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Amazonはリストバンド「Halo」を投入、究極の健康管理ウエアラブルでAIが身体とメンタルの状態をモニター

Amazonは健康管理のウエアラブル「Amazon Halo」(下の写真)の出荷を開始した。これはリストバンドタイプのウエアラブルで、身体情報をモニターするセンサーとして機能する。ディスプレイは備えておらず、健康管理に特化したセンサーで、スマホアプリとペアで使う。実際に使ってみると、フィット感は良く、身体やメンタルの状態を把握でき、健康管理デバイスの新しい流れを感じる。

出典: Amazon

Amazon Haloの概要

Amazon Haloは右手または左手の手首に装着し、身体状態をモニターするために利用する。四つの機能を搭載しており、運動量、睡眠の質、声のトーン、及び、体脂肪率を計測する。計測したデータはスマホの専用アプリ「Amazon Halo App」に表示される(下の写真)。スマートウォッチではディスプレイに情報が表示されるが、Amazon Haloは健康管理センサーとしてデザインされ、最小限の機能だけを搭載している。価格は99.99ドルでAmazon Prime会員向けには74.99ドルで販売されている。Amazon Haloはサブスクリプション方式のデバイスで、月額3.99ドルの使用料金を支払う。

出典: Amazon / VentureClef

運動量をモニター

Amazon Haloは運動量をモニターし、体を動かした量をポイントで表示する(下の写真、左側)。一週間に150ポイントを得ることが目標で、その過程がグラフで表示される。1ポイントは1分間に中程度の運動をする量となる(右側)。中程度の運動とは、速足でのウォーキングやほうきで庭を掃除する程度の運動で、医療学会American Heart Associationは一週間に150分の運動を推奨している。Amazon Haloは加速度センサーと心拍数センサーで運動量を算定する。

出典: VentureClef

睡眠の質を測定

Amazon Haloは睡眠の状態を測定し、その質を100点満点のスコアで示す(下の写真、左側)。スコアは睡眠時間と睡眠内容を総合的に評価したもので、70点を下回ると対策が必要となる(右側)。スコアは睡眠時間の他に、寝入るまでの時間、ステージごとの時間、夜中に起きた回数などを加味する。睡眠のステージは「Hypnogram」と呼ばれ、Light、Deep、REMから成る。Lightは浅い眠りで、睡眠時間の半分を占める。Deepは深い眠りで、睡眠の前半に起こる。深い眠りの中で身体の細胞が修復され、健康維持に深くかかわるとされる。REM(Rapid Eye Movement)は脳が活動して覚醒状態にある眠りで、このステージで人は夢を見たり、記憶が整理される。このスコアで睡眠の状態を把握し、問題があればこれを改善する。ただ、睡眠の質は人により異なり、スコア以外に、朝起きた時の爽快感や日中の気分などが重要な指標となる。

出典: VentureClef

声のトーンを分析

Amazon Haloに搭載されたマイクが利用者の声を聞き、それをAIで解析して、声のトーンを把握する(下の写真、左側)。声のトーンとは言葉に含まれた感情で、四つに分類され、Amused、Content、Reserved、Displeasedとなる(右側)。Amusedは楽しい時の、Contentは満足した時の声のトーンとなる。Reservedは静かな状態で、Displeasedは怒った時の声のトーンとなる。実際に使ってみると、声のトーンを通じてメンタルの状態を把握できる。その日の気分を正確に把握するのは難しいが、Amazon Haloはこれを客観的に分析しグラフで提示する。また、Amazon Haloは会話の”鏡”として機能し、自分の声が相手にどのような印象を与えているのかを理解できる。この機能を使うには、事前に声を入力し、AIが本人を特定できるよう教育しておく。

出典: VentureClef

体脂肪率を推定

Amazon Haloは体脂肪(Body Fat)の割合を計測する(下の写真、左側)。スマホカメラで身体を撮影し(右側)、AIが画像を解析し脂肪量(Fat Mass)を推定する。体重については利用者が測定して入力する。これにより体脂肪率が分かる。

出典: Amazon

体脂肪率は健康管理に重要な指標で、この値が健康寿命や病気発症に関連する。体脂肪率が高いと心臓疾患や糖尿病の発症確率が上がる。体重は食事などで頻繁に変わるが、体脂肪量は変動が少なく、その変化が健康に大きく影響する。このため、二週間おきに体脂肪率を測定することを推奨している。体脂肪については、多くの測定法があるが、Amazon Haloはコンピュータビジョンと機械学習でイメージを解析する手法を取る。AIが体形から体脂肪を推定するが、病院での測定技術(Dual-Energy X-Ray Absorptiometryなど)と同等の精度であるとしている。

