Apple WatchのECG機能がリリースされた、家庭で心電図を計測し不整脈を検知できる

Apple WatchでECG機能がリリースされた。これは心電図を計測する機能で、スマートウォッチで心臓の健康状態をモニターできるようになった。ECGは心臓の不整脈を検知し、もし異常があれば病院で診断を受けることになる。病気の早期発見につながり、多く人命を救うことができると期待されている。

出典: Apple

ECG機能を公開

Appleは四世代目のスマートウィッチ「Apple Watch Series 4」を投入したが、ハードウェア機構が一新され、健康管理に重点を置くウエアラブルとなった。Apple Watch Series 4はECG (Electrocardiography、心電図)機構を搭載し、心臓の健康状態をモニターする(上の写真)。2018年12月、最新の基本ソフト (watchOS 5.1.2とiOS 12.1.1)がリリースされ、ECGを使えるようになった。

ECG測定方法

ECGとは心臓の鼓動を電気シグナルとして測定するもので、病院で心臓の状態を検査するために使われている。この機能がApple Watch Series 4に搭載され、家庭で心臓疾患を検知できるようになった。ECGを測定するにはApple Watchでアプリ「ECG」を起動し、指をクラウンにあてる(下の写真)。これで心臓を含む電気回路が作られ、心臓の鼓動の電気シグナルを計測する。測定に要する時間は30秒で、ディスプレイにECGの波形が示され、残り時間が表示される。

出典: Apple

測定結果

測定結果は問題が無ければ「Sinus Rhythm(洞調律)」と表示される。もし、不整脈の一種である心房細動が検知されると「Atrial Fibrillation」と表示される。アルゴリズムはECGの波形から心房(Atrium)と心室(Ventricle)の動きを解析する。心臓が一定のリズムで鼓動している時はSinus Rhythmと示される。一方、心臓の鼓動が不規則な状態であればAtrial Fibrillationと示され心房細動が発生していることを意味する。

Healthアプリ

測定結果はAppleの健康管理アプリ「Health」に格納される。ここには心拍数(Heart Rate)と心電図(ECG)の情報が格納される(下の写真、左側)。また、ECGのタブを開くと検査結果について、判定(Classifications)と心電図の波形(Waveform)が示される(下の写真、右側)。測定時に症状を入力することができ、その情報も表示される。(Apple Watch Series 4でECGを使い始めたが、健康管理には必須な機能だと感じる。検査結果を見るのは少し怖いが、心臓の健康状態がすぐに分かり、本当に役に立つウエアラブルだ。)

医師の診断を仰ぐ

万が一、異常が検知されると病院に行き医師に相談することになる。その際には、ECG検査結果をPDFに変換する機能があり、それを医師に提示して診断を仰ぐ。医師はECGの波形から心臓の状態を把握し、原因を検査していく手順となる。なお、ECGアプリは心房細動しか検知できないので、Apple Watchで心臓発作の兆候は把握できないことを留意する必要がある。

通知機能

上述のECG機能の他に、Apple Watchのソフトウェアがバックグランドで稼働し、心臓の健康状態をモニターする。心拍数から心房細動を検知するアルゴリズムが搭載され、アプリはそれを検知するとアラートを表示する。心拍シグナルをニューラルネットワークで解析し、心房細動を検知するものと思われる。Apple Watchを着装している時は連続して心臓の状態をモニターする。

出典: VentureClef

病院のECGとは異なる

Apple Watch Series 4のECGは病院で使われているECG(心電計)とは構造や機能が異なり、家庭向けの簡易版ECGという位置付けとなる。病院の心電計は12の電極を持ち、心臓の電気信号を異なる方向から捉える。このため、心房細動だけでなく、心臓発作の予兆(心臓のどの部分が壊死しているか)を検知する。これに対し、Apple Watch Series 4のECGの電極は一つで、心房細動だけを検知でき、心臓発作の予兆などそれ以外の症状は把握できない。

