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Facebookは創設以来最大の危機に直面、安全より利益を選択、アルゴリズムが有害な情報を配信し閲覧数を増やす

Facebookは創業以来最大の危機に直面している。Facebookの内部告発者がアメリカ連邦議会公聴会で証言し、アルゴリズムの危険性を訴えた。Facebookは有害情報を発信すると閲覧回数が増えることを理解しており、利用者の安全を犠牲に利益を上げる手法を選択したと証言。一方、Facebookは、この解釈は正しくなく、アルゴリズムの改良で有害記事が減り、友人や家族からの記事が増えたと反論。連邦政府は、アルゴリズムの公開も含め、ソーシャルメディアに関するルールを制定する方向に動き始めた。

出典: C-SPAN

アメリカ連邦議会公聴会

10月5日、アメリカ連邦議会上院の公聴会「Senate Commerce Subcommittee on Consumer Protection」で元Facebook社員であるFrances HaugenがFacebookのビジネス手法について証言した(上の写真)。公聴会はインターネットから子供を守ることを目的に開催され、Haugenは、FacebookはInstagramが子供の健康を害していることを把握しているが、企業の利益を優先して有害なコンテンツを送り続けていると証言。このビジネス慣行は容認できるものではなく、ソーシャルネットワークを規制する法令の制定を訴えた。Haugenは議員からの質問に答える形で、Facebookの技術内容を説明し、子供をターゲットとする手法やアルゴリズムの概要などを明らかにした。

内部告発の背景

HaugenはFacebookでProduct Managerとしてアルゴリズムの開発に従事してきた。Haugenは退社する前に、大量の内部資料をコピーして報道機関Wall Street Journalに提供し、同紙がこれをベースに告発記事を書き、Facebookの問題が表面化した。更に、これら内部資料は米国証券取引委員会と米国連邦議会に提出されている。Haugenの証言はこれら大量の社内データに基づき、Facebookのビジネス慣行の詳細が明らかになった。

Instagramは少女に有害

HaugenはInstagramが若い女性に有害である点を中心に証言した。Facebookは内部調査でInstagramが子供の健康を害することを把握しているが、この事実を隠匿し、有害なコンテンツの配信を続けていると指摘した。具体的には、英国における調査で、女性ティーンエイジャーの13.5%はInstagramを使い始めてから自殺を考えるようになった、という問題が明らかになった。また、別の調査で、女性ティーンエイジャーの17%はInstagramを使い始めてから摂食障害を引き起こしたことも判明。更に、身体の容姿にコンプレックスがある少女の32%は、Instagramを見ると精神状態が悪化したことも報告されている。

出典: Instagram

アルゴリズムの危険性

これらの問題はコンテンツを配信するロジックを規定するアルゴリズムにある。Facebookはアルゴリズムを使って読者に最適なコンテンツを配信する方式を取る。このアルゴリズムは「Engagement Based Ranking」と呼ばれ、どのような内容のコンテンツを配信するかを決定する。Facebookは友人や家族間でコミュニケーションが増進するコンテンツを配信する方式を採用している。これは「Meaningful Social Interactions(MSI)」と呼ばれ、読者がコンテンツに対してリアクションするものを優先して配信する。具体的には、読者がクリックしたり、いいねボタンを押したり、他者と共有するコンテンツを配信する。アルゴリズムは読者がどんどんシェアしてくれるコンテンツを中心に配信する。

アルゴリズムの評価

つまり、アルゴリズムはMeaningful Social Interactions(MSI指標)が向上するよう設定されている。実際には、Facebookでは多数のアルゴリズムが稼働しており、それぞれのアルゴリズムの設定を変更して、コンテンツがシェアされる回数が増えるように調整される。アルゴリズムでMSI指標を上げると、より多くのコンテンツがシェアされ、ページビューが向上し、収益が上がる構造となる。つまり、FacebookとしてはMSI指標を向上することが究極のゴールで、これにより事業が拡大し収益があがる。

ヘイトスピーチが増える

しかし、Facebookは内部調査で、MSI指標を上げると、その副作用として、ヘイトスピーチや偽情報や暴力を扇動するコンテンツが増えるという事実を把握した。アルゴリズムがこれら有害なコンテンツを配信すると、利用者のインタラクションが増え、その結果MSI指標が向上する。利用者の観点からは、有害なコンテンツに惹きつけられ、これらをシェアする回数が増え、ソーシャルネットワークで拡散することになる。アルゴリズムが有害コンテンツの拡散機となることを意味する。

