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GoogleのAI研究開発体制が激変、Demis HassabisはCEOをステップダウン、Jeff Deanは会社を去り新興企業を立ち上げ、Sergey BrinがGemini開発を指揮し首位の座を奪還か

Googleは8月5日、GoogleとGoogle DeepMindのAI組織を大幅に改定した。AI研究部門Google DeepMindのDemis Hassabis(下の写真、イメージ、右側)はCEOのポジションを退き、会長と親会社Alphabetの最高科学責任者(Chief Scientist)となる。Googleの最高科学責任者Jeff Dean(左側)は会社を去り、スタートアップ企業を創設する。トップブレインがAI開発の最前線から退き、Googleはフロンティアモデルの開発で苦境に立たされた。一方、Google創設者Sergey BrinがGeminiの開発を指揮すると言われており、首位の座を奪い返すことができるのか市場が注視している。

出典: Generated with Google Gemini 3.6 Flash

Demis HassabisはCEOをステップダウン

Demis HassabisはAI研究開発機関Google DeepMindのCEOの職を辞して、ハイレベルな観点からGoogleのAI研究開発を推進する任務を担う。Hassabisの新たなミッションはAGIの開発とAIガバナンスの展開となる。また、Google DeepMind配下の新興企業「Isomorphic Labs」の責任者を継続する。同社は、Hassabisらが開発したAlphaFoldをベースとする新薬開発の技術を開発しており、がん治療薬などの開発をターゲットとする。

Google DeepMindの責任者

Hassabisの後任にはGoogle DeepMindのCTOであったKoray KavukcuogluがSVP(上級副社長)として就任した。KavukcuogluはGoogle DeepMindの日々のオペレーションを管轄し、GoogleのCEOであるSundar Pichaiにレポートする。これからはKavukcuogluがフロンティアモデル「Gemini」の技術開発と製品化の指揮をとる。

Jeff DeanはGoogleを去る

Jeff Deanは27年間在籍したベテラン社員で、最高科学責任者として重要な技術を生み出してきた。その代表が「MapReduce」で、検索サービスにおけるビッグデータ解析で使われてきた。MapReduceは大規模なデータを並列化し、数多くのサーバで並列に実行するフレームワークとなる。また、Jeff DeanはAIプロセッサ「TPU」の発案者で、機械学習やAIモデルを高速で実行するために使われている。

Jeff Deanは「Discovery Loop」を創設

Jeff Deanは同僚三名とともにGoogleを去り、スタートアップ企業「Discovery Loop」を創設した。Discovery Loopは公益法人(public benefit corporation)として創設され、Googleらが出資している。Discovery LoopはAIで研究開発を自動化する技術を開発する。機械学習、エンジニアリング、新薬開発、サイエンスの分野を対象とし、新たな発見を生み出すことを目的とする。AIが人間に代わり研究プロセスを繰り返し実行することで、サイエンスを超高速で進化させる。研究プロセスの繰り返し実行を「 発見のループ(Discovery Loop)」と呼び、これが社名となっている。

出典: Discovery Loop

サイエンスにおける発見を自動化

Jeff DeanはAI開発における次のフロンティアは科学研究の方式を自動化することにあると考える。科学研究は、仮説を設立し、それに基づき実験を行い、その結果を検証し、モデルを改良するプロセスとなる。人間の科学者がこのプロセスを繰り返すが、新発見を生み出すまでには長い時間を要す。Discovery LoopはこのマニュアルのプロセスをAIエージェントで置き換え、数千のトライアルを並列に実行し、科学研究を超高速で進める。(下の写真、Discovery Loopの創設者、GoogleのAIブレインであった、左から、Oriol Vinyals、 Sanjay Ghemawat、Jeff Dean、Quoc Le)

出典: Discovery Loop

研究対象領域

Discovery Loopはこのモデルを最初は機械学習(AI)の分野に応用する。これは機械学習の研究をAIで高速化する。現在のニューラルネットワークはトランスフォーマに基づくアーキテクチャで、この技法を最適化する競争が進められている。Discovery LoopはAIで機械学習の研究を自動化し、トランスフォーマに代わるアーキテクチャを探求する。この研究が完成すると、次のステップは対象分野をサイエンスの領域に拡大する:

