Waymoはサンフランシスコで走行開始、自動運転AIを改良し込み合った市街地を安全に走行

Waymoはサンフランシスコで試験走行を開始することを発表した。社員がWaymoの乗客となり、市街地を走り試験を重ねる。Waymoはアリゾナ州フェニックスでロボタクシー事業を展開している。しかし、サンフランシスコはフェニックスとは異なり、道路は狭くクルマや歩行者で込み合っている。自動運転車にとって最後の難関となる。Waymoは試験走行の後に、サンフランシスコでロボタクシーの事業を開始する。

出典: Waymo

サンフランシスコで試験運転する理由

サンフランシスコは坂の街で、ケーブルカーや路面電車が走行し、観光客が道にあふれる。狭い道路はクルマやバイクやスクーターや歩行者で込み合い、高度な運転スキルが求められる。自動運転車にとって、全米の都市の中で最も高度な技術が求められ、ここが開発の最終ゴールとなる。試験走行はJaguar Land RoverのEVモデル「I-Pace」で行われる(上の写真)。

コンピュータビジョン

複雑な環境で安全に自動走行するために、Waymoは自動運転車の頭脳である「Waymo Drive」を改良した。その一つが、コンピュータビジョンの強化で、クルマは高精度でオブジェクトを認識できるようになった。例えば、カメラは信号が変わるのを長距離で認識できる。ヒスパニックのコミュニティはお祭りには通りに横断幕(Papel Picado)を掲げるが(下の写真)、Waymo Driveは遠方から信号が変わるのを検知し安全に走行する。

出典: Calle 24 Latino Cultural District

推論機能の強化

Waymo Driveの推論機能が強化され、カメラやLidarが捉えたオブジェクトから、動きを予測する能力が向上した。推論とはクルマや歩行者が次に取るアクションを予測するもので、込み合った市街地を走行するには必須の機能となる。特に、Fishermen’s Wharfのような観光地では(下の写真)、歩行者の動きを予測する機能が重要になる。例えば、バスの隣に停止した際は、Waymo Driveはバスから降りた観光客が道路を横切ることを想定して運転する。

出典: VentureClef

道路工事現場を認識

市街地では道路工事により車線が封鎖されることが多いが、Waymo Driveは道路コーンや作業員のハンドシグナルを理解し、現場の指示に従って走行する。Waymo Driveはこれらの情報から新しいルートを計算し、クルマは道路コーンに沿って、工事個所を避けて走行する。

カリフォルニア州で商用運転免許取得

カリフォルニア州で多くの企業が自動運転車の走行試験を実施している。このためにはDMV(Department of Motor Vehicles、州の陸運局)で公道を試験走行するための認可を受ける必要がある。現時点で、55社が自動運転車の走行試験を実施している。更に、自動運転車で営業運転するためには、CPUC(California Public Utilities Commission、公益事業を管轄)で認可を受ける必要がある。商用運転免許を取得してた企業はWaymoの他に、CruiseやZooxなど7社となる。Zooxはサンフランシスコで自動運転車を公開したところで、Waymoの発表はこれに対抗するという狙いもある。

アリゾナでの商用運転

Waymoは2017年からフェニックスでロボタクシー「Waymo One」の実証試験を展開してきた。2020年8月に、これを一般に公開し、今では誰でもWaymo Oneを利用できるようになった。乗客は専用アプリを使い、現在地と目的地を入力しクルマを呼ぶ(下の写真)。Waymo Oneはセイフティドライバーが搭乗しない無人タクシーで、既に10万件の輸送をこなし、安全性について評価が高まっている。

出典: Waymo

2021年は自動運転車の転換点

現在、レベル5の自動運転サービスを提供しているのはWaymoだけである。しかし、Waymo Oneの商用運行はフェニックス市街地に限定されている。今年は、エリアを拡大しサンフランシスコの他に、主要都市での運行が計画されている。更に、Teslaは今年、完全自動運転技術「FSD(Full Self-Driving)」をリリースする。クルマのソフトウェアの更新でこれを実現する。予想外に難航している自動運転車開発であるが、今年は転換の年となる。

AmazonはZooxを買収し自動運転車市場に参入、サンフランシスコでロボタクシーの試験走行を公開

Amazonが買収したZooxはサンフランシスコでロボタクシーの試験運転を公開した。クルマはレベル5の完全自動運転車で、ドライバーが搭乗しないロボタクシーとして、市街地における住民の足となる。Zooxはミニバス形状で(下の写真)、市街地の狭くて込み合った道路を自動で走行する。Amazonはこの他に、自動運転SUVの開発を進めており、次のコア事業は自動運転車であることが鮮明になった。