出典: Facebook

安全より利益を選択

Facebookはこれらの事実を把握していたにも拘わらず、これを隠匿してMSI指標を高めてきた。MSI指標を上げると利用者に有害なコンテンツが配信され危険であるが、企業としてはページビューが増え広告収入が増える。つまり、Facebookは危険性を隠匿し、利用者の安全より企業の収益を優先させることを選択した。

AIが未熟

同時に、Facebookはヘイトスピーチなど有害なコンテンツをAIで検知し、これらを削除する研究を進めているが、技術は未熟でこれらを正確に検知することができない。2021年の夏に、Facebookはコロナウイルスに関する偽情報をAIでフィルタリングする試験を実施した。その結果、検知精度は80%から90%で、多くのコンテンツがフィルターをすり抜けた。このAIは英語のコンテンツを対象とし、他の言語には対応できていない。

出典: Facebook

Facebookの反論

公聴会での証言を受けて、Mark Zuckerbergはメッセージを発信し、Haugenの主張は間違っていると反論した。議論の核心はFacebookが安全より利益を優先しているとの主張で、これは完全に間違いだと述べている。具体的には、FacebookはMSI指標を導入したが、その結果有害ビデオ(Viral Videos)が減り、友人や家族からのコンテンツが増えたと説明。また、Facebookは意図的に有害コンテンツを拡散しているとの主張に対し、Facebookは広告でビジネスを構築しており、企業は有害コンテンツには広告を掲載しないと反論した。Instagramに関しては、子供たちにスマホが普及しており、これを制限するのではなく、子供たちのニーズに沿って安全な機能を提供することがFacebookの役割と説明した。

ルールの制定

Haugenは公聴会で証言した目的は議会にソーシャルメディアに関するルールの設定を促すためと述べている。同様に、ZuckerbergはFacebookのような企業がコンテンツ選別に関す決定を下すのではなく、政府が法令を改定して新しい時代に沿ったルールを制定すべきと発言している。HaugenもZuckerbergも政府がソーシャルネットワークを規制する法令を制定すべきという点では共通の理解を持っている。

Facebookの転機

早くからソーシャルネットワークの危険性が指摘されてきたが、Haugenによる証言でアルゴリズムなどシステムの詳細が明らかになり、Facebookの問題の本質が見えてきた。Facebookはソーシャルネットワークでトップのシェアを持つが、利用者数は伸び悩み事業拡大が難しくなっている。Facebookは有害コンテンツの拡散を押さえ、事業を拡大するという難しいかじ取りを迫られる。

Facebookはお洒落なスマートグラスを発表、Ray-Banサングラスにカメラを実装、ARグラスに向けた第一歩

Facebookはスマートグラス「Ray-Ban Stories」を発表した(下の写真)。これはFacebookが開発した最初のスマートグラスで、お洒落なデザインとなっている。Ray-Banサングラスにテクノロジーを実装したもので、ファッションに軸足を置く構成となっている。スマートグラスは二台のカメラを搭載し、利用者の視点で写真やビデオを撮影する。FacebookはARグラスの開発を進めており、Ray-Ban Storiesがそれに向けた第一歩となる。

出典: Facebook

Ray-Ban Storiesの概要

Ray-Ban Storiesはサングラスに二台のカメラを組み込んだ構造で、写真やビデオを撮影できる。スピーカーとマイクが搭載され、音楽を聴き、また、電話をかけることもできる。価格は299ドルからでRay-Banのサイトで購入する。これはFacebookがEssilorLuxottica(Ray-Banの親会社)と共同開発しもので、米国など六か国で販売が始まった。

カメラと利用方法

スマートグラスはリムの両端に5MPのカメラを搭載している(下の写真)。カメラは利用者の目線で撮影し、日常生活の瞬間(Moments)をとらえるために使われる。撮影するときは右側テンプルに設置されたボタンを押すか、ボイスコマンドを発行する。スマートグラスはAI音声認識機能を備えており、「Hey Facebook, take a video」と語りかけるとビデオ撮影が始まる。写真やビデオを撮影しているときはカメラの隣に搭載されているLEDライトが点灯する。これにより周囲の人はカメラが稼働していることが分かり、プライバシー保護に配慮した設計となっている。