  • 半導体設計:チップのデザインを自動化する。また半導体回路を最適化する
  • バイオロジー:新薬の開発を高速で実行する
  • マテリアル:太陽光発電パネルなど素材の開発を超並列で実行する

市場の反応はネガティブ

Googleが組織改定を発表した日に株価は5%下落し、ウォールストリートはこの発表にネガティブな反応を示した。HassabisがGoogle DeepMindのCEOをステップダウンすることは、Geminiの開発が停滞することを意味し、GoogleはAI開発レースでトップ集団から離脱を余儀なくされると解釈された。また、Googleのコア技術を支えてきたJeff Deanらが会社を去り、Discovery Loopを創設したことは、Google社内で長期レンジの基礎研究を進める環境が整っていないことを示唆している。

出典: Generated with OpenAI GPT-5.6 Sol

Sergey BrinがAI開発を指揮か

シリコンバレーで、Googleの共同創業者であるSergey Brin(上の写真、イメージ)が、Geminiの開発を監督・指揮するとの情報が広がっている。Googleはフラッグシップモデル「Gemini 3.5 Pro」のリリースを延期し、未だに出荷の目途が立っていない。GoogleはOpenAIやAnthropicとの開発競争で後れを取っている現状が明らかになった。Sergey Brinはこの状況に危機感を募らせ、自らが前面に立ちGemini部門を指揮すると言われている。GoogleはAIレースでトップの座を奪い返すことができるか市場が注視している。

Demis HassabisはAGIクラスのAIモデルのリスクを制御するフレームワークを提唱、米国政府が主導する標準化機構を設立し製品出荷前に安全試験を実施

Google DeepMindのCEOであるDemis Hassabisは「A Framework for Frontier AI and the Dawning of a New Age」と題するAGI時代のリスク管理フレームワーク構想を公開した。この構想はAGIが数年以内にリリースされることを念頭に、AIモデルのリスクを評価するための標準化機構を米国政府主導のもとに設立し、製品出荷前に安全試験を実施する。人間が制御できない重大な危険性が確認されたら、開発を停止するとしている。米国企業だけでなく、全世界のAI開発企業を対象とする。

出典: Demis Hassabis

提言の概要

Hassabisの提言の核心部分は米国政府が主導する標準化機構「Frontier AI Standards Body」を設立することにある。標準化機構はAGIクラスのAIモデルをベンチマークして、そのリスクを査定することにある。当初は、政府の管轄の元、民間団体による自主的な組織とし、トライアルでその機能を検証する。その後、公式な機構とし、AI開発企業に製品出荷前にAIモデルの安全性の試験を義務付ける。

AGIクラスの危険性

HassabisはAGIクラスのAIモデルは大きなリスクを内包していると考える。AI開発競争が白熱し各企業は開発のペースを上げ、エンジニアがモデルの挙動を理解できないまま開発が進んでいる。これによりAGIクラスのモデルが危険な挙動を示す:

  • CBRN (Chemical, Biological, Radiological, and Nuclear):AIが兵器を開発
  • Deception:AIエージェントが実行の意図を隠しモデル評価を偽造する
  • Guardrail:AIが安全機構を突破するスキルを獲得する
  • Loss of control:高度な知能を持つAIを人間が制御できなくなる
  • Unknown risks:モデルが高度になり新しい危険性が生まれる

標準化機構とは

標準化機構「Frontier AI Standards Body」は「Financial Industry Regulatory Authority (FINRA)」をモデルにしている。FINRAとは米国の証券業界の自主規制機関で、証券市場における投資家の保護や市場の透明性の確保を目的として設立された。AI標準化機構はこのアイディアをAI開発に取り入れたもので、AI企業のAI技術に関する知見と政府の監督機能を組み合わせた独立組織となる。(下のイメージ)

出典: Generated with Google Gemini 3.6 Flash

トライアルフェイズ

標準化機構は開始当初は自主的な組織として位置付け、加盟企業は製品を出荷する30日前にAIモデルを提出し、その安全性を評価する。対象項目は、CBRNの他に、エージェントとしての自立機能、ガードレールを迂回する機能、モデルが内包する脆弱性などで、これらの機能がベンチマークされる。

