MetaのCEOであるMark Zuckerbergは8月10日、AIに関する論文を発表し、フロンティアモデル「Muse Spark」をオープンソースとして公開することを明らかにした。Metaは前世代モデル「Llama」でオープンソース戦略を取ってきたが、現行モデル「Muse Spark」はクローズドソースとして提供している。Zuckerbergはこの方針を転換し、現行モデルも重み(Weights)を公開し、オープンソースとして提供する指針とした。中国企業が世界のオープンソース市場を席捲しており、ZuckerbergはMuse Sparkが対抗軸となり、アメリカの技術をグローバルに普及させると宣言した。

| 出典: Generated with OpenAI GPT-5.6 Sol |
Muse Glimmerの発表
Metaは8月10日、小型AIモデルである「Muse Glimmer」を発表し、これをオープンソースとして公開することを明らかにした。Muse Glimmerは30Bのパラメータ数で、アーキテクチャの観点からはデンスモデルとなる。Muse Glimmerはフロンティアモデルである「Muse Spark」の知識を転移する「Knowledge Distillation(知識蒸留)」の方式で開発された。
Muse Glimmerの利用方法
Muse GlimmerはパーソナルAIエージェントのブレインとして開発された。Muse Glimmerは30Bの小型モデルで、必要なメモリ容量は55GBで、パソコンやサーバで稼働させることができる。パソコンでAIエージェントを開発して稼働させることができ、コードのデバッグやソフトウェア開発などで威力を発揮する。対抗機種はGoogleのGemma4-31BやAlibabaのQwen3.6-27Bで、Muse Glimmerはエージェント機能を測定するベンチマークテストでこれらの性能を大きく上回った(下のテーブル)。

| 出典: Meta |
Muse Spark 1.2の発表
Metaはこれに先立ち8月5日、フロンティアモデル「Muse Spark 1.2」を発表した。Muse Spark 1.2はMetaのフラッグシップモデルで、コーディング機能を格段に強化したモデルとなる。Muse Spark 1.2はコードの生成、複雑なコードのデバッグ、コードベースの理解、ソフトウェア開発の自動化などで使われる。エンジニアリングにおけるコーディング・エージェント機能を査定するベンチマークテスト「Terminal-Bench 2.1」で、Muse Spark 1.2はAnthropicのOpus 5に迫る性能をマークした。また、総合性能を評価するベンチマークテスト「Intelligence Index」では、Muse Spark 1.2は大きく順位を上げ7位にランクインし、GPT-5.6 Terraに次ぐポジションを占めた(下のグラフ)。

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Muse Codeをリリース
Metaは同時に、コーディング・エージェント「Muse Code」を投入した。Muse Codeはターミナルベースのコーディング・エージェントで、そのブレインとしてMuse Spark 1.2を搭載する構造となる。Claude Codeの対抗製品で、複雑なエンジニアリングタスクを実行する。Muse Codeの特徴はバックグラウンドで複数のエージェントを使ってタスクを実行する方式「Async Background Agents」にある。複数のエージェントが共同して稼働することで短時間でタスクを完遂する。(下のイメージ、ブラックホール(円形の部分)の周りのフォトン(円形や楕円の部分)の挙動をシミュレーションしたもの、このシミュレータはMuse Codeで作成された)

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オープンソース開発経緯
MetaはAIモデル「Llama」の開発で、製品をオープンソースとして公開する戦略を取ってきた。Llamaが幅広く普及しAI研究開発を大きく推進する原動力となってきた。Metaは、Llamaの開発を停止し、新たな製品ライン「Muse Spark」の開発に着手し、これをクローズドソースとして提供してきた。Muse SparkはMetaのAI研究所「Meta Superintelligence Labs(MSL)」で開発されている。AI研究所の所長はAlexandr Wang(下のイメージ)で若い(29歳)ブレインがMetaのAI開発を指揮する。

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オープンソースに大転換
Zuckerberg(下のイメージ)は8月10日、AI戦略に関するビジョン「The Future is for Everyone」を公開し、全ての人々がAIの恩恵を受けるための構想を提唱した。この中でオープンソースに関する指針を明らかにし、Metaは全社を挙げてこれをサポートし、AI研究所・Meta Superintelligence LabsはMuse Sparkをオープンソースとして公開することを明らかにした。Metaはクローズドソースからオープンソースに大転換した。
戦略を転換した理由
Zuckerbergは一部の企業や組織にインテリジェンスが偏在することに強い懸念を持ち、オープンソースとして提供することで、個人や小企業がAIにアクセスできる環境を提供するとしている。また、地政治学的見地からは、中国のオープンソースが世界標準となり、世界市場で急速に普及していることを懸念している。Metaがこの対抗軸となり、オープンソースをグローバル市場に展開し、アメリカの技術が世界のインフラを支えることを目標としている。

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オープンソースのリスク
市場ではオープンソースのリスクについて様々な議論が展開されている。最先端のオープンソースは高度な機能を持ち、サイバー攻撃で悪用されると、社会に重大なリスクをもたらす。Zuckerbergはこの議論に対し、オープンソースとして公開することで、多くの研究開発者が内部構造を検証することができ、モデルが内包するリスクが明らかになり、パッチの開発作業が進み安全なモデルとなる。また、サイバー攻撃を防御するためには、OpenAI GPT-5.6 Solなど選択肢が限られているが、Muse Sparkを公開することで防衛技術のオプションが増えるとしている。
米国市場はオープンソースに向かう
米国で、オープンソースの開発が進み、エコシステムが拡大している。MetaはMuse Sparkでオープンソース事業を展開する。新興企業Thinking Machines Labはフラッグシップモデル「Inkling」を開発し、これをオープンソースとしてリリースした。また、Nvidiaはオープンソースのアライアンス「Open Source AI Alliance」を結成し、業界の主要IT企業が結集し、AIモデルやツールを共有しオープンソースを推進する。AIモデルはOpenAI、Anthropic、Googleのクローズドソースに限られているが、いまこの流れが大きく変わろうとしている。