Appleは2019年3月、自社ブランドのクレジットカード「Apple Card」を発表し、8月から運用を開始した。早速、Apple Cardを試してみたが、使い易さとお洒落なデザインに感銘を受けた。毎日使っているクレジットカードだが、単に支払いツールとしてとらえているだけで、特別な思い入れはない。しかし、Apple Cardはその常識を破り、インターフェイスが洗練され、カードに親近感を感じる。クレジットカードは無機質なプラスチックからインテリジェントなアプリに進化した。

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Apple Cardの概要
Apple CardはiPhoneのおサイフ「Wallet」に登録して利用する(上の写真左側)。既に、クレジットカードなどを登録して使っているが、ここにApple Cardが加わった。Apple Cardにタッチすると初期画面が表示され、ここに買い物のサマリーが示される(上の写真右側)。Apple Cardは物理的なカードも発行しており、これはチタン製のお洒落なカードで「Titanium Apple Card」と呼ばれる。表面は銀色でカード番号などは印字されておらず、安全性を重視したデザインとなっている(下の写真)。手に持つと、プラスチックのカードとは違い、ずっしりと重い。

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Apple Payから利用する
Apple Cardはモバイル決済「Apple Pay」で利用するのが基本パターン。Apple Payに対応している店舗やアプリで利用する。使い方は従来と同じで、サイドボタンをダブルクリックし、Face IDなどで認証し、デバイスをリーダにかざす(下の写真)。アプリ内決済では認証が完了すると決済プロセスが起動される。

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Titanium Apple Cardを使う
Apple Payを使えないケースではTitanium Apple Cardを使う。Apple CardはMastercardのネットワークを使い、カードを発行する銀行はGoldman Sachsとなる(下の写真、カード裏面)。Appleブランドのインパクトが強いが、Titanium Apple Cardを使うときはMastercardを取り扱っている店舗となる。通常のカードと同じく、Titanium Apple Cardをリーダーに差し込んで使う。

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オンラインショッピングでは
Apple Payを取り扱っていないオンラインショッピングでApple Cardを使うときは手間がかかる。Apple Cardのカード番号を決済サイトに入力する必要があるからだ。カード番号を見るには、Apple Cardを起動して(下の写真左側)、「Card Information」のページを開く。ここに表示されるカード番号、有効期限、PINを参照し、それらをオンラインサイトの決済画面に入力する(下の写真右側)。いつもは、クレジットカードに印字されているこれらの情報を入力するが、Titanium Apple Cardにはカード番号は印字されていないし、セキュリティの観点から、この番号はApple Cardの番号とは異なる構造を取る。Apple Cardの番号は「Card Number」と呼ばれ、オンラインショッピングではこの番号を使う。

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購買履歴のサマリー
Apple Cardで買い物をすると、購買履歴は綺麗に整理されて表示される(下の写真左側)。買い物の一覧表が企業ロゴと一緒に示され分かりやすい。買い物の内容を確認する際は各アイテムにタッチすると、店舗名やその場所が画面に示される(下の写真中央)。また、購買アイテムをカテゴリーごとに表示する機能もあり、週ごとに購買金額とそのカテゴリーがグラフで示される(下の写真右側)。カテゴリーは色分けされ、黄色はショッピング、緑色は旅行、青色は交通費、紫色はサービス、赤色は医療などとなる。

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キャッシュバック
Apple Cardの魅力は買い物をするとキャッシュバックを受け取れること(下の写真左側)。キャッシュバックは月ごとではなく、買い物をした日に受け取れる(下の写真右側)。キャッシュバックは「Apple Cash」に振り込まれ、送金や買い物で使うことができる。Apple製品を買うと購買金額の3%のキャッシュバックを受ける。また、Apple Payで買い物をすると購買金額の2%を、Titanium Apple Cardで買い物をしたら1%のキャッシュバックを受ける。

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Apple Cardの印象
既に、Apple Payで他社のクレジットカードを使っているが、これに比べてApple Cardは圧倒的に温かみのあるデザインで、機能的にも優れている。買い物履歴が分かりやすく表示され、出費を管理しやすい。また、Apple Cardはカテゴリーごとの支払いを反映し、表面が虹色に変化する(下の写真)。今月はショッピング(黄色)や交通(青色)やサービス(紫色)などに支出したことが視覚的に分かる。また、キャッシュバックがApple Cashに溜まっていくのが見え、買い物の特典が実感できる。一方、Apple CardはAppleデバイスでしか使えないので、最近は常にiPhoneを携帯している。いつの間にか、Appleのエコシステムにロックインされた感はぬぐえない。

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Appleのフィンテック戦略
Apple CardはApple Payで使うことを前提に設計されている。このため世界のiPhone利用者9億人が潜在顧客となる。Appleはこの巨大なネットワークでフィンテック事業を展開し、Apple Cardのトランザクション量に応じて手数料を徴収する。ブランドもMastercardではなくApple Cardで、カード会社とAppleの位置関係が分かる。これからのクレジットカード事業はデザインや機能性が重要になり、IT企業がそれをけん引する流れが鮮明になってきた。
キャッシュレス市場動向
Facebookは安全な暗号通貨「Libra」を開発しており、政府関係機関の承認を得てこの運用を始める。Amazonは独自のクレジットカードを発行し、オンラインサイトの顧客に提供すると噂されている。GoogleはApple Payに対抗するモバイル決済事業「Google Pay」を展開している。GAFAがペイメント事業で存在感を高めており、金融機関との競合が一段と厳しくなってきた。