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数年以内にAIが人類を絶滅させるとの警告が一大論争を巻き起こす!!Amodei(Anthropic)はリスクを低減するための施策を提言、Huang (Nvidia)はこの予測に懐疑的で技術的手法で問題を解決できると主張

元Anthropicの研究者Jacob Coxonは、数年以内にAIが人類を絶滅させるとの警告メッセージを発信し、米国内でAI脅威論についての議論が白熱している。AnthropicのDario Amodeiは、これに対し、AI開発のペースを落とし、安全技術の開発を優先させるべきである、との意見を公開した。一方、NvidiaのJensen Huangは、AIが人類を絶滅させるとの予測は、科学的な根拠がなく、懐疑的なポジションを取る。同時に、HuangはAIのリスクはエンジニアリングの手法で制御できるとし、試験や監視により、技術の本質的な問題点を解明すべきと主張する。トランプ大統領は、開発ペースの減速には全面的に反対で、米国がAI覇権を維持するために、開発を推し進めるべきであるとの意見を公開した。

出典: Generated with OpenAI GPT-5.6 Sol

AI研究者の警告

元AnthropicのAI研究者Jacob Coxonは、AIが数年以内に人類を絶滅させる可能性が高いと、警告メッセージを発信した。フロンティアモデルの開発が危険なレースとなり、安全性が担保されないまま、機能強化が加速度的に進み、人類の存亡に関わるリスクが格段に高まると主張する。CoxonはAnthropicで三か月働き、他の研究者も同様な懸念を抱いていると、社内事情を明らかにした。研究者は、存続リスクを認識しているが、開発を停止するとライバル企業に先行されるとの恐怖感から、開発を推し進めているのが実情であると説明する。

出典: ABC News

Dario Amodeiのオピニオン

AnthropicのCEOであるDario Amodeiは、Coxonの懸念の一部に共感を示すものの、現実的な解決策を提案し、最悪のシナリオを回避できるとしている。フロンティアモデルの開発自体は継続しつつも、機能開発のペースを意図的に緩やかにし、アライメント(人間の意図への適合)など安全機能の開発を加速し、機能進化に安全技術を追い付かせるとの構想を示した。

出典: CBS News

Dario Amodeiの提案

具体的には、Amodeiは論文「We Must Pace the Frontier」を発表し、現実的な解決策を提言した。Amodeiは、フロンティアモデルの進化のスピードは、安全対策が追いつかないほど加速しているとの認識を示した。最大の要因は「Recursive Self Improvement」で、AIが次の世代のAIを開発するというサイクルが生まれ、AI機能が幾何級数的に進化している。このため、性能の進化を意図的にスローダウンし、アライメント、AIの仕組みの解明(Interpretability)、検証技法、運用の安全対策をキャッチアップさせるべきと提唱した。

出典: Dario Amodei

三つの解決策

Amodeiは論文の中で三つの具体的な解決策を提唱した。その中心は、第三者機関による安全検査で、METRなどの独立した外部組織がオフィス内で、モデルの安全機能を評価する。二つ目は、同盟国間での協調で、Anthropicは、OpenAIやGoogleといったAI開発企業と協調し、足並みを揃えて共通の安全基準を策定し、これを実行する。三つめは、グローバルな協調で、最終的には米国と中国が交渉を行い、危険な形態のAI開発に対して制限を設ける。Anthropicは、最初のステップとして、第三者機関による安全検査を開始する。

Jensen Huangの意見

NvidiaのCEOであるJensen Huangは、これらとはまったく異なる見解を示した。Huangは、AIがもたらす破滅的なシナリオは、科学的な事実に裏付けられたものではなく、極めて投機的であると批判している。フロンティモデルの開発を減速させることは、イノベーションや社会経済に大きなマイナスとなる。特に、米国のAI技術力が中国に対し相対的に低下し、技術覇権を損なう恐れがあると主張する。

