カテゴリー別アーカイブ: 人工知能

OpenAIはアップストア「GPT Store」でChatGPTアプリ「GPT」の販売を開始、企業の事務効率を劇的に改良するアプリの開発が進む

OpenAIは1月10日、GPTのアップストア「GPT Store」の運用を開始した(下の写真)。GPTとは用途に特化した専用のChatGPTで、生成AIのアプリケーションとして機能する。Appleの「App Store」でiPhoneアプリを購入するように、GPT StoreでChatGPTアプリを利用する。多くのGPTを使ってみたが、ビジネスに役立つアプリが多く、企業はこれを導入して事業プロセスを効率化できる。米国企業はGPTに着目しており、今年は生成AIを導入する流れが加速する。

出典: OpenAI

GPTとは

GPTはカスタムバージョンのChatGPTで、独自のスキルと知識を持ち、特定分野で能力を発揮する。GPTは用途に特化した専用のChatGPTで、生成AIのアプリケーションとして位置付けられる。OpenAIはGPTのアップストア「GPT Store」の運用を開始し、GPTの販売を開始した。AppleのApp Storeと異なり、GPT Storeにはビジネスに役立つアプリが数多く掲載されており、利用者の中心が企業ユーザとなる。

GPTを使ってみると

GPT Storeには多くのGPTが掲載されており、その数は300万件を超える。使い方はシンプルで、GPT StoreでGPTを選択し、それをスマホやPCで実行する仕組みとなる。GPT Storeには多彩なモデルが掲載されており、仕事や研究や開発でプロセスを効率化するツールが揃っている。ソフトウェアツールとは異なり、GPTは生産性を劇的に向上する。企業や研究所にとって必須のツールになる。同時に、GPT Storeに掲載されているアプリの品質には大きな幅があり、役に立たないモデルも数多く、その見極めが難しい。

Writing:文章作成で品質を向上するアプリ

GPT Storeには文章生成を効率化するための多種類のアプリが掲載されている。ビジネスドキュメントの開発を支援するGPTが最も注目されている。「Fully SEO Optimized Article including FAQ’s」というGPTは、タイトルとキーワードを指定すると(下の写真上段)、それに沿ってブログ記事を生成する。GPTは指示された内容に沿って、アウトラインを生成し、ドキュメントの構成を提示する(下段)。

出典: OpenAI

最終的に、GPTはアウトラインに沿ってコンテンツを生成し、検索エンジンの上位に掲載される、記事を完成する(下の写真)。多くのスタートアップ企業が同様なモデルを投入しており、生成AIアプリにとってここが主戦場となる。

出典: OpenAI

Productivity:ビジネスの生産性向上アプリ

生産性向上アプリは企業が日常業務を効率化するために使われる。「VideoGPT」というGPTは、指定された条件に沿ってビデオを生成する。企業が製品のプロモーションビデオを制作する際に利用できる。製品の概要や利用シーンを指定し、ビジュアルとオーディオの特性を示すと(下の写真左側)、アプリがこれに沿ったビデオを生成する(右側)。プロンプトに沿ってGPTがライブラリからビデオを抽出し、これを組み合わせて最終コンテンツを生成する。ChatGPTがビデオを生成しているのではなく、プロンプトに従ってクリップを組み合わせてビデオを完成する。

出典: OpenAI

Research & Analysis:研究や解析のためのツール

研究者のためのGPTが開発されている。これらの多くは、公開された学術論文を参照し、科学に裏付けられた回答を導き出す。「ScholarAI」というGPTは、科学技術に関し仮定を設定し、それを過去の論文を参照して検証する。例えば、「ロボット手術でVR技術の役割を検証せよ」と指示すると、過去の論文「医師の教育でVR技術が有効である」を参照して、評価レポートを制作する(下の写真)。

出典: OpenAI

Programming:コーディング支援アプリ

コーディング技術はもはや不要で言葉でプログラムを作成できる。これは「Prompt-Gramming」と呼ばれ、プロンプトでプログラムの内容を指示すると、GPTがそれに合ったコードを生成する。「DesignerGPT」というGPTは、ホームページを生成するアプリで、プロンプトに従って(下の写真左側)、ウェブページを生成する(右側)。プロンプトでホームページの構成やイメージを指示すると、それに沿ったHTMLを生成する。

