサリアムは分散型から集中型に向かう危険性が指摘されている。PoSでは検証者になるために担保を差し入れるが、巨大テックなどが巨額のイーサを差し出し、ブロックチェーンをコントロールする危険性が懸念されている。期待と危険が混じり合い、新しいイーサリアムが運用を開始した。

これはもうNFTバブル!!デジタルアートに常識外の高値が付く、セレブが競って購入し市場は危険水域に

米国でNFT取引がブームを通り越しバブルとなっている。NFTとは、デジタルアセットの所有権を示す証文で、これによりデジタルアートやアバターなどを売買するビジネスが生まれた。しかし今では、価値があるとは思えないデジタルアートをセレブがこぞって購入し、これにより価格が高騰し、市場が危険な水域に入った。

出典: OpenSea

退屈したサル

サルをモチーフにした「Bored Ape Yacht Club」(上の写真)が破格の値段で取引されている。これはデジタルアートのコレクションで、「ヨットクラブの退屈したサル」というテーマとなっている。1万種類のサルが生成され、それらがNFTとして売買されている。これらの作品は1点が140 ETH (約5200万円)で、常識外の値動きとなっている。

セレブがNFTを購入

何の変哲もないデジタルアートになぜ破格の値段が付くのか議論を呼んでいる。理由の一つが、著名人の影響で、セレブが競ってNFTを購入しているという事情がある(下の写真)。有名モデルParis Hilton(左側の人物)と、トーク番組司会者Jimmy Fallon(右側の人物)は、相次いでBored Ape Yacht Clubを購買した。両者はトークショーで、NFTをプリントアウトしたものを示し、一躍、Bored Ape Yacht Clubの名前が全米に広がった。このようなセレブの“PR活動が”NFT人気を押し上げている。

出典: @jimmyfallon

何のために購入するか

Jimmy Fallonは購入したデジタルアートをTwitterのプロフィール写真として使っている(上の写真、左上のアバター)。NFTを本人を表すアバターとして使っている。高額なNFTをアバターとして使うのは、レアな作品を所有していることを誇示する目的がある。しかし、最終目的は投資のリターンで、NFTを転売して利益を得ることにあるといわれている。このた、プロフィールを“広告塔”として利用し、価格を吊り上げているとの解釈もある。

トランザクションの内容が分かる

Jimmy Fallonが購入したアートは作品番号「#599」(下の写真)で、2021年11月7日に46.6 ETH (当日のレートで約$216,000=約2500万円)で落札している。NFT収集家「collector936」から購入している。このNFTはブロックチェーン「Ethereum」で生成されており、過去のトランザクションすべてが「Block」と呼ばれるデータベースに記録されている。このBlockは公開情報で、誰でもこれを見ることができ、購買に関する全ての情報が分かる。これがブロックチェーンの特徴で、Jimmy Fallonが落札した価格や購入先などを知ることができる。

出典: OpenSea

NFT価格の推移

セレブが競ってNFTを購入している。Jimmy Fallonの他に、ラップ歌手Eminemやバスケットボール選手Steph CurryがBored Ape Yacht Clubを購入した。これらがニュースで報道され、NFTの人気が高まり、価格が上昇している。Bored Ape Yacht Clubの取引価格の推移を見ると(下の写真、折れ線グラフ)、2021年11月ころから価格が上昇に転じていることが分かる。

出典: OpenSea

Bored Ape Yacht Clubとは

Bored Ape Yacht ClubはYuga Labsという団体により開発されたNFTであり、ヨットクラブに属する退屈したサルというストーリーになっている(下の写真)。デジタルアートはプログラムで生成されたもので、170の特徴量を変化させ、1万種類のサルのイメージを生み出した。NFTはEthereumで生成されるトークンで、「ERC-721」という規格に準拠し、データは分散ファイルシステムに格納される。

出典: Bored Ape Yacht Club

NFTの危険性と将来性

デジタルアートの価値の評価は難しいが、特定のNFT価格が常識外の値動きを示している。また、デジタルアートを盗み、それをNFTに変換した模造品の販売が広がり、深刻な問題となっている。また、メタバースで、土地というデジタルアセットの購入が進み、不動産ブームが起こっている。米国において、メタバースで危険な投資が広がり、NFTという新しいビジネスモデルが試されている。

