バイデン政権は極右団体による国内テロとの戦いを表明、米国市民の多くがQanonなどの陰謀説を信じている

トランプ前大統領の支持者がアメリカ連邦議会に乱入した事件は米国社会の分断を象徴する事象となった(下の写真)。事件の背景には、米国市民の1/3がQanonなどの陰謀説を信じているという事実がある。この襲撃事件に触発され、一版市民が過激化し、極右団体に加わっている。このため、アメリカ合衆国国土安全保障省は、極右団体による国内テロが発生する危険性があるとして、警戒情報を発令した。過去10年はイスラム過激派組織によるテロとの戦いであったが、これからの10年は極右団体による国内テロとの戦いになる。

出典: CNN

トランプ前大統領と極右思想

トランプ前大統領と極右思想は密接な関係にある。極右思想の代表がQanonで、政治的な陰謀論(Conspiracy Theory)として米国社会に幅広く浸透している。一部の極右団体がこれを信奉するだけでなく、社会の中で大きな存在感を示している。トランプ前大統領がQanonを擁護し、Qanonは前大統領を政敵から守ってきた。また、連邦議会議員の中にもQanon支持者が存在する。下院議員Marjorie Taylor Greeneはその代表で、Qanon有権者を取り込み、当選を果たした。

Qanonとは

Qanonは「Q」と「anon」から成る造語で、「Q」は連邦政府のトップレベルのセキュリティ保持者で、「anon」はAnonymous(匿名の人物)を意味する。連邦政府高官が匿名で、トランプ政権転覆を企てる団体「Deep State」を排除することを目的とする。Deep Stateはエリート集団で、暗黒団体「Cabal」の指示のもと活動する。Cabalのメンバーにはオペラ・ウインフリーやジョージ・ソロスがいるとされる。これら影の人物がトランプ政権の転覆を企て、それをQanonが防衛するという荒唐無稽なストーリーとなる。(下の写真左側、活動家はQanonのシンボルマーク「Q」を身についている。)

出典: Los Angeles Times / Stripes

危険思想

このような事実は無く、Qanonが陰謀論と言われる所以である。Qanon信奉者はこの教義に基づき活動し、ヘイトスピーチや暴力行為に及び、政治や社会を脅かす。FBIはQanonを過激思想集団と位置付け、社会に脅威をもたらすとして警戒を続けている。Qanonはバイデン大統領の就任式を攻撃するとして、厳戒態勢の元で式典が実行された。また、ハリス副大統領は有色の女性であり、Qanonの標的にされている。(上の写真右側、「Q Sent Me」とはQanonに忠誠を誓うという意味。)

極右団体の活動が活発になる

Qanonの他に、多くの極右団体が活動を展開し、米国社会を不安定にしている。トランプ大統領の就任以降、米国では極右団体の活動が活発になっている。今までは、極右団体の活動は抑制されてきたが、2016年の大統領選挙で、トランプ氏が人種差別や外国人排除や女性軽視の発言を繰り返し、これが極右団体の活動を容認するものと受け止められ、これらの活動が一気に表面化した。

主な極右団体

極右団体の代表が「Proud Boys」で、白人至上主義で反イスラム教を掲げ、武器を携行して活動する。「III%er」はThree Percenters(上位3%の愛国者)と呼ばれ、アメリカを独裁政治から守ることを使命とする(下の写真左側、シンボルは星条旗にIIIを入れたデザイン)。名前の由来はアメリカ独立戦争で、国民の3%の愛国者がイギリスと戦い勝利したことによる。(これは歴史誤認でこのような事実はない。)「Oath Keeper」も私兵組織で、武器を携帯して反政府活動を展開する(下の写真右側、帽子にロゴが縫い付けられている)。この組織の特徴は現役兵士や引退した兵士をメンバーに雇い入れ、本格的な軍事活動を展開していること。これら組織のメンバーは”愛国者”を自認し、国民を”守る”ことをミッションとする。

出典: Oil City News / CNN

ソーシャルメディアの対応

主要ソーシャルメディアは、極右団体が連邦議会を襲撃したことを受け、前大統領のアカウントを閉鎖した。また、極右団体は交信のためにFacebookやTwitterなどを使っていたが、これらのアカウントも削除された。Facebookは2020年10月、Qanonに関するFacebookやInstagramのアカウントを削除した。Twitterは連邦議会攻撃事件を受けてQanonのアカウント7万件を削除した。

