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顔認識AIの危険性が暴露、我々の顔写真が全米の警察で使われている!!(続々報)

顔認識AIを開発している新興企業Clearviewは、1000億枚の顔写真を収集する計画であることが明らかになった。写真は顔認識AIのデータベースに格納され、被験者を特定するためのインデックスとして使われる。世界の人口は約79億人で、一人につき12枚の写真が収集される勘定になる。このAIを使うと、世界の全ての人物の身元を特定することができる。

出典: Clearview

顔認識AIの開発

このAIを開発しているのはClearviewという新興企業で、世界最大規模の顔データベースの構築を計画している。投資家向けの資料がネットに流出したことで明らかになった。この資料によると、Clearviewは、現在、100億枚の顔写真を格納したデータベースを運営している。これを、1000億枚に拡充するために、資金の調達を進めている。

データベースの規模と判定精度

この規模のデータベースを使うと、AIは顔写真から、世界の殆どの人物の身元を正確に特定できる。具体的には、世界の人口の98%を、99.5%の精度で判定することができる。現在、Clearviewは100億枚の顔写真を格納したデータベースを運用しており、カバー範囲は75%となる。1000億枚の顔写真を使うと、世界の殆どの人を特定できる顔認識AIが生まれる。

利用目的

Clearviewは高精度な顔認識AIを開発し、米国政府を中心に、治安維持を目的に使われている。Clearviewの顔認識精度は、他の製品に比べひときわ高く、犯罪捜査で顔写真から容疑者の身元を特定するために使われる。昨年の米国連邦議会襲撃事件では、900超の顔写真をClearviewで解析し、350人の身元を特定することができた。このシステムは、FBI(連邦捜査局)や国土安全保障省などで使われている。

出典: Clearview

ベンチマーク結果

Clearviewは世界でトップレベルの性能を持っている。米国では、NIST(国立標準技術研究所)が顔認識AIのベンチマーク結果を公開しており、世界のベンダーの判定精度を知ることができる。これによると、中国Sensetimeがトップで、Clearviewは二位の判定精度となる。しかし、Clearviewは、Sensetimeより大きなデータベースを持ち、実効性能で上回るとしている。因みに、第三位はロシアVisionLabsで四位もロシアNTechLabとなる。

データベースの規模

世界でトップレベルの判定精度を持つClearviewであるが、その開発手法が社会問題となっている。AIが被疑者の写真から本人の身元を特定するためには、解析した写真と同一の人物を、データベースから見つけ出す。このため、データベースの規模が大きいほど、マッチングの確度が上がる。

データ収集の手法

Clearviewは世界のウェブから顔写真を収集する手法でデータベースを開発してきた。Facebookなどソーシャルネットワークに掲載されている顔写真を、本人の許可なくダウンロードし、これをデータベースに格納する。これは、スクレ―ピングという手法で、個人のプライバシーを侵害するとして、米国社会で問題視されている。実際に、全米各地で集団訴訟が起こり、Clearviewの手法は法廷で問われることになる。

ビジネスモデル

Clearviewの顔認識AIは、治安当局による犯罪捜査で使われている。Clearviewは、データベースの規模を10倍に拡大するとともに、顔認識AIの新しいビジネスモデルを計画している。対象を政府官庁から企業に拡大し、顔認識AIで、セキュリティや顧客サービスなどのソリューションを開発する。特に、金融機関やギグ・エコノミー(Gig Economy)向けを重点分野とし、事業開発を進める。

出典: Clearview

金融機関向けソリューション

Clearviewは顔認識AIを金融機関向けに提供することを計画している。これは、マネーロンダリングを検知するためのソリューションで、顔認識AIで利用者が犯罪者リストに登録されているかどうかを検知する。これは「One-to-Many Analysis」と呼ばれる手法で、利用者の顔写真でデータベースを検索し、身元を特定する。偽名を使った犯罪行為を検知できる。

