スタンフォード大学は今年の「AI Index Report」を公開、米国と中国の技術差が急速に狭まる、米国市民はAIに脅威を感じAI規制を求める

スタンフォード大学はAIに関する総合報告書「AI Index Report」の最新版を公開した。報告書はAIを追跡調査したもので、豊富なデータに裏付けられ、AI動向を理解するためのバイブルとなる。2025年は、AI技術が脅威的なスピードで進み、同時に、米国と中国の技術ギャップが狭まった。米国市民はAIにネガティブなイメージを持ち、AI規制求めているという実態が明らかになった。

出典: Stanford HAI

AI Index Reportとは

AI報告書「AI Index Report」はスタンフォード大学AI研究部門「Stanford Institute for Human-Centered AI (HAI)」が編纂したもので、AIに関する包括的な情報を集約している。報告書は、AIに関するデータを収集し、それらを蒸留・可視化したもので、最新のAI動向をビジュアルに理解できる。レポートは年次報告書で2025年のAI動向が公開された。

グローバルAI開発競争

AI開発では米国が世界をリードしてるが、中国がこれを激しく追い上げている。主要AIモデルの開発件数は、米国は50で中国は30とそのギャップが縮まっている。一方、欧州のAI開発は停滞気味で、2025年は2つのAIモデルが開発された。

出典: Stanford HAI

米中間の技術格差

AI開発で中国は米国を追い上げ技術格差が縮まった。米国がAI技術で世界をリードしているが、中国は2025年にDeepSeekで急接近した。その後、ギャップが広がるが、2026年は米国と中国の差は僅かで、技術進化は並列状態で進行している。

出典: Stanford HAI

シンセティック・データ

インターネット上にAIで生成したシンセティック・データ(Synthetic Data)が急速に増えている。2022年3月にChatGPTがリリースされ、これを契機にAIで生成したデータがインターネットに掲載され始めた。その勢いは急で、2025年にはシンセティック・データデの割合(51.72%)が人間が生成したデータの割合(48.28%)を超えた。2026年にはシンセティック・データの割合が大きく増えると予測され、コンテンツ生成で人間の役割が低下する。

出典: Stanford HAI

AIプロセッサ

Nvidia GPUがAI開発における主軸プロセッサとして使われているが、Google TPUがシェアを伸ばしている。AIプロセッサで開発されたモデルの数を見ると技術進化が鮮明になる。2025年は、Nvidia GPU A100が圧倒的なシェアを持つが、次世代モデルH100が立ち上がった。2026年は、最新モデルがB100の導入が進むことになる2024年は、GoogleのAIプロセッサTPU v3がシェアを伸ばし、2025年は最新モデルTPU v4が立ち上がった。

出典: Stanford HAI

責任あるAI開発

責任あるAI開発体制や技法を「Responsible AI(RAI)」と呼ぶ。RAIへの取り組みは地域により大きく異なり、アジア・パシフィック地区が責任あるAI開発で世界をリードしている。これに、欧州、南米が続き、北米が最も出遅れている。アジア・パシフィック圏の国々はAIの安全性やセキュリティを重視する政策を取る。

出典: Stanford HAI

AI規制法と標準規格

AI開発・運用ではAI規制法に準拠することが求めらる。また、標準規格に準拠して安全なAIシステムを開発する動きが広がっている。AI規制法ではGDPRとEU AI Actが最も影響を与えている。標準規格ではISO/IEC 420001とNIST AI Risk Management Frameworkが参照されている。標準規格はAI開発のガイドラインで法令で規制されているわけでは無いが、多くの企業や団体が自主的に導入している実態が明らかになった。

出典: Stanford HAI

各国政府のAIセーフティ組織

主要国政府は「AI Safety Institute(AISI)」を設立しAIの安全性を担保する活動を展開している。英国、米国、日本、シンガポール、イスラエルがコアメンバーとして活躍している。これに続き、インド、フランス、韓国、ドイツ、ブラジルなどがAISIを設立した。AISIはAIモデルの安全性を検証するなど、政府におけるAIセーフティのコア組織となる。

出典: Stanford HAI

国際協調の実態

AIガバナンスにおいて国際社会で枠組みが制定され参加国が増えている。安全なAIを開発するために、OECD、G20、G7、非営利団体がAIガバナンスのメカニズムを構築し、国際社会で活動を拡大している(下のテーブル、一部)。2025年はフランスで「AI Summit」が開催され100を超える国々が参加し国際協調が広がっている。

出典: Stanford HAI

米国のAI規制法

米国連邦政府はAI開発の障害となるAI規制法を撤廃し、イノベーションを推進する政策を取る。連邦政府レベルのAI規制法は殆ど無く、これに代わり州政府がAIを規制する法令を制定している。カリフォルニア州は2025年までに62の法令を制定し、連邦政府に代わりAIを安全に開発運用する政策をリードしている。

出典: Stanford HAI

AIセンティメント

AIに対し期待と不安に関するセンティメントは国ごとに大きな相違がある。米国は期待は低く、不安が高く、AIをネガティブに評価する。日本は、AI対し不安感を抱いていないが、同時に期待度も大きくない。一方、中国は世界の中で最もAIをポジティブに評価している。

出典: Stanford HAI

AI反対運動

AI開発やAIガバナンスは国により多くな相違があることが示された。米国はAI技術で世界をリードしているが、中国との差は極めて小さい。米国市民はAIをネガティブに捉え、AIへの不安感が高い。実際に、米国内でAI反対運動や抗議活動が拡大している。生活に深刻な影響を与えるAIについて、連邦政府にAI規制を求める声が高まっている。