Make-A-Videoはこの他に、イメージをビデオに変換する機能がある。AIが、入力された1枚のイメージを、ショートビデオに変換する。例えば、オランダの画家レンブラント(Rembrandt)の名作「ガラリアの海の嵐(The Storm on the Sea of Galilee)」をMake-A-Videoに入力すると(下の写真左側)、アルゴリズムはこれをショートビデオに変換する(右側)。ここには、嵐の中でキリストを乗せた船が、高波を受けて航行する様子が、動画で描かれている。
アインシュタインは量子もつれを「奇怪な動き(spooky action at a distance)」と呼び、量子力学は未完の体系で、この理論は正しくないとする論文「EPR Paradox」を他の研究者と共に1935年に発表した。これ以来、量子もつれについて議論が続いてきたが、受賞者はこれを実験で証明し、この奇怪な現象が起きていることを示した。直感では理解できない物理現象であるが、量子もつれは量子コンピュータや量子通信の基礎技術として幅広く使われており、ノーベル賞の選考委員会は、この実験が量子情報科学の発展に寄与したことを評価した。
量子もつれは奇怪な挙動で、これを説明するために別の理論が提唱された。これは「隠れた変数理論(Hidden Variables)」と呼ばれ、この奇怪な現象の背後には、分かっていない変数があるという考え方。量子もつれを、実験者が観測できない変数を導入して、この挙動を説明する理論となる。スウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sciences)は、量子もつれという現象を、ボールを投げるマシンで説明している(下のグラフィックス)。マシンには白と黒のボールが入っており、Bob(右の人物)が黒色のボールを受け取ると、Alice(左の人物)は白色のボールを受け取ったことが分かる。隠れた変数は「色」で、量子もつれには「色」という変数が隠れており、これを観測できていないという理論。
二つの理論が議論される中、両者の理論のどちらが正しいかを実験で証明することができるとの考え方が提唱された。これは英国の科学者ジョン・スチュワート・ベル(John Stewart Bell)が1964 年に、提唱したもので、「ベルの不等式(Bell Inequalities)」と呼ばれている。隠れた変数理論では、実験結果が特定の値(2)を超えないというもので、反対に、実験でこの値を超えると、量子力学の理論が正しいことが示される。
クラウザー博士は、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)で長年にわたり研究に従事し、現在は、サンフランシスコ郊外のウォールナットクリークで活動を続けている(下の写真)。地元テレビ局のインタビューで、実験開始のきっかけを明らかにした。クラウザー教授は、まず、ジョン・スチュワート・ベルに連絡し、ベルの不等式が破られていないことを確認し、実験に着手した。その当時、実験は「アインシュタインの理論を覆す無謀な挑戦」といわれ、実験で量子もつれを実証できた時は「有罪判決から解放された気分であった」と述べた。無名の研究者が歴史上の人物に挑戦した構図となった。
TeslaはAI技術を発表するイベント「Tesla AI Day 2022」を開催し、ロボットの開発状況を明らかにした。このロボットは「Optimus」と呼ばれ、昨年のイベントではそのプロトタイプが公開された。今年は、その開発プラットフォームが登場し、ステージの上をゆっくりと歩くデモが実施された(下の写真)。Elon Muskはロボットを大量生産する計画で、価格はクルマより安く、2万ドルになるとの予測を示した。更に、経済生産性の観点からは、ロボットはクルマより重要で、Teslaはロボット会社に転身することを暗示した。
このコミックブックは「Zarya Of the Dawn」というタイトルで、Kris Kashtanovaにより制作された。主人公Zarya(上のイメージ)が、未来のニューヨーク(下のイメージ)を探訪するストーリーとなっている。これらのグラフィックスはAIにより生成され、ここにセリフを付加して、物語を構成し、コミックブックが創られた。アーティストが画面を描き出す代わりに、AIがイメージを生成した。
Kashtanovaは、制作したコミックブックを著作権物として申請した。米国著作権局(United States Copyright Office)は、今週、これを認可し、コミックブックが著作物として登録された。これにより、「Zarya Of the Dawn」は、著作権法による保護の対象となった。AIが生成したイメージが著作権で保護されるのはこれが最初のケースで、AI出版事業への道筋が開けると期待されている。
過去の事例
AIが生成したイメージに対する著作権申請はこれが最初ではなく、過去にも行われたが、米国著作権局は、この申請を退けている。米国の発明家Stephen Thalerは、AIで創作したデジタルアートの著作権の登録を申請した。このAIは「Creativity Machine」という名前で、アルゴリズムが「A Recent Entrance to Paradise」という題名のデジタルアートを生成した。この申請に対し、米国著作権局は、2022年2月、AIが生成したアートは、人間が創作に関与しておらず、著作権の登録はできないとの判定を下した。
Zarya Of the Dawnの著作権が認められたが、主人公「Zarya」は誰かという議論が広がっている。コミックブックを通じて、AIが同じ人物を描き出しており、製作者はテキストで特定の氏名を指示していることになる。巷では、この人物は米国の女優Zendaya(ゼンデイヤ)であるとの憶測が広がっている。Zendayaは映画やテレビで活躍するでけでなく、2022年にはTimeの「世界で最も影響力のある100人」に選ばれている(下の写真)。確かに、Zendayaは主人公Zaryaに似ている。
AIに関する著作権の議論が収束しないなか、既に、AIで生成されたコミックブックが数多く販売されている。その代表がAI Comic Booksで、AIで生成したコミックブックのマーケットプレイスで、ここで多くの作品が販売されている(上の写真)。Zarya Of the Dawnもこのサイトで販売されており、価格は無料であるが、その代わりに寄付金を募っている。アルゴリズムを著作権で保護されたイメージで教育すると、AIが生成したイメージは合法なのか、グレーなエリアでビジネスが広がっている。