出典: Facebook  

アプリとの連携

スマートグラスは専用アプリ「Facebook View」と連携して利用する。撮影した写真やビデオはアプリに格納され(下の写真左側)、それを編集してオリジナルなコンテンツを生成する(中央)。生成したコンテンツはFacebookやInstagramやWhatsAppなどソーシャルネットワークと共有することができる(右側)。自社ネットワークだけでなく、Twitter、TikTok、Snapchatと共有することができる。

出典: Facebook  

Ray-Banのモデル

スマートグラスはRay-Banのモデル「Wayfarer」、「Round」、「Meteor」から構成される。Wayfarerはクラッシックなデザイン(下の写真)で、オードリーヘップバーン(Audrey Hepburn)が映画「ティファニーで朝食を」(Breakfast at Tiffany’s)で使い有名になった。今では歌手のマドンナ(Madonna)などが愛用し、このスタイルが再びブームになっている。Ray-Banと言えばバイデン大統領が愛用している「Aviator」を連想するが、若い世代にはあまり好まれないようである。

出典: Facebook  

プロセッサなど

スマートグラスは二台のマイクロスピーカーと三台のマイクを搭載している。マイクは特定方向のサウンドをエンハンスする機能(Beamforming Technology)や背景音をキャンセルする機能を持ち、クリアなサウンドを生成することができる。また、テンプルの部分がタッチパネルになっており、指で触って操作する。スマートグラスは専用プロセッサ「Snapdragon」を搭載しており、これらのデバイスをサングラスに組み込んだデザインとなる。

Facebook Reality Labs

スマートグラスはFacebook Reality Labsで開発された。Facebook Reality Labsとは拡張現実(AR)と仮想現実(VR)を研究開発することをミッションとし(下のグラフィックス)、Ray-Ban StoriesはそのAR部門で開発された。VR部門はOculusを核とする組織で、VRヘッドセットを開発している。最新モデルは「Oculus Quest 2」で、PCとの連携を必要としないスタンドアロン型VRヘッドセットとして販売が始まった。

出典: Facebook  

ARグラス

AR部門は既にAR グラスのプロトタイプ「Aria」を開発した。これは研究開発用のAR グラスで、カメラとディスプレイを搭載し、目の前のオブジェクトを把握するだけでなく、そこにテキストやグラフィックスをインポーズし、現実社会と仮想社会を融合させる。Facebook 社員はAria を着装して施設内や市街地を歩き、グラスのカメラで目の前のシーンを記録し、ARグラス向けのマップを制作している。ARグラス商用版に向けた開発が進んでいるが、Ray-Ban Storiesがその第一歩となる。

出典: Facebook  

バイデン政権は極右団体による国内テロとの戦いを表明、米国市民の多くがQanonなどの陰謀説を信じている

トランプ前大統領の支持者がアメリカ連邦議会に乱入した事件は米国社会の分断を象徴する事象となった(下の写真)。事件の背景には、米国市民の1/3がQanonなどの陰謀説を信じているという事実がある。この襲撃事件に触発され、一版市民が過激化し、極右団体に加わっている。このため、アメリカ合衆国国土安全保障省は、極右団体による国内テロが発生する危険性があるとして、警戒情報を発令した。過去10年はイスラム過激派組織によるテロとの戦いであったが、これからの10年は極右団体による国内テロとの戦いになる。

出典: CNN

トランプ前大統領と極右思想

トランプ前大統領と極右思想は密接な関係にある。極右思想の代表がQanonで、政治的な陰謀論(Conspiracy Theory)として米国社会に幅広く浸透している。一部の極右団体がこれを信奉するだけでなく、社会の中で大きな存在感を示している。トランプ前大統領がQanonを擁護し、Qanonは前大統領を政敵から守ってきた。また、連邦議会議員の中にもQanon支持者が存在する。下院議員Marjorie Taylor Greeneはその代表で、Qanon有権者を取り込み、当選を果たした。

Qanonとは

Qanonは「Q」と「anon」から成る造語で、「Q」は連邦政府のトップレベルのセキュリティ保持者で、「anon」はAnonymous(匿名の人物)を意味する。連邦政府高官が匿名で、トランプ政権転覆を企てる団体「Deep State」を排除することを目的とする。Deep Stateはエリート集団で、暗黒団体「Cabal」の指示のもと活動する。Cabalのメンバーにはオペラ・ウインフリーやジョージ・ソロスがいるとされる。これら影の人物がトランプ政権の転覆を企て、それをQanonが防衛するという荒唐無稽なストーリーとなる。(下の写真左側、活動家はQanonのシンボルマーク「Q」を身についている。)

