カテゴリー別アーカイブ: ロボティックス

Googleは新体制でロボット開発を強化、高度なAIでブレークスルーを狙う

Googleは新体制でロボット開発を加速している。新組織は「Robotics at Google」と呼ばれ、Vincent Vanhouckeが指揮を執る。VanhouckeはAI研究部門「Google Brain」でイメージ認識技法(Computer VisionやPerception)の研究をリードしてきた。新組織はGoogle本社にオフィスを構えAI部門と連携して研究開発を進める。🔒

出典: Andy Zeng et al.

シリコンバレーで宅配ロボットの営業運転が始まる、企業キャンパスで社員にランチを配送

Amazonは宅配ロボット「Amazon Scout」の実証実験を始めたが、ベンチャー企業はすでにシリコンバレーで営業運転を展開している。Starship Technologiesは宅配ロボット「Starship」を企業キャンパスで運用し、社員向けにランチを配送するサービスを始めた。🔒

出典: Starship Technologies

Amazonは宅配ロボット「Scout」の運用を開始、人に代わりロボットが商品を配達する

Amazonは配送ラストマイルを担うロボット「Amazon Scout」の実証実験を始めた。Amazonで購入した商品は人間ではなくロボットが配送する。既に多くのベンチャー企業が配送ロボットを開発しているが、Amazonの参入で技術競争が激しくなる。同時に、AmazonがScout投入したことは、商品の宅配をロボットが担う時代が到来したことを意味する。

出典: Amazon

Amazon Scoutの概要

Amazonは2019年1月、配送ロボットAmazon Scout (上の写真)を発表した。Scoutはクーラーボックスに車輪が六つ付いた形状で、自動運転車のように自立走行する。Scoutは歩道を人が歩くくらいの速さで進み、注文を受けた商品を消費者宅まで配送する。プライム会員向けのサービスで、Amazonで買い物をして同日配送などのオプションを選択すると、Scoutがその商品を無料で配送する。

トライアルを開始

Amazonは6台のScoutを使ってSnohomish County(ワシントン州)でトライアルを始めた。Scoutの運用は月曜日から金曜日までの日中に限られる。注文を受けるとScoutが最適ルートを算定し、自動走行して商品を宅配する。当初は、Amazonのスタッフが安全確認のためにロボットに随行する。

商品の受け取り

Scoutが配送先に到着すると消費者宅の玄関前の歩道に停止する。消費者のスマホにメッセージが送信され、Scoutが到着したことを知らせる。消費者はアプリを操作(PINの入力か)してScoutの貨物ベイのカバーを開き、商品を取り出す(下の写真)。Scoutは商品が取り出されたのを確認して、カバーを閉めて、自律的に帰還する。

出典: Amazon

住民サービスの向上

Scoutはシアトルのアマゾン研究所で開発された。Scoutは歩道を自律走行し、路上のペットや歩行者をよけて安全に移動する。Snohomish CountyはScoutによる商品配送を歓迎するとのコメントを出している。住民サービスが向上するとともに、環境にやさしい方式での配送に期待を寄せている。

地方政府の評価が分かれる

一方、配送ロボットを歓迎しない自治体も少なくない。サンフランシスコは配送ロボットが歩道を走行することを禁止している。市街地では歩道の幅は狭く、配送ロボットが高齢者や身体障碍者の通行を妨げる、というのがその理由。反対に、配送ロボットを積極的に受け入れる自治体は多い。上記に加え、シリコンバレーのMountain ViewやSunnyvaleは配送ロボットが次世代インフラを支える基礎技術と評価し、実証実験を進めている。

技術的課題課題

Scoutなど配送ロボットは歩道を走行して商品を配送する仕組みとなる。歩道の走行は一般道路の走行より難しいとされる。歩道は狭く歩行者で込み合っている。更に、人は歩道を整然と歩くのではなく、ロボットが予測できない行動を取る。歩道を集団で歩いたり、商店から歩道に飛び出すことも珍しくない。歩道にはカフェのテーブルや自転車などが置かれており、配送ロボットはこれらの事象を理解して対応することが求められる。

受け取り手順の問題

更に、人間でなくロボットが商品を届けると、受取手順が問題になる。高級住宅地では敷地に入る際にマニュアルでゲートを開ける必要がある。また、アパート形式の建物では配送ロボットは玄関先まで行くことができない。戸建ての住宅であっても、到着した際に、受取人が不在の時は配送ロボットは荷物を玄関先に置いておくことができない。配送ロボットが通行人によりいたずらをされるケースも報告されている。今後、実証試験などを通してこれらの課題を解決する必要がある。