FacebookからParlerに

このため、極右団体はFacebookから新興ソーシャルネットワーク「Parler」に大移動を始めた。Parlerは2018年に創設されたソーシャルネットワークで、保守層を中心に利用されてきた。コンテンツの規制が緩やかなことから利用者数を伸ばしてきたが、あくまで一般ユーザを対象にサービスを運用してききた。ここに極右団体が大量に流れ込み、暴力行為やヘイトスピーチを助長する掲載が急増した。このため、ParlerをホスティングするAmazonはこのサービスを中止し、また、AppleやGoogleはParlerアプリをストアーから排除した。(下の写真、閉鎖中のParlerホームページ。CEOのJohn Matezは言論の自由を求めて戦うとの声明をここに掲載。)

出典: Parler

Telegram

このため、極右団体はTelegramへの移動を開始した。Telegramはメッセージングサービスで、ロシアの実業家Pavel Durovが運営している(下の写真)。余り知られていないが、全世界で4億人の利用者がいるとされる。Durovはソーシャルネットワーク「VK」を運用しており、ロシアのZuckerbergとも呼ばれる。Telegramは通常のメッセージサービスに加え、プライベートなフォーラムを運用しており、ここでセキュアにメッセージを交換できる。このフォーラムにアクセスするには鍵(Digital Key)が必要で、一般に知られることなく秘密裏に情報を交換できる。このため、過激派組織の温床となり、各国の治安当局から警告を受けるものの、対策は進んでいない。極右団体はここを拠点に活動を始めている。極右団体のメンバーはいわゆるデジタル・ネイティブで、ITを駆使して活動を展開する。彼らは自らを「Digital Soldier」と呼び、ソーシャルメディアの規制をかいくぐり、サイバースペースで戦闘を展開する。

出典: Voice of America

バイデン政権の課題

過激思想の9割は極右団体で、この活動は今に始まったわけでは無く、アメリカの歴史とともに歩んできた。時の政権はこの危険性を認識し、暴力行為や活動を抑制してきたため、社会の表に現れることは稀であった。しかし、トランプ政権の発足とともに、極右団体が”公認”され、活動が活性化し、殺傷事件を含む危険な行動が目立ってきた。トランプ氏が政権を去った後も、極右団体は多くの米国市民の支持を受け、活動を継続することとなる。バイデン政権はこれから極右勢力との長い戦いが始まる。

AIで新型コロナウイルスの遺伝子配列を解析、配列を言葉として解析しワクチンが効かない異変種の発生を予測

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まり、パンデミックが終息に向かうと期待されている。ウイルスは変異を繰り返し、今年に入り相次いで英国型や南アフリカ型異変種が発見された。これら異変種は感染力が高いが、ワクチンは有効であるとの見解が示されている。しかし、最新のAIを使った解析では、更に複数の異変種が生まれ、その幾つかはワクチンが効かないと推定する。この事態に陥れば、新型コロナウイルスの終息にはもう少し時間がかかるかもしれない。

出典: Brian Hie et al.

Viral Escape:ワクチンが効かなくなる

新型コロナウイルスなど感染症向けにワクチンが開発されるが、ウイルスの遺伝子が変異するとワクチンの有効性が低下し、最悪の場合は効かなくなる。ワクチン接種により体内に抗体(Antibody)が生成されるが、ウイルスが変異すると抗体がこれを認識できなくなる。これは「Viral Escape」(ウイルスがワクチンをすり抜けるという意味)と呼ばれ、感染症対策の大きな課題となっている。ワクチン開発ではウイルスがどう変異するとワクチンが効かなくなるのかが重要な情報となる。(上のグラフィックスは新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質で、Viral Escapeが発生する可能性が高い個所(黄色)と低い個所(青色)を示している。スパイクたんぱく質に対してワクチンが開発されているが、Viral Escapeが発生しない部分(上のグラフィックス右側、S2と示された個所)に作用する仕組みを取る必要がある。)

