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Nvidiaは地球のデジタルツインで気候変動研究を進める、現行の数学モデルに代わりAIが台風発生を予測

Nvidiaは、今週、開発者会議「GTC 2022」をオンラインで開催した。基調講演でCEOのJensen HuangがNvidiaのAI研究の最新成果を発表した。Nvidiaは科学技術向けメタバースである地球のデジタルツインを生成し、この3Dモデルで気候変動の研究を進めている(下の写真)。Nvidiaは米国国立研究所と共同で、地球のデジタルツインで台風や集中豪雨の発生を予測するモデルを開発した。数学モデルではなく、AIで気象の変化を予測することで、処理時間を劇的に短くすることに成功した。

出典: Nvidia

現行の天気予報の仕組み

天気予報は、海洋や陸地の状態を数値予報モデル(Numerical Weather Prediction)で表し、これをスパコンでシミュレーションする手法となる。具体的には、数値予報モデルに、現在の気象データを入力し、将来の値を計算することで状態の変化を予測する。様々な数値予測モデルが使われているが、ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)が開発した「Integrated Forecast System」がその代表となる。これは「欧州モデル(European Model)」とも呼ばれる。

米国のモデル

一方、米国においては、アメリカ国立気象局(National Weather Service)が開発した「Global Forecast System」が使われる。これは「米国モデル(American Model)」と呼ばれ、米国内の天気予報で使われている。一般に、欧州モデルのほうが高性能で正確な予測ができるとされる。一方、米国モデルは長期レンジ(最長16日先まで)の予測ができる点に特長がある。両モデルともシステム規模が巨大で、これを実行するには世界でトップクラスのスパコンが必要になる。

AIで天気を予測する

これらに対して、Nvidiaなどが開発した予測モデルはAIを使って気象の状態を予測する。この予測モデルは「Fourier ForeCasting Neural Network(FourCastNet)」と呼ばれ、短期から中期レンジで、台風(Typhoon)や集中豪雨(Atmospheric River)など、異常気象を予測することができる(下のグラフィックス、中段)。FourCastNetは、短時間に高精度で天気を予測することができる。欧州モデルに比べ45,000倍高速で予測することができる。

出典: Jaideep Pathak et al.

AIで予測する仕組み

現行の数値予報モデルは、数学モデルをスパコンで計算し、その解を求める手法であるが、FourCastNetはニューラルネットワークで気象を予測する。ニューラルネットワークが過去の気象データを学習し、将来のイベントを高精度で予測する。FourCastNetの教育では、ヨーロッパ中期予報センターの気象データ「ERA5」が使われ、10TBのデータでニューラルネットワークが教育された。

気象予測の事例

FourCastNetを使うと台風の発生を正確に予想できる。実際に、FourCastNetは「Typhoon Mangkhut(平成30年台風第22号)」の発生を正確に予測した(上のグラフィックス)。この台風は、フィリピンや中国、香港などに甚大な被害をもたらした。FourCastNetが予測する範囲はグローバルで、地球全体をカバーする(中央部)。日本の南の海上でMangkhutが発生した(左側最下段)が、FourCastNetはこれを正確に予測した(左側中段)。

ModulusとOmiverse

FourCastNetは地球のデジタルツインに構築され(下の写真)、気象モデルをインタラクティブに操作できる。デジタルツイン生成では「NVIDIA Omniverse」が使われ、スパコン「Earth-2」で実行された。また、AIモデルは「NVIDIA Modulus」が使われ、AIで物理問題を解析するためのツールが揃っている。具体的には、変微分方程式(partial differential equations)を解くためのニューラルネットワークが使われた。

出典: Nvidia

地球温暖化の研究

地球のデジタルツインを生成し、FourCastNetというAIモデルで気象予測を実行するのは、日々の天気予報を求めるためではなく、地球温暖化問題を解明する研究の一環となる。現行モデルで気象予測を実行すると、スパコンを使っても長時間かかる。これに対し、FourCastNetをEarth-2で実行すると、45,000倍速く予測結果を得ることができる。つまり、数多くのモデルを並列して実行でき(下の写真)、地球温暖化対策の研究を効率的に進めることができる。