健康管理のコンテンツ

Amazon Haloは研究所「Labs」を運用しており、ここに健康管理のコンテンツを揃えている。コンテンツはワークアウトや睡眠の質を向上させるプログラムやマインドフルネスのレッスンなどから成る。ワークアウトは自宅でできるエクササイズが揃っており、ビデオでインストラクターの指示に従って体を動かす(下の写真)。ストレングス、カーディオ、ヨガ、バー(Barre、右側下段)の分野があり、目的に合ったプログラムを選択できる。バーとはバレエダンスに基づくワークアウトで、ハリウッドのセレブが行っていることで人気となった。Appleはフィットネスのための有料プログラム「Apple Fitness+」をスタートしたがAmazon Haloはこれに対抗する位置づけとなる。

出典: VentureClef

実際に使ってみると

左手にはApple Watchを着けているので、Amazon Haloは右手に装着して利用している。Apple Watchより一回り小型の形状で、着装感は軽く負担は感じない。デバイスを操作する必要はなく、Amazon Haloが自動で身体状態をモニターするので、ウエアラブルというよりはバイオセンサーを着装している感覚に近い。

一番驚かされたデータ

睡眠を分析した情報に一番驚かされた。日ごとに睡眠のスコアは大きく変わり、また、睡眠のパターンも一定ではない。よく眠れた日とそうでない日が明らかになり、今までは、感覚的に寝不足を感じていたことがデータで示される。次のステップとしては、上述のLabsに登録されているコンテンツを使って、睡眠の質を上げることになる。

リアルタイムで声のトーンを分析

Amazon Haloが分析する声のトーンも参考になる。普段の会話の声のトーンを把握し、次は、好感を持ってもらえる声のトーンにアップグレードするステップとなる。また、スピーチで好まれるしゃべり方を学習することもできる。Amazon Haloはリアルタイムで声のトーンを解析する機能もあり(下の写真、右側)、このツールとLabsに掲載されているレッスンを併用して声のトーンを改良する。

出典: VentureClef

バイオセンサー

Amazon Haloは人気のウェアラブル「Fitbit Tracker」からディスプレイを取り外した形で、リストバンド形状のバイオセンサーとしてデザインされている。センサーが収取するバイオデータをAIが解析し、健康管理のポイントをアドバイスをする。実際に使ってみると、健康管理のウエアラブルは生活に必須のデバイスであると感じ、これから需要が大きく伸びると思われる。できることなら、血圧や血糖値や酸素飽和度を測定する機能があれば健康維持に大きく寄与する。

全米で顔認識技術の使用が禁止される、AIの判定精度が悪く人種差別や誤認逮捕につながる

米国連邦議会は顔認識技術の使用を全米で禁止する法案を提案した。これは連邦政府関係者が顔認識技術を使うことを禁止するもので、AIの危険性が全米レベルで認識されたことを意味する。既に、サンフランシスコ市などは顔認識技術の使用を禁止しているが、この流れが全米に拡大した。この背景には、アメリカ社会の人種差別に関する構造的な課題がある。

出典: MIT Media Lab

法案の概要

この法案は「Facial Recognition and Biometric Technology Moratorium Act」と呼ばれ、民主党の有力議員により提案された。法案は連邦政府の治安部門が顔認識技術(facial recognition technology)を所有し、これを使うことを禁じている。更に、連邦政府から助成金を受けている地方政府にも同様の規制を求める。

人権問題との関連

米国では警察が顔認識技術を使って犯罪捜査をすることに対し批判的な意見が多く、議論が続いていた。この中で、警察が黒人男性George Floyd氏を死亡させたことで、全米各地で抗議デモが続いている。警察の捜査手法に抗議するもので、顔認識技術もその一つであるとの認識が広がっている。顔認識技術は完全ではなく、判定精度に偏り(Bias)があり、犯罪捜査で黒人に不利になっているという事実がある。

IBMは事業を停止

このような社会情勢の中で、主要IT企業は顔認識技術の使用中止を表明した。6月9日、IBMは顔認識技術の開発と販売を中止し、事業から撤退することを発表した。この理由として、顔認識技術は人種差別を助長する要因となっており、IBMは技術が住民監視や、人種特定に使われることに反対し、国民の人権と自由を守ると表明した。

Amazonはモラトリアムを宣言

Amazonはその翌日、顔認識技術の使用を制限すると発表した。具体的には、顔認識技術「Rekognition」を警察が使用することを1年間中止する。警察による過剰な捜査手法が問題になり、顔認識技術もこの一部として認識され、Amazonは国民世論に押されモラトリアムを宣言した形となった。(下の写真、Rekognition:アマゾンクラウドの機能で使用料が安く、多くの警察で使われている。)