アメリカ食品医薬品局の認可

このため、Apple Watch Series 4はアメリカ食品医薬品局(FDA)から限定的な認可を受けている。Apple Watch Series 4は消費者向けに医療情報を提供することは認められているが、これを病気の診断で使うことはできない。つまり、Apple Watch Series 4は消費者が病状をスクリーニングするために使われ、病気判定は医師が下す必要がある。

Appleへの期待

限定的な機能であるが、Apple Watch Series 4のECGへの期待は大きい。これはApple Watchで心房細動をリアルタイムに把握できるためで、病気治療に大きく寄与すると考えられている。アメリカ心臓協会(American Heart Association)はApple WatchのECGを使うと、治療方法が劇的に変わり、多くの患者を救えると期待を寄せている。因みに、Apple Watch Series 4の心房細動の判定精度は高く、98%(Sensitivity、病気であることの判定)と99.6%(Specificity、病気でないことの判定)をマークしている。

ヘルスケア市場に進出

Apple Watch Series 4にECGを搭載したことで、Appleがヘルスケア市場に本格的に参入する流れが鮮明になった。AppleがiPodで音楽市場に進出したように、Apple Watchが医療機器に進化し、ヘルスケア市場進出への第一歩となる。Apple Watchはバイオセンサーとして、身体情報をモニターする医療機器としての役割が明確になり、次は、血圧や血糖値を測定する機構を投入するとのうわさが絶えない。

若い血液を輸血すると老化が止まる、若返りの分子を特定し不老不死の薬を開発

シリコンバレーでBiogerontologyが注目を集めている。BiogerontologyとはBiology(生物学)とGerontology(ジェロントロジー、老化の科学)を合わせた造語で、なぜ動物や人間は老化するのかを生物学の観点から研究する学問を指す。AIなどの最新技術を取り入れ、老化のメカニズムを解明し、老化のプロセスを抑制する薬の開発が始まった。

出典: Harvard Innovation Labs

Elevianというベンチャー企業

Biogerontologyの分野ではCalicoに注目が集まるが、ベンチャー企業からイノベーションが生まれようとしている。Elevianは Allston(マサチューセッツ州)に拠点を置くベンチャー企業で(上の写真)、身体を若返らせる薬の研究を進めている。これに先立ち、ハーバード大学の研究グループは血液の中に存在する微量のたんぱく質が老化を止める機能があることを発見した。Elevianは大学と共同でこれを薬として開発する研究を進めている。

若返りのたんぱく質

身体を若返らせるたんぱく質はGDF11 (Growth Differentiation Factor 11)と呼ばれる。Elevianは老化に伴う病気の治療薬をGDF 11を使って開発している。対象は虚血性心疾患(Coronary artery disease)、 2型糖尿病 (Type II Diabetes)、アルツハイマー病(Alzheimer‘s Disease)などで、臨床試験前の研究が進められている。

若返りの研究

秦の始皇帝が不老不死の薬を探すよう命じた話は有名であるが、人体を若返らせる研究は早くから実施されてきた。若い人の血を輸血すると若返りの効果があると言われてきたが、1950年代にはコーネル大学でこの研究が始まった。この手法はParabiosisと呼ばれ、2014年にはスタンフォード大学の研究グループがマウスを使った実験でその効果を確認した。若いマウスと高齢のマウスを接続し、血液を相互に循環させると、高齢のマウスの脳や筋肉組織の機能が向上した (下の写真)。

出典: Nature

ハーバード大学の研究

ハーバード大学のAmy Wagers教授らもこの効果を確認し、更に、何が若返りの要因であるかの研究を進めた。血液の中の物質を調べ若返りに寄与する分子を探した。具体的には、若いマウスと高齢のマウスの血液を比較し、両者の間の組成成分の差異を計測した。代謝(Metabolome)や脂質(Lipidome)について解析したが有益な情報は得られなかった。たんぱく質解析(Proteomics)で、1300のたんぱく質を検証したところ、GDF 11がその要因であることを突き止めた。