出典: Nvidia

ゼレンスキー大統領のフェイクビデオが登場、Metaは即時にこれを検知し記事を削除、AIを使ったデジタル戦が拡大

ウクライナ(Ukraine)政府はロシアがフェイクビデオを使って情報操作する危険性を表明し、国民に冷静な対応を呼びかけていた。実際に、ゼレンスキー(Zelensky)大統領のフェイクビデオがメディアに掲載された(下の写真)。偽の大統領は国民に、武器を捨ててロシアに投降するよう呼びかけた。MetaはこのビデオはDeepfakesであると判定し、プラットフォームから削除した。戦時下においてはAIを使った情報戦が展開されるが、今回はそのプロトタイプが登場し、デジタル兵器の攻防が始まった。

出典: Operational Report @ Telegram

ゼレンスキー大統領の偽ビデオ

3月16日、ゼレンスキー大統領がビデオメッセージで、国民に武器を捨ててロシアに投降するよう呼びかけた。これはウクライナに対する情報戦で、ビデオはアルゴリズムにより生成されたDeepfakesで、本人の演説ではない。Metaはこれをフェイクビデオであると特定し、プラットフォームから記事を削除した(下の写真)。ロシアがウクライナに侵攻した後、Metaは特別チーム「Special Operations Center」を形成し、24時間体制で情報操作をモニターしており、このフェイクビデオを即座に検知することができた。

出典: Meta

ロシアでビデオが拡散

このフェイクビデオはMetaのプラットフォームからは削除されたが、他のソーシャルネットワークで拡散している。メッセージングアプリ「Telegram」にこのフェイクビデオが掲載され、ここには、「ハッカーがウクライナのサイトにこのビデオを掲載した」とのコメントが添えられている (先頭の写真)。また、ロシアのソーシャルネットワーク「VK」にも同じビデオが掲載され、クレムリンを指示するグループで拡散している。

テレビ局のハッキング

これに先立ち、ウクライナのテレビ局「Ukraine 24」がハッキングされ、テレビ画面に偽のテロップが表示された。フェイク・テロップはニュース画面の下部に表示され、ゼレンスキー大統領からのメッセージと偽り、「戦闘を止め武器を捨てる」よう国民に訴えた(下の写真、最下部)。また、「大統領は交渉に失敗し、キエフを去った」とも伝えている。

出典: Ukraine Now @ Telegram

ゼレンスキー大統領の対応

フェイクビデオに対し、ゼレンスキー大統領はショートビデオを公開し、偽情報を打ち消した(下の写真、Instagramから配信)。ショートビデオで、拡散したビデオは偽情報で、つたない手法の攻撃であると非難した。大統領はオフィシャルサイトから、定常的に国民にメッセージをショートビデオで配信しており、今回も、このアカウントから真実の情報を伝えた。

出典: Zelensky @ Instagram

フェイクビデオの完成度

実際に、フェイクビデオを見ると、完成度は低く、これは本物ではないと感じる。頭部が体に比べて大きく、不自然さを感じる。また、喋っている時に、頭部は動くが、体は不動のままで、強い違和感を覚える。Deepfakesを生成する高度なGANが開発されているが、このビデオは技術的には未熟で、完成の域に達していないことが分かる。このフェイクビデオはプロトタイプと解釈することもでき、これから技術改良が進み、判別が困難になると予想される。

Metaの特別チーム

ロシアはフェイクニュースなどを使って情報戦を展開しており、西側諸国が被害を受けている。米国においては、2016年の大統領選挙で、ロシアは大規模な情報操作戦を展開し、これがトランプ大統領の当選に繋がったとされる。Meta(当時はFacebook)は、ネットワークに掲載された偽情報を削除するなどの措置は取らず、米国社会から強い批判を受けた。これを教訓に、2020年の大統領選挙では、特別チームを形成し、偽情報をリアルタイムでモニターし、ロシアのデジタル攻撃を防いだ。ロシアのウクライナ侵攻では、再度、独別チームを形成し、デジタル戦を防衛している。

戦時下におけるAIの役割、ウクライナ軍は顔認識システムでロシア兵士のIDを特定

ロシア軍によるウクライナ(Ukraine)への軍事侵攻が新たな局面を迎えている。ロシア軍は首都キエフ(Kyiv)に迫っているが、ウクライナ軍の反撃が続き、侵攻は足踏み状態になっている。ウクライナ軍は本土防衛のために、AIなどのハイテクを導入することを明らかにした。高精度の顔認識システムを導入し、ロシア兵士のIDを特定し、デジタルな防衛網を構築する。(ウクライナ政府は民間施設が攻撃されていることを示し(下の写真)、防衛のための寄付を暗号通貨で募っている。)