ギグ・エコノミー向けソリューション

Clearviewはギグ・エコノミー向け顔認識AIに対する需要が大きくなると予想している。ギグ・エコノミーとは、ネットを通じた雇用制度で、契約社員として単発で働く方式を指す。Uberなどのライドシェアがギグ・エコノミーの代表となる。企業側はギグ・ワーカーを採用する際に、顔写真を顔認識AIで解析し、過去の履歴を確認する。この他に、Walmartなど小売店舗は、万引き防止のために、顔認識AIで容疑者の身元を特定するなどの活用法が検討されている。

出典: Clearview

治安維持かプライバシー保護か

米国ではサンフランシスコなど主要都市が顔認識技術の使用を禁止したが、連邦政府レベルではこれを規制する法令は無い。顔認識技術の利用について、統一したガイドラインは無く、運用の可否は各政府機関に任されている。顔認識技術を提供するAmazon、IBM、Microsoft、Googleは、無用の混乱に巻き込まれるのを恐れ、自主的にビジネスを停止している。Clearviewは、独自の解釈で、顔認識AIを提供する方針を貫いている。高精度な顔認識AIが犯罪捜査に寄与し、社会の治安が保たれていることは事実である。一方、Clearviewは、個人の顔写真を無断で使っており、これがプライバシー侵害に該当するのか、法廷で審理が進んでいる。

AIに口説かれると落ちる!?アルゴリズムで造られる音声は人間より豊かな表現力を持ち聞き手に感動を与える

Apple Siriが急に色あせてきた。AIにより生成されるボイスの品質が進化し、今では人間の表現力を上回る。AIで生成される音声は「Synthetic Voice」と呼ばれ、人間のように流暢な喋りができるだけでなく、多彩な感情を表現できる。アニメやゲームの中でアバターが喋る言葉はAIで合成され、人間のように感情がこもった会話が交わされる。

出典: Sonantic

感情豊かなAIボイス

多くの企業がAIボイスを開発しているが、英国に拠点を置く新興企業Sonanticは、感情豊かな合成音声を開発している。生成された音声は人間のものと区別がつかないだけでなく、声優のように、感情に富んだ会話ができる。AIボイスと言えば、Apple SiriやAmazon Alexaが普及しているが、声はモノトーンで機械的な会話となる。新興企業から新世代のAIボイスが登場し、Google Assistantなどの魅力が色あせてきた。

デモビデオ

Sonanticが開発するAIボイスは聞き手を会話に引き込む魅力を持っている。Sonanticはデモビデオを公開しAIボイスの進化をアピールしている(https://www.youtube.com/watch?v=gS1m_TIxEW0)。ビデオで、女性が視聴者に語り掛けるが、これらはAIにより生成されたもので、言葉の端々に微妙な感情表現が窺える。また、言葉ではない、笑いや息遣いが混じり、人間らしさがひときわ際立つ。

微妙な感情表現

微妙な感情表現は「Subtle Emotions」と呼ばれ、人間らしさを演出する技術となる。その一つが、男女関係における駆け引きで、相手の気を引こうとして媚びた感情を表現する。現実社会の会話でも、これは高度なテクニックになるが、AIボイスはこれをマスターし、なまめかしく魅力的な声で男性を誘惑する。また、目立たないようにする控えめな表現や、相手の好奇心をくすぐる表現もできるようになった。

言葉にならない表現

AIボイスを人間らしいと感じるのは、言葉以外の発声が混じるためである。これらは、「Non-Speech Sounds」といわれ、息遣いや、咳払いや、笑いなどを指す。また、「あー」とか「えー」など、無駄な発声もこの区分となる。人間は、スピーチするときには、これらの口癖を矯正するように教えられるが、AIボイスはあえてこれらを取り込み、人間臭さを演出する。(下の写真、発声の最後に咳ばらいを挿入する操作。)

出典: Sonantic

AIボイスの生成方法

AIボイスはダッシュボードでインタラクティブに生成する(下の写真)。アバターが発声するテキストを入力し、それに感情を付加するプロセスとなる。例えば、「The enemy fleet is attacking」というテキストを入力すると、音声が合成される。その際に、シーンに応じて、言葉に感情を与える。ここでは、「怒り」、「恐怖」、「幸せ」、「悲しみ」、「絶叫」などの要素を注入できる。また、声のピッチやタイミングなどを設定できる。