マウスでの効果

Amy Wagers教授らは、次のステップとして、マウスを使ってGDF 11の効果を検証した。GDF 11は自然界に存在するたんぱく質で体内で生成される。同グループはこれを人工的に生成しマウスに注入しこの効果を観察した。GDF 11を高齢のマウスに注入すると、心臓肥大(cardiac hypertrophy)を抑制できることが確認され、心臓疾患を防ぐ効果があることが分かった。また、骨格筋(skeletal muscle)の修復作用が増すことも確認された。更に、マウスの活動が活発になり、脳機能が向上し、体内の血液循環が良くなったと報告している。

人体での効果は

GDF 11を人体に適用することはできないが、別の研究グループは、体内のGDF 11の量と病気発症の確率を調べた。その結果、心臓疾患患者はGDF 11のレベルが低いことが判明。反対に、GDF 11のレベルが高いグループは心臓疾患を引き起こす割合が低いことが明らかになった。更に、死亡率とGDF 11のレベルは反比例することも分かり、GDF 11が人体にもたらすメリットに期待が集まった。

商用化への取り組み

これら基礎研究の結果をベースに、ElevianはAmy Wagers教授を中心とするハーバード大学の研究グループと共同で、GDF 11を使った薬の開発に着手した。Elevianは大学のコーワーキングスペース「Pagliuca Harvard Life Lab」に入居し(下の写真)、研究グループと密接に開発を進めている。この開発は業界で注目され、Bold Capital Partnersなど著名ベンチャーキャピタルがElevianに出資している。

出典: Pagliuca Harvard Life Lab

ロードマップ

ElevianはGDF 11を適用した薬を開発するが、最初の適用は虚血性心疾患となる。その後、糖尿病やアルツハイマー病の薬が開発される。薬の開発は臨床試験を始める前の段階で、製品が完成するまでには時間を要す。GDF 11は細胞や組織を若返らせる効果を持っており、体の多くの部分に適用できるのではと期待されている。Elevianには老化研究の第一人者が揃っており、その将来に注目が集まっている。

Google系Calicoはヒトの寿命の伸ばす研究を進める

CalicoはAlphabetの子会社でSouth San Francisco(カリフォルニア州)に拠点を置き、ライフサイエンスの研究を進めている(下の写真)。老化と健康な生活がテーマで、ヒトの寿命を延ばす基礎研究を展開。Calicoは2013年に設立され、Apple社の会長であるArthur LevinsonがCEOを務めている。

出典: Google  

ミッション

Calicoは老化とそれに関連する病気の解明を目指している。ヘルスケアとライフサイエンスに関する”アポロ計画”で、人々の健康を改善することをミッションとする。Calicoはベル研究所(Bell Labs)に例えられる。ベル研究所で半導体が開発され情報処理産業が誕生したように、Calicoの寿命を延ばす研究がライフサイエンスのブレークスルーとなることを目指している。

組織構造

Calicoは加齢(Aging)をバイオロジーの分野で解決されていない基礎課題と位置づける。Calicoは大学のような研究機関を企業が運営する構造で、事業化ではなく基礎研究が活動の中心となる。Calicoは製薬企業と提携し、研究成果を実際の製品に応用する。研究資金はAlphabetと提携企業が拠出する。Calicoは現代版ノアの箱舟(Noah‘s Ark)ともいわれ、酵母、虫、希少動物などを集め加齢の研究を進めている。

研究成果を公表

Calicoは研究内容を殆ど公開しておらずステルスモードで活動してきたが、2016年頃から論文の公開が始まり、研究の一端が見えてきた。Calicoは2018年1月、論文「Naked mole-rat mortality rates defy Gompertzian laws by not increasing with age」を公開し、ラットを使い加齢の研究をしていることを明らかにした。

