コロナ社会で安全に生活するには、感染者を把握し、拡大を防ぐことが必須条件となる。このためPCR検査を定期的に実施し、感染状態を把握し、コロナの封じ込めを試みている。感染者の特定には時間がかかるため、PCR検査に代わりウェアラブルで病気を把握する研究が始まった。ウェアラブルで被験者の動きをモニターし、収集したビッグデータをAIで解析し、発病前に感染の有無を判定する。

出典: Evidation Health |
研究プロジェクト
これは米国政府の新型コロナに関する先進研究で、シリコンバレーの新興企業Evidation Healthが手掛けている。Evidation Healthはウェアラブルで被験者のデータを収集し、それを機械学習の手法で解析し、感染したことを判定する。研究資金は米国生物医学先端研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority)とビル&メリンダ・ゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation)はから拠出され、研究成果は一般に公開される。
Evidation Healthとは
Evidation Healthは医療分野におけるAI企業で、身体のビッグデータを機械学習の手法で解析し、新たな知見を得る研究を進めている。新型コロナの研究では同社のプラットフォーム「Achievement platform」でデータ解析が実行される(下の写真)。これは医療ビッグデータを解析するためのプラットフォームで、被験者から採取したデータをアルゴリズムで解析するための様々な機能を備えている。医療機関はこのプラットフォームを利用して新しいアルゴリズムやそソフトウェアを開発する。例えば、薬に対する反応を把握し、患者に最適な治療法を確立することが可能となる。

出典: Evidation Health |
新型コロナ感染を検知
この研究では300人の被験者から健康に関するデータを収集し、このプラットフォームで解析する。具体的には、ウェアラブルで睡眠状態や活動状態などの挙動に関するデータを収集し、また、被験者は健康状態を定期的にレポートする。対象者はコロナ患者を治療する医療従事者などで、感染リスクが高いグループの協力を得て進められる。
倫理的にデータを収集
この研究では4YouandMeが被験者のデータを収集するプロセスを担う。4YouandMeは非営利団体で、医療データの収集を倫理的に実行する。個人データはスマホとスマートリング「Oura Ring」(下の写真)で収取され、これらは匿名化して解析される。スマートリングは、心拍数、体温、活動状態、睡眠状態をモニターする。更に、被験者は毎日、健康状態に関する質問票に回答する。調査期間は最大6か月で、収集されたデータはEvidation Healthのプラットフォームで解析される。この研究ではアルゴリズムの検知精度がカギで、このためには大量の高品質なデータの採取が必須となる。
Oura Ringとは
Oura Ringはフィンランドの新興企業Oura Healthが開発したスマートリングで健康管理のために使われている。Jack Dorsey(Twitter創業者)やMarc Benioff(Salesforce創業者)などシリコンバレーの著名人が使っていることで有名になった。また、プロスポーツではNBA(男子プロバスケットボールリーグ)がOura Ringを使って選手の健康状態を管理することを発表した。シーズンが再開し、選手は定期的に体温測定やPCR検査を受けるが、Oura Ringを併用することで体調の異常を早期に検知する。

出典: Oura Health |
スマートウォッチでコロナを検知
コロナと共棲する社会では常に感染のリスクがあり、これをリアルタイムに検知し、アウトブレークを抑え込むことが求められる。感染をウェアラブルで検知できれば、コロナ社会での安全対策の効率が格段に向上する。このため、スマートウォッチを使ってコロナ感染を検知する研究も始まった。スタンフォード大学はApple WatchやFitbitなどを使い、心拍数などのデータをAIで解析し感染者を特定する研究を進めている。
オフィス再開と東京オリンピック
在宅勤務が終わり、これから社員がオフィスに戻るが、コロナ感染をどう検知するかが問われている。この切り札がウェアラブルで、社員の感染を症状が出る前にキャッチして、隔離措置を取る。更に、2021年は、コロナの中でオリンピックが開催されるが、選手を感染から守るためにも、感染をリアルタイムで検知するツールが求められる。コロナに感染すると、スマホやスマートウォッチに警告メッセージを表示することが可能となるのか、ウェアラブルとAIを組み合わせてコロナを検知する技法に期待が集まっている。