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Facebookが連邦政府公聴会で証言、米国が暗号通貨Libraを規制すると中国が世界の金融システムを支配する

Facebookは発行を計画している暗号通貨Libraについて米国連邦議会で証言した。上院と下院の委員会で議員の質問にFacebookが回答する形式で進み、LibraとFacebookについて厳しい意見が相次いだ。Facebookは議会の理解を得るまではLibraを発行しないと明言したが、同時に、米国がデジタル通貨の開発を制限すると中国が金融システムを支配すると警告した。

出典: U.S. Senate Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs  

米国連邦議会の公聴会

暗号通貨Libraに関し各国政府や金融機関の懸念が広がる中、米国連邦議会は2019年7月16日と17日の両日、公聴会を開催しLibra責任者であるDavid Marcusに証言を求めた(上の写真)。上院銀行委員会(Senate Banking Committee)と下院金融委員会(House Financial Services Committee)で議員からFacebookの姿勢とLibraの安全性が厳しく問われた。質疑応答を通して、Libraの概要が明らかになり、また、議会が問題視しているポイントが明確になった。(公聴会の様子は各委員会がウェブサイトに公開している。)

米国がデジタル通貨のルールを制定

Libraという新しい金融サービスに各国政府が戸惑っている中、Facebookは米国が世界に先駆けデジタル通貨に関する指針を示すことが必要との見解を示した。また、Libra Association(Libraの運営組織)をスイスに設立した理由は、米国政府の規制を逃れるためではなく、世界の金融組織がここに集まっているためであると説明した。

Libraのビジネスモデル

FacebookはLibraを運営してどう事業を構築するのか、そのビジネスモデルを説明した。Facebookは27億人の会員があり、9000万社がFacebook上で事業を展開している。企業がこれら会員を対象に事業を展開し、買い物の支払いにLibraが使われると事業規模が拡大する。これにより、企業はFacebookに広告を掲載し、広告収入が増えると見込んでいる。これが当面の事業計画であるが、その後は銀行などと提携し金融サービスの提供を検討している。

Facebookの信用問題

FacebookはCambridge Analyticaによる個人データの不正使用に関し50億ドルの制裁金を米連邦取引委員会(Federal Trade Commission)に支払うことで合意した。議員からFacebookが個人情報管理という問題を解決できないまま、なぜ暗号通貨という難しい事業に手を出すのか厳しく問われた。Libraはどのように個人情報を守るのかについて質問が集中した。

個人情報はCalibraに留まる

これに対しFacebookはCalibraで収集したデータをFacebookが共有することはないと回答。CalibraとはFacebookの子会社で同名のデジタルワレット(下の写真)を運用する。多くのデジタルワレットが登場する予定で、Facebookはその一社にすぎず、他社とともに責任をもって運営される。具体的には、消費者がFacebookでCalibraを使って買い物をすると、会員データや購買データはCalibraが管理する。Calibraは別会社でこれらデータはFacebookに渡ることはなく、Libraのトランザクション情報をFacebookが広告などに使うことはないと説明した。

出典: Calibra  

Libraを使った不正送金

委員会のLibraに関する懸念はLibraが不正送金の手段となるという点に集中している。公聴会に先立ち、連邦準備制度理事会(FRB)議長Jerome Powellもこの懸念を表明している。米国政府はイランや北朝鮮に経済制裁を科しているが、Libraによる送金手段がその抜け道になると懸念されている。また、テロリストや麻薬密売などでLibraが使われる可能性も指摘された。既に、Bitcoinのトランザクションの殆どがマネーロンダリングで使われているとの報告もあり、FacebookはLibraを使った不正送金をどう防ぐかが問われた。

Facebookがやらないと中国が手掛ける

Facebookは、米国政府がこれらの問題を回避するためLibraを規制すると暗号通貨の開発が停滞し、別の勢力(固有名称は示されなかったが中国を指す)が暗号通貨を開発し、世界に二つの金融ネットワークが造られると警告した。インターネットが二種類存在すると世界が混乱するように、金融ネットワークが二種類誕生すると経済の発展が阻害される。そもそもブロックチェインでのトランザクションを金融当局は管理できないため、その上で稼働するアプリケーションであるLibraを正しく規制し、世界の基軸ネットワークとすべきと主張した。

