NvidiaはオープンソースAIの業界連合「Open Secure AI Alliance」を設立、AIセキュリティを強化する技術やツールを共有しサイバー攻撃を防御

NvidiaはオープンソースAIのアライアンス「Open Secure AI Alliance」を設立した。アライアンスは業界団体のイニシアティブで、Nvidiaの他に、Linux Foundationや主要IT企業から構成される。アライアンスはオープンソースAIの安全性を強化し、サイバー攻撃に備えることをミッションとする。アライアンスはセキュリティ技術やフレームワークやガードレールを開発し、これを業界団体で共有する。クローズドソースAIでセキュリティに関するインシデントが相次ぐ中、アライアンスは危険性をオープンな手法で制御するアプローチを取る。(下のグラフィックス、アライアンス加盟団体)

出典: Nvidia

アライアンスのミッション

アライアンスはサイバーセキュリティを強化するためには、オープンAIモデル、オープン・ハーネス、ツールが必要であると考える。サイバーセキュリティ責任者はオープンモデルを使うことで、インシデントを検査し、また、モデルを改良することで、AIシステムを安全に運用できる。現在、AIモデルの選択肢は少なく、少数のクローズドソースに限られる。しかし、これらシステムの内部構造はブラックボックスで、セキュリティ機能はベンダーに依存する構造となる。

クローズドソースのインシデントが多発

現実社会で、クローズドソースによるサイバーセキュリティのインシデントが相次いで発生している。OpenAIのフロンティアモデルがサイバーセキュリティの重大インシデントを引き起こした。モデルがOpenAIの試験環境から脱出し、レポジトリHugging Faceを攻撃し、サイトに侵入してベンチマークに関する情報を盗み出した。また、AnthropicとMetaも同様なセキュリティ・インシデントが発生したことを公表した。

オープンソースのセキュリティツール

アライアンスのメンバーはサイバーセキュリティツールを提供し、これを業界で共有することでAIシステムの安全性を強化する戦略を取る。加盟企業から30を超えるツールやAIモデルが提供され、アライアンスはこれらをオープンソースとして公開した。これらはAIスタックの全体をカバーし、主なツールとその提供企業は次の通りとなる:

  • 認証と権限付与:AIエージェントやサービスがシステムのリソースにアクセスするのを認証するフレームワーク
    • Agent Identity Reference Implementations (Okta)
    • asago (Red Hat)
  • ハーネス・レッドチームツール:AIエージェントを試験、監視、監査、管理するための枠組み
    • NOOA / NVIDIA Labs Object-Oriented Agent (NVIDIA)
    • RAMPART, Clarity, & Assert (Microsoft):レッドチームの検証ツール
    • Grok Build (SpaceXAI)
  • モデルセキュリティとランタイムの防衛:AIモデルを安全に実行するツールと、AIエージェントをセキュアに実行できるサンドボックス
    • NVIDIA OpenShell (NVIDIA):AIエージェント向けサンドボックス (※)
    • NeMo Suite & Garak (NVIDIA):NeMoのガードレールやデータ保護
    • DefenseClaw & Antares (Cisco):AIエージェント向けサンドボックス
    • Safetensors (Hugging Faceほか):モデルの重みを安全に格納する形式
    • Lightwell (IBMほか):セキュリティパッチの安全な配布モデル
  • 監視・評価・攻撃検知:AIエージェントの挙動を監視し、問題を評価し、攻撃のシグナルを検知するツール
    • ADR / Agentic AI Detection and Response (Uber)
    • Numbat (Perplexity)

(※) NVIDIA OpenShellはAIエージェントを安全に開発・実行する環境で、サンドボックス内でモデルを運用する(下のイメージ)。

出典: Nvidia

SAFE Guidelines

同時に、アライアンスは「Shared AI Findings Exchange (SAFE)」の設立を提唱した。SAFEはセキュリティに関するフレームワークで、AIセキュリティインシデント情報を共有し、サイバー攻撃に備えることを目的とする。これはNASAの「航空安全報告システム(Aviation Safety Reporting System)」をモデルにしたもので、エラーを収集・分析し、インシデントを未然に防ぐための仕組みとなる。参加メンバーが経験したセキュリティに関するインシデントや“ニアミス”などの社内情報を報告することで、サイバー攻撃への耐性を強化するガイドラインを生成し、これを業界で共有する。「SAFE」はワーキンググループを設立するため、会員から意見を求めている。

Nvidiaがオープンソースの先導者

米国ではAIモデルの殆どがクローズドソースで、オープンソースはNvidiaの「Nemotron」、SpaceXAIの「Grok-2」、Metaの「Muse Glimmer」などに限られている。Nvidiaがオープンソース推進者で、AIモデル「Nemotron」を公開するに留まらず、Open Secure AI Allianceの設立など、エコシステムの拡大を進めている。NvidiaはGPUなどAIプロセッサを提供しており、オープンソースの普及でビジネスを拡大させるという狙いもある。(下のグラフ、オープンソースはKimi K3やGLM-5.2など中国モデルがトップ集団を形成、米国モデルではInklingが6位で、Nemotron Ultra 3が7位)

出典: Artificial Analysis

AIエージェントのセキュリティ

NvidiaはAIエージェントのセキュリティが次の大きなチャレンジになると考える。企業はAIエージェントの展開で、クローズドソースとオープンソースを併用するハイブリッドなモデルを構成する。クローズドソースではOpenAIなどが提供するAPIを利用するが、オープンソースではシステムを自社のサーバで展開する。後者のケースでは、サイバー攻撃を防御する責任は運営企業にあり、サイバーセキュリティのフレームワークやツールが求められる。Open Secure AI Allianceがこの役割を担い、企業や団体がAIエージェントをセキュアに運用するフレームワークを提供する。