出典: Zoox

クルマの全体構造

Zooxはレベル5の完全自動運転車で、ドライバーが搭乗しないで、バイクや歩行者で込み合う市街地を走行する。Zooxは四輪ステアリングで、斜めに走ることができ、狭いスペースに駐車して乗客を降ろすことができる。また、前後対象のデザインで、後ろ方向に走ることができる。駐車スペースからバックではなく前進で発進できる。対称構造であるため前後左右で同じ部品を使え、パーツ点数が大幅に少なくなる。

車内のデザイン

Zooxは西部劇で登場するステージコーチをほうふつさせるデザインで、車内に二人掛けの座席が向き合って配置されている(下の写真)。乗客は座席に座り、シートベルトを締め、スタートボタンを押すとクルマは目的地に向かって走行する。クルマを呼ぶときには、ライドシェアの要領で、スマホアプリで現在地と目的地を入力する。

出典: Zoox  

設計コンセプト

Zooxは他の自動運転車とは異なりゼロから開発されている。車体は自動車メーカーから供給されるのではなく、独自の設計で無人タクシーとしてデザインされている。自動運転のコア技術であるAIやソフトウェアも独自で開発され、システムはNvidiaのAIプロセッサで稼働する。当初はセダンタイプのデザインであったが(下の写真)、現在は、乗り降りしやすいステージコーチ型となった(先頭の写真)。

出典: Zoox  

AmazonがZooxを買収

このため、大規模な開発資金と多数のエンジニアが必要となり、Zooxは開発に行き詰り、企業を売却する判断を下した。このタイミングでAmazonは2020年6月に買収を発表し、ZooxはAmazonの資金で開発を継続している。これにより製品開発が加速され、2020年12月、Zooxは自動運転車を公開し、サンフランシスコ市街地を走行するデモが実施された。

センサー

ZooxはカメラとLidarとレーダーをクルマの四方に搭載し、これをAIで解析して自動運転を実現する(下の写真)。周囲360度の視野を持ち、毎時75マイルで走行することができる。カメラはオブジェクトの色を識別し、信号などを把握する。レーダーは周囲のオブジェクトを把握し、Lidarはこれを3Dで高精度で認識する。自動走行する前に、Lidarで道路と標識などをセンシングし、高精度3Dマップを作成しておく。

出典: Zoox  

製品ポジショニング

Zooxはステルスモードで開発し、その技術は謎に包まれていたが、Amazonが買収してからは製品化への歩みを速め、クルマの全貌が明らかになった。クルマのポジショニングも明確になり、市街地における短距離輸送に特化したデザインとなっている。

Bezosの戦略

この背後にはJeff Bezosの自動運転車に関する長期的なビジョンがある。Bezosは自動運転車とEVが次の大きな市場になるとして、相次いで資金を投資している。2019年2月、自動運転スタートアップ「Aurora」に大規模に出資し業界の注目を集めた。その直後、ピックアップトラックを開発するベンチャー「Rivian」に出資した。BezosはCEOを退任し、取締役会長になり、これからは新規事業の育成に時間を費やすと述べている。Zooxの買収で自動運転車が次のコア事業となることが鮮明になり開発が加速されることとなる。

テスラの完全自動運転車はソフトウェア事業、ロボタクシー向けクラウドが会社の収益の半分を稼ぐ

テスラは今年中にレベル5の完全自動運転車を出荷する。クルマにはそれに必要なハードウェアが搭載され、ソフトウェアの更新で完全自動運転車となる。このソフトウェアはFull-Self Driving(FSD)と呼ばれ、現行車種にはそのベータ版が搭載されている。ベータ版から正式版に機能アップするために、AI開発が急ピッチで進んでいる。

出典: Tesla  

完全自動運転車

テスラCEOのElon Muskは、2020年度第四四半期の決算発表で、多くの時間を割いて自動運転技術について説明した。テスラの自動運転技術はFSDと呼ばれ、現行車両にはそのベータ版が搭載されている。Muskは今年中に完全自動運転車が完成するとの見通しを示した。FSDが出荷されるとクルマはレベル5の自動運転機能を持ち、ドライバーの介在無しにクルマは自動で走行する。