出典: Sonantic

ゲームで使われている

ゲーム開発会社Obsidianはアバターが喋る言葉をSonanticで合成している(下の写真)。今までは、声優がシーンに合わせて音声を吹き込んでいたが、今では、Sonanticの技術を使っている。AIボイスは声優のレベルに達し、人間がマニュアルで声を吹き込む必要がなくなった。また、AIボイスはゲーム開発の進行に応じて、シーンの変更があれば、何度も作り直すことができ、コンテンツ開発が効率化された。

出典: Obsidian

ニューラルネットワーク

Sonanticはニューラルネットワークを人間の声で教育し、AIボイスを生成する手法を取る。人間らしいAIボイスを生成するためには、教育データの品質がカギとなる。このため、声優に様々な感情を含む声を録音してもらい(下の写真)、それを教育データとして使った。しかし、「Non-Speech Sounds」については、この方法では高品質なAIボイスを生成できなかった。このため、SonanticはNon-Speech Sounds向けに独自のニューラルネットワーク開発し、AIボイスが息遣いをマスターした。

出典: Sonantic

声優の役割

声優はゲームやアニメや映画で欠かせない存在であるが、いまその役割がAIボイスで置き換えられている。声優は、声の吹込みから、AI開発のための教育データの生成に、その役割が変わってきた。長年、エンタメ業界を支えてきた声優の職をどう守るかが問われている。

会話の表現方法

会話はその内容より話し方など表現方法が意思伝達で重要な役割を担う。会話の中で伝達された情報より、それがどのような形で伝わったかが、発言者の意図を把握する手段となる。このため、高度なコミュニケーションを構築するには、AIボイスが感情を表現できることが必須の技術となる。

出典: Meta

倫理的な使い方

AIボイスは聞き手の感情を操作する能力を持ち、その使い方には注意を要す。メタバースでは、自身のデジタルツインを介してコミュニケーションするが、会話の相手は人間だけでなく、AIとの対話が始まる。AIが多彩な表現力を駆使して、消費者に高額な商品を販売し、危険な契約を結ばせる。AIボイスを使ったヘイトスピーチや虐めが始まると、今以上にダメージが深くなる。高度なAIボイスが悪用されると、その被害は甚大で、倫理的な使い方のガイドラインの制定が必須となる。

これはもうNFTバブル!!デジタルアートに常識外の高値が付く、セレブが競って購入し市場は危険水域に

米国でNFT取引がブームを通り越しバブルとなっている。NFTとは、デジタルアセットの所有権を示す証文で、これによりデジタルアートやアバターなどを売買するビジネスが生まれた。しかし今では、価値があるとは思えないデジタルアートをセレブがこぞって購入し、これにより価格が高騰し、市場が危険な水域に入った。

出典: OpenSea

退屈したサル

サルをモチーフにした「Bored Ape Yacht Club」(上の写真)が破格の値段で取引されている。これはデジタルアートのコレクションで、「ヨットクラブの退屈したサル」というテーマとなっている。1万種類のサルが生成され、それらがNFTとして売買されている。これらの作品は1点が140 ETH (約5200万円)で、常識外の値動きとなっている。

セレブがNFTを購入

何の変哲もないデジタルアートになぜ破格の値段が付くのか議論を呼んでいる。理由の一つが、著名人の影響で、セレブが競ってNFTを購入しているという事情がある(下の写真)。有名モデルParis Hilton(左側の人物)と、トーク番組司会者Jimmy Fallon(右側の人物)は、相次いでBored Ape Yacht Clubを購買した。両者はトークショーで、NFTをプリントアウトしたものを示し、一躍、Bored Ape Yacht Clubの名前が全米に広がった。このようなセレブの“PR活動が”NFT人気を押し上げている。

出典: @jimmyfallon

何のために購入するか

Jimmy Fallonは購入したデジタルアートをTwitterのプロフィール写真として使っている(上の写真、左上のアバター)。NFTを本人を表すアバターとして使っている。高額なNFTをアバターとして使うのは、レアな作品を所有していることを誇示する目的がある。しかし、最終目的は投資のリターンで、NFTを転売して利益を得ることにあるといわれている。このた、プロフィールを“広告塔”として利用し、価格を吊り上げているとの解釈もある。

