カテゴリー別アーカイブ: ドローン

Verizonは5G通信網を使った企業向けシステムを公開、UPSと共同で商品宅配コネクティッド・ドローンを開発

電子機器の展示会CES 2021は、今年はすべてデジタルで開催された。基調講演ではVerizon CEOのHans Vestbergが5Gの最新技術とそれをベースとする企業向けソリューションを公開した(下の写真)。5Gが生活の中に入ってきたが、なかなかそのメリットを実感できないため、Verizonは「5G Just Got Real」というキャンペーンを展開し、ビジュアルにその威力をアピールしている。CESでは、5Gの大容量・低遅延時間通信を体感できる様々なソリューションが公開された。

出典: Verizon

コネクティッド・ドローン

Verizonはドローン開発会社Skywardを有し、通信網に接続したコネクティッド・ドローン(Connected Drones)を開発している。両社は配送大手UPSのドローン部門UPS Flight Forwardと提携し、ドローンによる商品デリバリーシステムを開発した。2019年に、連邦航空局(Federal Aviation Administration)よりドローン運行の認可を受け、4G LTE通信網による運用を開始した。

Gネットワークでの実証試験

現在は、Verizonの5G高速通信サービス「5G Ultra Wideband」をベースとするドローン配送サービスをフロリダ州ザビレッジーズにおいて実証試験を進めている。ドローンは配送のラストマイルを担い、UPSの配送車両から離陸し、目的地に商品を配送する(下の写真)。ドローンは車両の屋根にドッキングし、スタッフが車両内から荷物を装着する仕組みとなる。

出典: Verizon

Skywardの概要

Verizonの子会社Skywardはオレゴン州ポートランドに拠点を置く企業で、ドローンを商用運行するためのソフトウェアを開発している。UPS Flight Forwardなどの事業者がこのソフトウェアを使って、ドローンの配送ルートを設定し、飛行中は運行状態をモニターする。また、フィールドにおいては、ドローン飛行のためのアプリ「InFlight Mobile App」で機体を制御する(下の写真)。ディスプレイにフライトに必要な情報「Airspace Map」が表示され、フライトできるエリアや建造物などが示される。

出典: Skyward

低遅延時間で高信頼性ネットワーク

商用運行ではドローンが設定されたルートを自動飛行し、それをオペレータが遠隔で制御する(下の写真、UPS Flight Forwardのドローン)。ドローンをリアルタイムで管理するためには、5Gの低遅延で高信頼性のネットワークが必須要件となる。将来は、配送センターが数多くのドローンを一括して運用することになり、多数のデバイスをセキュアに通信できるネットワークが求められる。このゴールに向かって、VerizonとSkywardは5Gによるドローン管理システムを開発している。

出典: Verizon

ロボットを遠隔で運用

Ghost Roboticsはペンシルベニア州フィラデルフィアに拠点を置く企業で、四つ足で歩行するロボット(Quadrupedal Unmanned Ground Vehicles)を使ったソリューションを開発。ロボットは軍事やレスキューなどのミッションで使われ、車両や人間が立ち入れない領域でセンシングすることを目的とする。火災現場でロボットが屋内に入り、がれきの中を歩行し、カメラやセンサーで現場の状況やガス濃度などを計測する。ロボットの運行ではデバイスをリアルタイムに制御し、センシングしたビッグデータを送信するため、Verizonの5Gネットワークが使われる。

出典: Verizon

バーチャル美術館

Verizonはメトロポリタン美術館(Metropolitan Museum of Art)と共同で仮想展覧会を開発した(下の写真)。この企画は「The Met Unframed」と呼ばれ、スマホで美術館の中を歩き作品を鑑賞できる。メトロポリタン美術館はコンテンツをデジタルで公開しており、これをVerizon 5Gネットワークで送信し、スマホ上のARでインタラクティブに見ることができる。

出典: Metropolitan Museum of Art

(下の写真右端:中世オランダの画家Margareta Havermanの作品「A Vase of Flowers」。その当時、緑色の顔料(Pigment)は無く、Havermanは青色と黄色を混ぜて緑色を作った。しかし、時が経るにつれ、黄色が劣化し緑色が青色に変色した。このため、花の葉は青色をしている。その当時、女性画家はヌードを描くことは認められず、身の回りの情景をモチーフとした。バーチャル博物館でこれらの解説を音声で聞きながら作品を鑑賞する。)

企業向け5Gソリューション

Verizonは5Gで世界のリーダーとして技術開発を進めている。4Gでは一般消費者向けのアプリケーションが中心であったが、5Gでは対象が企業ユーザーとなる。このため、CESではエンタープライズソリューションを中心に、利用者が5Gの恩恵を肌で感じることができるデモを実演した。今年は、企業向けの5Gが本格的に立ち上がる年となる。