実際に事故が発生

ロボットが生活に入ってくる中、全米各地で事故が報告されている。Washington(コロンビア特別区)のショッピングモールGeorgetown Waterfrontで、警備ロボット「Knightscope」はステップで転倒し池に転落した(下の写真)。警備ロボットの厳格なイメージが傷つき、企業はハードウェア以上のダメージを受けた。

また、配送ロボット「KiwiBot」はBerkeley(カリフォルニア州)で配送中に突然火を噴きだし火災となった。消防が駆け付ける前に周囲の通行人が消し止め大事には至らなかったが、企業イメージの低下は避けられない。これらの事故が示しているように、ロボットの技術完成度はまだまだ未熟で、抜本的な技術革新が求められる。

出典: Bilal Farooqui

ロボット配送時代に

Amazonはラストマイルの配送ではドローン「Prime Air」の技術開発を早くから始めているが、ロボット配送では市場参入が遅れた。AmazonがこのタイミングでScoutを投入したことは、配送ロボット市場の機が熟したと判断したのかもしれない。解決すべき課題は多いが、Amazonの参入で市場が活性化し、一気にロボット配送の時代に突入する予兆を感じる。

Googleは家庭向けロボットを開発!? 先行するAmazonを追随する

Amazonは家庭向けロボットを開発していると噂されている。Googleはこれに対抗して、同じく、家庭向けロボットの開発に乗り出した。Googleは五年前、ベンチャー企業を買収してロボット開発を始めたが、このプロジェクトは頓挫した。GoogleはAmazonに刺激され、ロボット開発を再開し、高度なAIを武器にインテリジェントなシステムを開発している。

出典: Dmitry Kalashnikov et al.

ロボット開発の経緯

Googleは2013年、プロジェクト「Replicant」を発足し、ロボット開発に乗り出した。ロボット開発は「X」(当時のGoogle X)が担い、Andy Rubinが指揮を取っていた。Rubinは「Android Inc.」創業者で、2005年にGoogleが買収し、スマホ事業の基礎を築いた。Rubinはインテリジェント・マシンに興味を持っており、ドイツの製造会社でロボットエンジニアとして働いていた。

ベンチャー企業買収

Googleはロボット企業8社を相次いで買収した。最大規模の買収はBoston Dynamicsで、同社は、軍事支援ロボットとヒューマノイドを開発していた。日本企業でヒューマノイドを開発しているSchaftも買収された。また、コンピュータビジョンをロボットに応用したIndustrial Perceptionや次世代ロボットアームを開発していたRedwood Roboticsも含まれ、Googleはロボット市場に本格的に参入すると見られていた。

開発を中止

しかし、Googleは突然ロボット開発を中止した。Andy Rubinは2014年にGoogleを離れ、その直後、Replicantは活動を停止した。Googleは買収したBoston Dynamicsの買い手を探していたが、2017年、SoftBankが同社を買収することで合意した。これに先立ち、SoftBankは2012年にAldebaran Roboticsを買収し、ロボット事業を開始した。

中止の理由

Googleがロボット開発を中止した理由はロボットを事業化するのが難しいと判断したため。ロボットは配送センターや組み立て工場使われる工業ロボットが中心で、一般社会で使われるサービスロボットの開発には時間がかかる。Rubinは2020年頃に製品を投入する予定でいたが、Google幹部は短期間で成果を求めており、この意識の相違が中止に繋がった。

ロボット基礎研究

Replicant中止の後も、Googleは高度なAIをロボットに適用する研究を進めてきた。Googleはコモディティハードウェアに最新のAI技法を取り込み、インテリジェントなロボットを開発している。具体的には、Deep LearningとReinforcement Learningをロボットの頭脳として使う。Googleのロボット研究施設は「Arm Farm」と呼ばれ(先頭の写真)、10台超のロボットアームが並列に稼働しスキルを学ぶ。

AI研究内容

研究ではロボットアームでドアのノブを回し、それを手間に引いてドアを開けるタスクが実行された (下の写真)。それぞれのロボットはニューラルネットワークのコピーを搭載し、Reinforcement Learningの手法で教育された。行動(Action)を実行するとき、与えられた環境(Sate)で値(Value)を算定し、ロボットはValueを最大にする方向でActionを決定する。ロボットがタスクを実行するときにノイズを加え、それぞれのロボットは異なる環境でタスクを実行する環境を構築する。

出典: Google  

ロボットクラウド

これらのデータはクラウドに収集されネットワークを最適化する。アルゴリズムは収集されたデータからうまく処理できたケースとそうでないケースを検証し、Actionとタスク完遂の関係を把握し、ネットワークを改良していく。このサイクルを繰り返し、ロボットの性能を向上する。ロボットは数時間の教育でドアを開けることができるようになった。

