月別アーカイブ: 2020年1月

GoogleはAIの品質保証書「Model Cards」を公開、アルゴリズムの機能と性能と限界を明確にする

社会にAIが幅広く浸透し日々の生活で利用されているが、消費者はAIの機能を理解しないまま使っている。AIは万全ではなく、顔認識で誤認したり、クレジットカード審査で女性が不利になることが報告されている。GoogleはAIの概要を明示する必要があるとして、アルゴリズムの中身を消費者に開示するシステムを開発した。

出典: Google

AIの品質証明書

これは「Model Cards」と呼ばれ、ここにアルゴリズムの機能や性能や限界が記載される。Model CardsはAIの品質保証書とも解釈でき、ここにAIの成績と欠点が書かれ、これを利用者や開発者に公開する。消費者はこれを読み、アルゴリズムの機能と限界を知り、AIを安全に利用する。

犬の種別を見分ける

例えば、ある企業が犬の種別を見分けるAIを開発し、それを販売したとする。Model CardsにはAIに関する基本情報が記載される(上のグラフィックス、イメージ)。これがAIの使用説明書となり、AIの特性を理解し適切に利用する。犬のどんな写真を使うとAIが正しく判定できるのかが分かる。大写しの写真や小さな写真ではAIが正しく判定できないことも理解できる。

Model Card:機能概要の説明

Googleは実際に、顔認識(Face Detection) AIのModel Cardsを公開した(下の写真)。ここには基本機能(Model Description)として、AIの概要が記述される(左側)。AIは認識した顔を四角の枠で囲って示すとの説明がある。また、顔の中で最大34のポイント(Landmark)を認識できるとしている。更に、ニューラルネットワークは「MobileNet」という種類で、軽量のイメージ判定AIであることが分かる。

出典: Google

Model Card:アルゴリズムの限界

Model CardsはAI機能の限界についても記載している。顔の向き(Facial Orientation)の限界を表示し、これを超えると検知できないとしている。また、顔の大きさ(Face Size)が小さすぎると検知できないとしている。具体的には、瞳孔間の距離(Pupillary distance)が10ピクセル以下だと検知できない。他に、暗い場所、顔が隠れている場合、顔が動いている場合は検知できないと注意を喚起している。

Model Card:精度の説明

Model CardsはAIの判定精度についても説明している。精度は「Precision-Recall Values」をプロットしたグラフで示される(上の写真右側)。また、グラフはベンチマークで使用したデータ種類ごとに示され、ここでは三種類のデータセットを使った結果が示されている。Precisionとは顔と認識したケースの精度で、Recallとは写真の顔をどれだけ漏れなく認識できたかを示す指標となる。つまり、Recallを見ると特定グループ(肌の色や性別の集団)の精度が分かり、これにより性別や人種によるバイアスがあるかどうかを検証できる。

出典: Margaret Mitchell et al.

業界で規格化を目指す

医薬品を買うと薬の効能や副作用や注意点が記載された説明書が添付されている。消費者はこれを読んで薬を安全に服用する。同様に、AIを使うときも消費者は説明書(上の写真、笑顔を検知するAIの説明書の事例)を読んで安全に利用する必要がある。これはGoogleが開発したAIだけでなく、他社が開発したAIにも適用することが求められる。このため、GoogleはModel Cardsを第一歩として、業界や開発者団体と共同で、この方式を規格化し普及させることを計画している。アルゴリズムの説明責任が求められる中、この活動がどこに向かうのか注視していく必要がある。

Alphabetは解体されムーンショットは終了か、Googleは激変の年を迎える

Alphabetは2019年12月、創業者のLarry PageとSergey Brinが役職を退き、Sundar Pichaiがこれを引き継ぐことを発表した。PichaiがAlphabetのCEOとなり、Googleを含むすべての経営を掌握する。これまで、PageはAlphabetのCEOとしてムーンショット「Other Bets」を育成してきた。今回の発表でPichaiがAlphabetの経営を担い、ムーンショットを継続するのか、その判断に関心が集まっている。

出典: VentureClef

Alphabetの設立

そもそもAlphabetとは、コア事業体「Google」と新規事業「Other Bets」を統括する親会社で、Other Betsの財政状況をクリアにするため、2015年10月に設立された。PageがCEOに就任し、同時に、PichaiがGoogleのCEOとなった。これにより、PageがAlphabetで次世代ビジネスを育成し、Pichaiが検索などのコア事業を運営する構造となった。

