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Facebookは暗号通貨Libraを投入、Bitcoinとは異なり世界が注目する理由

Facebookの暗号通貨「Libra」が世界で波紋を起こしている。同じ暗号通貨でもBitcoinは投機目的に使われ値動きが激しい。Libraは暗号通貨の欠点を改良し、金融決済に使うことを目的としてデザインされている。Bitcoinは資金洗浄やハッキングを連想させ暗いイメージがあるが、Libraは暗号通貨の優等生を目指す。Libraが幅広く普及すると予測され、FacebookはSNSの次は金融ネットワークで世界を制覇すると恐れられている。

出典: The Libra Association

Libraとは

Facebookは2019年6月、暗号通貨(Cryptocurrency)である「Libra」を発表した。LibraはGenova(スイス)に拠点を置く独立団体「Libra Association」により運営される。ここにはFacebook子会社「Calibra」の他にMastercardやPayPalなど28団体が加盟している(上の写真)。現在、ソフトウェア「Libra Core」の開発が進められ、2020年からLibraの運用が始まる。

Libra設立の目的

FacebookはLibraを創設した理由を「Reinvent Money」としている。お金を取引するインフラをゼロから開発し、メッセージを送受信するように、簡単に送金できる仕組みを作る。国を跨り送金するには時間と手数料がかかるがこのプロセスを簡便にする。また、金融インフラの整っていない途上国でLibraがその役割を担う。

Libraの特徴

Libraは暗号通貨で独自のブロックチェイン「Libra Blockchain」で運営される。暗号通貨はデジタル通貨(Digital Currency)の一種でブロックチェインで安全に運用される。ブロックチェインとはP2Pネットワークで、トランザクションデータを各ノードに保存し、論理上データを改ざんすることは不可能で、不正行為ができないとされる。Bitcoinは不特定多数の団体や個人がノードを運営するが、Libraは上述の参加企業がノードを管理する構造で、セキュアに運用できる仕組みとなっている。

Stablecoinという特性

Libraの最大の特徴は暗号通貨の中でも「Stablecoin」としてデザインされていることだ。Stablecoinとは価格変動を最小限に抑えた暗号通貨で、Libraのケースでは通貨でその価値を裏付けする(Fiat-Backed Stablecoin)。具体的には、消費者がLibraを購入すると、発行元(Libra Association)はそれと同額の通貨を購入する。通貨はドルや円など主要通貨で、これをバスケット(Libra Reserve)に入れて運用する。この仕組みによりLibraの価値を長期にわたり保つことができ、交換レートが大きく変動することはないとされる。

Libraの使い方

Libraはスマホのデジタルワレットから利用する。多くのアプリが登場するが、Facebookからは「Calibra Wallet」というデジタルワレットが提供される(下の写真)。アプリには残高(163.20LBR)や、ドルとの換算レート(1 LBR = 1.0493 USD)が表示される。送金するには相手のアドレスと金額をドルで指定する。メッセージを添えて「Send Now」ボタンを押すと送金される。送金手数料は無料となる。 

出典: The Libra Association

Libra利用のプロセス

Libraを使って買い物をするとその背後でプロセスは次のように進む。まず、LibraはLibra Associationによって生成(Mint)される。Libra AssociationはLibraを生成できる唯一の組織で、それを再販企業(Reseller)を通じて流通させる。消費者はデジタルワレット(Facebookの場合はCalibra)をダウンロードしてLibraを使う。消費者は上述の再販企業からLibraを購入する。

出典: The Libra Association

これで消費者はオンラインサイト加盟店でLibraを使って買い物ができる。例えば、eBayで買い物をしてその代金をLibraで支払うことができる。一方、eBayは受け取ったLibraを再販企業でドルに交換する。更に、再販企業はLibra AssociationでLibraを通貨に交換すると、Libra AssociationはLibraを廃棄(Burn)し、一連のプロセスが終了する。

Libra Blockchainとは

Libraは独自のブロックチェイン(Libra Blockchain)で運用される。Libra Blockchainは当初は「Permissioned」方式で運用される。これは、特定団体(このケースではLibra Association)がネットワークへのアクセスや運用を制御する方式を指す。また、ネットワークのノード(Node)はLibra Association創設メンバーにより運用される。つまり、ブロックチェインであるが、その運用は参加企業に限られ、閉じられたネットワークとなる。