ロボタクシー

完全自動運転車が登場するとクルマの利用法が劇的に変わる。ドライバーはクルマを利用しない時間帯は、これをロボタクシーとして運行する。クルマが無人のUberとなり、乗客を拾い目的地に送り届ける。これにより、オーナーは臨時収入を得ることができ、その一部をサブスクリプションとしてテスラが徴収する。テスラはロボタクシーを運行するクラウド「Tesla Network」を提供し、オーナーはこのクラウドにクルマを接続しタクシー事業を展開する。(下の写真、テスラはステアリングのないロボタクシー専用車両をデザイン)

出典: Tesla  

車両販売はソフトウェア事業

Muskによると、テスラの事業は車両販売に加え、ロボタクシー運用によるサブスクリプション収入が大きな収益源になる。Muskは車両販売による収入が500億ドルで、ロボタクシーの収入が同額の500億ドルになるとみている。ロボタクシーの部分のコストは小さく、収益の殆どが利益になる。つまり、完全自動運転車が完成すると、自動車販売はクラウドによる収益が大きな部分を占め、ソフトウェア事業となる。

テスラの収益構造

Muskはロボタクシー収益の詳細を明らかにしていないが、今までの情報を元に計算すると次のようになる。ロボタクシーの料金は0.5ドル/マイルで、Uber料金の半額に設定される。ロボタクシーが年間45,000マイル走行すると、売上金額は22,500ドルとなる。テスラはサブスクリプション料金としてこの30%を徴収し6,750を得る。これを6年間運用すると、テスラの収入は40,500ドルとなる。Tesla Model 3(先頭の写真)の車両価格は47,900ドルで、ロボタクシーが車両価格と同等の収入を上げることになる。

FSDベータを支えるAI

ロボタクシーを運行するためにはクルマがレベル5の完全自動運転車となることが前提条件となる。このため、テスラはFSDのニューラルネットワークを大幅に改良しこれを目指している。現行モデルFSDベータでは、ニューラルネットワークはカメラが捉えたイメージを解析し、オブジェクトを把握する。クルマは周囲に8台のカメラを搭載しており、AIはそれぞれのカメラが捉えた画像を解析する。

FSD最終版の仕組み

これに対して、FSD最終版はカメラが捉えたビデオを解析する。これは「4D Data」と呼ばれ、ステレオカメラの3D画像が時系列に繋がる動画を解析し、そこからオブジェクトの種類を把握し、次の動きを予測する。ニューラルネットワークには8台のカメラが捉えたビデオが同時に入力され、クルマ周囲の状況をリアルタイムに把握する。これにより、FSDは人間が運転するより100%から200%安全なクルマとなる。(下の写真、8台のカメラが捉えた画像)

出典: Tesla  

Dojo Supercomputer

ニューラルネットワークがビデオを解析するためには、タグ付きビデオでアルゴリズムを教育する必要がある。この教育システムは「Dojo Supercomputer」と呼ばれ、ここでシステムはビデオからタグ(ビデオの内容説明したテキスト)を自動で生成する。テスラの強みはビデオの量で、現行車両が撮影したビデオ画像がクラウドにアップロードされ、これをDojo Supercomputerでタグ付けする。タグ付けされたビデオを使ってFSDのニューラルネットワークを教育する。

現行FSDベータの評価

現行車両にはFSDベータが搭載され、限定的な自動運転機能を提供している。調査機関Consumer Reportによると、FSDは名前が示す自動運転機能には至っておらず、問題点が多いと指摘する。具体的には:

  • 「Navigate on Autopilot」は自動でハイウェイに乗り降りする機能であるが、目的の出口で降りないケースがある。また、込み合ったハイウェイで自動運転機能が解除される。
  • 「Traffic Light and Stop Sign Control」は信号のある交差点や一時停止標識で停止する機能であるが、停止せず直進した事例を報告している。

FSDベータは名前の通り、未完成の自動運転技術で、ドライバーは非常事態に備えスタンバイしておく必要がある。TeslaはAIを大改造することで、完全な自動運転技術を目指している。(下の写真、Auto Summon機能を使うとクルマが駐車場から玄関前に自動で走行しドライバーを迎える。)