出典: Ministry of Digital Transformation of Ukraine

顔認識システム

ウクライナ国防省は顔認識システムの利用を開始したことを明らかにした。これは米国新興企業Clearviewが開発したもので、通信社ロイターが報道した。Clearviewは世界で最大規模の顔データベースを構築し、その判定精度は業界のトップである。Clearviewはこのシステムを無料でウクライナ軍に提供し、ロシア兵のIDを特定するために使われる。

ロシア兵のIDの特定

顔認識システムはロシア兵士の身元を特定するために使われるが、具体的には、攻撃を行ったロシア兵士の氏名などを把握する。また、死亡したロシア兵士の身元の特定のためにも使われる。戦士のIDを特定するためには指紋が使われるが、顔認識システムだと、その場で顔写真から身元を特定できる。ロシア軍は工作員を市街地に送り込み、破壊作戦を展開している。このため、チェックポイントなどで顔写真から、ロシア兵士を特定するためにも使われる。

出典: CNN

難民の身元の特定

顔認識システムは難民の身元を特定するためにも使うことができる。多くの人が戦火を避け、ウクライナを離れ、ポーランドなど近隣諸国に避難している。難民の多くは家族が離散し、再会が難しくなる。このため、顔認識システムで身元を特定し、家族の再会に役立てる。また、ソーシャルネットワークに掲載されている顔写真を解析することで、情報操作のための偽装工作を見破ることもできる。

ロシア人の顔写真データベース

Clearviewは世界の人物の顔写真100億枚を収集し、これを顔認識システムのデータベースとして使っている。被験者の顔写真をこのデータベースで検索し、本人のIDを割り出す。ここには、ロシア人の顔写真20億枚が含まれており、ロシア人のIDを高精度で特定することができる。ロシアの人口は1.4億人で、単純計算で、一人当たり14枚の顔写真が格納されていることになる。

顔写真の収集方法

Clearviewはソーシャルネットワークに公開されている顔写真をスクレ―ピングしてデータベースを構築した。スクレ―ピングとは、顔写真やその属性などを、ウェブサイトからダウンロードする手法を指す。Clearviewはロシアのソーシャルネットワーク「VK」(下の写真)から顔写真をスクレ―ピングした。VKはロシア・セントペテルスブルグ(Saint Petersburg)に拠点を置く企業で、会員数は5億人を超え、ロシアで一番人気のソーシャルネットワークである。

出典: VK

倫理的な使い方

Clearviewのスクレ―ピングの手法は個人のプライバシー侵害にあたるとして問題視されている。米国では、集団訴訟が起こり、Clearviewの手法が法廷で問われている。イギリス政府は、Clearviewは個人情報保護法に抵触するとして制裁金を科した。カナダやオーストラリア政府は、Clearviewに対し、個人情報を削除することを求めている。多くの問題を抱えているが、戦時下においては国防に役立つとして、Clearviewの技術に期待が寄せられている。

ハイテクを導入

顔認識システムとは別に、ウクライナのデジタル・トランスフォーメーション省は、米国のAI技術を導入することを計画している。既に、欧米企業はウクライナ政府にインターネット通信機器やサイバーセキュリティ・ツールを提供している。SpaceXは衛星通信システム「Starlink」の受信装置(下の写真右側)を提供している。ウクライナで地上の通信網が被害を受けているが、衛星通信でインターネットを再構築する。実際に、ウクライナ副首相は、Starlinkの受信装置 (左側)を受領したとツイートし、Elon Muskに謝意を示した。

出典: Mykhailo Fedorov / Starlink

サンフランシスコでの反戦集会

世界各地でウクライナを支援する集会が開催されているが、サンフランシスコでは市庁舎の前で反戦集会が開かれた。ベイエリアには多くのウクライナ人が暮らしており、数百人が反戦集会に参加し、プーチン大統領にウクライナから撤退するよう呼びかけた。サンフランシスコ市はウクライナを支援する意思を表明するために、市庁舎を国旗の色にライティングしている(下の写真)。

出典: Andy Soluk

Googleは来月からオフィスを再開、社員はリモートワークを終了しハイブリッド勤務となる (続報)

コロナの感染が下火になり、エンデミックに移行する中、シリコンバレーのIT企業はハイブリッド勤務に移行する。Googleはリモートワークを終え、4月4日からハイブリッド勤務を始める。社員は週三日、オフィスに出勤する勤務形態となる。Appleも4月11日にオフィスを再開し、5月23日からは、社員は週三日出社のハイブリッド勤務となる。