Bitcoinとの違い

一方、Bitcoinは「Bitcoin Foundation」が基本方針を決めるが、その運営は分散型で中央組織が制御する方式はとっていない。Bitcoinは「Deflationary Currency」という特性を持ち、生成されるBitcoinの量が次第に少なくなり、発行量は2100万Bitcoinで打ち止めとなる。一方、Libraは需要と供給により発行される量が決まる。また、Bitcoinは「Permissionless」というアーキテクチャで、誰でも自由にMinerになりMiningできる。Minerがネットワークのノードを維持運営するわけで、不特定多数の個人や団体がシステムを支える。Libraは当初はPermissioned方式で運営するが、将来はPermissionless方式に移行するとしている。

Internet of Money

このようにBitcoinと比較するとLibraの特性が際立つ。Libraは暗号通貨であるが閉じたネットワーク(Libra Blockchain)でシステムへのアクセスを制限し安全に運用される。また、Libra Reserveという方式で、発行されたLibraの価値がドルや円などで支えられ値動きが安定する。Bitcoinは値動きが激しく投機目的で使われるが、Libraは少額決済(Micro Transaction)を目的に安定した運用を目指す。インターネットでデータが自由に行き交うが、Libraは通貨でこれを実現し、Internet of Moneyとなることを目標に設計された。

Appleはクレジットカード「Apple Card」を発表、お洒落なだけでなく安心感が格段に向上

Appleは2019年3月、自社ブランドのクレジットカード「Apple Card」を発表した。Apple Cardはチタン製のお洒落なカードで、表面にはカード番号などは印字されておらず、安全性を重視したデザインとなっている(下の写真)。Apple CardはiPhoneに格納し、Apple Payのモバイル決済として利用する方式が中心となる。Appleがクレジットカード事業に進出したことで、フィンテック市場が大きく変わろうとしている。

出典: Apple  

クレジットカードデザイン

Appleがクレジットカードをデザインするとシンプルでお洒落なカードが出来上がる。一方、その運用はパートナー企業と提携して行う。カードの決済ネットワークはMastercardを利用し、実際にカードを発行する銀行はGoldman Sachsとなる。同行は初めてクレジットカード事業に進出することになり、その手腕に注目が集まっている。

利用方法

Apple CardはiPhoneの「Wallet」アプリに格納して利用する。これによりモバイル決済システム(おサイフケータイ)「Apple Pay」でApple Cardを使う構造となる。店舗で買い物をするときは生体認証(Face IDやTouch ID)で利用者を特定し、iPhoneをリーダーにかざしてNFCインターフェイスで決済する(下の写真)。また、アプリやウェブサイトで買い物をするときも認証プロセスを経て決済トランザクションが起動する。

出典: Apple

購買履歴

Appleがクレジットカードをデザインすると使いやすくなる。Apple Cardで買い物をすると、購買記録は綺麗に整理されて表示される。買い物の内容を確認する際はアイテムにタッチすると、店舗名やその場所が画面に示される(下の写真、右側)。購買アイテムはカテゴリーごとに整理され (同中央)、週ごとに購買金額とそのカテゴリーがグラフで示される。

出典: Apple

キャッシュバック

Apple Cardの最大の特徴は買い物をするとキャッシュバックを受けることができる点だ(上の写真、左側)。Apple製品を買うと購買金額の3%のキャッシュバックを受ける。また、Apple Payで買い物をすると購買金額の2%を、クレジットカードで買い物をしたら1%のキャッシュバックを受ける。キャッシュバックは月ごとではなく、買い物をするとその場で受け取れる。お金はApple Payのキャッシュカード「Apple Pay Cash」に振り込まれ、送金や買い物で使うことができる。

ローンの返済

Apple Cardでローンを組むとその返済金額と利子が分かりやすく表示される。例えば、ローン残高が1,682.55ドルのケースでは、250ドル返済するとその時の利子は22.37ドルであることが分かる(下の写真)。支払い金額により利率が変わり、1,180.78ドル返済すると利子がゼロとなる。分かりやすい表示でローン返済を促すデザインとなっている。

出典: Apple

セキュリティ:オンラインショッピング

Apple CardはApple Payの高度なセキュリティ機能を使い、安全に支払い処理が実行される。Apple Cardを登録すると「Device Number」(iPhoneデバイス固有の識別番号)が生成され、これがSecure Elementに格納される。オンラインで買い物をするときには「Dynamic Security Code」(ワンタイムカード番号)が生成され、Device Numberとともに使われる。クレジットカード番号が使われることはなくウェブサイトで安全に決済できる。