出典: Amazon  

顔認識技術の問題点

多くの企業が顔認識技術を提供しているが、非難の矛先はAmazonに集中している。Amazonの顔認識技術Rekognitionは他社に比べて判定精度が低いとの指摘がある。更に、人種間で判定精度が大きく異なるという問題を抱えている。白人では判定精度のエラー率は3.08%であるが、黒人のエラー率は15.11%と高い。更に、白人男性ではエラー率はゼロであるが、黒人女性のケースでは31.37%と高い。つまり、犯罪捜査でRekognitionが使われるが、黒人の判定精度は低く、これが誤認逮捕につながる。(下のテーブル:主要各社の顔認識技術とその判定精度、Amazonは下から二段目、各社とも黒人の判定精度は低い)

出典: Inioluwa Deborah Raji et al.

警察の利用方法

Rekognitionは全米の多くの警察で利用されている。犯罪捜査で被疑者の写真から身元を割り出すためにRekognitionが使われる。犯罪現場で監視カメラが撮影した被疑者の顔写真と、犯罪者データベースを比較して、その人物の名前を特定する。被疑者の顔写真を入力すると、Rekognitionがその特徴量でデータベースを検索し、よく似ている顔を出力する(下の写真)。犯罪者データベースには収監された犯罪者の顔写真が格納されている。被疑者の身元を簡単に特定できるため、Recognitionは犯罪捜査で大きく役立っている。

出典: Washington Post

顔認識技術が誤認逮捕の原因

顔認識技術を使った犯罪捜査で恐れていた事態が発生した。New York Timesなどがこれを報道し、AIの危険性が再認識された。ミシガン州デトロイト警察は顔認識技術を使い犯罪捜査を進めている。監視カメラに写った顔写真を顔認識システムに入力し、その人物身元を割り出す。このケースでは、AIの判定結果は間違いで、黒人男性を誤認逮捕し長時間にわたり拘留した。警察はAIが判定する結果に基づき被疑者の逮捕に踏み切った。記事は、デトロイト警察は顔認識技術はRecognitionではなく、日本企業など技術を使っていると報じている。

アルゴリズムがバイアスする理由

人種間で判定精度が大きく異なる理由は明白で、教育データが偏っているためである。アルゴリズムは数多くの白人の顔写真で教育され、白人についての判定精度は高くなる。一方、黒人の教育データ数は少なく、そのため、アルゴリズムの判定精度が下がる。このため、教育データを整備するとき、人種間でばらつきをなくすることで問題を解決できる。

根強い不信感と地域の治安

顔認識技術が社会問題となったのは、判定精度だけでなくその利用方法にある。仮に、アルゴリズムのバイアスが修正されても、顔認識技術への抵抗感は根強く存在する。警察の犯罪捜査で、顔認識技術が特定人種の被疑者を逮捕する方便として使われる、と解釈する人は少なくない。また、国家が顔認識技術で国民の行動をモニターしていると感じる人も少なくない。その一方で、顔認識技術が犯罪捜査に役立ち、地域の治安に大きく貢献していることは事実である。特に、テロリスト対策で顔認識技術は国家安全保障に寄与している。

出典: Deepak Babu Sam et al.

政府のガイドライン

つまり、顔認識技術に関するガイドラインの欠如で不信感が増幅され、技術が治安に生かされていない。今は、統一した基準はなく、Amazonなど各社は独自のルールを作り、事業を進めている。一方、ある新興企業は犯罪すれすれの手法で顔認識技術を開発し問題が深刻化している。このため、AmazonやMicrosoftなどIT企業各社は連邦政府に対し規制の制定を呼び掛けている。上述の法令は顔認識技術の使用を全面的に禁止するもので、運用ルールについては触れていない。これが最初のステップとなり、政府のガイドライン制定が進むことが期待されている。

AmazonはPrime Airの最新モデルを公開、ドローンに搭載されたAIが周囲の危険物を高精度で判定

AmazonはAIカンファレンス「re:MARS」で配送ドローン「Prime Air」の最新モデルを公開した(下の写真)。ドローンはAIで映像を解析し、周囲のオブジェクトを正確に判定する。Prime Airの航続距離は15マイル(24㎞)で5ポンド(2.3㎏)までの積み荷を搭載でき、注文を受けた商品を30分以内で配送する。発表当日に米国政府の認可を受け、Amazonはドローン商用運行を数か月以内に始めると明言した。