トランザクションの内容が分かる

Jimmy Fallonが購入したアートは作品番号「#599」(下の写真)で、2021年11月7日に46.6 ETH (当日のレートで約$216,000=約2500万円)で落札している。NFT収集家「collector936」から購入している。このNFTはブロックチェーン「Ethereum」で生成されており、過去のトランザクションすべてが「Block」と呼ばれるデータベースに記録されている。このBlockは公開情報で、誰でもこれを見ることができ、購買に関する全ての情報が分かる。これがブロックチェーンの特徴で、Jimmy Fallonが落札した価格や購入先などを知ることができる。

出典: OpenSea

NFT価格の推移

セレブが競ってNFTを購入している。Jimmy Fallonの他に、ラップ歌手Eminemやバスケットボール選手Steph CurryがBored Ape Yacht Clubを購入した。これらがニュースで報道され、NFTの人気が高まり、価格が上昇している。Bored Ape Yacht Clubの取引価格の推移を見ると(下の写真、折れ線グラフ)、2021年11月ころから価格が上昇に転じていることが分かる。

出典: OpenSea

Bored Ape Yacht Clubとは

Bored Ape Yacht ClubはYuga Labsという団体により開発されたNFTであり、ヨットクラブに属する退屈したサルというストーリーになっている(下の写真)。デジタルアートはプログラムで生成されたもので、170の特徴量を変化させ、1万種類のサルのイメージを生み出した。NFTはEthereumで生成されるトークンで、「ERC-721」という規格に準拠し、データは分散ファイルシステムに格納される。

出典: Bored Ape Yacht Club

NFTの危険性と将来性

デジタルアートの価値の評価は難しいが、特定のNFT価格が常識外の値動きを示している。また、デジタルアートを盗み、それをNFTに変換した模造品の販売が広がり、深刻な問題となっている。また、メタバースで、土地というデジタルアセットの購入が進み、不動産ブームが起こっている。米国において、メタバースで危険な投資が広がり、NFTという新しいビジネスモデルが試されている。

米国でNFTブームが続くなか模造品の販売が広がる、メタバースにおける知的財産権の管理が最大の課題

米国でNFT取引がブームになっている。簡単にNFTを生成でき、これを高値で販売して、短時間でリッチになれる。NFTとは、ブロックチェーンで稼働するトークンで、デジタルアセットの所有権を示す。NFTは新しいコンセプトで、その仕組みは正しく理解されていない。このため、NFT売買で不正行為が始まり、消費者やクリエーターが被害にあっている。メタバースでデジタルアセットの販売が始まるが、その知的財産権の管理が大きな課題となる。

出典: OpenSea

NTFでリッチになれる

NFTで短時間に利益を得る行為は「Get-Rich-Quick」と呼ばれ、米国社会で話題になっている。多くの実例が報道され、これがNFTブームを押し上げている。先月、ジョージア州アトランタ郊外に住む二人の女性は、アヒルをテーマとするデジタルアートを創作し、それをNFTとして販売したところ(上の写真)、6時間で12万ドル(約1400万円)の収入を得た。二人は生活費に困る生活をしていたが、収入を土地のローン支払いに充て、差し押さえを回避したと報道された。

NFTが高値で売れる仕組み

このNFTは1万点から成るアヒルのデジタルアートで、「Dastardly Ducks」と命名され販売された。デジタルアートはプログラムで生成され、同じテーマを保ちながら、パターンを変化させることで、1万種類のデジタルアートを生成した。これらがNFT収集家により購入され、短時間で高収入を得た。今では、これらのデジタルアートが、NTF収集家により転売されている。1点の値段は0.0036 ETH (Ethereum) で、今日の相場では 10.60ドルとなる。アヒルのデジタルアートに10ドルの価値があるのか判断が分かれるが、値上がりが期待できるとして、NFTの売買が進んでいる。