実行フェイズ

ベンチマークテスト結果や試験プロセスがデザイン通り稼働することを確認した後で、実行フェイズに進む。企業は製品を出荷する前に安全試験をクリアすることが義務付けられる。Hassabisの構想によると、対象は米国市場に展開するAIモデルで、米国モデルだけでなく海外モデルを含む。また、クローズドソースだけでなくオープンソースを含み、開発者は米国人だけでなく外国人を含む。

AGIクラスの定義

AGIクラスのAIモデルを如何に定義するかで議論が続いている。従来は、AIモデルを開発するために要したプロセッサの計算量でモデルのクラスを定義してきた。Hassabisの提案ではクラスを認定するためのベンチマークテストを開発し、これによりAGIクラスを定義する。具体的には、高度なリスクを測定するためのベンチマークテストを開発し、この試験結果でモデルのクラスを定義する。モデルの進化は急速で、ベンチマークテストを定期的にアップデートする必要がある。また、モデルの進化で新たな危険性が発現した際は、このリスク要因をベンチマークテストに反映する。

出典: Generated with Google Gemini 3.6 Flash

グローバルスタンダード

Hassabisは米国が主導でこのフレームワークを導入し、その後、グローバルに展開する構想を描いている。主要AI開発企業は米国に集中しており、短期的には、米国主導でプロジェクトを進める。長期的には、国際的なコーディネーションを進め、海外のAI企業の参画を求める。グローバルにAGIクラスのAIモデルを査定するベンチマークテストを導入する。当初は米国が主導するが、長期的には国際間でフレームワークを構築する。

AGIの社会へのインパクト

HassabisはAGIクラスの技術的なリスクを査定することを提言しているが、同時に、AGIの社会へのインパクトは甚大で、これらのソーシャル・リスクを如何にコントロールするかが重大な課題となると述べている。最大の課題は失業問題で、AGI時代の雇用体制を整備する必要がある。また、AGIで膨大な富が一部の企業に集中し、テクノロジー進化で生成される利益を公平に分配する仕組みの構築が検討課題となる。(上のイメージ)

トランプ政権との協議

米国のメディアはHassabisの提言をポジティブに受け止めており、連邦政府に標準化機構の設立を求めている点を評価している。また、HassabisはAGIクラスの安全性に関するコンセプトを具体的なフレームワークとして提言していることに注目が集まっている。Hassabisは既にトランプ政権と協議を進めているとも報道されており、米国政府のAI政策が大きく変わるのか、その進展を注視する必要がある。

世界経済フォーラムでAIに議論が集中、AGI(人間を超えるAI)がリリースされると極めて不安定な社会となる、GoogleとAnthropicが恩恵と危険が混在する未来像を提示

今年の世界経済フォーラム「ダボス会議」は議論のテーマがAIに集中し、パネルディスカッションや基調講演で業界の著名人が独自の見解を示した。イベントはストリーミング配信され多くのセッションを聴くことができた。特に、人間の知能を超えるAGIが注目を集め、登場時期の予測や、AGIがリリースされた後の社会像について意見が交わされた。AGIは今年中にリリースされるとの予測が示され、社会はこれを受け入れる体制の整備が間に合わず、大きな混乱が予想されるとの見解が示された。世界は今までに経験したことのない技術進化の嵐のなかを賭け走ることになる。

出典: World Economic Forum

AGIのパネルディスカッション

AIに関する議論のハイライトは、GoogleとAnthropicのAGIに関するパネルディスカッションであった。「The Day After AGI」との題目で、Demis Hassabis(Google DeepMindのCEO)とDario Amodei(AnthropicのCEO)が、AGIがリリースされた後の社会像について意見を交わした(下の写真)。HassabisはAGIは2030年ころに完成すると予想するが、Amodeiは2026年から2027年にリリースされると考える。更に、AGIは大きな将来性を持つが、同時に重大な課題を内包しており、社会に大きな混乱をもたらす。制度や法令を整備することでAGIがもたらす動乱期を乗り越えることが次のミッションになるとの見解が示された。