出典: Calibra  

Facebookが通貨を発行すべきでない

公聴会に先立ち、トランプ大統領はBitcoinやLibraについて批判的な見解をツイートしている。Bitcoinなど暗号通貨は本当のお金ではないとし、Libraは仮想通貨であり、Facebookが銀行になりたいなら認可(Banking Charter)を受けるべきとの見解を示した。議員からもなぜFacebookがデジタル通貨を発行するのかとの質問が出された。

Libraは通貨ではなく送金手段

これに対してFacebookは、多くの懸念があることを見越して事前にLibraホワイトペーパーを発行した。関係機関がLibraに関する懸念を払しょくするまではFacebookは暗号通貨事業を始めないことを明言した。更に、Libraは通貨ではなく送金手段であることを改めて説明した。海外送金では通常7%の手数料がかかり、3-4日の時間を必要とするが、Libraは無料で即時に送金できる。インターネット上で少額資金を送金する構想は早くから議論されてきたが、Libraがこれを始めて実現したと説明した。

Facebookの警告

Facebookは米国で暗号通貨の開発が停滞すると中国が金融ネットワークを支配すると警告し、Libra事業を進める意義を強調した。これはFacebookの脅しであるが、同時に、世界の情勢でもある。中国の中央銀行である中国人民銀行(People’s Bank of China)はLibraを注視しており、Libraが成功すると世界の金融システムに重大な影響を及ぼすと発言している。

世界で暗号通貨の開発が進む

中国人民銀行はBitcoinなど暗号通貨の研究でトップを走り、Libraに対抗する技術を開発するとみられている。また、カナダやノルウェーやスェーデンなども中央銀行が暗号通貨の開発を進めているとの報告もあり、主要国で暗号通貨が運営される日は遠くない。もう後戻りすることはできず、今までに経験したことのない技術に対し、消費者保護とイノベーションのバランスを取った規制が求められる。

Facebookは暗号通貨Libraを投入、Bitcoinとは異なり世界が注目する理由

Facebookの暗号通貨「Libra」が世界で波紋を起こしている。同じ暗号通貨でもBitcoinは投機目的に使われ値動きが激しい。Libraは暗号通貨の欠点を改良し、金融決済に使うことを目的としてデザインされている。Bitcoinは資金洗浄やハッキングを連想させ暗いイメージがあるが、Libraは暗号通貨の優等生を目指す。Libraが幅広く普及すると予測され、FacebookはSNSの次は金融ネットワークで世界を制覇すると恐れられている。

出典: The Libra Association

Libraとは

Facebookは2019年6月、暗号通貨(Cryptocurrency)である「Libra」を発表した。LibraはGenova(スイス)に拠点を置く独立団体「Libra Association」により運営される。ここにはFacebook子会社「Calibra」の他にMastercardやPayPalなど28団体が加盟している(上の写真)。現在、ソフトウェア「Libra Core」の開発が進められ、2020年からLibraの運用が始まる。

Libra設立の目的

FacebookはLibraを創設した理由を「Reinvent Money」としている。お金を取引するインフラをゼロから開発し、メッセージを送受信するように、簡単に送金できる仕組みを作る。国を跨り送金するには時間と手数料がかかるがこのプロセスを簡便にする。また、金融インフラの整っていない途上国でLibraがその役割を担う。

Libraの特徴

Libraは暗号通貨で独自のブロックチェイン「Libra Blockchain」で運営される。暗号通貨はデジタル通貨(Digital Currency)の一種でブロックチェインで安全に運用される。ブロックチェインとはP2Pネットワークで、トランザクションデータを各ノードに保存し、論理上データを改ざんすることは不可能で、不正行為ができないとされる。Bitcoinは不特定多数の団体や個人がノードを運営するが、Libraは上述の参加企業がノードを管理する構造で、セキュアに運用できる仕組みとなっている。

Stablecoinという特性

Libraの最大の特徴は暗号通貨の中でも「Stablecoin」としてデザインされていることだ。Stablecoinとは価格変動を最小限に抑えた暗号通貨で、Libraのケースでは通貨でその価値を裏付けする(Fiat-Backed Stablecoin)。具体的には、消費者がLibraを購入すると、発行元(Libra Association)はそれと同額の通貨を購入する。通貨はドルや円など主要通貨で、これをバスケット(Libra Reserve)に入れて運用する。この仕組みによりLibraの価値を長期にわたり保つことができ、交換レートが大きく変動することはないとされる。