Meta(Facebook)はNFT市場に参入か、メタバースでデジタルアセットの販売を計画

Meta(Facebook)は、NFT市場に参入し、メタバースでデジタルアセットを販売することを計画している。NFTとはNon-Fungible Tokenの略で、デジタルアセットなどモノの所有権を示す証文(Token)となる。簡単に複製できるデジタルアセットにNFTを付加し、ブロックチェインで商取引を実行する。デジタルアートが破格の価格で取引され、NFT市場がにわかに注目を集めている。

出典: Meta

MetaのNFT計画

これはFinancial Timesが報道したもので、MetaはNTF市場に参入し、ここでコレクタブルを販売することを計画している。具体的には、Meta配下のFacebookとInstagramは、利用者のプロフィールにNFTを掲載する機能を搭載する。また、利用者が、これらソーシャルメディアで、NFTを生成することもできる。更に、MetaはNFTのマーケットプレイスをオープンし、ここでNFTの売買を行う。実際に、Metaが発表したメタバースには、NFTを購買するシーンがあり(上の写真)、最終的には仮想社会でデジタルアセットの販売で使われる。

NFTとは

そもそもNFTとは、ブロックチェインで構成されるトークンで、デジタルアセットなどの所有権を示す証文となる。NFTのデータは、ブロックチェインの分散データベースで安全に管理される。現在、NFTで使われるブロックチェインは「Ethereum」が殆どで、事実上の業界標準となっている。NFTは、Ethereumのスマート契約機能「Smart Contracts」を使い、インテリジェントに処理を実行する。事前に設定されたルール(契約)に基づき、人間の介在無しに、ソフトウェアが売買のトランザクションを実行する。NFTにより、デジタルアセットの所有権が証明され、デジタルアセットの売買をクラウド上で実行できる。(厳密には、NFTはトークンであるが、今では、NFTが付与されたデジタルアセットもNFTと呼んでいる。)

NFTマーケットプレイス

NFTの市場規模は400億ドルといわれ、その規模が急拡大している。NFTはマーケットプレイスというわれるサイトで売買される。この市場のリーダーは、ニューヨークに拠点を置く新興企業OpenSeaで、NFTブームで急成長している。OpenSeaは、オンラインサイトでNFTを生成する機能を提供しており、クリエータはここでデジタルファイルをNTFに変換する。生成したデジタルアセットをマーケットプレイスに掲載して販売する。このサイトには、デジタルアートやコレクタブルなど、幅広いNFTが掲載されている。OpenSeaはEthereumで構成されたシステムで、売買は暗号通貨「ETH(Ethereum)」などで実行される。(下の写真、OpenSeaに掲載されているデジタルアート、希望価格は2 ETH (5,456.42ドル)で、オークション方式で販売されている。)

出典: OpenSea

NFTの生成方法

NFTは誰でも簡単に制作することができる。OpenSeaのケースでは、作成画面の指示に沿ってデータを入力していくと、NFTを生成できる。イメージやビデオやオーディオなどをNFTに変換することができる。これらデジタルファイルをアップロードして、NFTに変換するプロセスとなる。この処理は「Mint」といわれ、デジタルファイルに所有者を証明するトークンを生成する作業となる。生成されたトークンはブロックチェインに安全に保管される。Mintのプロセスは有料で、利用者は処理費用「Gas Fee」を支払う。生成したNFTをマーケットプレイスで販売するが、作品が売れると手数料を支払う構造となる。

デジタルアートが高値で売れる

デジタルアートが高値で売れ、NFTブームが続いている。先月、NFTマーケットプレイスNifty Gatewayで、デジタルアートが91,806,519ドル(約104億円)で販売された。これはPakが制作した「Merge」という作品で(下の写真)、コンピュータで制作され、デジタルファイルとして売られた。ファイルには証明書NFTが添付され、これがアートの所有権を示す。(「Merge」は312,686のユニットから構成され、28,983人が購入した。一つのデジタルアートが312,686のNFTで構成されるという特異な構成。作品が転売されるごとにトークンがマージ(Merge)し、その数が減り、作品の価値が上がると説明している。)

出典: Merge by Pak

NFT市場の危険性

今では、アートやコレクタブルや写真などがNFTで販売され、デジタルアセットが投資の対象となっている。株式取引とは異なり、NFTへの法規制は無く、トランザクションで詐欺や不正行為が発生しているのも事実である。生まれたての技術で、新しいビジネスモデルが市場で試されている段階で、NFT購入には高度な判断が求められる。