Naked Mole-Ratの研究

論文によるとNaked Mole-Rat(ハダカデバネズミ、下の写真)はGompertz’s Mortality Lawに従わず長寿であることが実証された。Naked Mole-Ratとはネズミの一種であるが際立った特性を持っている。体には殆ど毛が生えておらず奇妙な外見をしている。地中で生活し、体温は外気の温度に従って変化する外温動物(Ectothermic)である。Naked Mole-Ratは殆どガンを発症することなく、18分間、酸素無しで生存できる。

出典: Jedimentat44 on Wikipedia

長寿のメカニズム

一般にネズミの寿命は6年程度であるが、Naked Mole-Ratの寿命は30年を超えることが知られている。Naked Mole-Ratは閉経が無く、一生にわたり生殖し子供を産むことができる。心臓や骨は老化することなく、若い状態を保っている。CalicoはNaked Mole-Ratを対象に長寿のメカニズムを解明する研究を進めている。

年齢と死亡率

CalicoはNaked Mole-Ratを3000匹調査し、その多くが30年生存することを把握した。哺乳類の死亡率は生殖期間を過ぎると幾何級数的に増大する(下のグラフ)。この現象をGompertz’s Mortality Lawと呼ぶ。人間の場合は30歳を過ぎると、8年ごとに死亡率が倍増する(下のグラフ右側、水色の線)。しかし、Naked Mole-Ratはこの法則には従わず、年齢を重ねても死亡率が変わらない(下のグラフ右側、緑色の線)。(下のグラフの横軸は相対年齢(子供を生める年齢を1とする)で、縦軸は死亡率を示している。)

出典: J Graham Ruby et al.

メカニズムの解明

論文はNaked Mole-RatはGompertz’s Mortality Lawに従わず、年を取らないと結論付けている。Naked Mole-Ratは実験で使われ、その途中で死亡することが多く、長期間飼育したデータが不足している。次のステップは、これを確認するために、多くの検体を長期間飼育し、その実態を明らかにすることとなる。更に、Naked Mole-Ratの長寿のメカニズムを解明することが最終目的となる。

AbbVieとの共同研究

CalicoはAbbVieと密接に共同研究を進めている。AbbVieとは製薬大手Abbott Laboratoriesから分離独立した会社で、バイオ医薬品会社として基礎研究を推進する。Lake Bluff(イリノイ州)に拠点を置き、シリコンバレーなどに研究施設を持っている。  

研究予算

Calicoは2014年からAbbVieと加齢に関し、ガンや神経変性疾患(neurodegenerative diseases)を対象に研究を推進している。2018年6月には、両者は共同研究に10億ドルを出資することで合意し、累計研究予算は25億ドルとなった。両社は既にガンや神経変性疾患に関する20件以上の研究プログラムを進めている。

研究と商品化

両社の間で役割分担が決まっており、Calicoは2022年までに基礎研究と初期ステージの開発を司る。また、Calicoは2027年までにPhase 2(小規模な臨床試験)の開発を担当する。一方、AbbVieは後期ステージの開発を受け持ち、製品化を担当する。加齢に関する研究はバイオ医療企業にとって重要なテーマで、老化に伴う病気を治療する技術の確立を目指している。

Oracleの試み

加齢に関する研究は多くの著名人が資金を投じ、その解明を進めてきた。Oracle創設者Larry Ellisonは非営利団体「The Ellison Medical Foundation」を設立し、医療技術の研究を推進している。中心テーマが加齢に関する研究で、Ellisonは3億ドル超を出資しブレークスルーを目指した。しかし、この研究は中止となり、研究資金はポリオに関する研究に振り向けられた。加齢に関する研究に注目が集まるが、動物が年を取るメカニズムの解明には至っていない。

リスク要因

人間の平均寿命は150年前までは40歳程度であったが、今では80歳程度に倍増した(下のグラフ)。これはワクチンの登場や食生活の改善によるところが多い。しかし、現在ではガン、心臓疾患、脳卒中、認知症が最大のリスク要因となり、これらが平均寿命の延びを抑えている。これらの病気はいずれも加齢により発症する。