出典: Los Angeles Times / Stripes

危険思想

このような事実は無く、Qanonが陰謀論と言われる所以である。Qanon信奉者はこの教義に基づき活動し、ヘイトスピーチや暴力行為に及び、政治や社会を脅かす。FBIはQanonを過激思想集団と位置付け、社会に脅威をもたらすとして警戒を続けている。Qanonはバイデン大統領の就任式を攻撃するとして、厳戒態勢の元で式典が実行された。また、ハリス副大統領は有色の女性であり、Qanonの標的にされている。(上の写真右側、「Q Sent Me」とはQanonに忠誠を誓うという意味。)

極右団体の活動が活発になる

Qanonの他に、多くの極右団体が活動を展開し、米国社会を不安定にしている。トランプ大統領の就任以降、米国では極右団体の活動が活発になっている。今までは、極右団体の活動は抑制されてきたが、2016年の大統領選挙で、トランプ氏が人種差別や外国人排除や女性軽視の発言を繰り返し、これが極右団体の活動を容認するものと受け止められ、これらの活動が一気に表面化した。

主な極右団体

極右団体の代表が「Proud Boys」で、白人至上主義で反イスラム教を掲げ、武器を携行して活動する。「III%er」はThree Percenters(上位3%の愛国者)と呼ばれ、アメリカを独裁政治から守ることを使命とする(下の写真左側、シンボルは星条旗にIIIを入れたデザイン)。名前の由来はアメリカ独立戦争で、国民の3%の愛国者がイギリスと戦い勝利したことによる。(これは歴史誤認でこのような事実はない。)「Oath Keeper」も私兵組織で、武器を携帯して反政府活動を展開する(下の写真右側、帽子にロゴが縫い付けられている)。この組織の特徴は現役兵士や引退した兵士をメンバーに雇い入れ、本格的な軍事活動を展開していること。これら組織のメンバーは”愛国者”を自認し、国民を”守る”ことをミッションとする。

出典: Oil City News / CNN

ソーシャルメディアの対応

主要ソーシャルメディアは、極右団体が連邦議会を襲撃したことを受け、前大統領のアカウントを閉鎖した。また、極右団体は交信のためにFacebookやTwitterなどを使っていたが、これらのアカウントも削除された。Facebookは2020年10月、Qanonに関するFacebookやInstagramのアカウントを削除した。Twitterは連邦議会攻撃事件を受けてQanonのアカウント7万件を削除した。

FacebookからParlerに

このため、極右団体はFacebookから新興ソーシャルネットワーク「Parler」に大移動を始めた。Parlerは2018年に創設されたソーシャルネットワークで、保守層を中心に利用されてきた。コンテンツの規制が緩やかなことから利用者数を伸ばしてきたが、あくまで一般ユーザを対象にサービスを運用してききた。ここに極右団体が大量に流れ込み、暴力行為やヘイトスピーチを助長する掲載が急増した。このため、ParlerをホスティングするAmazonはこのサービスを中止し、また、AppleやGoogleはParlerアプリをストアーから排除した。(下の写真、閉鎖中のParlerホームページ。CEOのJohn Matezは言論の自由を求めて戦うとの声明をここに掲載。)

出典: Parler

Telegram

このため、極右団体はTelegramへの移動を開始した。Telegramはメッセージングサービスで、ロシアの実業家Pavel Durovが運営している(下の写真)。余り知られていないが、全世界で4億人の利用者がいるとされる。Durovはソーシャルネットワーク「VK」を運用しており、ロシアのZuckerbergとも呼ばれる。Telegramは通常のメッセージサービスに加え、プライベートなフォーラムを運用しており、ここでセキュアにメッセージを交換できる。このフォーラムにアクセスするには鍵(Digital Key)が必要で、一般に知られることなく秘密裏に情報を交換できる。このため、過激派組織の温床となり、各国の治安当局から警告を受けるものの、対策は進んでいない。極右団体はここを拠点に活動を始めている。極右団体のメンバーはいわゆるデジタル・ネイティブで、ITを駆使して活動を展開する。彼らは自らを「Digital Soldier」と呼び、ソーシャルメディアの規制をかいくぐり、サイバースペースで戦闘を展開する。