出典: CNBC

Jensen Huangの提言

Huangは、AIの安全性は主にエンジニアリングの課題であり、テスト、モニタリング、サンドボックス化、システム設計を通じて解決できると考える。エンジニアリングの手法とは、技術的な工夫やシステム構築によって問題を解決することを意味し、AI企業は開発現場で問題をクリアできるとの意味を持つ。

エンジニアリング対サイエンス

これらの議論は、AIを安全に制御するのは、エンジニアリングの問題なのか、サイエンスの問題なのかに集約される。Huangは、フロンティアモデルは、既存の技術や仕組みを使って、安全で信頼性の高いモデルを構築できると、エンジニアリングの問題であると考える。Amodeiは、フロンティアモデルは、従来の工学的な安全技術を超え、AIの内部で何が起きているのか、その根本的な原理やメカニズムを解き明かす必要があり、サイエンスの問題に帰着すると考える。

議論が白熱

AmodeiとHuangは、AIの安全性が重要であるという点では一致しているが、どの程度の危険性が生じれば技術の進歩を減速させるのか、という点において意見が分かれている。フロンティアモデルを開発しているAmodeiの意見は重みがあり、多くの研究者がこれを支持している。一方、Huangは総合的な視点から現実的な解釈を示し、トランプ大統領を含む幅広い層から支持されている。AIについてこれ程までに議論が白熱することは稀で、米国社会は二派に分かれ、AI脅威論について、大論争が展開されている。

NvidiaはオープンソースAIの業界連合「Open Secure AI Alliance」を設立、AIセキュリティを強化する技術やツールを共有しサイバー攻撃を防御

NvidiaはオープンソースAIのアライアンス「Open Secure AI Alliance」を設立した。アライアンスは業界団体のイニシアティブで、Nvidiaの他に、Linux Foundationや主要IT企業から構成される。アライアンスはオープンソースAIの安全性を強化し、サイバー攻撃に備えることをミッションとする。アライアンスはセキュリティ技術やフレームワークやガードレールを開発し、これを業界団体で共有する。クローズドソースAIでセキュリティに関するインシデントが相次ぐ中、アライアンスは危険性をオープンな手法で制御するアプローチを取る。(下のグラフィックス、アライアンス加盟団体)

出典: Nvidia

アライアンスのミッション

アライアンスはサイバーセキュリティを強化するためには、オープンAIモデル、オープン・ハーネス、ツールが必要であると考える。サイバーセキュリティ責任者はオープンモデルを使うことで、インシデントを検査し、また、モデルを改良することで、AIシステムを安全に運用できる。現在、AIモデルの選択肢は少なく、少数のクローズドソースに限られる。しかし、これらシステムの内部構造はブラックボックスで、セキュリティ機能はベンダーに依存する構造となる。

クローズドソースのインシデントが多発

現実社会で、クローズドソースによるサイバーセキュリティのインシデントが相次いで発生している。OpenAIのフロンティアモデルがサイバーセキュリティの重大インシデントを引き起こした。モデルがOpenAIの試験環境から脱出し、レポジトリHugging Faceを攻撃し、サイトに侵入してベンチマークに関する情報を盗み出した。また、AnthropicとMetaも同様なセキュリティ・インシデントが発生したことを公表した。

オープンソースのセキュリティツール

アライアンスのメンバーはサイバーセキュリティツールを提供し、これを業界で共有することでAIシステムの安全性を強化する戦略を取る。加盟企業から30を超えるツールやAIモデルが提供され、アライアンスはこれらをオープンソースとして公開した。これらはAIスタックの全体をカバーし、主なツールとその提供企業は次の通りとなる:

  • 認証と権限付与:AIエージェントやサービスがシステムのリソースにアクセスするのを認証するフレームワーク
    • Agent Identity Reference Implementations (Okta)
    • asago (Red Hat)
  • ハーネス・レッドチームツール:AIエージェントを試験、監視、監査、管理するための枠組み
    • NOOA / NVIDIA Labs Object-Oriented Agent (NVIDIA)
    • RAMPART, Clarity, & Assert (Microsoft):レッドチームの検証ツール
    • Grok Build (SpaceXAI)
  • モデルセキュリティとランタイムの防衛:AIモデルを安全に実行するツールと、AIエージェントをセキュアに実行できるサンドボックス
    • NVIDIA OpenShell (NVIDIA):AIエージェント向けサンドボックス (※)
    • NeMo Suite & Garak (NVIDIA):NeMoのガードレールやデータ保護
    • DefenseClaw & Antares (Cisco):AIエージェント向けサンドボックス
    • Safetensors (Hugging Faceほか):モデルの重みを安全に格納する形式
    • Lightwell (IBMほか):セキュリティパッチの安全な配布モデル
  • 監視・評価・攻撃検知:AIエージェントの挙動を監視し、問題を評価し、攻撃のシグナルを検知するツール
    • ADR / Agentic AI Detection and Response (Uber)
    • Numbat (Perplexity)

(※) NVIDIA OpenShellはAIエージェントを安全に開発・実行する環境で、サンドボックス内でモデルを運用する(下のイメージ)。

出典: Nvidia

SAFE Guidelines

同時に、アライアンスは「Shared AI Findings Exchange (SAFE)」の設立を提唱した。SAFEはセキュリティに関するフレームワークで、AIセキュリティインシデント情報を共有し、サイバー攻撃に備えることを目的とする。これはNASAの「航空安全報告システム(Aviation Safety Reporting System)」をモデルにしたもので、エラーを収集・分析し、インシデントを未然に防ぐための仕組みとなる。参加メンバーが経験したセキュリティに関するインシデントや“ニアミス”などの社内情報を報告することで、サイバー攻撃への耐性を強化するガイドラインを生成し、これを業界で共有する。「SAFE」はワーキンググループを設立するため、会員から意見を求めている。

Nvidiaがオープンソースの先導者

米国ではAIモデルの殆どがクローズドソースで、オープンソースはNvidiaの「Nemotron」、SpaceXAIの「Grok-2」、Metaの「Muse Glimmer」などに限られている。Nvidiaがオープンソース推進者で、AIモデル「Nemotron」を公開するに留まらず、Open Secure AI Allianceの設立など、エコシステムの拡大を進めている。NvidiaはGPUなどAIプロセッサを提供しており、オープンソースの普及でビジネスを拡大させるという狙いもある。(下のグラフ、オープンソースはKimi K3やGLM-5.2など中国モデルがトップ集団を形成、米国モデルではInklingが6位で、Nemotron Ultra 3が7位)

出典: Artificial Analysis

AIエージェントのセキュリティ

NvidiaはAIエージェントのセキュリティが次の大きなチャレンジになると考える。企業はAIエージェントの展開で、クローズドソースとオープンソースを併用するハイブリッドなモデルを構成する。クローズドソースではOpenAIなどが提供するAPIを利用するが、オープンソースではシステムを自社のサーバで展開する。後者のケースでは、サイバー攻撃を防御する責任は運営企業にあり、サイバーセキュリティのフレームワークやツールが求められる。Open Secure AI Allianceがこの役割を担い、企業や団体がAIエージェントをセキュアに運用するフレームワークを提供する。

Nvidiaは世界最大のオープンソース企業!!、AIエージェント・フレームワーク「NemoClaw」を投入、大人気モデル「OpenClaw」を企業向けに展開

Nvidiaは開発者会議「GTC 2026」をシリコンバレーで開催し(下の写真)、CEOのJensen Huangが基調講演で、オープンソースについて最新情報を解説した。AIエージェント「OpenClaw」を企業向けに提供することを発表した。OpenClawは大好評のAIエージェントで、世界で利用者数が急拡大している。Nvidiaはセキュリティを強化した「NemoClaw」を投入し、企業は話題のAIエージェントを安全に利用できる。Nvidiaは多彩なオープンモデルを提供しており、世界最大のAIオープンソース・ソフトウェア企業となる。