Libraの使い方

Libraはスマホのデジタルワレットから利用する。多くのアプリが登場するが、Facebookからは「Calibra Wallet」というデジタルワレットが提供される(下の写真)。アプリには残高(163.20LBR)や、ドルとの換算レート(1 LBR = 1.0493 USD)が表示される。送金するには相手のアドレスと金額をドルで指定する。メッセージを添えて「Send Now」ボタンを押すと送金される。送金手数料は無料となる。 

出典: The Libra Association

Libra利用のプロセス

Libraを使って買い物をするとその背後でプロセスは次のように進む。まず、LibraはLibra Associationによって生成(Mint)される。Libra AssociationはLibraを生成できる唯一の組織で、それを再販企業(Reseller)を通じて流通させる。消費者はデジタルワレット(Facebookの場合はCalibra)をダウンロードしてLibraを使う。消費者は上述の再販企業からLibraを購入する。

出典: The Libra Association

これで消費者はオンラインサイト加盟店でLibraを使って買い物ができる。例えば、eBayで買い物をしてその代金をLibraで支払うことができる。一方、eBayは受け取ったLibraを再販企業でドルに交換する。更に、再販企業はLibra AssociationでLibraを通貨に交換すると、Libra AssociationはLibraを廃棄(Burn)し、一連のプロセスが終了する。

Libra Blockchainとは

Libraは独自のブロックチェイン(Libra Blockchain)で運用される。Libra Blockchainは当初は「Permissioned」方式で運用される。これは、特定団体(このケースではLibra Association)がネットワークへのアクセスや運用を制御する方式を指す。また、ネットワークのノード(Node)はLibra Association創設メンバーにより運用される。つまり、ブロックチェインであるが、その運用は参加企業に限られ、閉じられたネットワークとなる。

Bitcoinとの違い

一方、Bitcoinは「Bitcoin Foundation」が基本方針を決めるが、その運営は分散型で中央組織が制御する方式はとっていない。Bitcoinは「Deflationary Currency」という特性を持ち、生成されるBitcoinの量が次第に少なくなり、発行量は2100万Bitcoinで打ち止めとなる。一方、Libraは需要と供給により発行される量が決まる。また、Bitcoinは「Permissionless」というアーキテクチャで、誰でも自由にMinerになりMiningできる。Minerがネットワークのノードを維持運営するわけで、不特定多数の個人や団体がシステムを支える。Libraは当初はPermissioned方式で運営するが、将来はPermissionless方式に移行するとしている。

Internet of Money

このようにBitcoinと比較するとLibraの特性が際立つ。Libraは暗号通貨であるが閉じたネットワーク(Libra Blockchain)でシステムへのアクセスを制限し安全に運用される。また、Libra Reserveという方式で、発行されたLibraの価値がドルや円などで支えられ値動きが安定する。Bitcoinは値動きが激しく投機目的で使われるが、Libraは少額決済(Micro Transaction)を目的に安定した運用を目指す。インターネットでデータが自由に行き交うが、Libraは通貨でこれを実現し、Internet of Moneyとなることを目標に設計された。

AIが女性の服を脱がせる:GANが写真からヌードイメージを生成、リベンジポルノへの悪用が懸念される

AIの暴走が止まらない。女性の写真を入力するとAIが服を脱がせてしまう。これは「DeepNude」というアプリで、AIが写真を服を脱いだヌードイメージに変換する。女性を標的にしたアプリで、リベンジポルノとして使われると深刻な被害が予想される。また、セレブの偽ヌード写真を生成でき、個人の肖像権が著しく侵害される。フェイクイメージを取り締まる法整備が進むが、SNS企業はこれを拡散させない対策が求められる。

出典: DeepNude  

DeepNudeとは

このアプリは匿名の技術者により開発され、DeepNudeホームページ(上の写真)に掲載されていた。アプリをダウンロードして使うことができたが、社会に及ぼす問題の重大性が認識され、このサイトは閉鎖された。アプリは女性の写真を読み込み、服の部分を肌に変換し、全身のヌードイメージを生成する。アプリは無償版と有償版(50ドル)があり、後者を使うと全身が裸になる。

本当にヌードイメージが生成されるのか

このサイトは閉鎖されたが、既に多くのメディアがこのアプリを試し、その結果を公表している。生成されるヌードイメージの出来栄えは入力する写真により大きく変わる。被写体に光があたり鮮明に映っている場合は極めてリアルなヌードイメージが生成される。一方、入力する写真の解像度が低い場合は生成されるイメージにノイズがのる。また、被写体が暗い場合や正面から撮影されていない場合は、全くイメージが生成されない。なお、このアプリは女性のヌードイメージだけを生成する。男性の写真を入力しても女性のイメージが生成される。