出典: Our World in Data

加齢プロセスの解明

これらの病気を一つづつ解明して、治療方法を探る研究が続いているが、この研究は上手く進んでいるとは言い難い。その理由は、生物学的な加齢のメカニズムが理解されていないためで、病気治療は加齢のプロセスを抑えることでもある。Calicoはこのゴールに向かい、加齢という最大のリスク要因を解明するための研究を進めている。

アマゾン創業者Jeff Bezosは一万年のあいだ時を刻み続ける時計を建設

アマゾン創業者Jeff Bezosは10,000年間時を刻み続ける時計「10,000 Year Clock」の建設に着工した。この時計は全て機械式で、1年に一回長針が進み、100年に一回短針が進む。時計は巨大で岩山を垂直にくり抜いて据え付けられる。この時計は世界で一番遅いマシンともいわれ、技術が激しく進化するなか、長期な視点で物事を捉える象徴となる。

出典: Kevin Kelley  

発案者

10,000 Year Clockは発明家であるDanny Hillisが1986年に考案した。HillisはThinking Machines社を設立し、超並列型スパコン「Connection Machine」を開発した人物。Connection MachineのCM-2は8,192個のプロセッサが並列で稼働し、当時世界最速のスパコンとして注目された。

プロトタイプ

時計のプロトタイプは非営利団体Long Now Foundationが開発した。同団体はサンフランシスコに拠点を置き、Hillisが共同代表を務める。時代が高速で流れゆく中、これに逆行するプロジェクトを進め、社会のバランスをとることをミッションとしている。時計のプロトタイプは既に完成しており、1999年のニューイヤーイブで使われた(上の写真)。Millennium(千年紀)が変わり社会は興奮していたが、時計の表示は01999から02000に変わり、時間は長いレンジで流れることを示した。

時計の建設が始まった

このプロトタイプを実際の時計として建設するプロジェクトが始まった。Bezosはプロトタイプの開発でHillisを支援し、10,000 Year Clockを実現するために4,200万ドルを拠出した。建設作業が始まり、Bezosはこの様子をTwitterで公開した。これによると、時計の高さは500フィート(150メートル)で、東京タワーの高さ(332.9メートル)の半分程度の大きさとなる。時計は全て機械構造で、物理的な動きを眼で見ることができる。時計を動かす動力は昼と夜の温度差を使う。また、時計の時刻は太陽の正午と同期する仕組みになっている。公開されたビデオには岩山に円柱状に穴をあけ、時計を建設する様子が写されている(下の写真)。場所はテキサス州西部のバンホーン(Van Horn)で、この近くにはBezosの宇宙開発会社Blue Originの施設がある。

出典: Jeff Bezos

時計の動力源

時計を動かすための主要動力源は人間で、柱時計のゼンマイを鍵で回すように、巨大なバーを人が回して動力を蓄える。時計の両側にシリンダーが取り付けられ、重り(Drive Weight)をコイル(Drive Rewind Spinal)で吊り下げる構造となっている(下の写真、両端のパイプ状の部分)。このコイルを巻き、重りを引き上げて動力とする。しかし、10,000年にわたり人が来る保証はなく、時を刻む機構に関しては、時計は自力で稼働する。時計は山頂に設置され、昼と夜の温度差が大きく、これを利用して動力源とする。具体的には、金属の板が温度により伸縮する力を利用する。人間が巻き上げた重りは時計版の表示とチャイムの演奏に使われる。

時刻とその補正

時計はねじれ振り子(Torsion pendulum)という方式が使われる(下の写真、最下部の球体が装着されている部分)。家庭にある置時計のように、円盤が左右に回転して時を刻む。ねじれ振り子時計は機械的な構造で時間に誤差が生じるため、これを補正するために太陽光を利用する。太陽が子午線を通過する正午に、光をレンズで集め金属製ワイヤーに照射する。このワイヤーは形状記憶合金で、温度が上がると縮む性質があり、この力で時計の時間を正午に合わせる。