出典: OpenAI

DALL·E:イメージ生成アプリ

DALL·EとはOpenAIが開発したモデルで、言葉の指示に従ってイメージを生成する。GPT-4とは異なり、ディフュージョン(拡散、Diffusion)という技法で、極めてリアルなイメージを生成する。人気のジャンルで、ここにイメージを生成するGPTが掲載されている。その中で「Super Describe」というGPTは、入力された写真(下の写真左側)を、独自のスタイルでその複製(右側)を生成する。企業がオリジナル作品から、その派生イメージを生成する際に利用できる。一方、派生イメージがオリジナルの著作権を侵害しないなど、合法的な利用法が求められる。

出典: OpenAI

企業向けのGPT

企業はGPTで業務を効率化するためのアプリを簡単に開発できる。開発したGPTは外部に公開することなく、社内で安全に利用できる。OpenAIはGPTの利用シーンを示しており、企業は”人事GPT”を開発し、GPTが福利厚生に関する質問に回答するなどの利用法がある。「HR Helper」というGPTは、健康保険の掛け金に関する質問に回答する(下の写真)。人事規定は企業ごとに異なるが、社内ルールを反映したGPTを簡単に作成して運用できる。昨年は、ChatGPTの技術評価が進んだが、今年は生成AIをビジネスに適用する流れが本格化する。

出典: OpenAI

OpenAIはGPTのアップストアを開設、カスタムChatGPTの購入や販売が始まる、企業は生成AIをビジネスに統合する流れを加速

OpenAIは1月10日、GPTのアップストア「GPT Store」の運用を開始した(下の写真)。GPTとは用途に特化した専用のChatGPTで、生成AIのアプリケーションとして位置付けられる。Appleの「App Store」でiPhoneアプリを購入するように、GPT StoreでChatGPTアプリを利用する。既に300万件のChatGPTアプリが掲載されており、生成AIのエコシステムが急成長している。また、企業はChatGPTをビジネスに適用する取り組みを加速している。

出典: OpenAI

GPTとは

ChatGPTに対して、「GPT」はカスタムバージョンのChatGPTで、昨年11月にOpenAIの開発者会議で公開された。通常のChatGPTはインターネットの情報で教育され、多彩な知識を持ち、指示されたタスクを幅広く実行する。しかし、企業や消費者は独自のタスクに特化したカスタムChatGPTを求めており、この解がGPTで、独自のスキルと知識を持ち特定分野で威力を発揮する。

GPTの販売が始まる

GPT Storeには多くのGPTが掲載されており、ここでアプリを購入し、それをスマホやPCで実行する仕組みとなる。GPT Storeは分野ごとに区分され、多彩なカスタムChatGPTが掲載されている:

  • Featured / Trending:人気のアプリ
  • DALL·E:イメージ生成アプリ
  • Writing:文章作成で品質を向上するアプリ
  • Productivity:ビジネスの生産性向上アプリ
  • Research & Analysis:研究や解析のためのツール
  • Programming:コーディング支援アプリ
  • Education:生徒や教師向けの教育支援ツール
  • Lifestyle:日常生活を支援するアプリ

人気のGPTは

GPT Storeには、消費者向けのアプリの他に、企業や研究者向けのツールが幅広く掲載されている。また、アプリの人気ランキングが公開され、注目を集めているGPTが分かる(下の写真)。

出典: OpenAI

人気アプリConsensusとは

一番人気のアプリは「Consensus」で、研究や解析のためのツールとし、開発者の活動を支援する。Consensusは2億件の学術論文で教育され、研究成果に特化したChatGPTとなる。研究者の質問に、ChatGPTは過去の論文を引用して回答する。例えば、大規模言語モデルの研究で「Transformers」の論文を引用しているものを尋ねると、ChatGPTはそれを的確に回答する(下の写真)。

出典: OpenAI

イメージを生成するアプリ

GPTはイメージ生成技術「DALL·E」とリンクしており、言葉の指示に従って、多彩なグラフィックスを生成する。人気アプリ「Logo Creator」は対話形式で会社のロゴを生成する。例えば、アイスクリームショップは好みのデザインを反映したロゴを簡単に生成できる。GPTと対話しながら、色やトーンやメッセージなどを指示すると(下の写真左側)、DALL·Eはそれに沿ったロゴを制作する(右側)。