出典: Voice of America

バイデン政権の課題

過激思想の9割は極右団体で、この活動は今に始まったわけでは無く、アメリカの歴史とともに歩んできた。時の政権はこの危険性を認識し、暴力行為や活動を抑制してきたため、社会の表に現れることは稀であった。しかし、トランプ政権の発足とともに、極右団体が”公認”され、活動が活性化し、殺傷事件を含む危険な行動が目立ってきた。トランプ氏が政権を去った後も、極右団体は多くの米国市民の支持を受け、活動を継続することとなる。バイデン政権はこれから極右勢力との長い戦いが始まる。

バラ色ではないシリコンバレーの在宅勤務、地方都市に移住すると給与が減る

米国で都市閉鎖が解除され経済活動が徐々に再開しているが、コロナと共棲するために、企業は在宅勤務を取り入れた企業戦略を策定している。多くの企業はオフィス勤務と在宅勤務を併用したハイブリッド勤務を導入している。また、企業は在宅勤務に最適なポジションを新設し、幅広く人材を募っている。在宅勤務がコロナ社会を生き抜くカギとなるが、企業の狙いは人材採用やオフィス費用削減にある。

出典: Facebook

Facebookの在宅勤務

シリコンバレーのIT企業は他社に先駆けて在宅勤務を採用した。Facebookの社員は在宅勤務を続けているが、CEOのZuckerbergはこれを正式な勤務形態とすると発表した。また、今後5 年から10 年のレンジで、社員の半数が在宅勤務となるとの見通しを示した。社員はオフィス勤務か在宅勤務かを選択でき、来年1 月までにこれを会社に通知する。

地方に移住すると給与が減る

在宅勤務を希望する社員は審査を受け、基準に沿っていると判断されるとこれが認められる。社員はシリコンバレーに住む必要はなく、他の地域に引っ越すこともできる。生活費の高いシリコンバレーから、郊外のサクラメントなどに引っ越しすることもできる。ただし、給与は当地の物価により調整され、郊外に引っ越しすると実質的に給与減額となる。

狙いは地方の人材採用

Facebookは今後の人材採用計画について明らかにした。在宅勤務を導入することで、シリコンバレーだけでなく、全米の主要都市で優秀な人材を採用できる。当面は、本社オフィスの近郊(クルマで4時間以内)で在宅勤務ができるエンジニアを採用する。次に、アトランタ、ダラス、デンバーで在宅勤務エンジニアを採用し、最終的には、カナダを含め全米の都市で採用を進める。つまり、Facebookは北米全域で優秀なエンジニアを雇い入れることを目論んでいる。更に、本社オフィススペースを縮小でき、Facebookは本社キャンパス増築計画を見直すとしている(先頭の写真、増築された本社ビル「MPK21」)。

Facebookの在宅勤務ツール

Facebookは在宅勤務が広がる中、新しいコミュニケーションツール「Workplace」を発表した。これは社員間でコラボレーションするためのツールで、共同の作業スペース「Group」、チャット「Chat」、ビデオ会議「Rooms」(下の写真)などから構成される。RoomsがZoomに相当する機能で、Workplace全体はSlackの対抗製品として位置付けられる。今月からサービスが開始され企業で導入が始まった。

出典: Facebook

社員全員が在宅勤務

コロナのパンデミック以前から在宅勤務を取り入れている企業は少なくない。その中で、Automatticは社員全員が在宅勤務をしている。Automatticはサンフランシスコに拠点を置く企業でブログソフトウェア「Wordpress」を開発している。世界75か国で1200人の社員がいるが、全員が在宅勤務をしている。オープンソース・ソフトウェアをベースにした製品を開発しており、社員は遠隔でコラボレーションし、プロジェクトがうまく進んでいる。(Automatticは数年前まで、サンフランシスコにオフィスを構えていた(下の写真)。社員は出社勤務か在宅勤務を選択できたが、出社する社員はわずかで、Automatticはオフィスを閉鎖した。)

人間関係が仕事のベース

しかし、Automatticはチームワークや社員同士の交流を重視しており、定期的に社員が集うイベントを開催し、チームスピリットを育んでいる。在宅勤務で仕事は進むが、そのベースは人間同士の信頼感や親近感である。顔を合わせたことのない社員と円滑に仕事を進めるのは難しく、このような場が必要になる。因みに、Automatticは世界のウェブサイトの35%で使われており、企業価値は30億ドルのユニコーンに成長している。

