月別アーカイブ: 2021年1月

Amazonはリストバンド「Halo」を投入、究極の健康管理ウエアラブルでAIが身体とメンタルの状態をモニター

Amazonは健康管理のウエアラブル「Amazon Halo」(下の写真)の出荷を開始した。これはリストバンドタイプのウエアラブルで、身体情報をモニターするセンサーとして機能する。ディスプレイは備えておらず、健康管理に特化したセンサーで、スマホアプリとペアで使う。実際に使ってみると、フィット感は良く、身体やメンタルの状態を把握でき、健康管理デバイスの新しい流れを感じる。

出典: Amazon

Amazon Haloの概要

Amazon Haloは右手または左手の手首に装着し、身体状態をモニターするために利用する。四つの機能を搭載しており、運動量、睡眠の質、声のトーン、及び、体脂肪率を計測する。計測したデータはスマホの専用アプリ「Amazon Halo App」に表示される(下の写真)。スマートウォッチではディスプレイに情報が表示されるが、Amazon Haloは健康管理センサーとしてデザインされ、最小限の機能だけを搭載している。価格は99.99ドルでAmazon Prime会員向けには74.99ドルで販売されている。Amazon Haloはサブスクリプション方式のデバイスで、月額3.99ドルの使用料金を支払う。

出典: Amazon / VentureClef

運動量をモニター

Amazon Haloは運動量をモニターし、体を動かした量をポイントで表示する(下の写真、左側)。一週間に150ポイントを得ることが目標で、その過程がグラフで表示される。1ポイントは1分間に中程度の運動をする量となる(右側)。中程度の運動とは、速足でのウォーキングやほうきで庭を掃除する程度の運動で、医療学会American Heart Associationは一週間に150分の運動を推奨している。Amazon Haloは加速度センサーと心拍数センサーで運動量を算定する。

出典: VentureClef

睡眠の質を測定

Amazon Haloは睡眠の状態を測定し、その質を100点満点のスコアで示す(下の写真、左側)。スコアは睡眠時間と睡眠内容を総合的に評価したもので、70点を下回ると対策が必要となる(右側)。スコアは睡眠時間の他に、寝入るまでの時間、ステージごとの時間、夜中に起きた回数などを加味する。睡眠のステージは「Hypnogram」と呼ばれ、Light、Deep、REMから成る。Lightは浅い眠りで、睡眠時間の半分を占める。Deepは深い眠りで、睡眠の前半に起こる。深い眠りの中で身体の細胞が修復され、健康維持に深くかかわるとされる。REM(Rapid Eye Movement)は脳が活動して覚醒状態にある眠りで、このステージで人は夢を見たり、記憶が整理される。このスコアで睡眠の状態を把握し、問題があればこれを改善する。ただ、睡眠の質は人により異なり、スコア以外に、朝起きた時の爽快感や日中の気分などが重要な指標となる。

出典: VentureClef

声のトーンを分析

Amazon Haloに搭載されたマイクが利用者の声を聞き、それをAIで解析して、声のトーンを把握する(下の写真、左側)。声のトーンとは言葉に含まれた感情で、四つに分類され、Amused、Content、Reserved、Displeasedとなる(右側)。Amusedは楽しい時の、Contentは満足した時の声のトーンとなる。Reservedは静かな状態で、Displeasedは怒った時の声のトーンとなる。実際に使ってみると、声のトーンを通じてメンタルの状態を把握できる。その日の気分を正確に把握するのは難しいが、Amazon Haloはこれを客観的に分析しグラフで提示する。また、Amazon Haloは会話の”鏡”として機能し、自分の声が相手にどのような印象を与えているのかを理解できる。この機能を使うには、事前に声を入力し、AIが本人を特定できるよう教育しておく。

出典: VentureClef

体脂肪率を推定

Amazon Haloは体脂肪(Body Fat)の割合を計測する(下の写真、左側)。スマホカメラで身体を撮影し(右側)、AIが画像を解析し脂肪量(Fat Mass)を推定する。体重については利用者が測定して入力する。これにより体脂肪率が分かる。