メタバースで都市開発が進む!!仮想社会で新たな経済モデルが生まれる、購入した土地に施設を建設し事業を興す

メタバースで都市開発が始まった(下の写真)。メタバースとは、インターネットに構築された3D仮想社会で、ここに現実社会のように街が生まれている。メタバースで土地を購入し、施設を建設し、ビジネスを興す。テーマパークを建設しアドベンチャーゲームを始める。音楽ホールを造るとコンサートを開催できる。現実社会のデジタルツインともいえる仮想都市で、ビジネスが始まり、メタバースの経済構想が見えてきた。

出典: Sandbox

仮想都市の開発

3D仮想空間で都市開発を手掛けているのはSandboxという新興企業で、メタバースで新しい事業モデルを生み出している。Sandboxは、仮想社会のゲームを通して、メタバースを開発する手法を取る。個人や企業は、仮想社会でゲームやデジタルアセットを開発し、これらを販売することで収益を上げるモデルとなる。

メガシティ

メタバースに大都市「Megacities」が建設され、企業や著名人や個人が土地を購入し、事業を始めている。Sandboxにログインしてマップを見ると、メガシティの見取り図が示される(下の写真)。土地は区画で仕切られ、その大きさは96×96フィートとなる。この区画を単一、または、複数購入することができる。大地主はアイコンで示されている。2021年には、12,000区画の土地が販売され、累計で8,000万ドルの売り上げとなっている。Sandbox全体では、166,464区画整備され、累計で5億ドルの資産を保有していることになる。

出典: Sandbox

自宅を建設

土地を購入すると、ここに自宅を建てて、生活することができる。家屋のデザインを決め、提供されているツールで建物を建設する(下の写真)。屋内には、家具や調度品を配置し、生活できる環境を整える。現実社会と同じように、不動産が値上がりすれば、売って利益を得ることができる。また、著名人の住宅の近くに土地を買えば、値上がりする可能性が高いとも言われる。

出典: Sandbox

事業モデル

人気ラッパーのスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)は、メタバースに土地を買い(一つ上上の写真、中央部)、ここに大邸宅を建設した(下の写真)。庭には広いプールがあり、愛用しているクルマが駐車されている。ここに友人を集めてパーティーを開くことができる。また、コンサート会場としてライブイベントを開催できる。実際に、スヌープ・ドッグはライブイベントを開催する予定で、そのチケット「Private Party Pass」の販売を開始した。また、スヌープ・ドッグのアバターや、愛用しているクラッシックカーは、デジタルアセットとして販売されている。このように、メタバースでは、土地への投資、イベントの開催、デジタルアセットの販売で、事業を運営する。

出典: Sandbox

メタバース開発ツール

購買した土地に建物を建設し、ビジネスを興すためには、Sandboxが提供しているツールを利用する。これは、「VoxEdit」と「Game Maker」と呼ばれ、コーディングすることなく、オブジェクトを生成することができる。エンジニアでなくても誰でも使える点に特徴がある。

デジタルアセットの開発

VoxEditはデジタルアセット「ASSET」を生成するツール(下の写真)。デジタルアセットとは、仮想のオブジェクトで、アバターや衣服などが含まれる。具体的には、ASSETは4つのクラスから構成され、Entity(人間や動物などのキャラクタ)、Equipment(ゲームで使う刀などの武器)、Wearable(シャツやジーンズなどの衣服)、Art(アートワークなどの装飾品)となる。生成したアセットはNFT(Non-Fungible Token)というトークンに変換される。NFTとはコンテンツの所有者を証明するトークンで、コンテンツの所有権を示す証文となる。これにより、コンテンツの取引が可能となり、メタバースでNFT取引がブームとなっている。NFTに変換されたデジタルアセットは、Sandboxのマーケット「Marketplace」で取引される。

出典: Sandbox

ゲームの開発

Game Makerはメタバースで様々なアクティビティ「Experiences」を生成するツール(下の写真)。アクティビティの中心がゲームで、Game Makerは生成したASSETを使ってゲームを作成する。また、ゲームの他に、NFTを販売するギャラリー「NFT Gallery」や、住民が集う施設「Social Hub」を作成するためにも利用する。また、自宅を建設するときもGame Makerを使う。