AmazonはPrime Airの最新モデルを公開、ドローンに搭載されたAIが周囲の危険物を高精度で判定

AmazonはAIカンファレンス「re:MARS」で配送ドローン「Prime Air」の最新モデルを公開した(下の写真)。ドローンはAIで映像を解析し、周囲のオブジェクトを正確に判定する。Prime Airの航続距離は15マイル(24㎞)で5ポンド(2.3㎏)までの積み荷を搭載でき、注文を受けた商品を30分以内で配送する。発表当日に米国政府の認可を受け、Amazonはドローン商用運行を数か月以内に始めると明言した。

出典: Amazon  

設計コンセプト

Prime Airが飛行する様子はビデオで公開された。Prime Airはハイブリッドデザインで垂直モード(Vertical Mode)と飛行機モード(Airplane Mode)の二つの形態で飛行する。垂直モードは、ヘリコプターのように、離着陸時に垂直に飛行する(下の写真上段、ドローンのフレームが地上と平行)。上空でドローンは飛行機モードに移り、水平に高速で飛行する(下の写真下段、ドローンの本体が地上と平行)。Prime Airは垂直に離陸したあと、機体を傾け、本体が地上と平行になる状態で飛行する。

高度な自動飛行技術

いまでは多くのドローンが自動飛行機能を搭載し目的地まで自律的に飛行する。しかし、想定外の事象が起こると(着陸地点に障害物があるなど)、ドローンは自律的に判断できず、監視センターのオペレータの指示に従って動作する。一方、Prime Airは高度なAIを搭載しており、ドローンが自律的に問題を回避する。例えば、着陸地点に人が立ち入れば、降下を中断し、人が立ち去るのを待つ。また、飛行中に障害物に接触する恐れがある場合、ドローンはそれを把握し回避措置を取る。

出典: Amazon  

センサーとオブジェクト認識

ドローンは複数種類のセンサーを搭載し、それをAIで解析することで周囲のオブジェクトを高精度で検知する。飛行中は、静止しているオブジェクト(煙突や電柱など)はStereo Vision(3Dカメラ)で検知する。また、動いているオブジェクト(パラグライダーやヘリコプターなど)はAmazonが開発したComputer Vision(AIカメラ)で検知する。Prime Airは自動運転車のように静止及び移動するオブジェクトを認識する。

着陸時のオペレーション

Prime Airは敷地に着陸してパッケージをリリースする構造となっている。そのため、着陸地点に人や動物がいなく、障害物がないことを確認する必要がある。ドローンに搭載されている赤外線カメラと光学カメラ(下の写真、左側)のイメージをAIで解析しこれらを検知する。ただ、この方式では電線や洗濯物ロープなどは検知することができない。このため、Prime AirはStereo Vision(3Dカメラ)を使い電線などのラインを検知する(下の写真、右側、斜めのライン)。

出典: Amazon  

温暖化ガス対策

Amazonは配送過程で排出する二酸化炭素の量をゼロにするプログラム「Amazon Zero」を展開している。2030年までに配送プロセスの50%で二酸化炭素排出量をゼロにすることが目標で、ドローンがこれに大きく貢献すると期待されている。クルマで商品を配送すると大量の二酸化炭素が排出されるが、バッテリーで飛行するドローンはクリーンに商品を配送できる。

商用運行にめど

Amazonは、発表と同じ日に、アメリカ連邦航空局(Federal Aviation Administration)からPrime Airをパッケージ配送業務に使用することの認可を受けた。Amazonは数か月以内にPrime Airの商用運行を始めるとしている。これに先立ち、Alphabet子会社Wingは2019年4月、米国で初めてドローンによる物資配送の認可を得た。Amazonが認可を受けた二番目の会社となり、いよいよ米国でもドローン商用運行が始まることになる。

出典: Twitter @ Jeff Bezos  

Re:MARSとは

MARSとはMachine Learning, Automation, Robotics and Spaceの略でAIとロボットと宇宙をテーマとするカンファレンスで、2019年6月4日からラスベガスで開催された。この模様はLive BlogやTwitchでリアルタイムに配信された。カンファレンスでは最新のAI技法が議論され、ロボットのデモが実施された(上の写真、Bezosが手袋インターフェイス(Haptic Gloves)で二台のロボットアームを操作している様子)。また、Bezosのロケット会社Blue Originの宇宙船「New Shepard Capsule」が展示され注目を集めた。昨年まではBezosが主催する閉じられたイベントであったが、今年はAmazonのカンファレンスとなり一般に公開された。

Wingは航空機事業者として認可される、Googleグループはドローン輸送事業に向け大きく前進

Alphabet子会社「Wing」は2019年4月、米国で初めてドローンによる物資配送の認可を得た。アメリカ連邦航空局(Federal Aviation Administration、FAA)がWingを航空機事業者と認定したもので、ドローンで商品を顧客サイトまで輸送できることとなった。Wingが認可を受けた最初の企業で、米国においてドローンを一般空域(Air Space)で運用できることになり、商用運行への大きな一歩となった。🔒

出典: Wing