General Motors(GM)は買収したCruiseを核に、サンフランシスコを拠点に自動運転車を開発している。Chevy Bolt EVをベースにしたモデルで、Lidar、カメラ、レーダーを搭載し自動で走行する(下の写真)。5年間にわたり開発を進め自動運転技術が大きく進化している。込み合った市街地で走行するため高度なAI技術を開発し、クルマや歩行者の動きを高精度で予測する。

出典: Cruise |
無人車両で試験運転
Cruiseはサンフランシスコにおいてドライバーが搭乗しない無人車両で走行試験を実施することを発表した。2020年第四四半期の決算発表でCruise CEOのDan Ammannが明らかにした。Ammannによると、Cruiseは2020年に9億ドルを投じて開発を進め、自動運転技術が大きく進展し、複雑な市街地において無人走行試験ができるレベルに達した。
無人ライドシェア
GMの会長兼CEOであるMary BarraはCruiseの事業戦略について明らかにした。Cruiseの出荷時期については明言を避けたが、数年先ではなく、近いうちにリリースできるとの見通しを示した。また、自動運転車のビジネスモデルはロボタクシーで、無人のライドシェアとして事業を構築する。Uberのようなライドシェアであるが、ドライバーは搭乗しないで無人の車両が乗客を運ぶ。Cruiseは既にライドシェアアプリを開発しており、他社と提携しないで独自で事業を運営する。
無人走行試験の概要
Cruiseはドライバーが搭乗しないで試験走行するが、助手席にはセーフティドオペレータが搭乗する。クルマが危険な状態になると、セーフティオペレータがクルマを安全に停止させる。しかし、ステアリング操作などはしないで最小限の介在にとどめる。最終的にはセーフティドオペレータも搭乗しないで、無人車両で試験運転を実行する。これに先立ち、CruiseはDMV(カリフォルニア州陸運局)より無人で試験走行するための認可を得ている。

出典: Cruise |
走行試験の実績
Cruiseはサンフランシスコで5年にわたり走行試験を続け、累計で200万マイル走行した。これはすべてEVで実施され、地球温暖化ガスは発生していない。Cruiseはサンフランシスコでの走行試験をビデオで公開し、複雑な市街地を安全に走行できることをアピールしている。Cruiseは、込み合った道や夜間の走行など、クルマにとって一番厳しい条件で開発を進めている。ここをクリアできれば全米の全ての都市で運行できることになる。
AIによる推論機能
自動運転車の開発でカギを握る技術は認識したオブジェクトの次の動きを予測すること。周囲のクルマや歩行者の次の動きを機械学習の手法で予測する。機械学習は一般的なケースだけでなく、特異な動きをするケースも予測する。例えば、前のクルマが右に膨らんで走ると(下の写真、左側)、AIはこのクルマはUターンすると推論する(右側、緑色の線)。人間も経験を積んでこれを学ぶが、サンフランシスコのような込み合った市街地の走行では高度な推論機能が必須となる。

出典: Cruise |
Cruise Origin
これに先立ち、Cruiseは2020年1月、EV自動運転車「Cruise Origin」(下の写真)を発表した。これはワゴン形状の自動運転車で、ライドシェアを目的に開発された。ドアはスライド式で、車内は二人掛けのシートが対面して設置される。Cruise OriginはZooxに対抗する製品として位置付けられる。

出典: Cruise |
自動車メーカーの逆襲
今年に入り、サンフランシスコで無人車両の試験運転が一斉に始まった。Zooxはワゴン形状の自動運転車で、無人ライドシェアの試験走行を開始した。また、Waymoはフェニックスの次の都市をサンフランシスコとし、ここで無人タクシーの営業運転を始める。これらハイテク企業に対し、大手メーカーのGMはCruiseを核に生き残りをかけて開発を加速している。