月別アーカイブ: 2019年6月

AppleがDrive.aiを買収:名門自動運転車ベンチャー挫折の理由は?スタートアップの淘汰が始まる

Appleは2019年6月、自動運転車ベンチャー「Drive.ai」を買収した。地元の新聞San Francisco Chronicleなどが報道した。この買収はAcqui-Hire(採用目的の買収)で、AppleはDrive.aiの有力開発者を雇い入れた。Appleは自動運転車を開発しているが、この買収で開発体制が強化される。Drive.aiはAI研究の第一人者Andrew Ngが指揮を執り、革新的な自動運転技術が登場すると期待されたが、予想に反し目立った成果を出せなかった。

出典: Drive.ai  

Drive.aiとは

Drive.aiはシリコンバレーに拠点を置くベンチャー企業で、社名の通りAIを基軸に自動運転技術を開発していた。Drive.aiはスタンフォード大学AI研究所(Stanford AI Lab)の研究者が創設し、Andrew Ngが会長として指揮を執っていた。Drive.aiはステルスモードでの開発を終え、2018年7月からは、テキサス州で実証実験を開始した。ちなみに、Drive.ai共同創業者のCarol ReileyはAndrew Ngの奥様である。

開発コンセプト

Drive.aiは業界最先端のAIとDeep Learningを使って自動運転技術を開発した。AIが周囲のオブジェクトを見分け、また、AIが人間の運転テクニックを見るだけで学習する。しかし、この方式で安全なクルマを開発できないことが分かり、基本設計の見直しを迫られた。車両はミニバン「Nissan NV200」を使用し(先頭の写真)、ここにセンサー(Lidar、カメラ、レーダー)を搭載し、制御機構にRobot Operating System (ROS、ロボットや自動運転車制御ソフト)を採用した。つまり、自動運転の定番技術をオープンソースで実装するというアプローチを取った。

インターフェイス

また、自動運転車と人間のインターフェイスを確立することで、安全性を高めるデザインとした。クルマは前後にディスプレイを搭載しシステムの意思を表示する。横断歩道では歩行者に「Waiting for You to Cross」と表示し安心してクルマの前を歩けるデザインとした(下の写真)。

出典: Drive.ai  

テキサス州での実証試験

Drive.aiはテキサス州フレスコ市と提携して自動運転車の実証試験を進めた。オフィス街で定められた経路を走行する自動運転シャトルとして運行した。また、テキサス州アーリントン市と提携しシャトルサービスを展開した。クルマは固定のルートを走り、市街地とスポーツ施設(AT&T Stadium、Dallas Cowboysのスタジアム)の間で輸送サービスを展開した(下の写真)。

実証実験は終了

Drive.aiは今年に入り会社の買い手を探していたといわれている。当初、Drive.aiは自動運転技術をすべてAIで実装するという高度な技術に挑戦していた。その後、オープンソースベースの自動運転技術を開発し、上述の通り、バスのように固定ルートを走行する自動運転車として運行を始めた。しかし、この実証実験は終了となり、Drive.aiの自動運転技術が注目されることはなかった。

出典: Drive.ai  

Appleの自動運転車開発

Appleは自動運転車を開発しているがその内容はベールに包まれている。開発プロジェクトは「Project Titan」と呼ばれ、2014年から始まり、2016年にはその規模が縮小された。同じ年に、Appleは中国大手ライドシェア 「Didi Chuxing (滴滴出行)」に10億ドル出資している。その後、Appleは自動運転車開発を再開し、今では大規模な体制でこれを進めている。事実、カリフォルニア州で自動運転車の走行試験を実施しているが、車両台数は55台と破格に多い。

お洒落で滑らかなクルマ

Appleが開発するクルマは自動運転機能だけでなく、乗り心地のいいデザインになるといわれている。Appleがダッシュボードやシートを設計し、また、フルアクティブサスペンション(Fully Actuated Suspension)を搭載することでショックを吸収し滑らかな走りができる。しかし、Appleがクルマを開発するのか、それとも、自動運転技術をメーカーに供給するのかなど、ビジネスモデルは見えてない。

バブルと淘汰

Drive.aiが開発を中止したことは自動運転車技術の難易度の高さを示している。固定ルートを無人で走行するレベルのクルマはできるが、市街地を自由に走れる自動運転車の開発は異次元の難しさがある。Drive.aiはピボットするのが早かったが、事業停止の見極めも早かった。いまカリフォルニア州で60社が路上で自動運転車の走行試験を進めている。自動運転バブルともいえる状況で、これから新興企業の淘汰が始まることになる。