出典: Sandbox

ゲームの種類

既に多くのゲームが開発されプレーされている(下の写真)。ゲームは二種類に分類され、アドベンチャーゲーム「Action Adventure」とパズルゲーム「Puzzle Games」となる。前者は敵と戦いながら目的を達するゲームで、後者はパズルを解きながら謎を解明するゲーム。これらのゲームは無料でプレーできるが、ゲーム内でデジタルアセットを購買するモデルとなる。

出典: Sandbox

デジタルアセットの販売

デジタルアセットの販売サイト「Marketplaces」には、数多くのNFTが掲載され、取引されている。これらはVoxEditで生成されたもので、人気キャラクターやグッズを中心に売買されている。メタバース向けのデジタルアセットを開発しているLululandは、ゲーム内で使うWearablesを販売している。白色のスニーカー「White Angel」は777.00 SANDで販売されている。ドルに換算すると$3,760.68となる。「SAND」とはSandboxが開発した固有の暗号通貨で、今日の交換レートは1 SAND = 4.81ドルとなる。

出典: Sandbox

クリエーター経済

これらのゲームやデジタルアセットはSandboxが提供するツールで開発された。ツールはNoCode(ノーコード開発プラットフォーム)で、プログラミングの知識なしに、誰でも簡単に使える仕様となっている。このため、クリエーターやデザイナーやアーティストなどが(下の写真)、これらのツールを使ってゲームを開発し、デジタルアセットを生成している。クリエーターたちはメタバースで事業を興し、収入を得る手段を得た。これは、クリエーター経済「Creator Economy」と呼ばれ、メタバースの新しい経済構想として注目されている。

出典: Sandbox

Sandboxのシステム構成

Sandboxは、ブロックチェイン「Ethereum」に構築された仮想社会。このプラットフォームで、土地やデジタルアセットが売買され、ゲームがプレーされる構造となる。「SAND」はSandboxが開発した暗号通貨で、メタバース内での決済で使われる。「LAND」はメタバースの一部で、「ASSET」はユーザが生成したオブジェクトで、「GAME」はこれを組み合わせたものとなる。これらはEthereumで稼働するトークンで、Sandboxはブロックチェインを基盤とするシステムと位置付けられる。現在のSandboxはアルファ版で、2022年第一四半期に正式製品が公開される。

ハイプかリアルか

メタバースで土地が高値で取引され、アートギャラリーでNFTの販売が好調である。インターネットにメタバース経済圏が出現し、新しいビジネスが続々と立ち上がっている。ベンチャーキャピタルは強気の姿勢で投資を進めている。一方、ウォールストリートは、成り行きをウォッチしているが、慎重なポジションを取っている。メタバースはハイプで終わるのか、それとも、巨大ビジネスとして開花するのか、2022年は節目の年となる。

メタバースで不動産ブーム!!仮想社会で土地取引が過熱し価格が高騰

メタバースで不動産投資が過熱している。メタバースとは、インターネットに構築された3D仮想社会で、ここで現実社会のように土地が売買されている。購買した土地に施設が建設され、街が生まれる。値上がりする前に土地を購入する動きが顕著で、仮想都市で不動産取引がブームとなっている。ただし、メタバースでの土地取引は経験したことのないビジネスモデルで、投資には幅広い視点からの判断が必要となる。

出典: Decentraland

メタバースで不動産投資

メタバースとは、インターネットに構築された3D仮想社会で、ここに人々が集い交流する。この仮想社会で都市開発が始まった。まだ、多くの土地は更地で、ここに商業施設やイベント会場が建設され、街が生まれている。いまここに土地を買っておけば、ビルが建設され(上の写真)、企業が入居し、賃貸収入を得ることができる、という目論見がある。また、将来、土地を高値で売ることもできる。このような背景から、メタバースの不動産投資に注目が集まっている。

メタバースの不動産会社

メタバースで土地を購入するには、”不動産会社”を介することになる。いま、土地ブームで”不動産会社”の数が増えているが、その代表はDecentraland。同社はアルゼンチンの新興企業で、現在は、カナダのToken.comが買収し、傘下で事業を継続している。Decentralandは、インターネット上に仮想社会を構築し、ここで不動産を売買するサービスを提供している。また、仮想社会で都市開発を進め、デベロッパーとしての機能も有している。