ウイルスに自然言語解析を適用

MITのAI研究チームはViral EscapeをAIの自然言語解析(Natural Language Processing)を使って予測する技法を開発した。ウイルスの遺伝子配列を言葉として捉え、そこから文法(Grammar)と意味(Semantics)を把握することで、どの遺伝子変異がViral Escape(ワクチンが効かない状態)に繋がるかを予測した。この研究ではインフルエンザウイルス(influenza A hemagglutinin)、エイズウイルス(HIV-1 envelope glycoprotein)、及び、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2 spike glycoprotein)の三種類が使われた。

遺伝子配列の文法と意味

ウイルスの遺伝子配列を解析し、その文法と意味を把握するが、それらを次のように解釈できる。文法とはウイルスの基礎機能を決める。文法がしっかりしているウイルスは感染能力が高く、ウイルスが生存する可能性が高いことを示す。一方、意味はウイルスの変異を示す。異なる意味をもつウイルスは異なる形状を示すことになる。例えば、新型コロナウイルスが変異して、意味が異なり、文法が正しければ、ワクチンが効かない感染力の強いウイルスが生まれることになる。

出典: Brian Hie et al.  

遺伝子配列の文法と意味を可視化

上のグラフはこれを可視化したもので、縦軸が文法で横軸が意味を示す。文法が正しいほど(上に行くほど)、感染能力が高い(赤色の円)。意味が変わるとワクチンが効かなくなる。矢印の通り、左上のウイルスが右上のウイルスに変異すると、感染力が高く、ワクチンが効かないウイルスとなる(Viral Escapeが起こる)。一方、ウイルスが変異しても文法が正しくなければ、感染力が低下し無害のウイルスとなる(青色の円)。

自然言語解析の手法

この研究では自然言語解析の手法を適用したが、具体的には、LSTM(Long short-term memory)というタイプのニューラルネットワークが使われた。LSTMは時系列のデータを解析する手法で、言語処理では入力された言葉に続く言葉を推定する。この研究では、LSTMにウイルスの遺伝子配列を入力し、ネットワークは意味と文法を出力する。

出典: Brian Hie et al.  

上のグラフィックス;BiLSTMにウイルスの遺伝子配列を入力すると(最下段)、ネットワークはその意味(入力データに続く言葉 = 変異)を出力し(中段)、更に、その文法を出力する(最上段)。モデルは推定した言葉と、この言葉が持つ文法の正しさを推定し、Viral Escapeとなる確率を算定する。

解析の結果

モデルが予測した結果を過去のデータで検証し推定の精度を検証した。このモデルはインフルエンザやHIVや新型コロナウイルスなど5種類のウイルスを解析した。その結果、新型コロナウイルスに対して、モデルは85%の精度Viral Escapeとなる変異を予測した(下のグラフ、右端)。

出典: Brian Hie et al.  

感覚的な理解

このモデルを自然言語に応用するとこの機能を理解しやすい。モデルは元の文章が変異するパターンを予測し、それが文法に適合しているかどうかを判定する。更に、文章の意味に関し、それらがどのような位置関係にあるかを算定する(下のグラフィックス)。

  • 上段:元の文章は「オーストラリア人がバリ島で死んだ」
  • 中段:文章が変異する(australianがaussieに変わる)が意味は変わらない
  • 下段:文章が変異する(deadがballetに代わる)と「オーストラリア人がバリ島でバレイ」となり意味が変わるが、文法も正しい。この変異がViral Escapeとなる。
出典: Brian Hie et al.  

事前に対策を講じる

いま新型コロナウイルスが変異し、英国型や南アフリカ型変異種の感染が広がっている。もし、変異種が発生する前に、ワクチンが有効かどうかを把握できると、医療関係者はその拡散に備え、必要な対策を取ることができる。また、ワクチンや治療薬の開発では、Viral Escapeが発生しにくい領域を対象に、モデルを開発することができる。このモデルはまだ研究段階であるが、AIは現行ワクチンが効かない新型コロナウイルスの発生を予測しており、不測の事態に備えておく必要がある。

