カテゴリー別アーカイブ: 自動運転車

Teslaは年末までに完全自動運転車をリリース、高性能AIで人間より3倍安全なAutopilotを実現

多くの自動車メーカーが自動運転の開発に手間取るなか、Teslaは2019年末までに完全自動運転機能を投入する。クルマはすでに必要なハードウェアを搭載しており、ソフトウェアをWiFiで更新するだけで自動運転車となる。Teslaはカメラの画像を高性能AIプロセッサで解析することでこれを実現する。Lidarは不要で定石を覆す方式を取り、自動運転技術のブレークスルーが生まれるのか、その成果に注目が集まっている。🔒

出典: Tesla

Waymoは無人タクシーアプリを一般に公開、いよいよ自動運転車サービスが始まる

Waymoは、2019年4月、無人タクシーサービス「Waymo One」向けのアプリを公開した。このアプリをGoogle Playからダウンロードして利用する。Uberを使う要領で、アプリからWaymoに配車をリクエストする(下の写真)。無人タクシーサービスはアリゾナ州フェニックスで展開されている。今までは実証試験として利用者を限定してきたが、今月からこのサービスが一般に公開された。

出典: Waymo

商用サービスを拡大

Waymoは2017年から、アリゾナ州フェニックスの特定地域で無人タクシーの実証実験「Early Ride Program」を進めてきた。2018年12月、Waymoはこれを商用ベースに切り替え、「Waymo One」という名称で無人タクシーサービスを開始した。Waymo Oneは実証実験への参加者を対象に限定的に進められてきたが、今月からこのサービスを一般に公開した。

専用アプリを公開

Waymo Oneを使うには、公開されたアプリをスマホにダウンロードして利用する。ただ、すぐに利用できるわけではなく、アプリはWaymo Oneの利用申請書となっている。アプリを起動するとWaymo One利用申し込みの画面となり、ここで利用を申請し、これが認可されるとサービス利用できる(下の写真)。当初はフェニックスの特定地域に居住している住民が優先される。

出典: VentureClef

アプリの使い方

申請が認可されると公開されたアプリからWaymo Oneのサービスを利用できる。配車をリクエストする際には、乗車場所(Pickup Point)と降車場所(Dropoff Point)を指定する(下の写真左側と中央)。これに対してアプリはこの近傍の最適な乗車場所と降車場所を示し、これでよければリクエスト(Request Ride)ボタンを押すとクルマが配車される(下の写真、右側)。これは有料のサービスであるが料金体系は公開されていない。

出典: Waymo

料金を計算すると

一方、アプリの画面には、Element Chandler Fashion CenterからDowntown Chandlerまで走行すると料金は$7.32との記述がある。この区間の距離は4.5マイルで所要時間は11分程度で、ここから計算すると料金単価は$1.63/マイルとなる。また、同じ区間をUberXで走行すると$9.92となり、30%ほど安く設定されている。

車内のディスプレイ

クルマが配車され乗車すると、座席の前のディスプレイに目的地と所要時間・到着予定時間が示される。これを確認して「Start Ride」ボタンを押すとクルマは発進する。走行中はクルマのディスプレイに運行状況が表示される(下の写真)。ここにクルマが認識する周囲の状態が表示され、車線や横断歩道、他の車両や歩行者などがグラフィカルに表示される。走行に影響するオブジェクトはハイライトして示される。到着地でクルマを降りると料金はアプリに課金される。

出典: Waymo

オペレーターのサポート

走行中に乗客はWaymo Oneのオペレーターと会話することができる。ディスプレイの「Support」ボタンを押すと、電話がコールセンターに繋がり、オペレーターと話をすることができる。例えば、「行き先を変更したいがどうすればいいのか?」などと問い合わせることができる。無人タクシーではオペレーターがドライバーに代わり乗客をサポートする。

一般公開の意義

Waymo Oneが一般に公開されたことは、無人タクシーの商用サービスに向け大きく前進したことを意味する。実証実験では参加者は厳しい制約の下でWaymo Oneを利用してきた。参加者は守秘義務にサインし、知りえた情報を外部に公開することは禁止されていた。また、社内でビデオや写真撮影は禁止され、また、参加者以外の人を同乗させることはできなかった。サービスの一般公開でこれらの制限が撤廃された。