最新のAI研究

Googleは最新のAI技法「QT-Opt(Q-function Targets via Optimization)」を開発した。Arm FarmにQT-Optを搭載するとオブジェクトをつかむ(Grasp)精度が飛躍的に向上する。QT-Optとは分散型Q-Learning(Reinforcement Learningの一つのモデル)で、連続したアクション(Continuous Action)を安定的に処理できる点に特徴がある。

ロボットでモノをつかむ

ロボットはカメラのRGB画像からオブジェクトを把握し、アーム先端のグリップを開きそれをつかむ。ロボットが複雑な形状のオブジェクトを正確につかむためには高度な技法が要求される。これは「Picking Challenge」と呼ばれ、多くの企業や研究機関がこのテーマに挑戦している。いかに正確にかつ高速にモノをつかめるかがロボットの商品価値を決める。

アルゴリズム教育

アルゴリズムはカメラの画像を読み込み、ロボットアームの動きと、グリッパーの開閉を出力する(下の写真、左側)。最初にオフラインでアルゴリズムを教育し、次に、ロボットを稼働させオンラインで教育する。オフライン教育では1000種類のオブジェクトが使われ(下の写真、右側)、ロボットはこれらを580,000回つかむ試験が実施された。完成したアルゴリズムを使い、ロボットの性能を検証したところ、オブジェクトをつかむ成功率は96%と好成績をマークした。

出典: Dmitry Kalashnikov et al.  

研究の意義

アルゴリズムはオブジェクトを正確に掴むことができるほか、操作をインテリジェントに理解する。アルゴリズムは上手く掴めなかったときには、異なる掴み方を自動で学習する。また、オブジェクトを掴む手法を長期レンジで把握する。(下の写真上段:オブジェクトが纏まっているときはそれを崩す(Singulation)ことを自律的に学習する。中段:立っているローソクはつかみにくいのでそれを倒して実行する。下段:軽くてつかみにくいボールはトレイの端に寄せてつかむ。上の写真右側:煩雑な環境でもオブジェクトをつかむことができる。)

出典: Dmitry Kalashnikov et al.  

実社会への応用

Googleのロボット開発はGoogle BrainとXで進められている。GoogleのArm Farmで開発された技術は、ロボットアームだけでなく、ロボットの基礎技術として応用される。実社会には様々な形状のオブジェクトがあり、それに触れた時、オブジェクトの物理挙動も異なる。ロボットを実社会で使うためには多くの課題を解決する必要があるが、これらの研究がその手掛かりとなる。

家庭向けのロボット

Googleは家庭向けロボットの開発を進めていると噂されている。AIスピーカー「Google Home」は人気商品で、多くの家庭で使われている。GoogleはAIスピーカーを駆動型にしたロボットを開発しているとみられている。ロボットは家の中を自律的に走行し、タスクを実行することとなる。

Amazonに対抗

Amazonは「Vesta」という名前でロボットを開発している。これはAmazonの人気商品Amazon Echoを駆動型にしたモデルである。GoogleはVestaに刺激を受け、ロボット開発を再開したとみられる。AIスピーカー市場ではAmazon EchoとGoogle Homeが競い合っているが、今度はロボットで両社が鎬を削る。両社ともロボット技術はまだまだ未成熟であるが、商品化に向けての開発が進み、大きなブレークスルーが期待される。

自律走行型オフィス警備ロボットが登場、人間社会と共存できる優しいデザインが特徴

シリコンバレーでオフィス警備ロボットが登場した。ロボットは多種類のセンサーとAIを搭載し自動走行する。施設内で異常を検知するとオペレータに通知する。不審者を見つけると身分証明書の提示を求める。警備を担うロボットであるが威圧感は無く、形状は流線型で親しみやすいデザインとなっている。自動運転車で培った技術がロボットに生かされている。

出典: Cobalt Robotics  

屋内警備を担うセキュリティロボット

このロボットはシリコンバレーに拠点を置くCobalt Roboticsにより開発された。ロボットは「Cobalt」という名前で、屋内警備を担うセキュリティロボットとして登場した (上の写真)。ロボットは多種類のセンサーを搭載し自律的に移動する。ここにはComputer VisionやAIなど先進技術が使われている。プロモーションビデオをみるとCobaltはロボットというより家電に近いイメージだ。

施設を自動走行し異常を検知

ロボットは事前に設定されたルートを巡回して警備する。また、ロボットがランダムに施設内を移動することもできる。ロボットは経路上で人物や物を認識し、問題と思われるイベントを検知しこれを管理室に通報する。例えば、ドアがロックされないで開けられた状態であれば、これを異常事態と認識しオペレータ(Human Pilotと呼ばれる)に対処を促す。

環境をモニタリング

ロボットはオフィス環境をモニタリングし、水漏れなどの異常を検知することもできる。また、オフィスに不審物が置かれていれば管理室にアラートを上げる。備品管理機能があり、倉庫での棚卸や資材管理にも利用できる。更に、オフィス内のWiFiシグナル強度をモニターする機能があり、不正アクセスポイントを検知できる。