出典: World Economic Forum 

HassabisのAGIに関する解釈

AGIについて共通の理解が確立されていない中、Hassabis(下の写真)はAGIである要件はAIサイエンティストと定義し、これを満たすモデルが登場するのは2030年ころと予測する。Hassabisは、アインシュタインが相対性理論を生み出したように、AIサイエンティストが新たな理論を構築する機能をAGIの要件とする。更に、AGIは世界感を持ち、実社会においてはヒューマノイド・ロボットとして実現され、人間のスキルを凌駕する。AGIに到達するには、トランスフォーマに基づく現行のAIフロンティアモデルを拡大するだけでは不十分で、大きなブレークスルーが必要であるとの見解を示した。

出典: World Economic Forum 

AmodeiのAGIに関する理解

Amodei(下の写真)はAGIという用語はSF映画を連想させるとして、これを「Powerful AI(パワフルなAI」と表現する。(このレポートでは用語を統一するためAGIと表記する。) AGIは、多様な分野(バイオや物理など)でノーベル賞受賞者に匹敵するブレインを搭載したモデル、と定義する。AGIは分野のエキスパートが超並列でタスクを実行するシステムとなる。AmodeiはAGIが登場する時期を2026年から2027年ころと予測する。AGIは早ければ今年にリリースされることになり、その理由を「Loop(ループ)」と説明する。ループとは「輪」であり、ここでは繰り返しの処理を意味する。AnthropicはAI開発にAIコーディング・エージェントを使っており、AIがAIをプログラムする構成となる。つまり、AIがAIを開発するループが形成され、開発速度が指数関数的に高速化される。Amodeiはあと6ヶ月から12か月で、AIコーディング・エージェントが人間レベルに到達し、プログラミングの100%をAIが実行すると予測する。AI開発のペースが爆発的に速まり、AmodeiはAGIは予想外に早く開発されると考える。

出典: World Economic Forum 

社会へのインパクト

HassabisはAGIの登場により社会が豊かになるとのポジティブな面を強調した。これを「Post-Scarcity(脱希少性経済)」と呼び、AIやロボットの労働力によって多くの財が潤沢に生産される社会が到来するとのビジョンを示した。AGIによりエネルギーや生活に必要な資源が潤沢になる社会が到来すると考える。一方で、Hassabisは、AGI開発を国家が単独で進めるのではなく、この恩恵を幅広く普及させるために国際協調が不可欠であると主張する。原子力に関して「CERN(欧州原子核研究機構)」が運営されているように、AGIに関する共同研究機関「AGI版CERN」を設立し、研究開発と社会移行について国家間でコラボレーションすることを提唱した。

社会が激動期に突入

AmodeiはAGIがもたらす雇用喪失が社会における最大の問題であると考える。エントリーレベルのホワイトカラーの職は、今後1年から5年以内に消滅すると予測する。初級レベルのプログラマがこれに相当し、大学卒業者の就職問題が目の前の課題となる。インターネットで事業形態が一変したように、技術は常に社会に波風をもたらす。AGIはそのインパクトが格段に大きく、その速度が速く、今までに経験したことのない激動期に入る。Amodeiはこれを「技術思春期(Technological Adolescence)」と表現し、AGIは人間と同じように子供から大人へ成長するプロセスに入り、非常に不安定な時期を迎える。AGIの巨大な恩恵を享受するために、激動期を生き延びる仕組みを考案することが人類の次のミッションとなると提案した。(下の写真、スイス・ダボスの街並み)

出典: World Economic Forum 

シリコンバレーのコンセンサス

AIがAIを開発する「ループ」が形成され技術開発が爆発的な速度で進むことになる。シリコンバレーの識者はこれを「シンギュラリティ(Singularity)」と呼び、米国社会はここに足を踏み入れたとの見解を示している。ハイテク企業は大規模なレイオフを実行し、雇用喪失が現実の問題となっている。実際に、AmazonはAIとロボットの導入により16,000人をレイオフすると発表した。今年はAGIが投入され社会は大失業時代を迎えることになる。

今年のキーワードは「AIサイエンティスト」、研究室に配属されエージェントとして医薬品を開発、トランプ政権のジェネシス・ミッションが大きな追い風

2026年はAIサイエンティストが研究所で人間に代わりバイオ医薬品などを開発する年となる。AIサイエンティストとは科学技術に特化したAIエージェントで、研究者に代わり新薬の開発などを実行する。AIサイエンティストは科学に関する膨大なデータを解析し、仮説を立案し、それを検証することで、地上に存在しない新たなたんぱく質や抗体などを生成する。トランプ政権はジェネシス・ミッションで、AIサイエンティストを戦略技術と位置付けており、連邦政府がこのプロジェクトを支援する。