体験レポート

これに伴い、ネット上でWaymo Oneの乗車体験レポートが目立つようになった。ある利用者は、Waymoが渋滞のハイウェイでうまく車線変更できた様子をYouTubeに掲載している。一方、ショッピングセンターの道路が大勢の歩行者で込み合い、クルマは立ち往生したとの報告もある。結局、アルゴリズムがタイムアウトとなったのか、セーフティドライバーがコールセンターに連絡し、ルートを再計算して再起動した。当面はセーフティドライバーが搭乗し、クルマが完全に自動走行できるにはもう少し時間がかかりそうな様子がうかがえる。

出典: Waymo

カリフォルニア州での営業運転

コールセンターはフェニックス、オースティン、及び、マウンテンビューに開設されている。フェニックスの次はこれらの都市でWaymo Oneの営業運転が始まる可能性が高い。事実、Waymoはカリフォルニア州で自動運転車を無人で運行するための認可を受けた。自動運転車の走行ではセーフティドライバーの搭乗が義務付けられていたが、これにより無人車両を公道で走らせることができるようになった。Waymoが認可を受けた最初の企業となり、Waymo Oneの営業運転の環境が整ってきた。

日本人を含む有色人種は自動運転車に轢かれる確率が高い、AIアルゴリズムの精度が白人に偏っている

自動運転車が歩行者を認識する精度は肌の色により異なり、白色人種より有色人種の検知精度が低いことが判明した。これはGeorgia Institute of Technologyの研究チームが明らかにしたもので、自動運転車は有色人種の歩行者を検知しにくいという特性がある。イメージ判定のアルゴリズムがバイアスしているためで、自動運転車の場合は生命にかかわる問題として注意を喚起している。🔒

出典: Benjamin Wilson et al.  

Amazonは商品配送に自動運転車を導入、Auroraなど自動運転ベンチャーに大規模な出資

Amazonは自動運転ベンチャーAuroraに大規模な出資を実施した。Amazonが自動運転車の開発に乗り出すとの憶測もあるが、実際には、商品配送に自動運転車を導入する準備を進めている。Amazonの配送車両やトラックを自動運転化し人件費を削減する。また、自動走行するロボットが配送のラストマイルを担う。🔒

出典: Aurora

自動運転車は高齢者と若者のどちらの命を救うべきか、アルゴリズムに倫理的な判断が求められる

MIT Media Labは倫理的な自動運転技術を研究している。自動運転車開発ではトロッコ問題(Trolley Problem)が重要な研究テーマとなる。自動運転車が事故を避けられない状況に陥ったとき、誰を救い、誰を犠牲にするかが議論となる。MIT Media Labはこの問題を一般化し、全世界で世論調査を実施し、その結果を公表した。自動運転車に求める倫理判断は普遍的ではなく、地域で考え方が大きく異なることが分かった。日本を含むアジア圏は欧米と比べ際立った特徴を示している。

出典: Iyad Rahwan et al.  

Moral Machine

研究結果は「The Moral Machine experiment」として科学雑誌Natureに掲載された。MIT Media Labはトロッコ問題を一般化した「Moral Machine」という研究を進めている。トロッコ問題とは倫理学の思考実験で、ある人を救うためにある人を犠牲にすることは許されるか、というテーマが議論される。Moral Machineはこのテーマを自動運転車に適用し、13のケースを作り出し、公開実験としてウエブサイトに掲示している。

ウェブサイトでの公開試験

全世界の利用者はMoral Machineにアクセスし、これらの質問に回答することができる。13のケースについて、自動運転車が取るべきアクションを投票することができる。具体的には、自動運転車のブレーキが故障した時、アルゴリズムは人命を救うためにどう判断すべきかが示されている。ここには二つのアクションが提示され、被験者はどちらが倫理的な判断であるかを回答する(上の写真)。このケースでは、自動運転車は直進し歩行者三人を犠牲にする(上の写真左側)。または、自動運転車はハンドルを切りブロックに衝突し、搭乗者三人が犠牲になり歩行者を救う(上の写真右側)。被験者は二つの中から自動運転車が取るべきアクションを選ぶ仕組みとなる。