出典: OpenAI

消費者向けのアプリ

GPT Storeには消費者向けのアプリが数多く掲載されている。その中で人気のGPTが「AllTrails」で、ハイキングのコースを教えてくれる。対象とする地域を指定し、コースの難度などを対話形式で入力すると(下の写真左側)、最適なコースを出力する(右側)。GoogleやChatGPTで検索することもできるが、GPTはズバリ回答を示すので使って便利と感じる。

出典: OpenAI

企業向けのGPT運用環境

OpenAIは「Assistants API」などGPTを開発する環境を公開しており、企業はここで簡単に、専用のChatGPTアプリを開発できる。更に、企業は開発したGPTを一般に公開することなく、社内で安全に運用できる環境が提供された。これは「Team」と呼ばれ、ChatGPTとGPTを社内でセキュアに運用できる環境となる。ここで企業は業務に特化したGPTを開発し、社内データを統合し、機密情報がリークすることなく安全に利用できる。

出典: OpenAI

企業は生成AIの導入を加速

これに先立ちOpenAIは、企業向けのChatGPTサービス「Enterprise」を投入しており、「Team」と合わせ、企業向けの生成AIの開発と運用の環境が拡充された。既に、260社が「Enterprise」のユーザであるとされ、企業が業務にChatGPTを導入する流れが加速している。企業内でビジネスに特化したGPTを開発し、これを安全に運用する環境が提供され、企業が生成AIをビジネスに適用するトレンドが鮮明になった。

ニューヨーク・タイムズはOpenAIとMicrosoftを著作権侵害で訴訟、ChatGPTは学習した記事を“暗記し”そのまま出力、訴状は違法な事例を克明に提示し生成AIの課題が浮き彫りになる

ニューヨーク・タイムズはOpenAIとMicrosoftを著作権侵害で提訴した。訴状によると、両社はニューヨーク・タイムズの記事を使って言語モデルを開発し、ChatGPTやCopilotがそれをそのまま出力し、著作権を侵害していると主張。両社はライセンスに関する協議を続けてきたが合意に至らず、ニューヨーク・タイムズは訴訟に踏み切った。訴状にはGPT-4が出力したテキストが数多く証拠として提示され、言語モデルの問題点が浮き彫りになった。

出典: Adobe Stock

訴訟の内容

ニューヨーク・タイムズは12月27日、OpenAIとMicrosoftを著作権侵害で提訴した。OpenAIは数百万件の記事を使って言語モデルを開発し、ニューヨーク・タイムズの事業と直接競合するとしている。学習した記事をベースに、AIモデルはその内容をそのまま出力し、また、記事のサマリーを生成する。これにより、ニューヨーク・タイムズは有料記事のライセンス収入が減り、また、広告収入も減少し、事業に多大な影響を及ぼすとしている。

ニューヨーク・タイムズの主張:教育データ

ニューヨーク・タイムズは、OpenAIの言語モデルの教育で、ウェブサイトから取集した大量のデータが使われ、ここにニューヨーク・タイムズの記事が含まれていると主張する。教育されたモデルは記事の内容を覚え、利用者のプロンプトに対し、モデルは記事の内容を出力する。このため、OpenAIが事実上のニュース会社となり、ニューヨーク・タイムズの競合企業になると主唱する。訴状によると、GPT-3の教育で「Common Crawl」などが使われ、ここにはニューヨーク・タイムズの記事が大量に掲載されている。(下のグラフ、上から四段目。) 一方、OpenAIはChatGPTとGPT-4の教育データについては何も開示してない。

出典: New York Times

ニューヨーク・タイムズの主張:プロンプト

ニューヨーク・タイムズはGPT-4に特定なプロンプトを入力すると記事を丸ごと出力すると主張する。多数の記者が長年の歳月をかけ調査した記事を、GPT-4が自作の記事のように、記事を出力する。訴状によると、記事のURLと最初の部分をプロンプトとして入力すると、GPT-4はそれに続く記事を出力する。(下の写真:GPT-4に入力したプロンプト、記事の冒頭の部分)

出典: New York Times

ニューヨーク・タイムズの主張:GPT-4の出力

このプロンプトに対し、GPT-4はそれに続く記事をそのまま出力する。左側はGPT-4が出力した内容で、右側はオリジナルの記事を示している。赤文字の部分がオリジナル記事と同じテキストで、GPT-4は記事の内容を暗記し、最初のパラグラフが入力されると、これに続く記事をそのまま出力している。ニューヨーク・タイムズの記事は有料であるが、最初のパラグラフを入力すると、これを無料で読めることになる。