セキュリティ:店舗での買い物

クレジットカードにはカード番号やCVV(Card Verification Value、セキュリティコード)は印字されていない。このため、レストランでクレジットカードを手渡して決済する際にカード番号を盗用されることはない。クレジットカードはICチップを実装しており安全に支払い処理を実行できる。一方、クレジットカードはNFCには対応しておらず、かざすだけのインターフェイスは持っていない。

Goldman Sachsの戦略

今回の発表でGoldman Sachsがクレジットカード事業に進出したことが話題となっている。Goldman Sachsは企業顧客を中心とし、個人は富裕層だけを対象に事業を展開してきた。しかし、2016年、Goldman Sachsは事業戦略を大きく展開し、「Marcus」というブランドで個人向け融資サービスを開始した。クレジットカードはこれに続く事業で、消費者向けビジネスを拡大する方向が鮮明になった。

出典: Apple  

Apple Cardに対する安心感

モバイル決済では日本や中国が先行するが、米国ではAppleがこの事業を手掛けてから市場が急拡大している。Tim Cookは基調演説の中で、Apple Payの累計処理量が100億件を超えたと述べた。他社に比べてAppleの企業イメージはよく、プライバシーを厳格に実行するため、安心してクレジットカードを託せる。また、Apple Cardを運営するGoldman Sachsは収集した個人データは第三者に提供しないと宣言している。Appleのクリーンなイメージが商品者に安心感を与えApple Cardがヒットする予兆を感じる。

IBMはAIのロジックを可視化するクラウドを投入、Explainable AIで信頼できるAIモデルを構築

銀行や保険会社はAIを導入しプロセスを自動化する試みを進めている。しかし、AIのロジックはブラックボックスで、意思決定の仕組みが見えない。動作メカニズムが解明されない限り、AIを会社業務に導入できない。IBMはこの問題を解決するために最新のExplainable AIをクラウドで投入した。

出典: IBM

コールセンター

IBMはWatsonをベースとしたAIモデルを企業システムに展開している。その中で人気が高いのがAIコールセンターで、チャットボットがオペレーターに代わり電話を受ける。英国の大手銀行Royal Bank of Scotlandはチャットボット「Cora」を開発し、コールセンターで運用している。Coraは200以上の質問に対し1000通りの回答をすることができ、コールセンターの仮想オペレーターとして利用されている。Coraは進化を続け、次は顧客のファイナンシャルアドバイザーとしての展開が計画されている。

納税書類作成

米国の大手会計事務所H&R BlockはIBM Watsonを利用して納税申告書作成プロセスを最適化した(下の写真)。H&R Block社員が顧客と対面して申告書を作成する際に、Watsonが会話を理解して税金控除(Tax CreditsとTax Deductions)を提言する。米国の税制は複雑で法令は74,000ページに及び、毎年改定される。H&R Blockはこの法令と社員のノウハウでWatsonを教育し、AIが節税のポイントを発見する。

出典: IBM

データ保護規制へのコンプライアンス

カナダの大手情報会社Thomson ReutersはEU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)など準拠するため、AIツール「Data Privacy Advisor」をIBM Watsonで開発した。これは社内のコンサルタント向けのツールで、普通の言語で質問するとツールは言葉で回答を提示する。Thomson ReutersとIBMはデータ保護規則だけでなく、コンサルタントのノウハウでWatsonを教育した。GDPRなどデータ保護法が強化され、企業はマニュアルでの対応に限界を感じAIツールの開発に踏み切った。

AIの説明責任

企業は業務処理でAIを導入するが、そのアルゴリズムはブラックボックスで、重要な処理をAIに任せることができない。また、AIモデルを運用中に問題が発生すると、これを検知するメカニズムが必要となる。更に、問題の原因を突き止め、AIモデルを修正する機能も求められる。業務で使うAIには意思決定のロジックを分かりやすく説明する機能が必須となる。

OpenScaleを発表

市場からExplainable AIに対する要望が高まり、IBMはAIのブラックボックスを解明するクラウド「OpenScale」を発表した。OpenScaleは企業が運用するAIと連携して稼働し、AIモデルの処理プロセスを解明し、アルゴリズムの問題点を指摘する。また、OpenScaleは問題点を指摘するだけでなく、その対応策を提言する機能も有す。OpenScaleはIBM Cloudで提供され、企業が開発したAIモデルと連携して稼働する構造となる。