植物ハンバーガーが全米に広がる、本物の味と変わらない代替たんぱく質の製造がアメリカの食文化を支える

ハンバーガーはタバコと同じ程度に不健康といわれてきたがその流れが変わった。大手ハンバーガーチェインBurger Kingは植物由来のハンバーガー「Impossible Whopper」(下の写真)の販売を開始した。これはシリコンバレーのベンチャー企業Impossible Foodsが開発したベジバーガーで、健康食品であるとともに、食べると本物の味と変わらない。いまアメリカの食文化と食品産業が大きく変わろうとしている。

出典: Burger King  

ベジバーガーの販売が始まる

大手ハンバーガーチェインBurger Kingは今月からサンフランシスコ地区で植物由来のハンバーガー「Impossible Whopper」の販売を始めた。Burger Kingはこの商品を「Made from Plants(植物由来)」と説明し、健康なハンバーガーとして大々的にプロモーションを展開している。屋外にはImpossible Whopperの大型ポスターが掲げられ、店内にはメニュー中央に大きく表示されていた(下の写真)。

実際に食べてみると

早速食べてみたが本当に肉の味がして美味しかった。Impossible Whopperは大型ハンバーガーで、バンズにミートパティ、トマト、レタス、オニオンなどがのっている。パティは網焼きされ、中はピンク色でみずみずしいはずであるが、少し焼きすぎた感があった。しかし、食べると肉の味と変わらず、通常のハンバーガー「Whopper」と見分けはつかない。植物由来のハンバーガーの中で一番おいしいと感じた。

出典: VentureClef  

高級レストランから大衆レストランへ

Impossible Burgerは2016年に販売が始まり、2019年1月にはその改良版「Impossible Burger 2.0」の出荷が始まった。改良版は味が良くなり、パティの中身がジューシーになり、また、塩分と脂肪分が少なくより健康な食品となった。今までは高級レストラン向けに提供されてきたが(下の写真、美味しかったが価格は20ドルと高い)、今年からBurger Kingが取り扱うことになり、Impossible Burgerが庶民の食べ物となった。Impossible Whopperの価格は6.49ドルで、通常のバーガーより1ドル高いが手頃の値段で食べられる。消費者の反応は良好でImpossible Burgerが全米に普及する勢いとなってきた。

出典: VentureClef  

Impossible Foodsとは

Impossible FoodsはRedwood City(カリフォルニア州)に拠点を置くベンチャー企業で合成生物学の手法でハンバーガーを生成する。スタンフォード大学教授が起業した会社でGV (Google Ventures) やBill Gatesなどが出資している。Impossible Burgerは本物のハンバーガーの構成要素をリバースエンジニアリングして開発された。

何故肉の味を出せるのか

Impossible Burgerが肉の味を出せる秘密は「Heme」という素材にある。Hemeとは血液中のヘモグロビンの色素を構成する物質で濃い赤色の液体(下の写真、手前の容器に入っている液体)。Plant Bloodとも呼ばれ、これをパティに加えると牛肉の色になり、焼くと薄赤色の肉汁となる。Hemeがハンバーガーの味を決める一番重要な材料で、合成生物学の手法(酵母DNAを編集し糖を発酵させる手法、AIやロボティックスが使われる)で生成される。

出典: New Food Economy

製造施設を拡充

Impossible FoodsはパイロットプログラムでImpossible Burgerを生産してきたが、2017年にOakland(カリフォルニア州)工場を開設し量産体制に入った。これによりImpossible Burgerを供給するレストランの数を増やしBurger Kingに供給を始めた。ただ、これでも需要に十分応えることができず生産量の拡大が課題となっている。

Beyond Foodsのハンバーガー

これに先立ち、ファストフードレストラン大手Carl’s Jr.がBeyond Foodsが開発した植物由来のハンバーガーの販売を開始した。これは「Beyond Famous Star」と命名され全米で販売を展開している。消費者が健康な食品を求めるなか、Carl’s Jr.は植物由来のハンバーガーの提供に踏み切った。

アメリカの食文化を支える

ベジバーガーはスーパーマーケットで多種類が販売されているが食べてみて美味しい商品は無い。ここにハイテクを使った植物由来のハンバーガーが登場し、その味が消費者を引き付けている。多くの人は健康に配慮してハンバーガーを食べるのを控えてきたが、Impossible WhopperやBeyond Famous Starの登場で、再びアメリカの味を楽しめるようになった。合成生物学で生成される代替たんぱく質がアメリカの食文化を支えている。

ハリウッドの終焉:映画会社がAIでデジタルヒューマンを生成、完璧なフェイク俳優がリアルタイムで演技する

フェイクビデオはAIにより完成度が向上し、もはや本物と偽物を見分けることが難しい。映画特撮ベンチャーはAIを使って極めて高精度なデジタルヒューマンを生成した(下の写真)。俳優や歌手やアニメをデジタルに生成するもので、仮想のキャラクターが動き喋りだす。フェイクビデオとは違い、完成度が格段に高く映画で使える品質となっている。映画スターはデジタルヒューマンに置き換わり、メディア産業が激変の時を迎えている。🔒