出典: New York Times

現在のGPT-4で試してみると

GPT-4が実際にニューヨーク・タイムズの記事を出力するのか、現行モデルで試してみたが、訴状で述べられている現象を再現することはできなかった。同じプロンプトを入力したが、GPT-4はここに著作物が含まれているとして、記事を出力できないと回答。他の記事で試してみたが、同様に、著作物のコンテンツの出力は抑制されている。

出典: OpenAI

OpenAIの主張

OpenAIは従来から、著作物で言語モデルを教育するのは「フェアユース(Fair Use)」で、著作権侵害には当たらないと主張する。アルゴリズムは、著作物を学習し、学んだ内容を出力するが、これは記事全体ではなくその一部で、法令で許容された範囲内であると主張する。米国著作権の専門家も同様な見解を示しており、ニューヨーク・タイムズが勝訴するのは難しいという意見もある。

Google Book Searchの判決

過去には、Googleの書籍検索システムがフェアユースとして認められた事例がある。Googleは書籍をデジタル化し、それを検索するシステム「Google Book Search」を構築した。検索エンジンで書籍を検索できるようになったが、著作者団体「Authors Guild」はこのシステムは著作権を侵害するとして提訴した。裁判所は、書籍検索は著作権の中のフェアユースと認定し、Googleが勝訴した。検索エンジンは書籍の一部分だけを出力し、これは著作権の侵害ではないと判定された。

メディアとの提携

OpenAIはニューヨーク・タイムズを含め、主要メディアと記事のライセンスに関する協議を進めている。既に、ドイツに拠点を置く大手メディア企業Axel Springerと、記事のライセンス条件について合意した。OpenAIは、「Politico」と「Business Insider」の記事を利用でき、GPT-4はそれをそのまま引用することが認められた。また、Associated Press(AP)はOpenAIが記事を使ってモデルを教育することを認めた。

出典: Adobe Stock 

メディアとの決裂

一方、ニューヨーク・タイムズはOpenAIがモデルを記事で教育することを禁止しており、クローラ「OpenAI GPTBot」が記事をスクレ―ピングするのをブロックしている。また、CNN、BBC、ロイターも同様の仕組みを導入し、OpenAIが記事を収集することを禁止している。メディア企業は、OpenAIとの提携を模索するグループと、記事の提供を禁止するグループに分かれ、生成AIと著作権の関係の難しさを表している。

今年は重大な局面を迎える

ニューヨーク・タイムズの訴訟がどのように進むのか、メディア企業やハイテク企業が注目している。実際に裁判が始まり、法廷で判決が下されるのか、それとも、これを切っ掛けに両社が交渉を再開するのか、重大な局面を迎える。裁判では巨額の費用と長い歳月を要し、両社は交渉を再開し、ビジネスとして決着するとの見方が広がっている。ニューヨーク・タイムズとOpenAIで、言語モデル教育の条件や対価が決まれば、これが事実上の業界標準ガイドラインとなる。

欧州連合はAI規制法「AI Act」で最終合意に至る、生成AIは技術情報の公開が求められる、顔認識技術の運用は厳しく制限される

欧州連合(European Union)は域内のAIを規制する法令「AI Act」の最終調整を続けてきたが、難航の末、今月最終合意に達した。2021年に創案された法案が二年の歳月を経て法令として成立する。AI Actの成立に時間を要した理由は、二年間でAIの機能が劇的に進化したことにある。昨年末、ChatGPTという新しいタイプのAIが登場し、この生成AIをどう規制するかで議論が続いた。EUは当初、生成AIに厳しい制限を設けることを主張したが、OpenAIやGoogleはこれに強く反発し交渉が続いてきた。最終的に、生成AIの技術内容を公開するなど、透明性を高めることを義務付ける内容で決着した。