出典: Nvidia

OpenClawの人気が爆発

世界でOpenClawが爆発的に広がっている。OpenClawとは個人向けのAIエージェントで、秘書のように生活や仕事をサポートする。ChatGPTのようなチャットボットとは異なり、OpenClawは情報を収集して整理するなど、実際にアクションを取り、指示された仕事を完遂する。OpenClawはPCやMacで稼働し、ファイルに格納しているデータを読み、タスクを実行する。OpenClawはPeter Steinbergerにより開発され、オープンソースとして公開され、これをダウンロードして、個人専用のAIエージェントを構築できる。OpenClawはインテリジェントが高く、人間のように自立的に稼働することから人気が沸騰した。OpenClawのダウンロード回数の伸びはほぼ垂直で、Linuxを遥かに追い越し、ヒットモデルとなった(下のグラフ)。

出典: Nvidia

OpenClawの危険性

OpenClawは極めて便利なAIエージェントであるが、同時に、極めて危険なツールでもある。OpenClawは利用者のPCのファイルを参照してタスクを実行するが、エージェントが間違って個人情報などを外部にリークする危険性がある。また、OpenClawは外部のサイトにアクセスし情報を収集するが、このプロセスでプロンプト・インジェクションなどサイバー攻撃を受けるリスクが極めて高い。このため、企業や一般消費者はOpenClawを使うのを控えてきた。

出典: Nvidia

NvidiaのNemoClaw

NvidiaはOpenClawのセキュリティを改良し、安全なAIエージェント「NemoClaw」を投入した(上の写真)。NemoClawはNvidia版OpenClawで、企業が高度なAIエージェントをビジネスで安全に使うことができる。また、操作性も大きく改良され、シンプルなコマンドでAIエージェントをセットアップできる。

NemoClawの構造

NemoClawはAIエージェントのフレームワークで、AIモデルを組み込み、外部のツールを使ってタスクを実行する(下の写真)。NemoClawはブレインとして、NvidiaのAIモデル「Nemotron」を搭載する。また、NvidiaはAIエージェントの実行ライブラリ「OpenShell」を投入した。OpenShellがガードレールの役割を果たし、NemoClawは安全なエリア(Sandbox)でビジネスをセキュアに実行する。

出典: Nvidia

エージェント基本ソフト

NvidiaはNemoClawを基本ソフトと捉え、AIエージェントを展開するうえでの戦略技術と位置付ける。一般に、基本ソフトとはWindowsやLinuxなどの制御システムを指すが、NemoClawはAIエージェントを稼働するためのフレームワークで、基本ソフトとしての属性を持つ。社会はAIエージェントやAGIに向かっており、この領域を誰が市場を制するのか、競争が白熱している。

Nvidaのオープンソース戦略

AIソリューションの開発においては対象市場が広大で、単一企業でこれをカバーすることはできない。Nvidiaはコミュニティと共同で、ここで開発されたオープンソースをベースに製品を構築する戦略を取る。Nvidiaは開発したAIモデルやツールをオープンソースとして公開し、企業や研究者が独自のモデルを開発することをサポートする。

Nemotron

基調講演でNvidiaのオープンソース最新モデルが登場した。「Nemotron」はNvidiaのファウンデーションモデルで、言語機能や推論機能を持ち、AIベースモデルとして使われる。最新モデルは「Nemotron 3」で(下の写真)、マルチモダル機能を搭載し、AIエージェントのブレインとして設計されている。

出典: Nvidia

Cosmos

「Cosmos」は「世界ファウンデーションモデル(World Foundation Model)」で(下の写真)、3D社会を理解する空間インテリジェンスを搭載する。3D空間の生成、フィジカルエンジン、シミュレーションなどの機能を持つ。

出典: Nvidia

GR00T

「GR00T」はロボット向けのファウンデーションモデルで、この基盤でヒューマノイド・ロボットを開発する(下の写真)。GR00Tは高度な推論機能を搭載し、汎用的にタスクを実行し、ロボットハンドを操作する。ロボットは開発環境「Isaac Lab」でスキルを学習する。