アルゴリズムの制約

これらから、アルゴリズムは女性の写真だけで教育されていることが分かる。男性のヌード写真は使われていないが、興味の対象外であることに加え、インターネットでこれらの写真は少なく、教育データの整備が難しいことも理由となる。更に、教育データの件数は多くなく、特定条件の写真(正面から鮮明に撮影した写真)だけを処理できる。DeepNudeはベータ版という印象を受けるが、AI開発が進むと被害が拡大することになる。

アルゴリズムの仕組み

このアプリは「Image-to-Image Translation with Conditional Adversarial Networks」という研究成果を使っている。これはBerkeley AI Research (BAIR) Laboratoryが公表した論文で、入力したイメージを異なるイメージに変換するAI技法である。研究チームはこの成果をソフトウェア「pix2pix」として公開している。pix2pixはGenerative Adversarial Networks(GAN)の手法を使い、入力されたイメージを指定されたイメージに変換する。例えば、靴のスケッチをpix2pixに入力すると靴の写真が生成される(下の写真、GANの仕組み)。

出典: Phillip Isola et al.

イメージ変換の応用事例

pix2pixの特徴は同じアルゴリズムを異なるモデルで使えることで、応用分野は広く様々な操作ができる。例えば、ラベル付けされた道路イメージを道路の写真に変換する (下の写真、左側上段)。また、航空写真を地図に変換するプロセスでも利用される(左側下段)。更に、白黒写真をカラー写真に(右側上段)、昼間の写真を夜の写真に(中央下段)、夏の写真を冬の写真に変換することができる。

出典: Phillip Isola et al.

DeepNudeへの応用

DeepNudeもこのイメージ変換の技法を使った事例となる。DeepNudeは上述の通り、GANを女性のヌード写真で教育した。これ以上の説明はないが、ヌード写真の一部をマスクし、GANはマスクしたヌード写真から元の写真を生成できるよう教育されたものと思われる。元の写真がGround Truthとなり、GANはマスクされた部分(服の部分)を元の写真(肌の部分)に変換する技法を習得し、全身のヌードイメージを生成する。

社会的影響の大きさ

このアプリは軽い娯楽として開発されたのかもしれないが、想定外に重大な問題を内包している。特定の女性を攻撃するためにこのアプリが悪用されると社会に与える影響は重大である。男性が女性に復讐するためにDeepNudeを使うと、写真をヌードイメージに変換し、偽のリベンジポルノが生成される。また、組織が女性活動家の行動を制限するためにDeepNudeを使う可能性も否定できない。前述の通り、セレブのフェイクヌードが拡散し個人の尊厳が脅かされる。

既にフェイクビデオが拡散

既に、DeepFakesで生成されたフェイクビデオがネットで拡散し社会問題となっている。最近では、 ZuckerbergのフェイクビデオがInstagramに公開された(下の写真)。本物と見分けのつかない偽のZuckerbergがデータの独占について語る仕組みとなっている。Facebookはサイトからフェイクビデオを削除しないことを表明しており、開発者はこの指針に抗議するためこのフェイクビデオを投稿した。

出典: bill_posters_uk@Instagram

フェイクビデオをどう取り締まるか

DeepFakesやDeepNudeへの対策が喫緊の課題となっている。米国連邦議会はDeepFakesによるフェイクビデオの流通を制限する法案「DEEP FAKES Accountability Act」を作成した。一方、DARPAはフェイクビデオを検知する技術の開発を進めているがまだ目立った成果は出ていない。このため、フェイクビデオを取り締まるためには、DeepFakesやDeepNudeの開発者が同時に、偽コンテンツの識別技術も開発する必要があるとの議論が進んでいる。更に、Facebookなどのプラットフォームはフェイクビデオの拡散を防ぐ技術を確立することが求められている。

DeepNude改良版

DeepNudeのサイトは閉鎖され問題は沈静化に向かうように見えるが、既にパンドラの箱は開けられ、元に戻ることはできない。DeepNudeに代わるアプリが開発されていることは明らかで、GANを強化し完成度の高いヌードイメージを生成するアプリが登場することが予想される。今度は、攻撃されるのは女性だけでなく、男性も対象となり、新たな問題が生まれる。