出典: Amazon  

設計コンセプト

Prime Airが飛行する様子はビデオで公開された。Prime Airはハイブリッドデザインで垂直モード(Vertical Mode)と飛行機モード(Airplane Mode)の二つの形態で飛行する。垂直モードは、ヘリコプターのように、離着陸時に垂直に飛行する(下の写真上段、ドローンのフレームが地上と平行)。上空でドローンは飛行機モードに移り、水平に高速で飛行する(下の写真下段、ドローンの本体が地上と平行)。Prime Airは垂直に離陸したあと、機体を傾け、本体が地上と平行になる状態で飛行する。

高度な自動飛行技術

いまでは多くのドローンが自動飛行機能を搭載し目的地まで自律的に飛行する。しかし、想定外の事象が起こると(着陸地点に障害物があるなど)、ドローンは自律的に判断できず、監視センターのオペレータの指示に従って動作する。一方、Prime Airは高度なAIを搭載しており、ドローンが自律的に問題を回避する。例えば、着陸地点に人が立ち入れば、降下を中断し、人が立ち去るのを待つ。また、飛行中に障害物に接触する恐れがある場合、ドローンはそれを把握し回避措置を取る。

出典: Amazon  

センサーとオブジェクト認識

ドローンは複数種類のセンサーを搭載し、それをAIで解析することで周囲のオブジェクトを高精度で検知する。飛行中は、静止しているオブジェクト(煙突や電柱など)はStereo Vision(3Dカメラ)で検知する。また、動いているオブジェクト(パラグライダーやヘリコプターなど)はAmazonが開発したComputer Vision(AIカメラ)で検知する。Prime Airは自動運転車のように静止及び移動するオブジェクトを認識する。

着陸時のオペレーション

Prime Airは敷地に着陸してパッケージをリリースする構造となっている。そのため、着陸地点に人や動物がいなく、障害物がないことを確認する必要がある。ドローンに搭載されている赤外線カメラと光学カメラ(下の写真、左側)のイメージをAIで解析しこれらを検知する。ただ、この方式では電線や洗濯物ロープなどは検知することができない。このため、Prime AirはStereo Vision(3Dカメラ)を使い電線などのラインを検知する(下の写真、右側、斜めのライン)。

出典: Amazon  

温暖化ガス対策

Amazonは配送過程で排出する二酸化炭素の量をゼロにするプログラム「Amazon Zero」を展開している。2030年までに配送プロセスの50%で二酸化炭素排出量をゼロにすることが目標で、ドローンがこれに大きく貢献すると期待されている。クルマで商品を配送すると大量の二酸化炭素が排出されるが、バッテリーで飛行するドローンはクリーンに商品を配送できる。

商用運行にめど

Amazonは、発表と同じ日に、アメリカ連邦航空局(Federal Aviation Administration)からPrime Airをパッケージ配送業務に使用することの認可を受けた。Amazonは数か月以内にPrime Airの商用運行を始めるとしている。これに先立ち、Alphabet子会社Wingは2019年4月、米国で初めてドローンによる物資配送の認可を得た。Amazonが認可を受けた二番目の会社となり、いよいよ米国でもドローン商用運行が始まることになる。

出典: Twitter @ Jeff Bezos  

Re:MARSとは

MARSとはMachine Learning, Automation, Robotics and Spaceの略でAIとロボットと宇宙をテーマとするカンファレンスで、2019年6月4日からラスベガスで開催された。この模様はLive BlogやTwitchでリアルタイムに配信された。カンファレンスでは最新のAI技法が議論され、ロボットのデモが実施された(上の写真、Bezosが手袋インターフェイス(Haptic Gloves)で二台のロボットアームを操作している様子)。また、Bezosのロケット会社Blue Originの宇宙船「New Shepard Capsule」が展示され注目を集めた。昨年まではBezosが主催する閉じられたイベントであったが、今年はAmazonのカンファレンスとなり一般に公開された。

Amazonは商品配送に自動運転車を導入、Auroraなど自動運転ベンチャーに大規模な出資

Amazonは自動運転ベンチャーAuroraに大規模な出資を実施した。Amazonが自動運転車の開発に乗り出すとの憶測もあるが、実際には、商品配送に自動運転車を導入する準備を進めている。Amazonの配送車両やトラックを自動運転化し人件費を削減する。また、自動走行するロボットが配送のラストマイルを担う。🔒