回答を集約し解析

このように、MIT Media LabはMoral Machineを公開し、クラウドソーシングの手法で回答を取集した。その結果、過去四年間で世界233か国から100万人を超える被験者から回答が集まった。世界最大規模のトロッコ問題の世論調査となり、自動運転車が取るべき倫理的アクションについて知見を得ることができた。(Moral Machineのサイトで回答すると自分の倫理観は世界の標準と比べどの位置にあるかが分かる。)

アルゴリズムに求めること

論文は回答結果を解析し、自動運転車が取るべき倫理的なアクションについて、9のケースにまとめ、その順位を示している(下の写真、棒グラフの長さが重要度を示す)。自動運転アルゴリズムが考慮すべき要因として、歩行者の性別、社会的地位、年齢などをあげている。その結果、アルゴリズムに求めることのトップ3は、「ペットより人の命を救う」、「一人でも多くの人命を救う」、「老人より若者の命を救う」という結果が示された。

出典: Iyad Rahwan et al.

地域による特性

一方、自動運転車に求める倫理的なアクションは国により際立った特性を示していることも分かった。国ごとの特徴を分類すると、世界を三つのグループに分けることができる。Western(米国や欧州)、Eastern(日本を含むアジア圏)、Southern(南米など)の三つに区分でき、これらグループ内では共通の特性を示した(下の写真、グラフは9のケースについて重要度を示す)。

Easternの特性:老人の命を救う

Easternには日本や中国や韓国などが含まれており、国は異なるが同じ特性を示している(下の写真中央)。具体的には、自動運転車は「老人と若者のどちらの命を救うべきか」について、両者の間に違いはなく、特に若者の命を優先する必要はないと回答している(中央のグラフで「Sparing the Youngの値がゼロ」)。これは孔子思想の影響で、年配の人を尊敬する文化に起因すると分析している。

出典: Iyad Rahwan et al.  

Westernの特徴:多くの人命を救う

Westernは9のケースについてどれも重要だという結果を示している(上の写真左側)。特に、Westernは「できるだけ多くの人命を救う(Sparing More)」ことを求めているのに対し、Easternはこの項目につては重要視していない。また、Southernは「社会的地位の高い人を救うべき(Sparing Higher Status)」と答えている(上の写真右側)。個人主義が価値観を構成するWesternは多くの人命を、貧富の差が激しいSouthernは社会的地位の高い人を救う傾向がある。

地域にあったアルゴリズム

世界で共通な倫理アルゴリズムが議論されるが、この研究により危険回避の方式は地域により大きく異なることが分かった。つまり、アジアでは老人の命を守る自動運転車が求められるが、南米では社会的地位の高い人を守るクルマが評価される。自動車メーカーはこれら消費者の要望に沿ったアルゴリズムを開発する必要がある。また、政府機関は同様に、市民の要望に沿った形で法令を整備することが求められる。

これを実現するのは難しい

しかし、この思考実験を自動運転技術に落とし込むには、解決すべき課題が少なくない。コンピュータビジョンが歩行者の性別や年齢や服装を判定できるが、自動運転車のセンサーがこれを瞬時に100%の精度で判定するのは難しい。また、交通事故は物理現象が複雑に絡み合い、誰が死亡するかの予測は限界があり、怪我の度合いも考慮する必要がある。このため、最初のステップとしては単純なモデルから考察を始めることになる。もうすでに、ペットではなく人命を優先する技術などが開発されてる。

倫理的なクルマとは

セーフティドライバーが搭乗しない無人の自動運転車が走行を始めたが、クルマが特定の人の命を救う判断を下すことになる。人間の生死をマシンが決めることになり、自動運転車と生活を共にするには違和感を覚える。不安を解消するためには、自動運転車の安全性や事故を回避する仕組みを説明することが最初のステップとなる。そのうえで、国ごとに何が倫理的なアクションなのかを議論し、倫理的なクルマについてのコンセンサスづくりが必要となる。この研究はその手掛かりを示している。