AppleがDrive.aiを買収:名門自動運転車ベンチャー挫折の理由は?スタートアップの淘汰が始まる

Appleは2019年6月、自動運転車ベンチャー「Drive.ai」を買収した。地元の新聞San Francisco Chronicleなどが報道した。この買収はAcqui-Hire(採用目的の買収)で、AppleはDrive.aiの有力開発者を雇い入れた。Appleは自動運転車を開発しているが、この買収で開発体制が強化される。Drive.aiはAI研究の第一人者Andrew Ngが指揮を執り、革新的な自動運転技術が登場すると期待されたが、予想に反し目立った成果を出せなかった。

出典: Drive.ai  

Drive.aiとは

Drive.aiはシリコンバレーに拠点を置くベンチャー企業で、社名の通りAIを基軸に自動運転技術を開発していた。Drive.aiはスタンフォード大学AI研究所(Stanford AI Lab)の研究者が創設し、Andrew Ngが会長として指揮を執っていた。Drive.aiはステルスモードでの開発を終え、2018年7月からは、テキサス州で実証実験を開始した。ちなみに、Drive.ai共同創業者のCarol ReileyはAndrew Ngの奥様である。

開発コンセプト

Drive.aiは業界最先端のAIとDeep Learningを使って自動運転技術を開発した。AIが周囲のオブジェクトを見分け、また、AIが人間の運転テクニックを見るだけで学習する。しかし、この方式で安全なクルマを開発できないことが分かり、基本設計の見直しを迫られた。車両はミニバン「Nissan NV200」を使用し(先頭の写真)、ここにセンサー(Lidar、カメラ、レーダー)を搭載し、制御機構にRobot Operating System (ROS、ロボットや自動運転車制御ソフト)を採用した。つまり、自動運転の定番技術をオープンソースで実装するというアプローチを取った。

インターフェイス

また、自動運転車と人間のインターフェイスを確立することで、安全性を高めるデザインとした。クルマは前後にディスプレイを搭載しシステムの意思を表示する。横断歩道では歩行者に「Waiting for You to Cross」と表示し安心してクルマの前を歩けるデザインとした(下の写真)。

出典: Drive.ai  

テキサス州での実証試験

Drive.aiはテキサス州フレスコ市と提携して自動運転車の実証試験を進めた。オフィス街で定められた経路を走行する自動運転シャトルとして運行した。また、テキサス州アーリントン市と提携しシャトルサービスを展開した。クルマは固定のルートを走り、市街地とスポーツ施設(AT&T Stadium、Dallas Cowboysのスタジアム)の間で輸送サービスを展開した(下の写真)。

実証実験は終了

Drive.aiは今年に入り会社の買い手を探していたといわれている。当初、Drive.aiは自動運転技術をすべてAIで実装するという高度な技術に挑戦していた。その後、オープンソースベースの自動運転技術を開発し、上述の通り、バスのように固定ルートを走行する自動運転車として運行を始めた。しかし、この実証実験は終了となり、Drive.aiの自動運転技術が注目されることはなかった。

出典: Drive.ai  

Appleの自動運転車開発

Appleは自動運転車を開発しているがその内容はベールに包まれている。開発プロジェクトは「Project Titan」と呼ばれ、2014年から始まり、2016年にはその規模が縮小された。同じ年に、Appleは中国大手ライドシェア 「Didi Chuxing (滴滴出行)」に10億ドル出資している。その後、Appleは自動運転車開発を再開し、今では大規模な体制でこれを進めている。事実、カリフォルニア州で自動運転車の走行試験を実施しているが、車両台数は55台と破格に多い。

お洒落で滑らかなクルマ

Appleが開発するクルマは自動運転機能だけでなく、乗り心地のいいデザインになるといわれている。Appleがダッシュボードやシートを設計し、また、フルアクティブサスペンション(Fully Actuated Suspension)を搭載することでショックを吸収し滑らかな走りができる。しかし、Appleがクルマを開発するのか、それとも、自動運転技術をメーカーに供給するのかなど、ビジネスモデルは見えてない。

バブルと淘汰

Drive.aiが開発を中止したことは自動運転車技術の難易度の高さを示している。固定ルートを無人で走行するレベルのクルマはできるが、市街地を自由に走れる自動運転車の開発は異次元の難しさがある。Drive.aiはピボットするのが早かったが、事業停止の見極めも早かった。いまカリフォルニア州で60社が路上で自動運転車の走行試験を進めている。自動運転バブルともいえる状況で、これから新興企業の淘汰が始まることになる。