出典: Generated with Google Nano Banana Pro

AIサイエンティストとチャットボット

AIサイエンティストは最重要研究テーマで議論が白熱しハイプの状態が続いてきた。今年はこれがいよいよ技術として実装される年となる。AIサイエンティストはチャットボットとは機能も構造も大きく異なる。チャットボットは科学者の質問に回答し、アシスタントとして研究を支援する。これに対しAIサイエンティストは、与えられた研究テーマを人間の介在無く自律的に実行する。医薬品の開発では特定の機能を持つたんぱく質を創成するなど、人間の研究者レベルのタスクを実行する。

AIサイエンティストの機能

このように、AIサイエンティストは研究者として位置付けられる。人間がハイレベルな研究テーマを指示し関連するデータセットを提示すると、AIサイエンティストは独自で研究プロセスを展開する。具体的には、公開されている論文を読み研究の最先端情報を理解する。次に、提示されたデータセットを解析し、これらを統合して仮説を構築する。更に、構築した仮説を証明するために試験を実行する。

出典: Generated with Google Nano Banana Pro

AIサイエンティストの性能

最先端のAIサイエンティストは人間の研究者が半年かかる作業を半日程度で実行する。研究を実行するためには膨大な数の論文を読む必要があるが、AIサイエンティストは1,000を超える論文を読みこれを理解し研究の最先端情報を把握する。これらをベースに仮説を立案し、これを検証するプロセスを実行する。実際には、仮説を検証するためのプログラムを生成し、これを実行することで推論が正しいことを裏付ける。AIサイエンティストは膨大な情報を解析するだけでなく、これを前提し新たな仮説を生み出し、これが正しいことを証明する機能を持つ。

AIサイエンティストの恩恵

AIサイエンティストは医療において大きな進化をもたらすと期待されている。ニューロサイエンスの分野では、脳の加齢のメカニズムを解明し、アルツハイマー型認知症の治療薬の開発で大きな成果が期待される。また、エネルギーの分野では、ペロブスカイト太陽電池(perovskite solar cells)を効率化する技法の開発で使われる。

フロンティアモデルとの関係

AI開発企業からOpenAI GPT-5.2やGoogle Gemini 3などフロンティアモデルがリリースされているが、これらが単体でAIサイエンティストを構築することはできない。AIサイエンティストの開発では「Structured World Model(構造的世界モデル)」というアーキテクチャがキーとなる。AIサイエンティストは複数のAIエージェントから構成され、Structured World Modelがこれらを管理運用するフレームワークとなる。このフレームワークの元で、論文を解析するAIエージェントや提示されたデータを解析するAIエージェントなどが稼働しており、エージェント間で情報を共有する制御や、長時間にわたりコヒーレントな処理を保証する仕組みなどが必須の機能となる。

AIサイエンティスト市場

ビッグテックやスタートアップがAIサイエンティストの開発を進めている。その代表がGoogleで、AIサイエンティスト「AI Co-scientist」を開発している。AI Co-scientistは、膨大な量のデータセットをベースに、物理学、バッテリー素材、核融合発電などの分野をターゲットに、自律的に研究を実行する。GoogleはAI Co-scientistを米国エネルギー省の国立研究所に納入し、科学技術研究に寄与することを計画している。トランプ政権のジェネシス・ミッションに沿って、国立研究所と共同でサイエンスの研究開発を加速する。

出典: Google

研究所の自動化技術

AIサイエンティストはロボティックスと融合し、研究所のオペレーションを自動化する。これは「Self-Driving Labs (SDLabs)」と呼ばれ、AIサイエンティストが構築した仮説を、研究所においてロボットが実験を司り、人間に代わりこれを証明する。AIサイエンティストが研究所のロボットに、薬剤の混合や試験結果の検証などを指示し、AIとロボットのループで研究が進む。ジェネシス・ミッションではこの技法を「Robotics Labs」と呼び、この開発を重要アクション項目と定めている。

