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Microsoftはコロナ終息後の勤務形態をハイブリッドと予想する、多くの企業はこれに対応できないと警告

米国でワクチン接種が進み、多くの企業がオフィスを再開し、社員が職場に戻りつつある。Microsoftはリモートワークの実態を調査し、コロナ終息後の勤務形態について提言した。これによると、企業も社員もハイブリッド勤務を望んでおり、これが標準勤務形態となるとの見通しを示した。同時に、会社幹部と社員の間でリモートワークに関する認識のギャップが大きく、これがハイブリッド勤務の最大の課題になると警告した。

出典: VentureClef

リモートワーク評価レポート

Microsoftは2021年3月、勤務実態の動向を分析した報告書「The Next Great Disruption Is Hybrid Work – Are We Ready?」を公開した。コロナの感染拡大で企業がリモートワークに移行したが、3万人を対象に、コラボレーションツール(Microsoft 365やLinkedIn)のデータを元に、遠隔勤務の実態について分析した。更に、コロナ終息後の勤務体形について提言を行った。

報告書の要旨

このレポートによると、オフィスが再開されると勤務形態はハイブリッドになり、これが標準形態として定着する。ハイブリッド勤務になると、社員は勤務時間が柔軟になり、居住地の制約がなくなる。その一方で、社員やチームが孤立し、仕事における人的ネットワークを構築することが難しくなる。特に、若い社員はリモートワークに上手く対応できてなく、今年は転職者の数が激増するとしている。会社はこの環境の変化に迅速に対処する必要があり、人事管理の手法が劇的に変わる。

会社も社員もハイブリッド勤務を好む

調査した社員の73%がハイブリッド勤務を希望しており、また、企業の66%がこの形態に移行すると答えている。社員も企業もハイブリッドを好み、コロナ終息後はこの方式が定着すると予想する。ハイブリッド勤務となると、企業はオフィス環境を整備する必要があると考える。従来のオフィスは仕事の効率を追求した構造となっているが、これからは社員が快適に過ごせるスペースとしてデザインする必要がある。

管理職は社員の苦労を理解していない

社員は1年近くリモートワークを続け、仕事の重圧や孤立感を感じている。また、遠隔勤務に必要なネットワーク環境が整っていない社員も少なくない。更に、社員の多くが、仕事が順調に進んでいないとプレッシャーを感じている(下のグラフ)。特に、独身社員の67%が、また新入社員の64%が、仕事が順調ではないと答え、若い世代でこの傾向が顕著に表れている。これに対し、幹部社員の61%は、リモートワークはうまくいき、仕事の効率があがっていると評価している。また、多くの幹部社員は在宅勤務の社員は会社に多くを求めすぎると思っている。幹部社員は在宅勤務社員の困窮の状況を正しく認識していない実態が明らかになった。

出典: Microsoft

仕事の効率が上がっているのは社員の残業による

幹部社員はリモートワークで仕事の効率が上がっていると評価するが、これは社員の”残業”によるものであるとの実態が明らかになった。多くの社員はリモートワークで生産性が同じか、または、向上したと答えている。同時に、出社勤務に比べて仕事時間が増えたと答えている。これを裏付けるデータとして、Microsoftはコラボレーションツールのデータ量を公開した(下のグラフ)。これによると、都市のロックダウンで仕事が在宅勤務になると、出社勤務に比べ、会議の時間が148%増加し(グラフ上段)、チャット件数が45%増加した(グラフ下段)。リモートワークで仕事の量が増えていることがデータで示された。このため、社員の54%が過労であると感じており、生産性が上がった理由は社員の仕事時間の増加によることが明らかとなった。

出典: Microsoft

人のネットワークがしぼむ

リモートワークのもう一つの問題点は、社員やグループが孤立し、人的ネットワークが縮小したことにある(下のグラフ、社員同士のつながりの強さを示したもの)。遠隔勤務ではコラボレーションツールを使って仕事をするが、同じ部門内ではコミュニケーションの量が増え、メンバー同士のつながりが強くなった(緑色のグラフ)。しかし、部門を超えたコミュニケーションは低下し、人のネットワークが縮小した(青色のグラフ)。これにより、部門間の協調性が低下し、生産性やイノベーションの創出に影響が出る。しかし、ハイブリッド勤務に移行すると社員が出社する機会が増え、部門間のコミュニケーションが増え、再び人的ネットワークが広がると期待している。

出典: Microsoft

企業がなすべきこと

Microsoftはハイブリッド勤務では企業のカルチャーが重要になると指摘する。職場は仕事をするためのスペースだけでなく、社員が交流するための場となる。このため、オフィス空間は社員が快適に過ごせるようリモデルする。また、社員同士の交流を促進するプログラムの導入が必要となる。リモートワークでの孤立感を職場で解消することに加え、社員にとって会社が魅力的な環境となるよう企業カルチャーを育むことが求められる。