出典: Medium  

社員の反応

市場調査などによると、社員はオフィス勤務に戻りたい人と、そのまま在宅勤務を続けたい人に分かれる。在宅勤務を続けたい理由は、ワークライフ・バランスで、通勤時間がゼロとなり、家族と過ごす時間を持つことができる。また、上司や同僚との人間関係を気にしないで仕事をできストレスがたまらないという声も聞かれる。一方、オフィス勤務に戻りたい社員は、他の社員とのコミュニケーションや交流を求めている。また、クールなオフィス環境で働けることや、無料の食事やスナックなどがあることも魅力となる。更に、在宅勤務だと目立たなくなり、出世に影響することを心配する声も聞かれる。若い社員は出社勤務を望み、45歳以上の社員が在宅勤務を希望するとの調査結果もある。

在宅勤務に適した職種

多くの企業が在宅勤務専用のポジションを新設しているが、これを見るとテレワークに向いているのとそうでない仕事がある。在宅勤務に向いている職種としては、医療、情報通信、顧客サポートなどで、これらのポジションで募集枠が広がっている。ソフトウェアエンジニアはこのカテゴリーとなり、IT企業で在宅勤務が広がることを裏付けている。また、コロナの後で需要が増えた職種は教育関連で、学校がオンライン授業に移り、在宅勤務のインストラクターやアシスタントが求められている。

Googleは在宅勤務に慎重

多くの企業が遠隔勤務に移る中、Googleは慎重な姿勢を見せている。Googleは今月からオフィスを再開し、全体の10%程度の社員が職場に戻ってくる。ソーシャルディスタンシングをキープしながら仕事を再開するが、遠隔勤務は緊急措置であり、その延長は計画されていない。Googleは在宅勤務で生産性が上がるとは考えていない。クリエイティブな仕事は人間同士のインタラクションで生まれるとし、遠隔勤務でイノベーションを生むのは難しいと考える。今後、Googleは在宅勤務で生産性が上がり、問題を解決できるのか、データサイエンスの手法で検証するとしている。

出典: Google

新しい企業戦略

やはり、在宅勤務では社員の仕事をどのように評価するかが最大の課題となる。仕事の定義であるJob Descriptionを明確にし、仕事の成果を公平に評価する指標が必要になる。一方、在宅勤務が広がる中、それを支援するテクノロジーの開発も進んでいる。上司に代わりAIが社員の生産性を評価する方式も登場している。社員にとって在宅勤務というオプションは必ずしもバラ色ではないが、シリコンバレーの企業は新しい会社戦略を模索している。

サンフランシスコで都市再開に向け新型コロナウイルス感染者の追跡調査が始まる、Facebook慈善団体がこれを主導

サンフランシスコ地区で都市閉鎖解除に向けた準備が進んでいる。都市再開では住民の感染状態を継続して把握することが必須要件で、これに向け新型コロナウイルス感染者の追跡調査が始まった。この調査はChan Zuckerberg Initiative(CZI)が主導し、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などの大学病院が実施する。CZIはFacebook創業者Marc Zuckerbergと妻のPriscilla Chanが設立した慈善団体で、健康や教育に関する研究を進めている。

出典: CNN

追跡検査の概要

この調査はサンフランシスコ地区で新型コロナウイルスの感染状態を正確に掴むために実施される。試験は9か月間継続して実施され、感染状態をスポットで把握するのではなく、被験者を定期的に検査することで感染のトレンドを把握することが目的となる。調査は住民向けの検査と、医療従事者向けの検査の二つのパートから成る。調査結果は都市を再開すると感染がどの程度増えるかを評価する指標となる。

多くの疑問点に答える

新型コロナウイルスでは感染者の多くが無症状(Asymptomatic)といわれ、この調査で実際の感染状況を把握する。また、感染者のウイルスのRNAを解析することで、感染経路を特定する試みがなされる。更に、新型コロナウイルスの抗体検査も同時に実施され、抗体と免疫の関係を検証する。抗体ができれば再び病気に感染することはないかの議論に答えがでる。