チャイム

時計は定期的にチャイムが鳴る仕組みになっている。ウインドチャイムのように10本のチューブがつるされ、これを叩いて音楽を奏でる。人間がバーを押して重りを巻きあげた時もチャイムが鳴る。パターンは300万通り以上で10,000年間で全て異なる音楽が奏でられる。音楽のパターンを計算する機構は「Binary Mechanical Computer」と呼ばれ、様々なギアから構成される(下の写真、時計の文字盤の下に取り付けられている部分。この内側にチャイムが取り付けられている)。

出典: The Long Now Foundation

時計の文字盤

時計の文字盤はリング状になっており(下の写真)、長針(外側のリング) は1年に一つ進み、短針(内側のリング)は 100年に一つ進む。また、1000年ごとに鳩時計のように鳥が出てきて鳴く仕組みとなっている。また、中央には太陽、月、星の位置が表示される。時計の文字盤は動力を節約するためいつもは止まっているが、人がコイルを巻いたときだけ動く仕組みになっている。

出典: The Long Now Foundation

時計を建設する目的

技術革新が高速で進む中、この時計は時間を長期的な視点から把握するために考案された。宇宙船から地球を見るように、この時計は1万年のレンジで時間を表している。Bezosは、「時計が動き続ける間に、アメリカは無くなり、文明は移り変わる。どんな時代になるか誰も予想できないが、この時計は時代を跨って動き続ける。」と述べている。  

出典: Google Maps

時計の見学

10,000 Year Clockは建設中であるが、完成すると一般に公開され、時計を見学できる。また、レバーを押してコイルを巻き、時計の運用に関わることができる。この時、時計はチャイムを鳴らし音楽を奏でる。同じパターンはなく、世界に一つだけのメロディーを楽しむことができる。時計はテキサス州西部のSierra Diablo山脈に位置し、近郊都市El Pasoまで飛行機で飛び、そこから自動車で2時間の行程となる(上の地図)。見学には事前登録が必要で、完成すると招待状が届く仕組みとなる。ただ、完成時期については「今から長年かかる」とだけ記述され、時間に縛られないでマイペースで工事が進んでいる。

Amazon Goがサンフランシスコにオープン、レジ無し店舗が全米に広がる

Amazonは2018年10月、サンフランシスコでレジ無し店舗「Amazon Go」をオープンした(下の写真)。Amazon Goはシアトルで3店舗とシカゴで2店舗が運営されており、サンフランシスコ店は6番目の店舗となる。Amazonは2021年までに3000店舗を開設すると報道されており、全米で急速にレジ無し店舗が普及する勢いだ。

出典: VentureClef  

近未来のショッピング

オープンしたばかりのAmazon Goで買い物をしたが、近未来のショッピングを体験できる。店舗内は高級コンビニという嗜好で、食料品を中心に品ぞろえされていた。Amazon Goにはレジはなく、取り上げた商品を持ってそのまま店を出ることができる。店舗を出てしばらくすると、購入した商品の代金が登録しているクレジットカードから引き落とされた。

QRコードで入店する

Amazon Goは専用アプリで利用する。店舗に入る際にアプリを起動し、表示されたQRコードをリーダーにかざすとゲートのバーが開く(下の写真)。友人や家族と来店した際にも同じ手順であるが、QRコードをかざして同伴者を先に入店させる。(天井に設置されているカメラが利用者だけでなく同伴者も把握する。)

出典: VentureClef  

買いたいものを手に取る

店舗内では、商品を手に取り、買いたいものを自分のバッグに入れたり、手に持って買い物をする(下の写真)。品物を取り上げた時点で利用者の「Virtual Cart(仮想カート)」に商品が入る。気が変わり、取り上げた商品を棚に戻すと、Virtual Cartから取り出される。同伴者も同じ方式で買い物ができる。しかし、商品を取り上げて同伴者に手渡すことは禁止されている。(AIアルゴリズムの教育ができていないためか。)