システム概要

OpenScaleはIBM ResearchとWatsonグループにより開発された。OpenScaleはAIの信頼性を増し、ロジックを明らかにすることを目的に設計された。具体的には、AIモデルに説明責任(explainability)、公平性(fairness)、ライフサイクル管理(lineage)の機能を付加する。OpenScaleは主要AI開発プラットフォームと連携して稼働し、Watson、Tensorflow、SparkML、AWS SageMaker、 AzureMLをサポートする。

バイアスの検知

OpenScaleは業務で稼働しているAIモデルを解析し、「Accuracy(判定精度)」と「Fairness(公平性)」を査定する。下の写真は自動車保険のAIモデルを解析した事例で、どこに問題点があるかを表示している。それぞれのタイルはAIモデルで、自動車保険業務で8つのモジュールが稼働している。これらAIモデルを解析し、OpenScaleはAccuracyとFairnessに関する問題(紫色のハッシュの部分)を指摘している。更に、タイル上部に赤文字で「Bias」と表示される。

出典: IBM

バイアスの原因

この指摘に従ってAIモデルをドリルダウンして判定のメカニズムを見ることができる。例えば「Claim Approval」というAIモデルをクリックすると、自動車保険の保険金請求に関する問題点が可視化される(下の写真)。ここにはAIモデルを教育したときのデータ構成が示されている。横軸が年齢で縦軸がデータ件数を示す。OpenScaleは24歳未満の加入者が公正に扱われていないと指摘する。この原因は教育データの数が不足しているためで、24歳未満の加入者のデータを追加してAIモデルを再教育する必要があることが分かる。

バイアスの説明

更に、OpenScaleは過去のトランザクションでAIモデルが判定した理由を説明する機能もある。自動車保険の保険金請求において、実際のトランザクションのデータをOpenScaleで解析することで、判定理由が示される。具体的には、保険金申請が認められなかった場合には、その理由が示される。実際、保険金請求処理で申請が認められなかった場合は、顧客にこの理由を説明することが法令で義務付けられており、OpenScaleを使うことで法令に順守できる。

出典: IBM

AIプラットフォーマーとなる

OpenScaleを投入したことは、IBMはAIのシステムインテグレータになることを表明したとも解釈できる。AI開発で遅れを取っているIBMであるが、オープンなアプローチででAIモデルを安全に稼働させるプラットフォーマーになる戦略を進めている。Googleを筆頭にシリコンバレーで怖いほどのAIが生み出されるが、東海岸の代表企業IBMは無秩序に増殖するAIを管理運営することをミッションとする。激しく進化するAIを企業が業務で安心して使えるための技術開発がIBMの新たな使命となる。

AI融資審査はブラックボックスで安全に使えない、いま判定結果を説明できるExplainable AIが登場

AIで融資を審査する手法は銀行業務を自動化する切り札として注目されている。しかし、金融機関はAI融資審査の導入をためらっている。これはアルゴリズムがブラックボックスで、審査したロジックが明らかでなく、銀行は消費者に判定理由を説明でいないため。いま融資審査の内容を説明できるAIが登場し注目を集めている。

出典: Google

説明できるAI融資審査

ZestFinanceはロサンジェルスに拠点を置くベンチャー企業で、融資サービスのAIプラットフォームを開発している(上の写真)。この製品は「Zest Automated Machine Learning (ZAML)」と呼ばれ、融資申込者のリスクを機械学習の手法で査定する。ZAMLの特長はアルゴリズムが導いた結果を説明できること。これは一般に「Explainable AI(説明できるAI)」と呼ばれ、政府法令に準拠してAIが融資審査を実行する。

融資審査と説明責任

機械学習モデルを使うと融資判定を高精度に実施できるが、この手法はAIが抱える根本的な問題を抱えている。これはAIがブラックボックスであることで、機械学習モデルは審査結果を説明できない。融資審査では応募者がローンを受けることができなかった場合、その理由の説明が求められる。また、金融機関はアルゴリズムが法令に準拠していることを立証する責任がある。これらの要件を満たすことができないため、金融機関はAI融資審査の導入を敬遠している。

融資審査で問題発生

実際に、機械学習による融資審査で問題が発生している。アルゴリズムは人種や性別にバイアスしている事例が数多く報告されている。アルゴリズムは黒人など特定人種に対し評価が厳しいケースが多く、AIの公正さが問われている。金融機関が意図的に特定人種を締め出すことを意図しているのではなく、アルゴリズムの判定方式が不透明なため起きているケースが多い。