出典: Google

Google

Googleは社員に対し、4月4日までに在宅勤務を終えてオフィスに戻るよう通達を出し、週三日出社のハイブリッド勤務に移行する。今月はトライアル期間で、在宅勤務に慣れたワークスタイルをオフィス勤務に戻すためのプログラムが用意されている。オフィス内では、ワクチン接種を済ませた社員は、マスク着用や定期検査は不要となる。食堂やカフェが再開し、シャトルバスの運行が始まる。Googleはハイブリッド勤務向けに、オフィスレイアウトを大幅に変更している(上の写真、ハイブリッド勤務向け会議室)。来月からハイブリッド勤務が始まるが、その効果を検証しながらワークスタイルを調整するとしている。

Apple

Appleも4月11に、リモートワークを終了しハイブリッド勤務に移行する。移行期間中は週1日から2日のオフィス勤務となるが、5月23日からは週3日の出社となる。Appleの場合は出社日が決まっていて、月曜、火曜、木曜がコアの出勤日となる。また、週三日以上勤務することも可能で、社員はライフスタイルに応じて勤務パターンを選択できる。(下の写真、Apple Park)

出典: VentureClef

Twitter

Twitterは3月15日にオフィスを再開するものの、社員はリモートワークを継続することができる(下の写真、本社ビル)。CEOのParag Agrawalは、社員は最も生産性が上がるワークスタイルを選択すべきと述べている。このために、社員は在宅勤務やオフィス勤務やハイブリッド勤務の中から、自分に最適なスタイルを選択する。同時にAgrawalは、在宅勤務とオフィス勤務が混在することで、仕事の進行が難しくなると予想しており、ハイブリッド勤務を続けながら最適な解を見出すとしている。

出典: VentureClef

Block(旧Square)

モバイルペイメント企業Block(旧Square)は、社員が遠隔勤務を続けることを認めている。社員は好みの場所からリモートで勤務することができる。既に、社員は各地に移住しており、会社組織は分散型となっている。管理職は同じ場所の社員だけでなく、遠隔地の社員を管轄することになり、管理職の40%は同じオフィスに部下は誰もいないとしている(下の写真)。管理職はリモートで社員をマネージする技量が必要になる。

出典: Alyssa Henry

Slack

Slackはハイブリッド勤務を導入しており、仕事の進行は「非同期型業務(Asynchronous Work)」を推奨している。非同期型業務とは、他の社員とリアルタイムでコラボレーションするのではなく、自分のワークスタイルに合わせて非同期で共同作業を進める方式を指す。社員は仕事に没頭できる時間「コアタイム(Core Time)」を設定し生産性を上げる。コアタイム以外の時間帯に他の社員と共同作業を進める。

Salesforce

Slackの親会社であるSalesforceは、オフィス勤務の意義を問い直している(下の写真左側、本社ビル)。ハイブリッド勤務になると、オフィスは他の社員とコラボレーションする場所として利用する。オフィスは個人の仕事場という役割が小さくなる。Salesforceは社員間の交流を重視しており、社外で交流イベントを開催している。Salesforceはサンフランシスコ郊外に山荘「Trailblazer Ranch」を開設し、社員教育や社員の交流の場として使ってる(下の写真右側)。

出典: VentureClef / Salesforce

ポストコロナのワークスタイル

シリコンバレーのIT企業はオフィスを再開するが、社員の勤務形態については大きな自由度を持たせている。社員にオフィス勤務を強いると、生産性が上がらないだけでなく、多くの社員が辞めていくという現実がある。一方、完全在宅勤務では社員間のコラボレーションや人間関係の構築が難しい。このため、多くの企業はこれらのバランスを考慮し、ハイブリッド勤務を選択し、ポストコロナのワークスタイルを模索している。

顔認識AIの危険性が暴露、我々の顔写真が全米の警察で使われている!!(続々報)

顔認識AIを開発している新興企業Clearviewは、1000億枚の顔写真を収集する計画であることが明らかになった。写真は顔認識AIのデータベースに格納され、被験者を特定するためのインデックスとして使われる。世界の人口は約79億人で、一人につき12枚の写真が収集される勘定になる。このAIを使うと、世界の全ての人物の身元を特定することができる。

出典: Clearview

顔認識AIの開発

このAIを開発しているのはClearviewという新興企業で、世界最大規模の顔データベースの構築を計画している。投資家向けの資料がネットに流出したことで明らかになった。この資料によると、Clearviewは、現在、100億枚の顔写真を格納したデータベースを運営している。これを、1000億枚に拡充するために、資金の調達を進めている。