出典: World Economic Forum

サイエンスのブレークスルー

AIモデルはブラックボックスでアルゴリズムの判定理由が不透明で、これがハルシネーションの原因となる。AIサイエンティストは研究成果の精度が厳しく問われ、生成した仮説を裏付けるデータが必須となる。AIサイエンティストは研究成果をRobotics Labsで検証し、根拠となる実験結果を示すことで、高精度な研究成果を生み出す。今年はAIサイエンティストで米国の科学技術研究が急進し、大きなブレークスルーが起こると期待される。

Google「Gemini 3」はベンチマークテストで他社を圧倒!!AI市場で独走態勢に突入、マルチモダル推論機能が格段に向上しAGIに向けて大きく前進

Googleは11月18日、最新モデル「Gemini 3」を発表し、同日に製品をリリースした。Gemini 3はベンチマークテストでトップの性能を示し他社を圧倒した。AI開発競争でGoogleがOpenAIやAnthropicを大きく引き離し独走態勢に突入した。Gemini 3はマルチモダルと推論機能が格段に強化され、高度なAIエージェントを構築するベースとなる。DeepMindのCEOであるDemis Hassabisは「AGI開発に向けた大きな一歩となる」と述べた。実際に使ってみると、Gemini 3は高度なインテリジェンスを発揮し、AGIエージェント時代に突入したとの印象を受けた。

出典: Generated with Google Gemini 3 Pro

製品構成

Googleは二つのモデル、「Gemini 3 Pro」と「Gemini 3 Deep Think」、をリリースした。前者はベースモデルで日々の業務やAIエージェントの基盤技術となる。後者は推論機能を強化したモデルで、長時間にわたる考察を通し極めて複雑なタスクを実行する。Googleは検索エンジンの「AI Mode」にGemini 3 Proを導入しサーチ機能が大きく向上した。

Gemini 3 Proの性能

Gemini 3 Proは業界の標準ベンチマークテスト「LMArena Leaderboard」で二位を大きく引き離しトップの性能をマークした(下のグラフ)。xAI Grok-4.1がトップであったがGemini 3 Proが1501をマークし大きく躍進した。LMArena Leaderboardは利用者のフィードバックで性能を決めるベンチで世論調査による性能評価となる。これは利用者の実感を反映したもので、Gemini 3は大きなメリットを感じるモデルとなる。

出典: LMArena Leaderboard / Generated with Google Gemini 3 Pro

Gemini 3 Deep Thinkの性能

Gemini 3 Deep Thinkはベースモデルを拡張したもので、推論機能とマルチモダルを理解する能力が大きく向上した。Gemini 3 Deep Thinkは極めて複雑な問題を解決するために使われる。Gemini 3 Deep Thinkは最も難解なベンチマーク「Humanity’s Last Exam」でGPT-5 Proを引き離してトップの成績をマークした(下のグラフ、左側)。また、AIモデルの知能指数を測定するベンチマーク「ARC-AGI-2」では、Gemini 3 Deep ThinkはGPT-5.1の2.5倍の性能をマークし、インテリジェンスの高さを示した(下の写真、右側)。また、前世代モデルGemini 2.5から性能が10倍近く向上し、Gemini 3 Deep Thinkは推論機能が格段に向上したことが分かる。

出典: Google

コア機能#1:理解能力

Gemini 3はマルチモダルの推論機能がエンハンスされ、マルチメディアのコンテンツを理解する能力が格段に進化した。イメージやビデオを読み込みその内容を理解する。ピックルボール(Pickleball)の試合のビデオを入力し(下の写真、左側)、Gemini 3に「右手前のプレーヤの動きを解析し、スキルを向上するためのアドバイス」を求めると、モデルは「パドル(ラケット)の位置が下がる傾向にあり、常にお腹の高さに構えておくこと」と助言した(右側)。Geminiがスポーツ競技のコーチとなり、プレーヤに的確なアドバイスを行う。

出典: Google

コア機能#2:開発能力

Gemini 3の最大の特徴はプログラム・コーディングなど開発能力が格段に向上したことにある。これは「バイブコーディング(Vibe Coding)」とも呼ばれ、シンプルなプロンプトでGemini 3がホームページを開発し、ビデオゲームを生成する。Gemini 3に「レトロなイメージの3D宇宙船ゲームを開発しブラウザーに展開」と指示すると、それを開発しそれをHTMLファイルに格納する。ゲームはJavaScriptベースのWebGLで可視化され、これをブラウザーに展開してゲームをプレーする(下の写真)。ゲームボーイ(Game Boy)などに搭載されているゲームはバイブコーディングで生成できる。