ムーンショットの概要

今回の発表でPageはAlphabetのCEOを退き、Pichaiがその後を引き継ぎ、ムーショットを運営する。Alphabetが設立されてから4年余りで大きな節目を迎えた。Alphabetで野心的な研究開発が進んでいるがこのプロジェクトをムーンショットと呼ぶ。「Waymo」は自動運転車を開発する会社で、既に、無人タクシーの営業運行を始めている。「Calico」は老化のメカニズムの研究を進め、老化を止める医療技術の開発を目指している。「Verily」はヘルスケア企業で、人体をデジタルに把握し健康を定義する。「Sidewalk Labs」はスマートシティを開発する企業でカナダで大規模な事業を進めている。「X」はMoonshot Factoryとも呼ばれ、文字通り革新的な技術を生み出す(下の写真、Xのオフィスビル。Xの他にWaymoやロボット開発チームが入居している)。

出典: VentureClef

組織見直しの理由は

なぜこのタイミングでAlphabet責任者がPageからPichaiに代わるのか、シリコンバレーで様々な憶測が流れている。CNBCはPageの健康問題が要因との見方を示している。Pageは声帯に異常があり大きな声が出ないという障害があり、ビジネスの一線から退いたと説明している。New York Timeは、Pageは会社経営には関心がなく、革新技術を探求するために会社を去ったとの見解を示している。Recodeは、公開されていな重大な出来事が起こり、Pageがこの職をPichaiに移譲したと推測している。どのメディアも真相を把握できておらず、謎に満ちた交代となった。

実質的に引退した状態

この発表とは別に、既に、Googleの顔はPichaiとなっている。PageはGoogle I/Oなどの公の場に姿を見せることはなく、その存在感は薄くなっている。最近では、Alphabet社内にも姿を見せなくなったといわれ、Pageの経営への関与も縮んでいる。事実、連邦議会委員会に出席を求められたが、Pageは出向くことはなく、空席のまま公聴会が進んだ。Pageは事実上、引退している状態であった。

Pichaiの評価

一方、PichaiはGoogleの顔となり、実質的に会社運営を担ってきた。Pichaiの評判は良好で、物静かで控えめなキャラクターと評価されている。Pichaiは本当のギークと評され、技術者の立場から企業運営を担っている。PichaiはしばしばMicrosoft CEOのSatya Nadellaと比較される。両者ともインド出身のアメリカ人で、カリスマ創業者の後を継ぎ、企業文化を保ちながら、うまく事業を拡大している。

ムーンショットの評価

Alphabetが設立され四年余りが経過するが、ムーンショットの成果が問われている。ムーンショットは毎年、大規模な赤字を計上しており、2018年度は34億ドルの損失となった。投資家やウォールストリートはAlphabetが大きな損失を出していることに厳しい見方を示している。Alphabetを閉じコア事業である検索にリソースを集約すべきとの意見が多い。これに対し、PageはGoogleの成長を維持するには新規事業を起こすことが必須であると主張しOther Betsの盾となってきた。

ムーンショットの行方は

PichaiはAlphabetの経営を任され、ムーンショットの運営についてどのような判断を下すのか、市場の関心が集まっている。このままプロジェクトを継続するのか、それとも、中止するのか、重大な決断が下されることになる。ただ、PageとBrinは役職を退いても、両者で株主総会の議決権の56%を有しており、今度は株主として会社経営に関与する。そのため、Pichaiの経営判断はPageの承認を仰ぐことになり、ムーンショットの路線が大きく変わることはないとの見方もある。事実、Waymoは事業開始直前で、ムーンショットの成功事例となる。投資家の視点は短いが、Googleの業績は好調で、その利益をどれだけムーンショットに投入するのか、このバランスが問われることになる。

出典: VentureClef

Googleは新本社を建設中

Googleは本社キャンパスに隣接して新社屋を建設している(上の写真)。外観は今にも飛び立とうとする宇宙船のようにも見え、人目を惹くデザインとなっている。この社屋のテーマは次世代ビルで、この巨大なドームの中に柔軟構造のオフィスビルが建設される。ドームの透明の天蓋で外光や外気を取り入れ、周囲には歩道や緑地が整備される。今年は本社ビルも変わることになる。