出典: Amazon

体脂肪率は健康管理に重要な指標で、この値が健康寿命や病気発症に関連する。体脂肪率が高いと心臓疾患や糖尿病の発症確率が上がる。体重は食事などで頻繁に変わるが、体脂肪量は変動が少なく、その変化が健康に大きく影響する。このため、二週間おきに体脂肪率を測定することを推奨している。体脂肪については、多くの測定法があるが、Amazon Haloはコンピュータビジョンと機械学習でイメージを解析する手法を取る。AIが体形から体脂肪を推定するが、病院での測定技術(Dual-Energy X-Ray Absorptiometryなど)と同等の精度であるとしている。

健康管理のコンテンツ

Amazon Haloは研究所「Labs」を運用しており、ここに健康管理のコンテンツを揃えている。コンテンツはワークアウトや睡眠の質を向上させるプログラムやマインドフルネスのレッスンなどから成る。ワークアウトは自宅でできるエクササイズが揃っており、ビデオでインストラクターの指示に従って体を動かす(下の写真)。ストレングス、カーディオ、ヨガ、バー(Barre、右側下段)の分野があり、目的に合ったプログラムを選択できる。バーとはバレエダンスに基づくワークアウトで、ハリウッドのセレブが行っていることで人気となった。Appleはフィットネスのための有料プログラム「Apple Fitness+」をスタートしたがAmazon Haloはこれに対抗する位置づけとなる。

出典: VentureClef

実際に使ってみると

左手にはApple Watchを着けているので、Amazon Haloは右手に装着して利用している。Apple Watchより一回り小型の形状で、着装感は軽く負担は感じない。デバイスを操作する必要はなく、Amazon Haloが自動で身体状態をモニターするので、ウエアラブルというよりはバイオセンサーを着装している感覚に近い。

一番驚かされたデータ

睡眠を分析した情報に一番驚かされた。日ごとに睡眠のスコアは大きく変わり、また、睡眠のパターンも一定ではない。よく眠れた日とそうでない日が明らかになり、今までは、感覚的に寝不足を感じていたことがデータで示される。次のステップとしては、上述のLabsに登録されているコンテンツを使って、睡眠の質を上げることになる。

リアルタイムで声のトーンを分析

Amazon Haloが分析する声のトーンも参考になる。普段の会話の声のトーンを把握し、次は、好感を持ってもらえる声のトーンにアップグレードするステップとなる。また、スピーチで好まれるしゃべり方を学習することもできる。Amazon Haloはリアルタイムで声のトーンを解析する機能もあり(下の写真、右側)、このツールとLabsに掲載されているレッスンを併用して声のトーンを改良する。

出典: VentureClef

バイオセンサー

Amazon Haloは人気のウェアラブル「Fitbit Tracker」からディスプレイを取り外した形で、リストバンド形状のバイオセンサーとしてデザインされている。センサーが収取するバイオデータをAIが解析し、健康管理のポイントをアドバイスをする。実際に使ってみると、健康管理のウエアラブルは生活に必須のデバイスであると感じ、これから需要が大きく伸びると思われる。できることなら、血圧や血糖値や酸素飽和度を測定する機能があれば健康維持に大きく寄与する。

IBMは大規模な量子コンピュータを開発、100万Qubit構成でエラー補正機構を備え最初の商用機となる

量子コンピュータの国際会議「Q2B」(#Q2B20)が開催され、IBMは研究開発の最新状況を公表した。2023年には新アーキテクチャに基づく量子コンピュータを投入し、現行スパコンの性能を遥かに超える。更に、このモデルをエンハンスし、最終的には100万Qubitを搭載する大規模システムを開発する。このシステムはエラー補正機構を搭載し大規模アプリケーションを稼働させることができる。この時点で量子コンピュータが完成し本格的な普及が始まることになる。