メタバースを歩いてみると

実際に、開発が始まった街を歩いてみると、殆どが空き地で、その一角に施設が建設され、賑わいを見せている。Decentralandの仮想都市は3Dゲームを彷彿させるグラフィックスで描写される。利用者はアバターとなり仮想都市を訪問する。市街地の中心部は「Genesis Plaza」と呼ばれ、ここに商業施設やイベント会場などがある(下の写真)。店舗や施設でデジタルグッズを購入することができる。また、他のアバターと会話することもできる。

出典: Decentraland

サザビーズが店舗を構える

Decentralandの仮想都市に大手企業が進出を始めた。イギリスのオークションハウス「サザビーズ(Sotheby’s)」はDecentralandに仮想店舗を設け事業を開始した(下の写真)。これはロンドンの店舗のデジタルツインで、外観だけでなく内部構造もリアル店舗の複製になっている。仮想店舗はデジタルアートを中心に作品を販売している。実際に、サザビーズ店舗で開催されたイベント「Natively Digital」が仮想店舗にライブで配信された。

出典: Decentraland

土地の購入

メタバースで土地を購入するには、”不動産会社”であるDecentralandを介すことになる。土地の基本ユニットはパーセル「Parcel」で、これが購買単位となる(下の写真、最小のマス目)。購入済みの土地は水色で示され、灰色の部分が購入可能な物件となる。支払いは暗号通貨「MANA」を使って決済される。また、土地はデジタルグッズであり、その所有権はNon-Fungible Tokens(NFT)で規定される。現実社会で土地を購入すると、売買契約を結び、不動産の登記をするが、メタバースではこのプロセスがNFTで実行される。土地の価格は場所により決まり、下記のParcel(赤色の四角)の購買価格は$10,290ドル。Parcelの大きさは16 x 16 メートルで、1平方メートル当たり$40.20となる。

出典: Decentraland

土地購買の仕組み

Decentralandは土地をブロックチェイン上に構成されるトークンと位置付ける。企業や消費者は、ここで土地というトークン「LAND」を購入する。土地はパーセル「Parcel」という単位で構成され、これが最小区画となる。複数の区画を纏めて購入し、これらをマージして私有地というトークン「Estate」を作ることもできる。決済はDecentralandが開発した独自の暗号通貨「MANA」で行われる。

Decentralandのシステム構造

Decentralandはブロックチェイン「Ethereum」で構築された仮想社会で、ここで土地売買や事業活動を行う。このプラットフォームで、土地を購入し、建物などを建設する。また、建設した店舗でデジタル商品を販売することもできる(下の写真、スポーツカー販売の事例)。更に、独自のアプリケーションを開発し、新しい事業を展開することも可能となる。

出典: Decentraland

トークンの種類

Decentralandは土地取引で三つのトークンを運用する:

  • MANA:Ethereumベースの暗号通貨で土地やグッズの購入で使われる。これは「Sidechain」と呼ばれる種類の暗号通貨で、Ethereumの機能を使ってDecentralandが独自に開発したもの。現在の交換レートは1 MANA = $2.94。
  • LAND:土地を表すトークン。
  • Estate:LANDをマージしたトークン。

トークンの中でLANDとEstateはNon-Fungible Token(NFT)で、これがデジタルアセットを所有している保証書となる。また、MANAはFungible Tokenで、暗号通貨として対等に交換することができる。

スマートコントラクト

土地やグッズの売買はEthereumのスマートコントラクト「Smart Contract」で規定される。これはEthereumのアプリケーションで、取引の手順を規定し、売買契約や所有権を規定する。更に、プラットフォームは、特定の団体で管理されるのではなく、利用者が共同で管理する仕組みとなる。これは「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」と呼ばれ、Decentralandは分散構造の自立型プラットフォームと区分される。

出典: Decentraland

注意事項

Decentralandを訪ねてみると、ここは3D仮想社会で、15年ほど前にブームになった「Second Life」を思い出す。インターフェイスは似ているが、Decentralandはブロックチェイン基板上のサービスで、システム構造が根本的に異なる。ここで、NFTなどトークンをベースとする商取引が始まり、新しい市場が生まれると期待されている。特に、コロナの感染拡大で在宅勤務が続く中、交流の場としてメタバースが注目されている。(上の写真、今年のニューイヤーのカウントダウンは、Decentralandの仮想タイムズスクエアで開催された。) ただし、メタバースでの土地取引は誰もが初めての経験で、実際に購入する際は、先進事例を参考に、ビジネスモデルを理解しながら進める必要がある。