出典: Damien Abdool  

AmazonはPrime Airの最新モデルを公開、ドローンに搭載されたAIが周囲の危険物を高精度で判定

AmazonはAIカンファレンス「re:MARS」で配送ドローン「Prime Air」の最新モデルを公開した(下の写真)。ドローンはAIで映像を解析し、周囲のオブジェクトを正確に判定する。Prime Airの航続距離は15マイル(24㎞)で5ポンド(2.3㎏)までの積み荷を搭載でき、注文を受けた商品を30分以内で配送する。発表当日に米国政府の認可を受け、Amazonはドローン商用運行を数か月以内に始めると明言した。

出典: Amazon  

設計コンセプト

Prime Airが飛行する様子はビデオで公開された。Prime Airはハイブリッドデザインで垂直モード(Vertical Mode)と飛行機モード(Airplane Mode)の二つの形態で飛行する。垂直モードは、ヘリコプターのように、離着陸時に垂直に飛行する(下の写真上段、ドローンのフレームが地上と平行)。上空でドローンは飛行機モードに移り、水平に高速で飛行する(下の写真下段、ドローンの本体が地上と平行)。Prime Airは垂直に離陸したあと、機体を傾け、本体が地上と平行になる状態で飛行する。

高度な自動飛行技術

いまでは多くのドローンが自動飛行機能を搭載し目的地まで自律的に飛行する。しかし、想定外の事象が起こると(着陸地点に障害物があるなど)、ドローンは自律的に判断できず、監視センターのオペレータの指示に従って動作する。一方、Prime Airは高度なAIを搭載しており、ドローンが自律的に問題を回避する。例えば、着陸地点に人が立ち入れば、降下を中断し、人が立ち去るのを待つ。また、飛行中に障害物に接触する恐れがある場合、ドローンはそれを把握し回避措置を取る。

出典: Amazon  

センサーとオブジェクト認識

ドローンは複数種類のセンサーを搭載し、それをAIで解析することで周囲のオブジェクトを高精度で検知する。飛行中は、静止しているオブジェクト(煙突や電柱など)はStereo Vision(3Dカメラ)で検知する。また、動いているオブジェクト(パラグライダーやヘリコプターなど)はAmazonが開発したComputer Vision(AIカメラ)で検知する。Prime Airは自動運転車のように静止及び移動するオブジェクトを認識する。

着陸時のオペレーション

Prime Airは敷地に着陸してパッケージをリリースする構造となっている。そのため、着陸地点に人や動物がいなく、障害物がないことを確認する必要がある。ドローンに搭載されている赤外線カメラと光学カメラ(下の写真、左側)のイメージをAIで解析しこれらを検知する。ただ、この方式では電線や洗濯物ロープなどは検知することができない。このため、Prime AirはStereo Vision(3Dカメラ)を使い電線などのラインを検知する(下の写真、右側、斜めのライン)。

出典: Amazon  

温暖化ガス対策

Amazonは配送過程で排出する二酸化炭素の量をゼロにするプログラム「Amazon Zero」を展開している。2030年までに配送プロセスの50%で二酸化炭素排出量をゼロにすることが目標で、ドローンがこれに大きく貢献すると期待されている。クルマで商品を配送すると大量の二酸化炭素が排出されるが、バッテリーで飛行するドローンはクリーンに商品を配送できる。

商用運行にめど

Amazonは、発表と同じ日に、アメリカ連邦航空局(Federal Aviation Administration)からPrime Airをパッケージ配送業務に使用することの認可を受けた。Amazonは数か月以内にPrime Airの商用運行を始めるとしている。これに先立ち、Alphabet子会社Wingは2019年4月、米国で初めてドローンによる物資配送の認可を得た。Amazonが認可を受けた二番目の会社となり、いよいよ米国でもドローン商用運行が始まることになる。

出典: Twitter @ Jeff Bezos  

Re:MARSとは

MARSとはMachine Learning, Automation, Robotics and Spaceの略でAIとロボットと宇宙をテーマとするカンファレンスで、2019年6月4日からラスベガスで開催された。この模様はLive BlogやTwitchでリアルタイムに配信された。カンファレンスでは最新のAI技法が議論され、ロボットのデモが実施された(上の写真、Bezosが手袋インターフェイス(Haptic Gloves)で二台のロボットアームを操作している様子)。また、Bezosのロケット会社Blue Originの宇宙船「New Shepard Capsule」が展示され注目を集めた。昨年まではBezosが主催する閉じられたイベントであったが、今年はAmazonのカンファレンスとなり一般に公開された。