Explainable AIの機能

これに対してZAMLは融資審査結果のプロセスを説明することができる。ただし、ZestFinanceはその詳細を公表していないが、Explainable AIを使うと、モデルが特定の判断を下したとき、そのイベントが起こる確率を計算するとともに、その判定と入力データの関係を示す。例えば、融資審査で不合格となった場合(イベントの発生確率が低い)、申込者の入力データ(信用履歴など)を出力する。

潜在需要を掘り起こす

更に、ZAMLは機械学習の手法でクレジットスコアーは低いが返済能力のある応募者を見つけ出す。ZAMLは応募者を数百から数千の変数で定義しクレジットリスクを査定する。従来手法では融資を受けることができなかったグループを解析しリスクを再評価する。(下のグラフィック、現行方式の査定でリスクが高いと判定された応募者をZAMLで再評価するとリスクが低い応募者が数多くいるのが分かる。これらのグループが新規顧客となる。)

出典: ZestFinance  

現行の融資審査方法

ちなみに、現行の融資審査はFICOスコアーに従って応募者を10ほどのグループに区分して可否を決める。FICOスコアーとは個人の信用度を示す指標で、支払い履歴、負債の状況、負債の種類などを入力して算定する。このためクレジット履歴のない応募者は融資を受けることができない。例えば、米国に移民したばかりの医師は、返済能力はあるが融資を受けることができない。

ZAMLシステム構成

ZAMLは融資審査のためのプラットフォームで、金融機関はこの上で機械学習モデルを生成し、自社で所有している顧客データを使ってモデルを最適化する。また、外部の信用調査会社のデータを使ってモデルを強化する。ZestFinanceはプラットフォームを提供するだけでなく、システムインテグレータとしてシステム開発を支援する。完成したモデルは性能を検証し、業務システムに組み込む。ZAMLはオンプレミスまたはクラウド上に展開され、金融機関が運用しているシステムと連携して稼働する。

Microsoftとの提携

ZestFinanceは2018年12月、Microsoftと共同で融資審査向けにZAMLを提供することを発表した。この提携によりMicrosoftの機械学習クラウド「Azure and Machine Learning Server」(下の写真)でZAMLを利用できる。金融機関はクラウドで機械学習モデルを容易に開発でき、法令に準拠したAI融資審査システムを運用できる。

出典: Microsoft  

AI融資審査の導入に弾みがつく

金融機関はAIによる融資審査を導入したいが、アルゴリズムがブラックボックスで、これを躊躇している。米国では4000万人がクレジット履歴が無くローンを受けることができない。ZAMLを使うと多くの消費者を救済でき、金融機関としても法令に準拠してAI融資事業を拡大できる。Explainable AIをMicrosoft Azureで使えるようになり、AI融資審査の導入に弾みがつくと期待されている。

DNA検査が保険会社を脅かす!消費者はDNA検査で病気発症のリスクを把握し介護保険を購入

米国政府は個人向けDNA解析サービスを禁止していたが、企業側の努力が実り今年5月に解禁となった。消費者はDNA解析サービスで病気発症のリスクを把握できるようになった。いま、アルツハイマー病を発症するリスクが高いと診断された消費者が介護保険を購入する動きが広がっている。保険加入にあたり保険会社はアルツハイマー病の検査をするが問題は検知できない。リスクの高い加入者が増え続け保険会社は事業の見直しを迫られている。

出典: VentureClef  

遺伝子解析サービスの誕生と事業停止命令

DNA解析サービスを運用していた23andMe (上の写真) は2017年5月、FDA (アメリカ食品医薬品局) からDNA検査事業を再開することを認められた。同社はMountain View (カリフォルニア州) に拠点を置くベンチャー企業で、2007年から個人向けDNA解析サービスを提供してきた。遺伝子配列の変異から被験者がどんな病気を発症するのかを予測するサービスで米国医療市場に衝撃を与えた。しかし、FDAは2013年、23andMeの予測精度は十分でなく、また、消費者が結果に応じて不要の手術を受けるなど、危険性が高いとして事業停止を命じた。

事業再開にこぎつける

23andMeはFDAとの協議を重ねたが合意に至らずサービス休止に追い込まれた。その後、勧告に従い機能改良を進め、FDAは10種類の病気に限りDNA解析サービスを認可した。条件付きであるが23andMeは事業を再開することができた。10種類の病気の中にはパーキンソン病やアルツハイマー病が含まれている。