社員とのインターフェイス

ロボットは人間を認識でき、オフィス環境で共存できることを設計思想とする。ロボットは正面にディスプレイを搭載しており、社員が直接オペレータとビデオを介して話すことができる。また、非常時にはオペレータがロボットを遠隔で制御し社員を安全な場所に誘導する。更に、ロボットは定時以降オフィスに残っている人に対しては身分証明書の提示を求める。社員は身分証明書をロボットのリーダーにかざし滞在許可を受ける (下の写真)。

出典: Cobalt Robotics  

多種類のセンサーを搭載

ロボットは多種類のセンサーを搭載している。光学カメラは360度をカバーし全方向を見ることができる。暗闇での警備のために赤外線カメラを搭載している。Point Cloud Cameraで周囲のオブジェクトを3Dで把握する。Lidarと呼ばれるレーザースキャナーで周囲のオブジェクトを3Dで把握する。遠距離まで届くRFIDリーダーでオフィス備品などに張り付けられているタグを読み取り資材を管理する。

自動運転車で培われたAI技法を採用

ロボットはAIやMachine Learningの手法でセンサーが読み込んだデータを解析する。周囲のオブジェクトを判別し、安全に走行できる経路を計算し、ロボットが自律的に走行する。また、Computer Visionで水漏れなどの異常を検知する。更に、ロボットはマッピング技術を実装しており、走行時にLidarで周囲のオブジェクトをスキャンし高精度3Dマップを生成する。生成された3Dマップを頼りにロボットは自動走行する。多くの技術は自動運転車で開発され、Cobalt Roboticsはこの成果をロボットに応用している。

家電に近いロボット

Cobaltは警備ロボットであるが外観は人間に親しまれる形状となっている (下の写真)。これは著名デザイナーYves Béharによりデザインされ、表面は金属ではなく柔らかい素材が使われている。また、Cobaltはヒューマノイドではなく、下に広がる円筒形のデザインとなっている。ロボットというと鉄腕アトムのようなヒューマノイドを思い浮かべるが、Cobaltは家電とか家具に近いイメージだ。自動走行する家電と表現するほうが実態に合っている。

出典: Cobalt Robotics  

若い世代が考えるロボット

Cobalt RoboticsはErik SchluntzとTravis Deyleにより創設された。Schluntzはハーバード大学在学中にインターンとしてSpaceXとGoogle Xで製品開発に従事した。Deyleはジョージア工科大学でロボット研究を専攻し、Google XでSmart Contact Lensの開発に携わった。二人とも大学を卒業して間もなくCobalt Roboticsを創設した。若い世代がロボットを開発するとCobaltのように優しいイメージになる。

警備ロボットは既に社会で活躍

実は警備ロボットは既にアメリカ社会で活躍している。シリコンバレーに拠点を置くベンチャー企業Knightscopeはセキュリティロボットを開発している。このロボットは「K5」と呼ばれ、多種類のセンサーを搭載し屋外の警備で使われている。Microsoftがキャンパス警備でK5を採用したことで話題を集めた。Knightscopeの敷地内をK5がデモを兼ねて警備にあたっている(下の写真)。

出典: VentureClef  

屋内向け警備ロボットを投入

Knightscopeは小型ロボット「K3」を投入した。K3は建物内部を警備するためのロボットで、K5に比べて一回り小さな形状となっている。サンフランシスコで開催されたセキュリティカンファレンス「RSA Conference」でK3が紹介された (下の写真)。人間に代わりオフィスを警備するロボットで、高度なセンサーとAIを搭載し自律的に移動する。K3は形状が小型化しただけでなく、対人関係を考慮したキュートなデザインとなっている。

出典: VentureClef  

ロボットは商用施設に向かう

いまロボットは、オフィス、銀行、病院、高齢者介護施設、ホテル、小売店舗など商用施設で受け入れられている。警備機能だけでなく、ここでは既に多種類のロボットが稼働し企業の効率化を支えている。これら企業環境はロボットにとって自動走行しやすい場所である。企業のオフィスを例にとると、レイアウトが固定で通路が明確で、そこで働く社員は社会的な行動を取る。ここがロボット適用のスイートスポットで事業が急速に拡大している。

最後のフロンティアに向かっての準備

反対にロボット最後の市場は家庭環境といわれている。家庭のフロアには玩具や衣類が散在し、子供やペットが走り回る。WiFi通信は不安定で通信は頻繁に途切れる。AI家電のAmazon EchoやGoogle Homeは対話するロボットして位置づけられるが、移動する機能はない。一般家庭が最後のフロンティアで、商業施設向けロボットはその準備段階として重要な意味を持つ。