出典: IBM

開発ロードマップ

国際会議でIBMの企業提携責任者Anthony Annunziataが量子コンピュータの開発状況とアルゴリズム研究の最新状況を説明した。IBMは量子コンピュータ開発のロードマップを発表しており(下のグラフィックス)、100万Qubitを搭載するシステムの開発を進めている(下のグラフィックス、右端のモデル)。この量子コンピュータはエラー補正機構(Error Correction)を搭載しており、大規模なアプリケーションを稼働させることができる。

出典: IBM

量子プロセッサ開発状況

このゴールに向けて量子プロセッサの開発が進んでいる。現在は65Qubit構成のプロセッサ「Hummingbird」が稼働しているが、今年は127Qubit構成のプロセッサ「Eagle」が稼働する。更に、2022年には433Qubit構成のプロセッサ「Osprey」が登場する。世代ごとに技術改良が進み、小型化でエラー率の低いプロセッサが生まれる。

量子プロセッサ「Condor」

2023年には1,121Qubit構成のプロセッサ「Condor」(下の写真、Qubitがメッシュ状に結合される)が投入される。このモデルが大きなマイルストーンとなり、量子コンピュータが現行スパコンの性能を遥かに上回るポイント「Quantum Advantage」に到達する。このプロセッサは大型冷却装置(dilution refrigerator、先頭の写真)に格納され稼働する。これは「Goldeneye」と呼ばれ世界最大規模の冷却装置となる。

出典: IBM

100万Qubitマシン

100万Qubit構成の量子コンピュータはCondorがベースとなり、このプロセッサを数多く結合して構成する。具体的には、多数の大型冷却装置を高速通信(Intranets)で結び、単一の量子コンピュータを構成する。100万Qubitモデルは現行コンピュータのようにエラー補正機構を備えており、プログラムはエラー無く正常に稼働する。このため、大規模なアプリケーションを稼働させることができ、金融、化学、AIの分野で大きなブレークスルーがあると期待される。

NISQモデル

因みに、現在稼働している量子コンピュータはエラーを補正する機構は搭載しておらず、大規模な演算を実行することは難しい。この種類の量子コンピュータは「Noisy Intermediate-Scale Quantum (NISQ)」と呼ばれ、ノイズが高く(エラー率が高く)、中規模構成(50から100Qubit構成)のシステムとなる。大規模なアプリケーションを稼働させるためにはエラー補正機構が必須となる。

金融分野:JPMorgan Chase

IBMはハードウェアの開発と並行して企業連携を強化している。このプログラムは「IBM Quantum Network」と呼ばれ、IBMはパートナ企業と量子アルゴリズムの共同開発を進めている。金融分野では、JPMorgan Chaseは量子コンピュータでリスク解析やポートフォリオ最適化の研究を進めている。金融アプリケーションは量子コンピュータと相性が良く、最初にQuantum Advantageに到達すると見られている。

エネルギー分野:ExxonMobil

エネルギー分野ではExxonMobilと共同研究を進めている。ExxonMobilは量子コンピュータを使ったシミュレーションで新たなマテリアルを開発する。地球温暖化対策として二酸化炭素回収(Carbon Capture)のための新素材を開発している。(下の写真、IBMとExxonMobilの研究者は共同で量子熱力学(Quantum thermodynamics)の研究を進めている。)

出典: IBM

航空分野:Boeing

航空分野ではBoeingがIBMの量子コンピュータクラウド「IBM Quantum Experience」を使って航空機の開発を進めている。特に、機体に採用する新素材の評価や試験を量子コンピュータで実行する。現在は実験を通じてこのプロセスを実行しているが、これを量子コンピュータでシミュレーションすることで開発期間を大幅に短縮できると期待している。

開発は着実に進む

世界の主要企業は量子コンピュータを使ってアルゴリズム開発を進めている。量子コンピュータ導入に向けた準備が必要であるが、本当にシステムが稼働し性能が出るのかについて疑問を抱いている企業は少なくない。このため、IBMは敢えて量子コンピュータのロードマップを公表し、企業の先行投資を保証する形となった。IBMの説明を聞くと、量子コンピュータはハイプではなく、システム完成への道のりが見え、開発が着実に進んでいるとの印象を受けた。