出典: Nvidia

Alpamayo

「Alpamayo」は自動車向けのソフトウェアで、クルマに搭載し自動運転車を構築する(下の写真)。Alpamayoは「Vision-Language-Action (VLA)」モデルを採用し、ビジョンと言葉を入力し、AIがこれをアクション(クルマの操作)に変換する。オープンソースの自動運転車の開発が急進すると予想される。

出典: Nvidia

BioNemo

「BioNemo」はバイオロジー向けのプラットフォームで、新薬開発などで使われる。BioNemoは分子構造を理解し、新しい分子を生成し、物質の特性をシミュレーションする機能を持つ(下の写真)。次の大きなブレークスルーはAIバイオロジーで起こるといわれている。

出典: Nvidia

Earth-2

「Earth-2」は気象を予想するためのAIモデルとなる(下の写真)。天気予報はスパコンで物理現象の偏微分方程式を解く手法で実行される。これに対し、Earth-2は地球のデジタルツインを使い、気象状況をシミュレーションし、気候や天気を高精度で予測する。

出典: Nvidia

リキャップ

基調講演の最後に、プレゼンテーションを総括する「Recap」が上映された(下の写真)。ヒューマノイドとJensen Huangロボットが楽器を演奏し、講演の内容を音楽に載せて吟じた。この曲を聞くことで講演概要を理解できる。今年のGTC基調講演はエンターテイメントの色彩が濃く、柔らかなムードで進行した。

(ビデオのリンク:https://www.youtube.com/watch?v=aDT9bBt9HxM)

出典: Nvidia

Armは事業戦略を「フィジカルAI」に大転換、AIチップの「CPU」部分を担いロボットの頭脳を構成、ヒューマノイドとロボタクシーの製品開発が急進

Armはプロセッサ開発会社でRISCベースのアーキテクチャを開発している。Armは主要プロセッサで採用され世界の標準技術となっている。Armベースのプロセッサはクラウドで使われ計算機インフラを支えている。Armはプラットフォームをデジタルからフィジカルに大転換すると発表した。これは「フィジカルAI」に事業をシフトすることを意味し、Armが自動運転車やロボットの頭脳を構成する。今年はArmを搭載したヒューマノイドが製品化され、ロボティックスの進化を陰で支える。

出典: Arm

Armの会社概要と事業形態

Armはイギリス・ケンブリッジに拠点を置く企業でプロセッサと関連ソフトウェアを開発している。Armの名称はよく知られているが、その事業形態については理解が広がっていない。ArmはIntelなどとは異なり、プロセッサを製造販売するのではなく、プロセッサの知的財産 (Intellectual Property)をライセンスする形態を取る。知的財産とはプロセッサの設計図で、CPUコアの回路、プロセッサのアーキテクチャ(命令セット)、システム構成(チップに実装するときのインターフェイス)などで、企業はこれをベースに回路を最適化して独自の製品を開発する。AppleやQualcommやNvidiaなど主要企業がArmの知的財産をベースに独自プロセッサを開発しこれを販売している。

次世代GPUシステム

NvidiaはArmと提携し知的財産のライセンスを受け次世代GPUシステム「Vera Ruben」を開発した。このシステムは「Vera CPU」と「Ruben GPU」で構成されるスーパーチップとして製品化された(下の写真)。NvidiaはVera CPUの開発でArmから「Olympus」のライセンスを受け、これをベースに88コアの独自のCPUを開発した(下の写真、水色のチップ)。RubenがGPUとして数値演算を超高速で実行し(金色の二つのチップ)、VeraがCPUとしてシステムの制御などを実行する。Linuxなどの基本ソフトがVeraで稼働しシステム全体を制御する。

出典: Nvidia

エッジプロセッサ

またNvidiaは、ロボットや自動運転車向けのプロセッサ「Jetson Thor」を提供しているが(下の写真)、ここでもCPU部分はArmのアーキテクチャを採用している。Jetson Thorはシングルチップ「Silicon-on-Chip」構成で、一つのチップにGPU「Nvidia Blackwell」とCPU「Arm Neoverse-V3AE」を搭載する。CPUはArmの「Neoverse」ファミリーのハイエンドモデル「V-Series」でクラウドやAIプロセッサとして使われる。