出典: Google

コア機能#3:計画能力

計画能力とは複雑なタスクを完遂するために長期レンジのプランを策定しこれを実行する機能となる。AIエージェントのコア技術でGemini 3は計画機能が大きく向上した。計画能力を査定するベンチマークの代表が「Vending-Bench 2」で、AIエージェントが人間に代わり自動販売機の管理を司り、指定された期間の収入を比較するものとなる(下の写真)。

出典: Andon Labs

Vending-Bench 2で、主要モデルをAIエージェントとして360日間稼働させると、Gemini 3 Proがトップの性能をマークした(下のグラフ)。収入額は5,462ドルで二位のClaude Sonnet 4.5の3,840ドルを大きく上回った。Gemini 3はAIエージェントのコア技術としてデザインされているがその実力を発揮した。

出典: Google

実際に使ってみると:Google AI Studio

Gemini 3 Proはアプリとクラウド「Google AI Studio」(下の写真)で使うことができる。実際に使ってみると、Gemini 3 Proはコーディング能力が大きく進化したと感じる。バイブコーディングを体験でき、本当に言葉だけでプログラムを開発できる。Gemini 3 Proに「会社が主催するダンスパーティーのイベントに関するホームページを生成」するよう指示すると(下の写真、中央部)、ウェブサイトのランディングページを生成した。

出典: Google Gemini 3 Pro

実際に使ってみると:ホームページ

ホームページはHTMLで記述されそれをブラウザーで閲覧するとデザインを見ることができる(下の写真)。ここでは「未来志向のデザイン」とプロンプトで指示しており、その命令が反映されたページが生成された。このページでイベントの概要を読み、RSVPボタンをクリックして、チケットを購入する。プログラミングの知識がなくてもプロンプトで本格的なウェブサイトやコードを生成することができ、ソフトウェア開発は新たな時代を向けたことを実感する。

出典: Google Gemini 3 Pro

AGIに向けた大きな一歩

三年前にChatGPTがリリースされ、生成AIブームが起こり、OpenAIがAI市場をリードしてきた。その後、Googleは「Google Brain」と「DeepMind」を統合し、AI研究所「Google DeepMind」を創設し、基礎研究と製品開発を一本化した。GPTシリーズの対抗モデルとしてGeminiシリーズを投入し、OpenAIを追いかけてきた。ついに、Gemini 3で順位が逆転し、GoogleがAI市場のトップに立った。GoogleはGeminiをAIエージェントのプラットフォームと位置付け、Gemini 3はAGI開発に向けた大きな一歩をしるした。

【捕捉情報:Gemini 3 Proのベンチマークテスト結果】

推論機能・一般知識

Gemini 3は推論機能が大幅に強化され、全てのベンチマークテストで競合他社のモデルの性能を上回った。最難関のベンチマークテスト「Humanity’s Last Exam」でGemini 3 Deep ThinkだけでなくGemini 3 Proもトップの性能をマーク(下のグラフ、左端)。

出典: Google / Generated with Google Gemini 3 Pro

数学・ロジック

AGIの達成度を査定するベンチマークテスト「ARC-AGI-2」で、Gemini 3 Deep ThinkだけでなくGemini 3 Proもトップの性能をマーク(下のグラフ、左端)。

出典: Google / Generated with Google Gemini 3 Pro

ビジョン・マルチモダル

Gemini 3はマルチモダル機能が強化され全てのベンチマークテストで競合他社のモデルの性能を上回った。PC画面のGUIを理解する機能を査定するベンチマークテスト「ScreenSpot-Pro」で他社を大きく上回り、AIエージェントとしてツールを使う機能の高さが示された。(下のグラフ、左から二番目)。

出典: Google / Generated with Google Gemini 3 Pro

コーディング・エージェント

Gemini 3はコーディング機能で他社を上回ったが、「SWE-Bench」でClaude Sonnet 4.5に及ばなかった。SWE-BenchはAIエージェントのエンジニアリング機能を査定するベンチマークテスト。(下のグラフ、左から二番目)。

出典: Google / Generated with Google Gemini 3 Pro