Verizonは5G通信網を使った企業向けシステムを公開、UPSと共同で商品宅配コネクティッド・ドローンを開発

電子機器の展示会CES 2021は、今年はすべてデジタルで開催された。基調講演ではVerizon CEOのHans Vestbergが5Gの最新技術とそれをベースとする企業向けソリューションを公開した(下の写真)。5Gが生活の中に入ってきたが、なかなかそのメリットを実感できないため、Verizonは「5G Just Got Real」というキャンペーンを展開し、ビジュアルにその威力をアピールしている。CESでは、5Gの大容量・低遅延時間通信を体感できる様々なソリューションが公開された。

出典: Verizon

コネクティッド・ドローン

Verizonはドローン開発会社Skywardを有し、通信網に接続したコネクティッド・ドローン(Connected Drones)を開発している。両社は配送大手UPSのドローン部門UPS Flight Forwardと提携し、ドローンによる商品デリバリーシステムを開発した。2019年に、連邦航空局(Federal Aviation Administration)よりドローン運行の認可を受け、4G LTE通信網による運用を開始した。

Gネットワークでの実証試験

現在は、Verizonの5G高速通信サービス「5G Ultra Wideband」をベースとするドローン配送サービスをフロリダ州ザビレッジーズにおいて実証試験を進めている。ドローンは配送のラストマイルを担い、UPSの配送車両から離陸し、目的地に商品を配送する(下の写真)。ドローンは車両の屋根にドッキングし、スタッフが車両内から荷物を装着する仕組みとなる。

出典: Verizon

Skywardの概要

Verizonの子会社Skywardはオレゴン州ポートランドに拠点を置く企業で、ドローンを商用運行するためのソフトウェアを開発している。UPS Flight Forwardなどの事業者がこのソフトウェアを使って、ドローンの配送ルートを設定し、飛行中は運行状態をモニターする。また、フィールドにおいては、ドローン飛行のためのアプリ「InFlight Mobile App」で機体を制御する(下の写真)。ディスプレイにフライトに必要な情報「Airspace Map」が表示され、フライトできるエリアや建造物などが示される。

出典: Skyward

低遅延時間で高信頼性ネットワーク

商用運行ではドローンが設定されたルートを自動飛行し、それをオペレータが遠隔で制御する(下の写真、UPS Flight Forwardのドローン)。ドローンをリアルタイムで管理するためには、5Gの低遅延で高信頼性のネットワークが必須要件となる。将来は、配送センターが数多くのドローンを一括して運用することになり、多数のデバイスをセキュアに通信できるネットワークが求められる。このゴールに向かって、VerizonとSkywardは5Gによるドローン管理システムを開発している。

出典: Verizon

ロボットを遠隔で運用

Ghost Roboticsはペンシルベニア州フィラデルフィアに拠点を置く企業で、四つ足で歩行するロボット(Quadrupedal Unmanned Ground Vehicles)を使ったソリューションを開発。ロボットは軍事やレスキューなどのミッションで使われ、車両や人間が立ち入れない領域でセンシングすることを目的とする。火災現場でロボットが屋内に入り、がれきの中を歩行し、カメラやセンサーで現場の状況やガス濃度などを計測する。ロボットの運行ではデバイスをリアルタイムに制御し、センシングしたビッグデータを送信するため、Verizonの5Gネットワークが使われる。

出典: Verizon

バーチャル美術館

Verizonはメトロポリタン美術館(Metropolitan Museum of Art)と共同で仮想展覧会を開発した(下の写真)。この企画は「The Met Unframed」と呼ばれ、スマホで美術館の中を歩き作品を鑑賞できる。メトロポリタン美術館はコンテンツをデジタルで公開しており、これをVerizon 5Gネットワークで送信し、スマホ上のARでインタラクティブに見ることができる。

出典: Metropolitan Museum of Art

(下の写真右端:中世オランダの画家Margareta Havermanの作品「A Vase of Flowers」。その当時、緑色の顔料(Pigment)は無く、Havermanは青色と黄色を混ぜて緑色を作った。しかし、時が経るにつれ、黄色が劣化し緑色が青色に変色した。このため、花の葉は青色をしている。その当時、女性画家はヌードを描くことは認められず、身の回りの情景をモチーフとした。バーチャル博物館でこれらの解説を音声で聞きながら作品を鑑賞する。)