出典: Tesla  

FSDベータ版を最終版にアップグレード

上述の通り、FDSベータはAIがクルマに搭載されたカメラの静止画像を解析する手法で自動運転機能を実現する。これに対し、FSD最終版はAIが格段に強化され8台のカメラの動画を同時に処理することで自動運転を実現する。Muskはこの機能はSuperhumanで、人間の運転技術を大きく上回ると説明した。Lidarを使わないでカメラでレベル5の自動運転車ができれば自動車産業にとって大きなブレークスルーとなる。

自動車産業はクラウド事業となるのか

テスラの株価が急騰しここ一年で700%近く上昇した。テスラの量産体制が整い、好調な業績を反映しているが、株価はこれ以上に上昇している。Muskによると、株価はテスラのロボタクシー事業を反映していると説明。テスラは車両販売の他に、ロボタクシー向けクラウドのサブスクリプション収入があり、株価をこれを先取りしている。自動車産業はクラウド事業となるのか市場が注目している。

バイデン政権は極右団体による国内テロとの戦いを表明、米国市民の多くがQanonなどの陰謀説を信じている

トランプ前大統領の支持者がアメリカ連邦議会に乱入した事件は米国社会の分断を象徴する事象となった(下の写真)。事件の背景には、米国市民の1/3がQanonなどの陰謀説を信じているという事実がある。この襲撃事件に触発され、一版市民が過激化し、極右団体に加わっている。このため、アメリカ合衆国国土安全保障省は、極右団体による国内テロが発生する危険性があるとして、警戒情報を発令した。過去10年はイスラム過激派組織によるテロとの戦いであったが、これからの10年は極右団体による国内テロとの戦いになる。

出典: CNN

トランプ前大統領と極右思想

トランプ前大統領と極右思想は密接な関係にある。極右思想の代表がQanonで、政治的な陰謀論(Conspiracy Theory)として米国社会に幅広く浸透している。一部の極右団体がこれを信奉するだけでなく、社会の中で大きな存在感を示している。トランプ前大統領がQanonを擁護し、Qanonは前大統領を政敵から守ってきた。また、連邦議会議員の中にもQanon支持者が存在する。下院議員Marjorie Taylor Greeneはその代表で、Qanon有権者を取り込み、当選を果たした。

Qanonとは

Qanonは「Q」と「anon」から成る造語で、「Q」は連邦政府のトップレベルのセキュリティ保持者で、「anon」はAnonymous(匿名の人物)を意味する。連邦政府高官が匿名で、トランプ政権転覆を企てる団体「Deep State」を排除することを目的とする。Deep Stateはエリート集団で、暗黒団体「Cabal」の指示のもと活動する。Cabalのメンバーにはオペラ・ウインフリーやジョージ・ソロスがいるとされる。これら影の人物がトランプ政権の転覆を企て、それをQanonが防衛するという荒唐無稽なストーリーとなる。(下の写真左側、活動家はQanonのシンボルマーク「Q」を身についている。)

出典: Los Angeles Times / Stripes

危険思想

このような事実は無く、Qanonが陰謀論と言われる所以である。Qanon信奉者はこの教義に基づき活動し、ヘイトスピーチや暴力行為に及び、政治や社会を脅かす。FBIはQanonを過激思想集団と位置付け、社会に脅威をもたらすとして警戒を続けている。Qanonはバイデン大統領の就任式を攻撃するとして、厳戒態勢の元で式典が実行された。また、ハリス副大統領は有色の女性であり、Qanonの標的にされている。(上の写真右側、「Q Sent Me」とはQanonに忠誠を誓うという意味。)

極右団体の活動が活発になる

Qanonの他に、多くの極右団体が活動を展開し、米国社会を不安定にしている。トランプ大統領の就任以降、米国では極右団体の活動が活発になっている。今までは、極右団体の活動は抑制されてきたが、2016年の大統領選挙で、トランプ氏が人種差別や外国人排除や女性軽視の発言を繰り返し、これが極右団体の活動を容認するものと受け止められ、これらの活動が一気に表面化した。

主な極右団体

極右団体の代表が「Proud Boys」で、白人至上主義で反イスラム教を掲げ、武器を携行して活動する。「III%er」はThree Percenters(上位3%の愛国者)と呼ばれ、アメリカを独裁政治から守ることを使命とする(下の写真左側、シンボルは星条旗にIIIを入れたデザイン)。名前の由来はアメリカ独立戦争で、国民の3%の愛国者がイギリスと戦い勝利したことによる。(これは歴史誤認でこのような事実はない。)「Oath Keeper」も私兵組織で、武器を携帯して反政府活動を展開する(下の写真右側、帽子にロゴが縫い付けられている)。この組織の特徴は現役兵士や引退した兵士をメンバーに雇い入れ、本格的な軍事活動を展開していること。これら組織のメンバーは”愛国者”を自認し、国民を”守る”ことをミッションとする。