出典: Nvidia

配送ロボット

自動運転技術を開発するNuroはNvidiaのエッジプロセッサを使ってロボ配送車両を開発した(下の写真)。ロボタクシーを小売店舗向けに適用し、走るスーパーマーケットとして展開している。クルマのブレインとして「NVIDIA DRIVE AGX Thor」を搭載している。ArmはこのプロセッサのCPUの部分を司り、システムの制御を実行する。

出典: Arm

ヒューマノイド・ロボット

Boston Dynamicsはヒューマノイド・ロボット「Atlas」を開発している(下の写真)。Atlasは関係会社であるHyundai Motor(現代自動車)の製造工場に導入され、人間の作業員に代わりパーツのハンドリングを実行する。また、Boston DynamicsはGoogle DeepMindと提携し、フロンティアモデル「Gemini Robotics AI」を採用することを発表した。これにより、ロボットのインテリジェンスが格段に向上し汎用的なタスクを実行できると期待されている。AtlasはJetson Thorを搭載し、Nvidiaのロボット開発環境「NVIDIA Isaac Lab」で開発された。

出典: Boston Dynamics

フィジカルAI市場が急成長

自動運転車やロボット向けのプロセッサではNvidiaが先行しており、これをQualcommが追う展開となっている。QualcommはフィジカルAIプロセッサとして「Dragonwing」(下の写真)を投入した。DragonwingはQualcommのCPU「Oryon」を搭載し、NPUと共にAI処理を高速で実行する。CPU「Oryon」はQualcommが設計したプロセッサであるが、ここにArmのアーキテクチャを採用している。具体的には、Armのインストラクション・セット(機械命令のセット)を実装し、ソフトウェアの互換性を担保する構成となる。Qualcomm Oryonは自動運転車やロボットで採用が始まり、フィジカルAI市場が急速に拡大している。

出典: Qualcomm 

AIブームを陰で支える

ロボタクシーやヒューマノイド・ロボットでNvidiaやQualcommのAIプロセッサが使われ、製品開発が進み多彩な製品がリリースされている。GPUやNPUがエッジプロセッサのエンジンとなり注目を集めるが、その背後でArmベースのCPUが重要な役割を担っている。GPUやNPUはAIシステムの中の数値計算エンジンとして位置付けられ、CPUは基本ソフトを稼働させシステム全体を制御し効率的な演算を司る。多くのエッジプロセッサがArmアーキテクチャを採用しており、これによりソフトウェアの互換性が保証され、半導体を跨りシステムを稼働することができる。Armはクラウドなどデジタルな領域から、ロボティックスなどフィジカルな領域に事業を拡大し、AIブームを陰で支える。

Nvidiaはオープンソース自動運転技術「Alpamayo」を投入、AI推論機能を搭載しクルマの知能が劇的に向上、停滞しているロボタクシー開発が急進するか

NvidiaのCEOであるJensen HuangはCES 2026の基調講演でAI技術の最新情報を公開した(下の写真)。講演のハイライトはロボティックスで、Nvidiaはヒューマノイド・ロボットと自動運転車を開発するための最新のプラットフォームを投入した。ロボットと自動運転車は共通項が多く、AIフロンティアモデルの推論機能を搭載することでインテリジェンスが格段に向上した。Nvidiaは自動運転車開発フレームワーク「Alpamayo」を開発し、これをオープンソースとしてリリースした。メルセデス・ベンツなどの自動車メーカーはこれをベースに開発を開始し、今年は多彩な製品が登場することになる。

出典: Nvidia

自動運転技術「Alpamayo」

自動運転フレームワーク「Alpamayo」は画期的な技術で、ヒューマノイド・ロボットの技法をクルマに適用した構造となる。クルマはカメラが捉えた映像を入力とし、これを解析することでシーンの意味を理解し、次のトラジェクトリ(進路)を出力する(下の写真)。つまり、クルマはカメラの映像から、人間のように状況を把握し、これをステアリングやブレーキ操作などの機械命令に変換する。特に、Alpamayoは高額なレーザーセンサー(Lidar)を使うことなく、カメラだけで自動走行できることが最大の利点となる。