企業向け5Gソリューション

Verizonは5Gで世界のリーダーとして技術開発を進めている。4Gでは一般消費者向けのアプリケーションが中心であったが、5Gでは対象が企業ユーザーとなる。このため、CESではエンタープライズソリューションを中心に、利用者が5Gの恩恵を肌で感じることができるデモを実演した。今年は、企業向けの5Gが本格的に立ち上がる年となる。

Amazonはリストバンド「Halo」を投入、究極の健康管理ウエアラブルでAIが身体とメンタルの状態をモニター

Amazonは健康管理のウエアラブル「Amazon Halo」(下の写真)の出荷を開始した。これはリストバンドタイプのウエアラブルで、身体情報をモニターするセンサーとして機能する。ディスプレイは備えておらず、健康管理に特化したセンサーで、スマホアプリとペアで使う。実際に使ってみると、フィット感は良く、身体やメンタルの状態を把握でき、健康管理デバイスの新しい流れを感じる。

出典: Amazon

Amazon Haloの概要

Amazon Haloは右手または左手の手首に装着し、身体状態をモニターするために利用する。四つの機能を搭載しており、運動量、睡眠の質、声のトーン、及び、体脂肪率を計測する。計測したデータはスマホの専用アプリ「Amazon Halo App」に表示される(下の写真)。スマートウォッチではディスプレイに情報が表示されるが、Amazon Haloは健康管理センサーとしてデザインされ、最小限の機能だけを搭載している。価格は99.99ドルでAmazon Prime会員向けには74.99ドルで販売されている。Amazon Haloはサブスクリプション方式のデバイスで、月額3.99ドルの使用料金を支払う。

出典: Amazon / VentureClef

運動量をモニター

Amazon Haloは運動量をモニターし、体を動かした量をポイントで表示する(下の写真、左側)。一週間に150ポイントを得ることが目標で、その過程がグラフで表示される。1ポイントは1分間に中程度の運動をする量となる(右側)。中程度の運動とは、速足でのウォーキングやほうきで庭を掃除する程度の運動で、医療学会American Heart Associationは一週間に150分の運動を推奨している。Amazon Haloは加速度センサーと心拍数センサーで運動量を算定する。

出典: VentureClef

睡眠の質を測定

Amazon Haloは睡眠の状態を測定し、その質を100点満点のスコアで示す(下の写真、左側)。スコアは睡眠時間と睡眠内容を総合的に評価したもので、70点を下回ると対策が必要となる(右側)。スコアは睡眠時間の他に、寝入るまでの時間、ステージごとの時間、夜中に起きた回数などを加味する。睡眠のステージは「Hypnogram」と呼ばれ、Light、Deep、REMから成る。Lightは浅い眠りで、睡眠時間の半分を占める。Deepは深い眠りで、睡眠の前半に起こる。深い眠りの中で身体の細胞が修復され、健康維持に深くかかわるとされる。REM(Rapid Eye Movement)は脳が活動して覚醒状態にある眠りで、このステージで人は夢を見たり、記憶が整理される。このスコアで睡眠の状態を把握し、問題があればこれを改善する。ただ、睡眠の質は人により異なり、スコア以外に、朝起きた時の爽快感や日中の気分などが重要な指標となる。

出典: VentureClef

声のトーンを分析

Amazon Haloに搭載されたマイクが利用者の声を聞き、それをAIで解析して、声のトーンを把握する(下の写真、左側)。声のトーンとは言葉に含まれた感情で、四つに分類され、Amused、Content、Reserved、Displeasedとなる(右側)。Amusedは楽しい時の、Contentは満足した時の声のトーンとなる。Reservedは静かな状態で、Displeasedは怒った時の声のトーンとなる。実際に使ってみると、声のトーンを通じてメンタルの状態を把握できる。その日の気分を正確に把握するのは難しいが、Amazon Haloはこれを客観的に分析しグラフで提示する。また、Amazon Haloは会話の”鏡”として機能し、自分の声が相手にどのような印象を与えているのかを理解できる。この機能を使うには、事前に声を入力し、AIが本人を特定できるよう教育しておく。