植物ハンバーガーが全米に広がる、本物の味と変わらない代替たんぱく質の製造がアメリカの食文化を支える

ハンバーガーはタバコと同じ程度に不健康といわれてきたがその流れが変わった。大手ハンバーガーチェインBurger Kingは植物由来のハンバーガー「Impossible Whopper」(下の写真)の販売を開始した。これはシリコンバレーのベンチャー企業Impossible Foodsが開発したベジバーガーで、健康食品であるとともに、食べると本物の味と変わらない。いまアメリカの食文化と食品産業が大きく変わろうとしている。

出典: Burger King  

ベジバーガーの販売が始まる

大手ハンバーガーチェインBurger Kingは今月からサンフランシスコ地区で植物由来のハンバーガー「Impossible Whopper」の販売を始めた。Burger Kingはこの商品を「Made from Plants(植物由来)」と説明し、健康なハンバーガーとして大々的にプロモーションを展開している。屋外にはImpossible Whopperの大型ポスターが掲げられ、店内にはメニュー中央に大きく表示されていた(下の写真)。

実際に食べてみると

早速食べてみたが本当に肉の味がして美味しかった。Impossible Whopperは大型ハンバーガーで、バンズにミートパティ、トマト、レタス、オニオンなどがのっている。パティは網焼きされ、中はピンク色でみずみずしいはずであるが、少し焼きすぎた感があった。しかし、食べると肉の味と変わらず、通常のハンバーガー「Whopper」と見分けはつかない。植物由来のハンバーガーの中で一番おいしいと感じた。

出典: VentureClef  

高級レストランから大衆レストランへ

Impossible Burgerは2016年に販売が始まり、2019年1月にはその改良版「Impossible Burger 2.0」の出荷が始まった。改良版は味が良くなり、パティの中身がジューシーになり、また、塩分と脂肪分が少なくより健康な食品となった。今までは高級レストラン向けに提供されてきたが(下の写真、美味しかったが価格は20ドルと高い)、今年からBurger Kingが取り扱うことになり、Impossible Burgerが庶民の食べ物となった。Impossible Whopperの価格は6.49ドルで、通常のバーガーより1ドル高いが手頃の値段で食べられる。消費者の反応は良好でImpossible Burgerが全米に普及する勢いとなってきた。

出典: VentureClef  

Impossible Foodsとは

Impossible FoodsはRedwood City(カリフォルニア州)に拠点を置くベンチャー企業で合成生物学の手法でハンバーガーを生成する。スタンフォード大学教授が起業した会社でGV (Google Ventures) やBill Gatesなどが出資している。Impossible Burgerは本物のハンバーガーの構成要素をリバースエンジニアリングして開発された。

何故肉の味を出せるのか

Impossible Burgerが肉の味を出せる秘密は「Heme」という素材にある。Hemeとは血液中のヘモグロビンの色素を構成する物質で濃い赤色の液体(下の写真、手前の容器に入っている液体)。Plant Bloodとも呼ばれ、これをパティに加えると牛肉の色になり、焼くと薄赤色の肉汁となる。Hemeがハンバーガーの味を決める一番重要な材料で、合成生物学の手法(酵母DNAを編集し糖を発酵させる手法、AIやロボティックスが使われる)で生成される。

出典: New Food Economy

製造施設を拡充

Impossible FoodsはパイロットプログラムでImpossible Burgerを生産してきたが、2017年にOakland(カリフォルニア州)工場を開設し量産体制に入った。これによりImpossible Burgerを供給するレストランの数を増やしBurger Kingに供給を始めた。ただ、これでも需要に十分応えることができず生産量の拡大が課題となっている。

Beyond Foodsのハンバーガー

これに先立ち、ファストフードレストラン大手Carl’s Jr.がBeyond Foodsが開発した植物由来のハンバーガーの販売を開始した。これは「Beyond Famous Star」と命名され全米で販売を展開している。消費者が健康な食品を求めるなか、Carl’s Jr.は植物由来のハンバーガーの提供に踏み切った。

アメリカの食文化を支える

ベジバーガーはスーパーマーケットで多種類が販売されているが食べてみて美味しい商品は無い。ここにハイテクを使った植物由来のハンバーガーが登場し、その味が消費者を引き付けている。多くの人は健康に配慮してハンバーガーを食べるのを控えてきたが、Impossible WhopperやBeyond Famous Starの登場で、再びアメリカの味を楽しめるようになった。合成生物学で生成される代替たんぱく質がアメリカの食文化を支えている。