出典: Aurora

Amazonは宅配ロボット「Scout」の運用を開始、人に代わりロボットが商品を配達する

Amazonは配送ラストマイルを担うロボット「Amazon Scout」の実証実験を始めた。Amazonで購入した商品は人間ではなくロボットが配送する。既に多くのベンチャー企業が配送ロボットを開発しているが、Amazonの参入で技術競争が激しくなる。同時に、AmazonがScout投入したことは、商品の宅配をロボットが担う時代が到来したことを意味する。

出典: Amazon

Amazon Scoutの概要

Amazonは2019年1月、配送ロボットAmazon Scout (上の写真)を発表した。Scoutはクーラーボックスに車輪が六つ付いた形状で、自動運転車のように自立走行する。Scoutは歩道を人が歩くくらいの速さで進み、注文を受けた商品を消費者宅まで配送する。プライム会員向けのサービスで、Amazonで買い物をして同日配送などのオプションを選択すると、Scoutがその商品を無料で配送する。

トライアルを開始

Amazonは6台のScoutを使ってSnohomish County(ワシントン州)でトライアルを始めた。Scoutの運用は月曜日から金曜日までの日中に限られる。注文を受けるとScoutが最適ルートを算定し、自動走行して商品を宅配する。当初は、Amazonのスタッフが安全確認のためにロボットに随行する。

商品の受け取り

Scoutが配送先に到着すると消費者宅の玄関前の歩道に停止する。消費者のスマホにメッセージが送信され、Scoutが到着したことを知らせる。消費者はアプリを操作(PINの入力か)してScoutの貨物ベイのカバーを開き、商品を取り出す(下の写真)。Scoutは商品が取り出されたのを確認して、カバーを閉めて、自律的に帰還する。

出典: Amazon

住民サービスの向上

Scoutはシアトルのアマゾン研究所で開発された。Scoutは歩道を自律走行し、路上のペットや歩行者をよけて安全に移動する。Snohomish CountyはScoutによる商品配送を歓迎するとのコメントを出している。住民サービスが向上するとともに、環境にやさしい方式での配送に期待を寄せている。

地方政府の評価が分かれる

一方、配送ロボットを歓迎しない自治体も少なくない。サンフランシスコは配送ロボットが歩道を走行することを禁止している。市街地では歩道の幅は狭く、配送ロボットが高齢者や身体障碍者の通行を妨げる、というのがその理由。反対に、配送ロボットを積極的に受け入れる自治体は多い。上記に加え、シリコンバレーのMountain ViewやSunnyvaleは配送ロボットが次世代インフラを支える基礎技術と評価し、実証実験を進めている。

技術的課題課題

Scoutなど配送ロボットは歩道を走行して商品を配送する仕組みとなる。歩道の走行は一般道路の走行より難しいとされる。歩道は狭く歩行者で込み合っている。更に、人は歩道を整然と歩くのではなく、ロボットが予測できない行動を取る。歩道を集団で歩いたり、商店から歩道に飛び出すことも珍しくない。歩道にはカフェのテーブルや自転車などが置かれており、配送ロボットはこれらの事象を理解して対応することが求められる。

受け取り手順の問題

更に、人間でなくロボットが商品を届けると、受取手順が問題になる。高級住宅地では敷地に入る際にマニュアルでゲートを開ける必要がある。また、アパート形式の建物では配送ロボットは玄関先まで行くことができない。戸建ての住宅であっても、到着した際に、受取人が不在の時は配送ロボットは荷物を玄関先に置いておくことができない。配送ロボットが通行人によりいたずらをされるケースも報告されている。今後、実証試験などを通してこれらの課題を解決する必要がある。

実際に事故が発生

ロボットが生活に入ってくる中、全米各地で事故が報告されている。Washington(コロンビア特別区)のショッピングモールGeorgetown Waterfrontで、警備ロボット「Knightscope」はステップで転倒し池に転落した(下の写真)。警備ロボットの厳格なイメージが傷つき、企業はハードウェア以上のダメージを受けた。

また、配送ロボット「KiwiBot」はBerkeley(カリフォルニア州)で配送中に突然火を噴きだし火災となった。消防が駆け付ける前に周囲の通行人が消し止め大事には至らなかったが、企業イメージの低下は避けられない。これらの事故が示しているように、ロボットの技術完成度はまだまだ未熟で、抜本的な技術革新が求められる。

出典: Bilal Farooqui

ロボット配送時代に

Amazonはラストマイルの配送ではドローン「Prime Air」の技術開発を早くから始めているが、ロボット配送では市場参入が遅れた。AmazonがこのタイミングでScoutを投入したことは、配送ロボット市場の機が熟したと判断したのかもしれない。解決すべき課題は多いが、Amazonの参入で市場が活性化し、一気にロボット配送の時代に突入する予兆を感じる。