出典: VentureClef

体脂肪率を推定

Amazon Haloは体脂肪(Body Fat)の割合を計測する(下の写真、左側)。スマホカメラで身体を撮影し(右側)、AIが画像を解析し脂肪量(Fat Mass)を推定する。体重については利用者が測定して入力する。これにより体脂肪率が分かる。

出典: Amazon

体脂肪率は健康管理に重要な指標で、この値が健康寿命や病気発症に関連する。体脂肪率が高いと心臓疾患や糖尿病の発症確率が上がる。体重は食事などで頻繁に変わるが、体脂肪量は変動が少なく、その変化が健康に大きく影響する。このため、二週間おきに体脂肪率を測定することを推奨している。体脂肪については、多くの測定法があるが、Amazon Haloはコンピュータビジョンと機械学習でイメージを解析する手法を取る。AIが体形から体脂肪を推定するが、病院での測定技術(Dual-Energy X-Ray Absorptiometryなど)と同等の精度であるとしている。

健康管理のコンテンツ

Amazon Haloは研究所「Labs」を運用しており、ここに健康管理のコンテンツを揃えている。コンテンツはワークアウトや睡眠の質を向上させるプログラムやマインドフルネスのレッスンなどから成る。ワークアウトは自宅でできるエクササイズが揃っており、ビデオでインストラクターの指示に従って体を動かす(下の写真)。ストレングス、カーディオ、ヨガ、バー(Barre、右側下段)の分野があり、目的に合ったプログラムを選択できる。バーとはバレエダンスに基づくワークアウトで、ハリウッドのセレブが行っていることで人気となった。Appleはフィットネスのための有料プログラム「Apple Fitness+」をスタートしたがAmazon Haloはこれに対抗する位置づけとなる。

出典: VentureClef

実際に使ってみると

左手にはApple Watchを着けているので、Amazon Haloは右手に装着して利用している。Apple Watchより一回り小型の形状で、着装感は軽く負担は感じない。デバイスを操作する必要はなく、Amazon Haloが自動で身体状態をモニターするので、ウエアラブルというよりはバイオセンサーを着装している感覚に近い。

一番驚かされたデータ

睡眠を分析した情報に一番驚かされた。日ごとに睡眠のスコアは大きく変わり、また、睡眠のパターンも一定ではない。よく眠れた日とそうでない日が明らかになり、今までは、感覚的に寝不足を感じていたことがデータで示される。次のステップとしては、上述のLabsに登録されているコンテンツを使って、睡眠の質を上げることになる。

リアルタイムで声のトーンを分析

Amazon Haloが分析する声のトーンも参考になる。普段の会話の声のトーンを把握し、次は、好感を持ってもらえる声のトーンにアップグレードするステップとなる。また、スピーチで好まれるしゃべり方を学習することもできる。Amazon Haloはリアルタイムで声のトーンを解析する機能もあり(下の写真、右側)、このツールとLabsに掲載されているレッスンを併用して声のトーンを改良する。

出典: VentureClef

バイオセンサー

Amazon Haloは人気のウェアラブル「Fitbit Tracker」からディスプレイを取り外した形で、リストバンド形状のバイオセンサーとしてデザインされている。センサーが収取するバイオデータをAIが解析し、健康管理のポイントをアドバイスをする。実際に使ってみると、健康管理のウエアラブルは生活に必須のデバイスであると感じ、これから需要が大きく伸びると思われる。できることなら、血圧や血糖値や酸素飽和度を測定する機能があれば健康維持に大きく寄与する。

IBMは大規模な量子コンピュータを開発、100万Qubit構成でエラー補正機構を備え最初の商用機となる

量子コンピュータの国際会議「Q2B」(#Q2B20)が開催され、IBMは研究開発の最新状況を公表した。2023年には新アーキテクチャに基づく量子コンピュータを投入し、現行スパコンの性能を遥かに超える。更に、このモデルをエンハンスし、最終的には100万Qubitを搭載する大規模システムを開発する。このシステムはエラー補正機構を搭載し大規模アプリケーションを稼働させることができる。この時点で量子コンピュータが完成し本格的な普及が始まることになる。