出典: Oil City News / CNN

ソーシャルメディアの対応

主要ソーシャルメディアは、極右団体が連邦議会を襲撃したことを受け、前大統領のアカウントを閉鎖した。また、極右団体は交信のためにFacebookやTwitterなどを使っていたが、これらのアカウントも削除された。Facebookは2020年10月、Qanonに関するFacebookやInstagramのアカウントを削除した。Twitterは連邦議会攻撃事件を受けてQanonのアカウント7万件を削除した。

FacebookからParlerに

このため、極右団体はFacebookから新興ソーシャルネットワーク「Parler」に大移動を始めた。Parlerは2018年に創設されたソーシャルネットワークで、保守層を中心に利用されてきた。コンテンツの規制が緩やかなことから利用者数を伸ばしてきたが、あくまで一般ユーザを対象にサービスを運用してききた。ここに極右団体が大量に流れ込み、暴力行為やヘイトスピーチを助長する掲載が急増した。このため、ParlerをホスティングするAmazonはこのサービスを中止し、また、AppleやGoogleはParlerアプリをストアーから排除した。(下の写真、閉鎖中のParlerホームページ。CEOのJohn Matezは言論の自由を求めて戦うとの声明をここに掲載。)

出典: Parler

Telegram

このため、極右団体はTelegramへの移動を開始した。Telegramはメッセージングサービスで、ロシアの実業家Pavel Durovが運営している(下の写真)。余り知られていないが、全世界で4億人の利用者がいるとされる。Durovはソーシャルネットワーク「VK」を運用しており、ロシアのZuckerbergとも呼ばれる。Telegramは通常のメッセージサービスに加え、プライベートなフォーラムを運用しており、ここでセキュアにメッセージを交換できる。このフォーラムにアクセスするには鍵(Digital Key)が必要で、一般に知られることなく秘密裏に情報を交換できる。このため、過激派組織の温床となり、各国の治安当局から警告を受けるものの、対策は進んでいない。極右団体はここを拠点に活動を始めている。極右団体のメンバーはいわゆるデジタル・ネイティブで、ITを駆使して活動を展開する。彼らは自らを「Digital Soldier」と呼び、ソーシャルメディアの規制をかいくぐり、サイバースペースで戦闘を展開する。

出典: Voice of America

バイデン政権の課題

過激思想の9割は極右団体で、この活動は今に始まったわけでは無く、アメリカの歴史とともに歩んできた。時の政権はこの危険性を認識し、暴力行為や活動を抑制してきたため、社会の表に現れることは稀であった。しかし、トランプ政権の発足とともに、極右団体が”公認”され、活動が活性化し、殺傷事件を含む危険な行動が目立ってきた。トランプ氏が政権を去った後も、極右団体は多くの米国市民の支持を受け、活動を継続することとなる。バイデン政権はこれから極右勢力との長い戦いが始まる。

AIで新型コロナウイルスの遺伝子配列を解析、配列を言葉として解析しワクチンが効かない異変種の発生を予測

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まり、パンデミックが終息に向かうと期待されている。ウイルスは変異を繰り返し、今年に入り相次いで英国型や南アフリカ型異変種が発見された。これら異変種は感染力が高いが、ワクチンは有効であるとの見解が示されている。しかし、最新のAIを使った解析では、更に複数の異変種が生まれ、その幾つかはワクチンが効かないと推定する。この事態に陥れば、新型コロナウイルスの終息にはもう少し時間がかかるかもしれない。

出典: Brian Hie et al.