データベースの規模と判定精度

この規模のデータベースを使うと、AIは顔写真から、世界の殆どの人物の身元を正確に特定できる。具体的には、世界の人口の98%を、99.5%の精度で判定することができる。現在、Clearviewは100億枚の顔写真を格納したデータベースを運用しており、カバー範囲は75%となる。1000億枚の顔写真を使うと、世界の殆どの人を特定できる顔認識AIが生まれる。

利用目的

Clearviewは高精度な顔認識AIを開発し、米国政府を中心に、治安維持を目的に使われている。Clearviewの顔認識精度は、他の製品に比べひときわ高く、犯罪捜査で顔写真から容疑者の身元を特定するために使われる。昨年の米国連邦議会襲撃事件では、900超の顔写真をClearviewで解析し、350人の身元を特定することができた。このシステムは、FBI(連邦捜査局)や国土安全保障省などで使われている。

出典: Clearview

ベンチマーク結果

Clearviewは世界でトップレベルの性能を持っている。米国では、NIST(国立標準技術研究所)が顔認識AIのベンチマーク結果を公開しており、世界のベンダーの判定精度を知ることができる。これによると、中国Sensetimeがトップで、Clearviewは二位の判定精度となる。しかし、Clearviewは、Sensetimeより大きなデータベースを持ち、実効性能で上回るとしている。因みに、第三位はロシアVisionLabsで四位もロシアNTechLabとなる。

データベースの規模

世界でトップレベルの判定精度を持つClearviewであるが、その開発手法が社会問題となっている。AIが被疑者の写真から本人の身元を特定するためには、解析した写真と同一の人物を、データベースから見つけ出す。このため、データベースの規模が大きいほど、マッチングの確度が上がる。

データ収集の手法

Clearviewは世界のウェブから顔写真を収集する手法でデータベースを開発してきた。Facebookなどソーシャルネットワークに掲載されている顔写真を、本人の許可なくダウンロードし、これをデータベースに格納する。これは、スクレ―ピングという手法で、個人のプライバシーを侵害するとして、米国社会で問題視されている。実際に、全米各地で集団訴訟が起こり、Clearviewの手法は法廷で問われることになる。

ビジネスモデル

Clearviewの顔認識AIは、治安当局による犯罪捜査で使われている。Clearviewは、データベースの規模を10倍に拡大するとともに、顔認識AIの新しいビジネスモデルを計画している。対象を政府官庁から企業に拡大し、顔認識AIで、セキュリティや顧客サービスなどのソリューションを開発する。特に、金融機関やギグ・エコノミー(Gig Economy)向けを重点分野とし、事業開発を進める。

出典: Clearview

金融機関向けソリューション

Clearviewは顔認識AIを金融機関向けに提供することを計画している。これは、マネーロンダリングを検知するためのソリューションで、顔認識AIで利用者が犯罪者リストに登録されているかどうかを検知する。これは「One-to-Many Analysis」と呼ばれる手法で、利用者の顔写真でデータベースを検索し、身元を特定する。偽名を使った犯罪行為を検知できる。

ギグ・エコノミー向けソリューション

Clearviewはギグ・エコノミー向け顔認識AIに対する需要が大きくなると予想している。ギグ・エコノミーとは、ネットを通じた雇用制度で、契約社員として単発で働く方式を指す。Uberなどのライドシェアがギグ・エコノミーの代表となる。企業側はギグ・ワーカーを採用する際に、顔写真を顔認識AIで解析し、過去の履歴を確認する。この他に、Walmartなど小売店舗は、万引き防止のために、顔認識AIで容疑者の身元を特定するなどの活用法が検討されている。

出典: Clearview

治安維持かプライバシー保護か

米国ではサンフランシスコなど主要都市が顔認識技術の使用を禁止したが、連邦政府レベルではこれを規制する法令は無い。顔認識技術の利用について、統一したガイドラインは無く、運用の可否は各政府機関に任されている。顔認識技術を提供するAmazon、IBM、Microsoft、Googleは、無用の混乱に巻き込まれるのを恐れ、自主的にビジネスを停止している。Clearviewは、独自の解釈で、顔認識AIを提供する方針を貫いている。高精度な顔認識AIが犯罪捜査に寄与し、社会の治安が保たれていることは事実である。一方、Clearviewは、個人の顔写真を無断で使っており、これがプライバシー侵害に該当するのか、法廷で審理が進んでいる。