ポストコロナの勤務形態

実際に、シリコンバレーの企業は在宅勤務で無人となったオフィスのリモデルを進めている。あちこちで工事が行われ、ポストコロナのオフィス勤務に備えている。また、スタートアップを中心に社員の交流イベントが実施されてきたが、ハイブリッド勤務ではこれがより重要となる。夏を過ぎるとオフィスを再開する企業が多く、社員は今までとは全く異なる環境で仕事をすることになる。

Googleは今週からオフィスを再開、社員はリモートワークを終了しハイブリッド勤務となる

Googleは4月1日からオフィスを再開し、一部の社員はリモートワークを終え、会社に戻り始めた。9月1日からは全社員がハイブリッド勤務となり、週三日オフィスに出勤する勤務体系となる。社員はワクチン接種が求められ、また、オフィスはリモデルされ、安全を担保しての勤務となる。Facebookは無期限で在宅勤務を続けるが、Googleは人間同士のつながりを重視し、出社勤務が基本パターンとなる。

出典: VentureClef

オフィスを再開

Googleはコロナの感染拡大とともにいち早く勤務形態をリモートワークとしたが、コロナの終息が視野に入る中、他社に先駆けて4月1日にオフィスを再開した。希望する社員はオフィスに出社して勤務できる。オフィスはリモデリングされ、感染防止対策が取られた。また、社員はワクチン接種が求められ、安全を考慮したうえでのオフィス勤務となる。

コロナ後の勤務形態

9月1日からは、新しい勤務体系となり、全ての社員はハイブリッドで仕事をする。週三日が出勤日で、社員は改装されたオフィスに出社して、従来のように対面で仕事をする。これが基本形態で、年間14日を超えて在宅勤務を希望する社員は要望書を会社に提出する。認可されれば在宅勤務を継続できるが、必要に応じて、出社を求めることがあるとしている。コロナ終息後は、Googleはハイブリッド勤務で事業を進めることが明らかになった。(下の写真、建設中の本社ビルで今年中にオープンする予定。また、Googleは本社周辺のオフィスビルの買収を進めている。リモートワークで余った物件を買い進めオフィススペースを拡大中。)

勤務地と給与

ハイブリッド勤務になると居住地についての制限はないが、Googleは社員が住んでいる地域の物価に合わせて給与を調整するとしている。郊外の物価が安い街に住むと生活費の負担が減るが、それに合わせて給与が下がることになる。このため、Googleは多くの社員がシリコンバレーに戻ってくるとみている。まだ在宅勤務が続いているが、シリコンバレーを離れ地方都市で暮らしている社員は少なくない。

出典: VentureClef

出社勤務に戻す理由

Google最高経営責任者Sundar Pichaiは、当初から、リモートワークにおける仕事の効率や生産性について疑問視していた。リモートワークではチームワークの形成が難しく、特に、新製品開発でイノベーションが求められるが、遠隔ではやりにくい。また、在宅勤務では製品情報など社内の機密情報が外部に流出する危険性も含んでいる。このため、Googleは社員を会社勤務に戻すが、柔軟な勤務方式も維持し、週2日は在宅勤務を認める。

社員の勤務形態に関する嗜好

社員はリモートワークに魅力を感じるとともに、在宅勤務では仕事の限界を感じ、オンラインでのコミュニケーションでストレスが蓄積している。完全在宅勤務を選択する社員の割合は少なく、柔軟なワークスタイルを維持できるハイブリッド勤務を求めている。

Facebookなど

一方、FacebookやTwitterなどはコロナが終息しても、無期限で在宅勤務を続けるとしている。希望する社員はオフィス勤務に戻ることができるが、リモートワークが勤務体系の基本パターンとなる。また、社員は居住地を自由に選ぶことができ、環境がいい郊外に引っ越しできる。Facebookの狙いは人事採用にあり、リモートワークに移行することで、北米で幅広く優秀な人材を雇い入れることを目論んでいる。

シリコンバレーから人が流出

このように、社員が居住地を自由に選べるようになり、シリコンバレーから人が流出している。UC BerkeleyとUCLAの研究組織California Policy Labによると、2020年はサンフランシスコから流出する人の数が前年と比べ30%増加した。一方、人口流入はコロナ以前と同じレベルで、結果として、2020年は流出人口が増えた年となった。(下のマップ、2020年第四四半期の人口流出の割合を示している。赤色の部分が人口流出が多い地域。)。

出典: California Policy Lab

ポストコロナの勤務形態

米国はコロナの感染者数が世界最悪のレベルにあるが、バイデン政権になり感染者数が急速に減少し、ワクチン接種が急ピッチで進んでいる。このペースで行くと夏までに国民の大部分がワクチン接種を完了すると予想されている。コロナ終息が視野に入る中、IT企業はオフィスを再開し始めた。多くの企業がハイブリッド勤務を選んでおり、ポストコロナの勤務形態が見えてきた。ただ、ハイブリッド勤務は今までに経験したことのないワークスタイルで、これから各社は試行錯誤しながら最適なモデルを生み出すことになる。