Viral Escape:ワクチンが効かなくなる

新型コロナウイルスなど感染症向けにワクチンが開発されるが、ウイルスの遺伝子が変異するとワクチンの有効性が低下し、最悪の場合は効かなくなる。ワクチン接種により体内に抗体(Antibody)が生成されるが、ウイルスが変異すると抗体がこれを認識できなくなる。これは「Viral Escape」(ウイルスがワクチンをすり抜けるという意味)と呼ばれ、感染症対策の大きな課題となっている。ワクチン開発ではウイルスがどう変異するとワクチンが効かなくなるのかが重要な情報となる。(上のグラフィックスは新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質で、Viral Escapeが発生する可能性が高い個所(黄色)と低い個所(青色)を示している。スパイクたんぱく質に対してワクチンが開発されているが、Viral Escapeが発生しない部分(上のグラフィックス右側、S2と示された個所)に作用する仕組みを取る必要がある。)

ウイルスに自然言語解析を適用

MITのAI研究チームはViral EscapeをAIの自然言語解析(Natural Language Processing)を使って予測する技法を開発した。ウイルスの遺伝子配列を言葉として捉え、そこから文法(Grammar)と意味(Semantics)を把握することで、どの遺伝子変異がViral Escape(ワクチンが効かない状態)に繋がるかを予測した。この研究ではインフルエンザウイルス(influenza A hemagglutinin)、エイズウイルス(HIV-1 envelope glycoprotein)、及び、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2 spike glycoprotein)の三種類が使われた。

遺伝子配列の文法と意味

ウイルスの遺伝子配列を解析し、その文法と意味を把握するが、それらを次のように解釈できる。文法とはウイルスの基礎機能を決める。文法がしっかりしているウイルスは感染能力が高く、ウイルスが生存する可能性が高いことを示す。一方、意味はウイルスの変異を示す。異なる意味をもつウイルスは異なる形状を示すことになる。例えば、新型コロナウイルスが変異して、意味が異なり、文法が正しければ、ワクチンが効かない感染力の強いウイルスが生まれることになる。

出典: Brian Hie et al.  

遺伝子配列の文法と意味を可視化

上のグラフはこれを可視化したもので、縦軸が文法で横軸が意味を示す。文法が正しいほど(上に行くほど)、感染能力が高い(赤色の円)。意味が変わるとワクチンが効かなくなる。矢印の通り、左上のウイルスが右上のウイルスに変異すると、感染力が高く、ワクチンが効かないウイルスとなる(Viral Escapeが起こる)。一方、ウイルスが変異しても文法が正しくなければ、感染力が低下し無害のウイルスとなる(青色の円)。

自然言語解析の手法

この研究では自然言語解析の手法を適用したが、具体的には、LSTM(Long short-term memory)というタイプのニューラルネットワークが使われた。LSTMは時系列のデータを解析する手法で、言語処理では入力された言葉に続く言葉を推定する。この研究では、LSTMにウイルスの遺伝子配列を入力し、ネットワークは意味と文法を出力する。

出典: Brian Hie et al.  

上のグラフィックス;BiLSTMにウイルスの遺伝子配列を入力すると(最下段)、ネットワークはその意味(入力データに続く言葉 = 変異)を出力し(中段)、更に、その文法を出力する(最上段)。モデルは推定した言葉と、この言葉が持つ文法の正しさを推定し、Viral Escapeとなる確率を算定する。

解析の結果

モデルが予測した結果を過去のデータで検証し推定の精度を検証した。このモデルはインフルエンザやHIVや新型コロナウイルスなど5種類のウイルスを解析した。その結果、新型コロナウイルスに対して、モデルは85%の精度Viral Escapeとなる変異を予測した(下のグラフ、右端)。

出典: Brian Hie et al.  

感覚的な理解

このモデルを自然言語に応用するとこの機能を理解しやすい。モデルは元の文章が変異するパターンを予測し、それが文法に適合しているかどうかを判定する。更に、文章の意味に関し、それらがどのような位置関係にあるかを算定する(下のグラフィックス)。

  • 上段:元の文章は「オーストラリア人がバリ島で死んだ」
  • 中段:文章が変異する(australianがaussieに変わる)が意味は変わらない
  • 下段:文章が変異する(deadがballetに代わる)と「オーストラリア人がバリ島でバレイ」となり意味が変わるが、文法も正しい。この変異がViral Escapeとなる。
出典: Brian Hie et al.  

事前に対策を講じる

いま新型コロナウイルスが変異し、英国型や南アフリカ型変異種の感染が広がっている。もし、変異種が発生する前に、ワクチンが有効かどうかを把握できると、医療関係者はその拡散に備え、必要な対策を取ることができる。また、ワクチンや治療薬の開発では、Viral Escapeが発生しにくい領域を対象に、モデルを開発することができる。このモデルはまだ研究段階であるが、AIは現行ワクチンが効かない新型コロナウイルスの発生を予測しており、不測の事態に備えておく必要がある。