出典: IBM

開発ロードマップ

国際会議でIBMの企業提携責任者Anthony Annunziataが量子コンピュータの開発状況とアルゴリズム研究の最新状況を説明した。IBMは量子コンピュータ開発のロードマップを発表しており(下のグラフィックス)、100万Qubitを搭載するシステムの開発を進めている(下のグラフィックス、右端のモデル)。この量子コンピュータはエラー補正機構(Error Correction)を搭載しており、大規模なアプリケーションを稼働させることができる。

出典: IBM

量子プロセッサ開発状況

このゴールに向けて量子プロセッサの開発が進んでいる。現在は65Qubit構成のプロセッサ「Hummingbird」が稼働しているが、今年は127Qubit構成のプロセッサ「Eagle」が稼働する。更に、2022年には433Qubit構成のプロセッサ「Osprey」が登場する。世代ごとに技術改良が進み、小型化でエラー率の低いプロセッサが生まれる。

量子プロセッサ「Condor」

2023年には1,121Qubit構成のプロセッサ「Condor」(下の写真、Qubitがメッシュ状に結合される)が投入される。このモデルが大きなマイルストーンとなり、量子コンピュータが現行スパコンの性能を遥かに上回るポイント「Quantum Advantage」に到達する。このプロセッサは大型冷却装置(dilution refrigerator、先頭の写真)に格納され稼働する。これは「Goldeneye」と呼ばれ世界最大規模の冷却装置となる。

出典: IBM

100万Qubitマシン

100万Qubit構成の量子コンピュータはCondorがベースとなり、このプロセッサを数多く結合して構成する。具体的には、多数の大型冷却装置を高速通信(Intranets)で結び、単一の量子コンピュータを構成する。100万Qubitモデルは現行コンピュータのようにエラー補正機構を備えており、プログラムはエラー無く正常に稼働する。このため、大規模なアプリケーションを稼働させることができ、金融、化学、AIの分野で大きなブレークスルーがあると期待される。

NISQモデル

因みに、現在稼働している量子コンピュータはエラーを補正する機構は搭載しておらず、大規模な演算を実行することは難しい。この種類の量子コンピュータは「Noisy Intermediate-Scale Quantum (NISQ)」と呼ばれ、ノイズが高く(エラー率が高く)、中規模構成(50から100Qubit構成)のシステムとなる。大規模なアプリケーションを稼働させるためにはエラー補正機構が必須となる。

金融分野:JPMorgan Chase

IBMはハードウェアの開発と並行して企業連携を強化している。このプログラムは「IBM Quantum Network」と呼ばれ、IBMはパートナ企業と量子アルゴリズムの共同開発を進めている。金融分野では、JPMorgan Chaseは量子コンピュータでリスク解析やポートフォリオ最適化の研究を進めている。金融アプリケーションは量子コンピュータと相性が良く、最初にQuantum Advantageに到達すると見られている。

エネルギー分野:ExxonMobil

エネルギー分野ではExxonMobilと共同研究を進めている。ExxonMobilは量子コンピュータを使ったシミュレーションで新たなマテリアルを開発する。地球温暖化対策として二酸化炭素回収(Carbon Capture)のための新素材を開発している。(下の写真、IBMとExxonMobilの研究者は共同で量子熱力学(Quantum thermodynamics)の研究を進めている。)

出典: IBM

航空分野:Boeing

航空分野ではBoeingがIBMの量子コンピュータクラウド「IBM Quantum Experience」を使って航空機の開発を進めている。特に、機体に採用する新素材の評価や試験を量子コンピュータで実行する。現在は実験を通じてこのプロセスを実行しているが、これを量子コンピュータでシミュレーションすることで開発期間を大幅に短縮できると期待している。

開発は着実に進む

世界の主要企業は量子コンピュータを使ってアルゴリズム開発を進めている。量子コンピュータ導入に向けた準備が必要であるが、本当にシステムが稼働し性能が出るのかについて疑問を抱いている企業は少なくない。このため、IBMは敢えて量子コンピュータのロードマップを公表し、企業の先行投資を保証する形となった。IBMの説明を聞くと、量子コンピュータはハイプではなく、システム完成への道のりが見え、開発が着実に進んでいるとの印象を受けた。