出典: Nvidia

VLAモデル

この手法は「VLA (Vision-Language-Action)」モデルと呼ばれ、ビジョン(カメラの映像)と言語(人間の命令)をAIモデルが考察し、アクション(デバイスを操作する機械命令)を生成する仕組みとなる。これはロボット開発のコア技術でVLAモデルがロボットのブレインを構築する(下のグラフィックス)。Nvidiaはこの手法をクルマに適用し、自動運転技術のインテリジェンスが高度に進化した。

出典: OpenVLA

AlpamayoのVLAモデル

AlpamayoのVLAモデルはカメラの映像や人間の指示を入力とし、ドライビングにおける判断を下す(Driving Decision)システムとなる(下の写真)。このモデルの特徴は、AIの推論機能により、判断した理由(Causal Reasoning、因果推論)を説明する機能が搭載されたことにある。従来の自動運転車のアルゴリズムはブラックボックスで、クルマの挙動を理解することができなかった。AlpamayoのVLAモデルはアルゴリズムが下した判断の根拠を出力し、クルマの挙動を理解できるようになった。

出典: Nvidia

因果推論(Causal Reasoning)とは

VLAモデルを実装したことでクルマはシーンを解析して因果推論(Causal Reasoning)を実行する。因果推論とは、原因とそれによって生じる事象を推定する機能で、クルマが特定の事象からそれに続く事象を推測することができる。例えば、走行中に歩道からボールが転がってきたら、AIモデルは「ボールを追って子供やペットが飛び出す可能性があり」と次の事象を推論する(下の写真)。更に、AIモデルは「速度を落とし停車できる準備をすること」と、次に取るべきアクションを出力する。

出典: Nvidia

システム構成

Alpamayoはオープンソースの自動運転車開発のプラットフォームで、メーカーはこのモデルを最適化することで独自の製品を開発する。AlpamayoはAIモデル、シミュレーション環境、データセットから構成され、インテリジェントな自動運転技術を開発するスタックとなる:

  • AIモデル「Alpamayo 1」:AIフロンティアモデル、100億のパラメータ、思考の連鎖など高度な推論機能
  • シミュレーション環境「AlpaSim」:クルマのシミュレーション環境、アルゴリズム教育などで利用、異なるシーンを生成し多彩な条件で試験を実行(下の写真)
  • データセット「Physical AI Open Datasets」:1,700時間に及ぶ路上走行試験のデータを格納、システムの教育に活用
出典: Nvidia

メルセデス・ベンツに搭載

Alpamayoはメルセデス・ベンツ「Mercedes-Benz CLA」に搭載され、「レベル2++」の自動運転技術を実現した(下の写真)。これは高度な運転支援システムで、市街地を自律的に走行する。実際にNvidiaはMercedes-Benz CLAがサンフランシスコ市街地をドライバーの介入無く走行するデモを示した。込み合った道路を長時間にわたりクルマが自動で走行し、その完成度の高さを示した。メルセデス・ベンツはAlpamayoをベースに完全自動運転車を開発する。また、Uber、Jaguar Land Rover、Lucid MotorsがAlpamayoをベースとする自動運転車を開発している。

出典: Nvidia

今年の主役はロボット

Nvidiaの基調講演はロボットが主役でヒューマノイド・ロボットからショベルカーまで多彩な形状のモデルが登場した(下の写真)。Nvidiaは自動運転車を含めロボットの開発環境をオープンソースとして公開しており、メーカーはこれを無償で利用し独自の製品を開発する。Nvidiaのビジネスモデルはプロセッサやサービスを有償で販売することで、エコシステムの拡大が重要な戦略となる。特にAlpamayoは高度に知的なモデルで、停滞している自動運転車の開発が一挙に進み、今年は多彩な製品が生まれると期待される。

出典: Nvidia