出典: European Parliament

AI Actとは

「AI Act (Artificial Intelligence Act)」とは欧州員会(European Commission)によるAI規制法で、EU内でAIを安全に運用するためのフレームワークとなる。欧州委員会はAIの危険度を四段階に分けて定義し、それぞれの利用法を規定した。危険なAI (Unacceptable Risk AI)はその使用を禁止する。ハイリスクなAI(High-risk AI)については、規定された対策を適用することを条件に使用が認められる。ローリスクなAI(Limited Risk AI)は表示義務を条件に使用が認められる。その他のAI(Minimal Risk AI)は無条件で利用できる。また、これらの規定に違反すると制裁金として、最大3500万ユーロか売上高の7%が課される。AI Actの特徴はAIの危険度を定義し、それに応じた運用条件を定めたことにある。

出典: European Commission

AI Actの最終合意概要

AI Actは最終合意に達したが、法令のテキストはまだ公開されておらず、その詳細は分かっていない。欧州議会は、AI Actの最終合意内容に関しニュースリリースを発表し、法令の骨子を明らかにした。それによると、AI Act最終合意概要は:

  • 生成AI:生成AIは「General-Purpose AI (GPAI)、汎用AI」と呼ばれ、それを安全に運用するためのセーフガードが制定された
  • 生体情報:顔認識システムを警察などが使うことを制限
  • ソーシャルスコアリング:消費者を格付けするAIや心情を操作するAIは使用禁止
  • 説明責任: AIの判定理由を消費者に説明することを求める
  • 制裁金:最大3500万ユーロか売上高の7%に増額された

生成AIに関する規制

生成AIは「General-Purpose AI (GPAI)、汎用AI」と呼ばれ、安全に運用するためのセーフガード(Safeguard)が制定された。生成AIは幅広いタスクに適用されるため、汎用AIとして定義され、その開発や運用において透明性に関する要件が制定された。システムに関する情報公開を義務付けるもので、下記の項目が規定された:

  • 技術ドキュメントの公開
  • EUの著作権に準拠すること
  • 教育で使用したコンテンツの公開

ハイリスクな生成AIに関する規制

ハイリスクな生成AI「High-Impact (GPAI)」については、更に厳しい条件が付加された。ハイリスクな生成AIとは、社会インフラや教育や医療など危険性が高い領域に適用される生成AIを指す。ハイリスク生成AIは、モデルが安全に運用されていることを報告する義務が課された。具体的には、下記の条項が義務付けられた:

  • モデルの評価
  • システムのリスクを検証し対策を実施
  • Red-teamingによる安全試験
  • 重大なインシデントを報告
  • サイバーセキュリティ対策
  • モデル開発に関するエネルギー効率を報告
出典: GPT-4

顔認識システムに関する規制

AI Actは顔認識システム(Biometric Categorisation Systems)の使用を全面的に禁止した。顔認識システムを政治や宗教の目的で使うことで、個人の権利や民主主義が侵害される。また、この技術のベースとなる、顔イメージをスクレイピングして、データセットを構築することも禁止された。米国企業Clearviewは、ソーシャルメディアから顔イメージを収集し、世界最大規模の顔データセットを開発したが、この手法が明確に禁止された。

警察の使用に関する規定

一方、警察など治安当局が顔認識システムを使うことについては、特定の条件の下で、これを認める内容となった。顔認識システムは犯罪を抑止する効果があり、警察は裁判所の認可の元で、特定の犯罪に限って利用できる。リアルタイムでの顔認識システムについても、誘拐犯人の捜査など、特定の条件に限り使用が認められた。

AI Actの適用スケジュール

AI Actは最終合意に至ったが、適用計画については公表されていない。法令の施行時期は2024年と予想され、これをベースに準備が進められている。危険なAI(顔認識システムなど)については施行日の6か月後に適用され、生成AIについては1年後の2025年に適用される。その他のAIについては、2年後の2026年からの適用となる。AIの機能や性能は短期間で大きく変わり、生成AIが適用される時期に、規定の見直しが必要との意見もある。

出典: The White House

欧州と米国のAI規制のアプローチ

EU AI Actは、バイデン政権のAI規制に関する大統領令と比較して、厳しい内容となっている。EUは、AI Actや「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、GDPR)」など、テクノロジーから国民の権利を守る政策を取る。一方、米国は法令による規制ではなく、業界標準を定め、企業に自主規制を求める政策を取る。但し、生成AIは例外で、その危険性が甚大で、国家安全保障を脅かすため、米国政府は法令による規制を模索している。