出典: VentureClef  

買い物が終わると

店舗にはレジはなく、買い物が終わると出口専用のゲートを通るだけで支払い処理が完了する(下の写真)。購入した商品の代金は登録しているクレジットカードから引き落とされる。ゲートの横でAmazon Goスタッフが顧客の質問に答えていたが、万引きなどの不正をチェックしている様子はなかった。(万引きすると売り上げ処理されるので不正行為はできない仕組み。)

出典: VentureClef  

品揃えに特徴あり

Amazon Goはコンビニのように食料品や飲料水を中心に品ぞろえをしている。デリのコーナーもあり、サラダやサンドイッチなどが並んでいる。入口近くの棚には様々な種類のランチボックスが陳列されていた(下の写真)。ランチボックスは日本のお弁当のように、調理された食材が綺麗に配置されている。他に、フルーツやスープやデザートなどもそろっている。出口そばにはテーブルと椅子が用意されており、買ったものをその場で食べることができる。

出典: VentureClef  

ロケーション

Amazon GoはサンフランシスコのFinancial Districtと言われる金融街にオープンした(下の写真、正面ビルの角)。ここに大企業のオフィスが集中しており、周辺にはレストランやデリなどが立ち並ぶ。Amazon Goは忙しい社員のために、食料品やランチボックスを販売する。短い昼休みであるが、レジ待ちの時間が無くなり、ゆっくり食事をすることができる。一方、周囲のデリやファーストフードは売り上げが減る可能性がある。  

出典: VentureClef  

大規模に展開

AmazonはAmazon Goを2018年末までに10店舗開設する。2019年までに50店舗を、2021年までに3000店舗を開設すると報道されている。当初、Amazonはレジ無し店舗の技術を他社にライセンスすると噂されていたが、自ら店舗を運営する戦略であることが明らかになった。この市場ではAmazon Goに刺激され競争が激しくなっている。ベンチャー企業からAIを駆使したレジ無し店舗技術が登場し、店舗での実証実験が進んでいる。

Amazonが小売店舗をつぶしたのか

Amazon.comの登場で多くの小売店舗が売り上げを減らし、また、廃業に追い込まれている。先月、全米で最大規模のデパートであったSearsが130年の歴史に幕を閉じ、会社更生法の適用を受けた。AmazonがSearsを殺したという解釈があるが、小売店舗は進化の努力をしていないとの意見もある。Amazonは小売店舗をテクノロジーで改良し、消費者に快適な買い物環境を提供する戦略を取る。その一つがAmazon Goで消費者はレジ待ちの苦痛から解放される。Amazon Goは小売店舗が成長できる方向を示しているとみることもできる。

Amazon Goの仕組み】

カメラで顧客と商品を認識

天井には数多くのボックスが設置され、ここにカメラが実装されている(下の写真)。ボックスはプロセッサーで、カメラが捉えたイメージの基礎的な解析を実行する。具体的には、人の存在の認識、顧客の特定と追跡、顧客の動作の意味の把握を実行する。顧客が移動すると、別のカメラがこれをフォローする。更に、カメラは棚の商品を認識し、取り上げられた商品の名前を特定する。

出典: VentureClef  

センサーの情報

商品棚には重量計が搭載されている。重量計が棚の重さを計測し、重量が減ると商品が取り上げられたと認識する。カメラが捉えたデータと重量計のデータから、取り上げられた商品を特定する。Amazonはこの方式をSensor Fusionと呼んでいる。

Deep Learningで意味を把握

これら一連のデータはサーバーに送信され、Deep Learningが売り上げを推定する。天井のカメラは顧客の位置を追跡し、特定の商品棚の前にいることを認識し、その挙動 (手を伸ばすなど) を捉える。その棚の商品が取り上げられたことをカメラと重量計で認識する。これら一連の情報をDeep Learningで解析し、特定の顧客が特定の商品を取り上げたことを判定する。