地域住民を対象とした調査

新型コロナウイルスの感染状態について、幅広い層の住民を対象に検査を実施する。検査結果は都市再開の基礎データとして使われ、都市閉鎖を安全に解除するためのプロセスを策定するための基本情報となる。また、都市を再開して新しい生活に移行したあとも検査は続けられ、住民の間で感染が広まっていないかを確認し、再び感染が広がると経路を解明し対策が取られる。

毎月PCR検査と抗体検査を実施

この試験はサンフランシスコ地区の住民4000人を対象に、2020年12月まで、毎月、PCR検査(PCR Diagnostic Test)と抗体検査(Serological Test)が実施される。PCR検査で感染の広がりを把握し、一方、抗体検査で被験者の過去の感染状態を把握し、感染者数を正確に計測する。毎月これらの検査が実施され、都市再開の前後で感染者数がどのように変わるのかトレンドを把握する。

出典: Chan Zuckerberg Biohub

ウイルスの遺伝子解析

更に、PCR検査で検出されたウイルスはChan Zuckerberg Biohubで遺伝子解析を実施する。遺伝子配列を把握することで、ウイルスのRNAの変異から種別が分かり、これをたどり地域における感染経路を特定する。また、ウイルスはどこからサンフランシスコ地区に侵入したのかも解明する。感染経路の特定にはContact Tracingの手法が使われるが、遺伝子検査でこの作業を補完することを目指している。Chan Zuckerberg Biohubとはカリフォルニア大学サンフランシスコ校やスタンフォード大学などが参加する生物学研究所でMarc Zuckerbergの寄付金で設立された(上の写真)。

医療従事者向けの調査

もう一つの調査は医療従事者を対象として実施され、新型コロナウイルスが病院に及ぼすインパクトを査定する。具体的には、被験者の抗体検査とPCR検査を継続して実施する。新型コロナウイルスに感染すると抗体ができるが、この抗体がいつまで存続するかを調べる。また、抗体があれば再び新型コロナウイルスに感染することはないのかを解明する。

抗体は社会復帰のパスポート?

この検査は医療従事者3500人を対象に、12週間にわたり、毎週PCR検査と抗体検査が実施される。また、抗体検査で陽性であった被験者は、2020年12月まで、新型コロナウイルスに再度感染しているかどうかが検査される。WHOは抗体ができても免疫ができるかは不明としており、この疑問に答えを出すことになる。都市を再開して社会に復帰するときに、抗体がパスポートになるのかが分かる。

出典: VentureClef

疫学の観点からの調査

米国で、新型コロナウイルスに関する虚偽の記事が数多く発信され、社会が不安定になっている。特に、都市再開に向けては医学的な議論より政治的な主張が優勢で、正しい判断の妨げになっている。このため、研究者や著名人などがテレビ番組に登場し、国民に正しい情報を発信し続けている(先頭の写真)。番組の中でPriscilla Chanは、都市閉鎖を解除するには新型コロナウイルスの発生や流行状態など疫学(Epidemiology)の観点から検査を行うことが最低条件と述べている。

都市再開のための基礎データ

今は、住民の何人がウイルスに感染しているのかなどの基礎データが揃っていない。また、無症状の感染者の実態が分からないため、誰がスプレッダーであるのかを特定できない。更に、抗体が社会復帰のためのパスポートになるのかも定かでない。これらの基礎データをそろえない限り、都市再開を安全に進めることはできない。(上の写真:Farmers’ Marketでソーシャルディスタンシングを保ちながらの買い物)

Chan Zuckerberg Initiativeとは

このプロジェクトを主導するChan Zuckerberg InitiativeはPriscilla Chan(下の写真)とMark Zuckerbergにより2015年に設立された慈善団体で、医療や教育や科学の分野で、人間の可能性を伸ばし平等な社会を実現することをミッションとする。今世紀末までに病気をなくすことを目標に研究を進めている。CZIは従来の慈善団体と異なり、テクノロジー使って社会の問題を解決するアプローチを取る。

出典: Chan Zuckerberg Initiative

IT企業創業者の役割

米国ではこの危機を救うためにIT企業の創業者が重要な役割を果たしている。Bill Gatesは同氏の慈善団体Bill & Melinda Gates Foundationを通じて3億ドルを寄付し、新型コロナウイルスのワクチン開発を支援している。Twitter創業者Jack Dorseyは10億ドルを新型コロナウイルス対策に寄付することを表明している。多くのIT企業創業者は格差社会を是正する慈善活動を進めているが、新型コロナウイルスでこの流れが加速している。