NFTとは

NFTとはブロックチェインで構成されるトークンで、デジタルアセットなどの所有権を示す証文となる。NFTのデータは、ブロックチェインの分散データベースで安全に管理される。上記のケースでは、NTFはブロックチェイン「Ethereum」で運用されている。更に、NFTの売買に関する規定は、スマート契約機能「Smart Contracts」でプログラミングされる(下の写真)。アヒルのアートはこの契約に基づき、マーケットプレイス「OpenSea」で売買された。

出典: OpenSea

模造品の販売

NFTという新しい事業モデルで市場が急拡大しているが、同時に、様々な違法行為が発生している。デジタルアートは簡単に複製できることから、その模造品が生成され、マーケットプレイスで販売されている。Eコマースサイトで、ブランド品の模造品が販売されるように、盗用したデジタルアートのNFTが販売されている。しかし、デジタルアートは複製したものと見分けはつかず、犯罪行為を防ぐのは容易ではない。

被害が広がっている

テキサス州サンアントニオに住むアーティストAja Trierは、犬をモチーフにしたデジタルアート「Starry Night Dogs」を制作している。犬の背景が、ゴッホの星月夜「The Starry Night」のデザインで、独特の筆遣いがデジタルアートに取り込まれている。TrierはこのデジタルアートをNFTに変換し、マーケットプレイスで販売している(下の写真)。このデジタルアートが盗まれ、犯罪者はこれをNFTに変換し、マーケットプレイスで販売していることが判明した。

出典: OpenSea

簡単に複製でき被害が広がる

犯罪者は、デジタルアートのファイルをダウンロードし、それをNFTに変換して販売する。デジタルファイルをNFTに変換するプロセスは「Mint」と呼ばれ、ブロックチェインでトークンを生成する作業となる。このプロセスはシンプルで、技術の知識は必要なく、誰でも容易に実行できる。今では、この盗用作業がソフトウェア・エージェント(Bot)で実行され、被害が広がる要因となっている。

模造品への対応

クリエーターは、自分の作品がコピーされ、NFTとして販売されていれば、そのサイトの管理者に連絡し、それを取り下げてもらう措置を取る。また、NFTが取引されるマーケットプレイスは数多くあり、これらのサイトで模造品の販売をチェックする必要がある。消費者は、NFTを購入する前に、デジタルアートの持ち主を確認し、被害を防ぐことが求められる。NFT市場が拡大するが、消費者を保護する仕組みは無く、詐欺にあわないためには、自分で防衛するしか手は無い。

メタバースが抱える最大の課題

メタバースではデジタルアセットの売買が主要な収入源となると期待されている。デジタルアセットは、デジタルアートの他に、写真(下の写真)やコレクタブルなどが対象となる。これらがNFTとして売買されるが、模造品による犯罪行為が懸念されている。簡単に複製できるデジタルアセットを如何に安全に取引できるかが課題となる。

出典: OpenSea

NFTの法的解釈】

デジタルアートとNFTの関係

NFTは新しいコンセプトで、これに関連する知的財産権(著作権や商標権など)の理解が進んでいないことが、被害を拡大する要因となっている。NFTの売買条件は「Smart Contract」で規定されるが、多くのケースで、NFTだけを購入する条件となっている。具体的には、購入者は、NTFとデジタルファイルを得るが、デジタルアートの知的財産権は含まれていない。つまり、NFTを購入しても、デジタルアートの知的財産権を得ることはできない。現実社会でのアート取引とは異なり、購入者はNFTを得るが、デジタルアートの所有権を得るわけではない。NFTを購入する際は、NFTを高値で購入してもアートの所有者にはなれないということを理解しておく必要がある。

模造品の販売は違法ではない?

NFTに関する法整備が進んでいない現在では、NFTの模造品を販売することの法的解釈が議論となっている。犯罪者は、デジタルアートを盗んで、それを販売しているのではなく、そのNFTを販売している。NFTには知的財産権は含まれおらず、犯罪者は制作者の知的財産権は侵害していないという議論がある。知的財産権は製作者が所有し、犯罪者はその証文であるNFTというトークンだけを販売している。ブロックチェインが内包する問題の一つで、これから議論を進め、関連法令の整備が必要となる。