人間の知能を遥かに上回るAIをどう制御するか、OpenAIは“スーパーアラインメント”の研究を開始し最初の成果を発表

人間の知能を遥かに上回るAIは「スーパーインテリジェンス(Superintelligence)」と呼ばれ、社会に多大な恩恵をもたらすとともに、人類存続の脅威になると考えられている。OpenAIは、10年以内にスーパーインテリジェンスが開発されると予測しており、その安全性を研究する専任部門を設立し、制御技法の研究を進めている。4年計画のプロジェクトで、その最初の成果を発表した。

出典: OpenAI

スーパーインテリジェンスとは

スーパーインテリジェンスは一般に、「Artificial Superintelligence (ASI)」と呼ばれ、人間の知能を遥かに上回るAIと理解される。厳密な定義は無いが、知的能力が高く、幅広い分野で難解な問題を解決すると期待されている。例えば、地球温暖化問題やがんなどの難病の治療法などで解法が期待されている。一方、スーパーインテリジェンスは人間の制御を逃れ、人類の弱体化や滅亡に繋がると強く危惧されている。

スーパーアラインメント

スーパーインテリジェンスは映画で登場するAIで、技術概要や開発時期について統一した見解は無い。しかし、OpenAIは、スーパーインテリジェンスは10年以内に開発されると予測しており、その安全性に関する研究を開始した。スーパーインテリジェンスを安全に制御する技法は「スーパーアラインメント(Superalignment)」と呼ばれ、AIを人間の価値観に沿うように改良する技法となる。現行の生成AIを安全に運用する技術は「アラインメント(Alignment)」と呼ばれるが、これを拡張したコンセプトとなる。

どう制御するか

GPT-4など生成AIを改良し安全性を強化する際は、人間が教師となりAIを指導する(下のグラフィックス左側)。教師である人間の知能はAIより高く、人間の常識などをアルゴリズムに教える。その代表手法が「Reinforcement Learning from Human Feedback」で、人間が正しい答えをモデルにフィードバックする。しかし、人間の知能を遥かに上回るスーパーインテリジェンスが登場すると、このモデルの安全性を如何に担保するかが重大な課題となる(下のグラフィックス中央)。超人的な知能を持つAIを人間が教育できるかが問われる。

出典: OpenAI

OpenAIの手法

OpenAIは、スーパーアラインメントの専任研究組織で、このテーマに関する研究を進めている。この組織は3月に設立され、今週その最初の研究成果を発表した。スーパーインテリジェンスは登場しておらず、実際のモデルを使って技法を開発することはできない。このため、OpenAIはスーパーアラインメントの論理モデルを構築し、その成果を計測した。小さなモデル(Weak Model)が教師となる、大きなモデル(Strong Model)の生徒を教育し、安全性を強化できるかが試験された。

試験の結果

この研究では小さなモデル(教師)として「GPT-2」(下のグラフ最上段)が、大きなモデル(生徒)として「GPT-4」(最下段)が使われた。GPT-2は生成AIの初期のモデルで、その機能は限られている。GPT-4は最も高度な生成AIで、GPT-2がGPT-4を制御できるかが試験された。GPT-2が生成するコンテンツでGPT-4の安全機能を再教育した。このアラインメントでGPT-4の安全性は向上するが、その性能は劣化する(下のグラフ、緑色)。しかし、特別な技法(Auxiliary Confidence Loss)を導入することで、本来の性能に近づけることができる(下のグラフ、紫色、GPT-3.5程度の性能を示した)。

出典: OpenAI

研究の意義

この研究では小さなモデル(GPT-2)が大きなモデル(GPT-4)を制御できる筋道が示された。これは「Weak-to-strong generalization」と呼ばれ、人間(小さなモデル)がスーパーインテリジェンス(大きなモデル)を教育する際に、この方式が適用できるかが問われる。スーパーアラインメントに関する研究の第一歩で、OpenAIはスーパーインテリジェンスが開発される間に、この課題を解く計画である。

スーパーアラインメント研究

スーパーインテリジェンスに関しては統一した定義はなく、その登場時期も様々な議論がある。しかし、OpenAIはスーパーインテリジェンス開発で大きなブレークスルーがあった、という憶測がソーシャルメディアで交わされている。CEOのSam Altmanの解任はスーパーインテリジェンスに関連すると噂されている。OpenAIは超人的なAI開発を進めており、スーパーアラインメントに関する研究が極めて重要な位置を占める。この研究に会社のリソースの20%を充てると述べており、AI開発は安全開発でもある。