しかし、問題はPilotNetが学習したドライブテクニックを人間が理解できないことだ。なぜBB8は車線が描かれていない道路を安全に走れるのかそのロジックが分からない。このためNvidiaはPilotNetが学習した内容を出力するシステムの研究を始めた。AIが学習したことを可視化する研究である。具体的には、PilotNetはどこに着目して運転しているのかを出力する技術を開発した。この研究成果は「Explaining
How a Deep Neural Network Trained with End-to-End Learning Steers a Car」として公開された。
Tesla Visionを搭載した車両で自動運転のデモ走行が実施された
(下の写真)。クルマはTesla本社をスタートしダウンタウンを通過し本社に戻ってくるルートで実施された。この間クルマが全工程を自動で走行した。Tesla
Visionはカメラ画像を解析し、クルマ周囲のオブジェクト、経路上のオブジェクト、車線、信号機、道路標識などを識別する
(下の写真、右側のウインドウ)。
Tesla Model 3は自動運転以外にもクールな機能が話題になっている。Model
3はカーキーは無く、スマホがBluetoothでドアと交信し鍵をアンロックする。スマホで搭乗できる仕組みとなる。ただし、緊急事態に備え専用カード
(NFC Key Card) も提供される。コックピットには15インチディスプレイだけが備えてありここで全ての操作をする
(上の写真)。必要最小限の機器を備えたデザインでクルマはどんどんシンプルになる。クルマはコンピュータに近づいている。
Waymoは三種類のLidarを搭載している。一つは「Short Range Lidar」でクルマの前後左右四か所に設置され、周囲のオブジェクトを認識する
(上の写真、後部バンパーと右側前方の円筒状の装置)。クルマのすぐ近くにいる小さな子供などを把握する。解像度は高く、自転車に乗っている人のハンドシグナルを読み取ることができる。
Long Range Lidar
もう一つは「Long Range
Lidar」 (上の写真、屋根の上のドームの内部に搭載) で遠方にあるオブジェクトにズームインすることができる。フットボール二面先のヘルメットを識別できる精度となる。これ以上の説明はないがWaymoが申請した特許 (下の写真、資料の一部) を読むとLong
Range Lidarはユニークな構造となっている。
特許資料によるLong Range Lidarの構造
Long Range Lidarは通常のLidarと可変式のLidarの二つのモジュールから構成される。通常のLidarは固定式で設定された範囲をスキャンする。可変式のLidarはFOV (視野、レーザービームがスキャンする角度) を変えることができる。ズームレンズで特定部分をクローズアップするように、可変式Lidarは発光するレーザービームを狭い範囲に絞り込み、遠方の小さなオブジェクトも判定できるようにする。ただ、この特許が実際の製品にどのように実装されているかは、Waymoの説明を待つ必要がある。
クルマに乗ると音声で行き先を告げる。例えば「take me to starbucks in san mateo」などと指示する。クルマは指示に従って目的地までのルートを算出しタブレットに表示する
(下の写真)。詳しい説明はなかったが、自動運転できる箇所は緑色で示される。自動運転できない箇所もマップ上に示され、ここはドライバーがマニュアルで運転することになる。HD
Mapが整備されていない道路や運転が難しい地域が対象となる。いわゆる”圏外”の道路で、自動運転車の性能は自動走行できる範囲の広さが決定的に重要な要素になる。
NvidiaはHD Map開発でも事業提携を拡大している。マップ技術で世界のトップを走るHEREはNvidiaとHD Mapの共同開発を進める。HEREはNvidiaが提供するマップ開発モジュール「MapWorks」を使って高機能マップ「HERE HD
Live Map」を開発する。また、Nvidiaはゼンリンとの提携を発表した。ゼンリンはDrive
PXとDriveWorksを使い日本でHD Mapを作成する。中国においてはNvidiaはBaiduと提携しHD
Mapの開発を進めている。中国が自動運転車の巨大市場になり、そのためにHD Mapの開発が欠かせない。今年のCESではNvidiaの事業提携発表が相次いだ。
Deep Learningでオブジェクトを判定できるようになるには、大量の写真を読み込みアルゴリズムを教育する必要がある。これに対しGeometric
Intelligenceは、人間が物を認識するように、少ないデータでイメージを判定できるアルゴリズムを開発している。少量データは「Sparse
Data」と呼ばれ、Deep Learning研究の主要テーマになっている。
この背後にはMarcusのAIに対する際立った考え方がある。MarcusはNew
York Universityの教授で心理学が専門。MarcusはDeep
Learningは行き詰ると主張する。その理由はDeep Learningの教育には大量のデータが必要で、適用できる分野が限られるためである。実社会では常に大量データが揃っているわけではない。特に、言語解析と自動運転車でこの問題が顕著になるとMarcusは指摘する。(上の写真はMarcusのホームページ。Marcusは心理学、言語学、生物学の観点からヒトのインテリジェンスに迫る。)