介護保険を購入

いま米国ではDNAを解析してから保険に加入する消費者が増えている。米国の主要メディアがレポートしている。ミシガン州に住む女性はDNA解析結果「APOE-e4」という遺伝子変異があることを把握した。APOE-e4はアルツハイマー病を発症するリスクを押し上げる効果がある遺伝子変異である。この女性は母親もアルツハイマー病を患ったこともあり介護保険を申し込んだ。保険会社は女性の健康状態を把握するため、アルツハイマー病などの検査を実施したが問題はなかった。女性は現在は健康な状態であり介護保険を購入することができた。

遺伝子変異と発病の関係

アルツハイマー病の発症はAPOEという遺伝子が関与していると言われている。APOEはたんぱく質 (Apolipoprotein E) を生成する遺伝子でコレステロールや脂質を制御する機能がある。APOEは三つの変異がありそれぞれe2、e3、e4と呼ばれ、この中でe4がアルツハイマー病の発症を促進するといわれている。これがAPOE-e4でこのタイプの遺伝子を持つと病気発症の確率が最大で10倍 (85歳の男性のケース) になる。

出典: 23andMe  

これをどう解釈すべきか

しかし、APOE-e4がアルツハイマー病を引き起こすメカニズムは分かっていない。また、病気発症は性別、年齢、家族の病歴、食事、知的活動などに依存する。このため23andMeはAPOE-e4がアルツハイマー病を引き起こす要因とは断定できないとしている。その一方で臨床試験による統計データを示し、APOE-e4を持つ人は病気発症の確率が大きく上がるとも説明している。被験者としてはこの説明をどう解釈すべきか困惑するのが実情である。DNA解析サービスはまだ解決すべき難しい問題を含んでいる。

病気発症のリスク

米国では550万人がアルツハイマー病を発症し、その半数が介護施設に入所し治療を受けている。今まで個人向けDNA解析サービスは禁止されていたため、消費者は病気のリスクを知ることはできなかった。しかし、23andMeのDNA解析サービスが解禁となり、アルツハイマー病の検査を受診できるようになった (下の写真)。解析結果をどう解釈すべきか難しい問題はあるものの、多くの人がアルツハイマー病を含む病気のリスクを検査している。

出典: 23andMe  

遺伝子解析サービスと保険購入

DNA解析結果と保険購入に関し興味深いレポートが公開された。Harvard Universityによる研究で、APOE-e4遺伝子変異を持つ人は他に比べ保険を購入している割合が6倍になっている。アルツハイマー病発症のリスクを把握し、将来に備えて保険を購買していると思われる。レポートはアルツハイマー病以外の病気のリスクも分かるとDNA検査を受ける人が増えると予測している。このため病気発症のリスクを把握した消費者が保険を購入する動きが広がると、保険会社は事業を存続できないことになる。

保険会社はDNA解析サービスを採用

一方で、米国の保険会社はDNA解析を積極的にビジネスに取り入れる動きも始まった。大手生命保険会社MassMutualは2017年5月、DNA解析サービスに保険の適用を始めた。加入者はHuman Longevity Inc (下の写真) のDNA解析サービス「HLIQ Whole Genome」を格安で受診できる制度を導入した。Human Longevity Incは被験者の全遺伝子を解析するサービスを提供しており、健康の状態、病気にかかるリスク、薬の作用の仕方、遺伝子病、身体特性などを詳細に把握することができる。

加入者の健康を促進

このサービスは未来の人間ドックとも呼ばれDNA解析サービスの在り方を示している。受診者は身体情報を把握できるだけでなく、Human Longevity IncのDNAデータベース構築に寄与し、ひいては医学研究に貢献できるとしている。一方、保険会社はHuman Longevity Incから個人情報を入手することは無いとしている。つまり、健康状態に応じて保険条件を変えることはなく、加入者がこのサービスを通じ健康を保つことが目的としている。ひいては保険会社のコストが下がることとなる。

出典: Human Longevity Inc

公平なルール作りが始まる        

健康保険に関してはMassMutualのようにDNA解析サービスを格安で提供し被保険者の健康を維持する動きが広がっている。一方、前述の介護保険については、DNA解析結果により保険条件を調整する方向に進む気配がある。アルツハイマー病発症のリスクが高い人とそうでない人が同じ保険料を支払うのは不公平との議論もある。DNA解析サービスが米国社会で広まる中、保険会社と政府機関は公平なルール作りが求められている。