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ベンチャーキャピタルの技術発表イベント、音楽ストリーミングにブロックチェーンを導入

ベンチャーキャピタル500 Startupsはサンフランシスコで発表イベントを開催し、スタートアップは開発した最新技術を披露した。カナダ・バンクーバーに拠点を置く新興企業Beatdappは音楽ストリーミング回数を計測する技術をブロックチェーンで開発し、そのデモを公開した(下の写真)。音楽ストリーミングサービスがブームであるが、配信企業と音楽制作会社の間で音楽配信回数が食い違い、訴訟に発展することも珍しくない。

出典: VentureClef

音楽ストリーミングサービスとは

音楽ストリーミングとは、音楽制作会社(Record Labels、レーベル)やアーティストが制作した音楽を、配信会社(Digital Service Provider、DSP)が消費者にオンデマンドで配信するサービスを指す。レーベルはWarner Music Groupなど大手三社と数多くの独立系(Indie Label、インディーズ)からなる。また、DSPではSpotifyがトップで、それをApple Music、Amazon Music、Tencent Musicなどが追っている。

音楽ストリーミング事業

音楽ストリーミングサービスでは音楽や音楽ビデオの配信回数で収入が決まる。この事業の収益は視聴者のサブスクリプションと広告収入で構成され、配信回数に応じてDSPがレーベルやアーティストに売り上げを分配する。しかし、Beatdappによると、世界600社の音楽ストリーミングサービスを調査すると、DSPが報告した配信回数と実際の配信回数の間に隔たりがある。DSPはレーベルやアーティストに過少申告し、その金額は$4.5Bに上るとしている。

音楽配信アナリティックス

この問題を解決するためBeatdappは音楽配信アナリティックス技術を開発した。レーベルやアーティストはBeatdappを利用することで、音楽配信情報を把握し、販売金額を正しく掴むことができる(下のグラフィックス)。具体的には、特定アーティストの音楽配信回数がグラフやテーブルで示される。例えば、The Poetというアーティストの曲が今月は1234回配信されたことが分かる。また、DSPごとの配信回数がグラフで表示され、SpotifyやApple Music経由での配信回数を掴むことができる。

出典: Beatdapp  

ブロックチェーン構成

音楽配信回数をカウントするためにはDSPがBeatdappをシステムに組み込む必要がある。DSPとしてはBeatdappを統合することで不正使用を検知でき、また、経理監査プロセスを自動化できるメリットがある。Beatdappはブロックチェーンを使ってシステムを運用している。システム構成は公開されていないが社名(Beat + dapp)にヒントがある。「Dapp」とはブロックチェーン「Ethereum」の上で稼働する分散アプリ「Decentralized Application」を指す。Dappは「Smart Contracts」とも呼ばれ、インテリジェントな契約機能を持つ。Beatdappのケースでは人間の介在無しに(人間がデータ集計でミスすることなく)Dappが契約(事前に設定されたルール)に基づき、音楽配信回数を正確にカウントする。

音楽産業の斜陽化

音楽産業は斜陽化の時代を抜けストリーミングで生まれ変わろうとしている。1980年代にCDが導入され音楽産業が大きく成長した。音楽がデジタルに記録され音質が上がり、1999年には売上金額がピークに達した。しかし、同年、P2Pファイル共用サービス「Napster」の登場で、デジタルに記録された音楽が不正にコピーされ、これ以降、音楽の売り上げが毎年低下することとなった(下のグラフ、Physicalの部分)。

出典: Financial Times  

音楽ダウンロードが転機になる

しかし2001年、AppleがiTunesを投入し、この流れが変わった。iTunesはメディアプレーヤーで音楽やビデオファイルをダウンロードして再生する。iTunes Storeで音楽ファイルを購入することで音楽の売り上げが少しずつ増えてきた(上のグラフ、Digital Downloadsの部分)。ついに、2013年には減少を続けてきた音楽収入が上昇に転じ、音楽産業は底を脱した。

ストリーミングが音楽産業を再生する

更に、この頃から音楽をダウンロードではなくストリーミングで聞く方式が人気となってきた(上のグラフ、Streamingの部分)。この先陣を切ったのはSpotifyで、著作権で管理された音楽を配信する事業を広げていった。2015年にはApple Musicがこの市場に参入し、音楽市場が一気に拡大した。この勢いでストリーミング事業が成長すると2026年には過去最大の売り上げを記録するとの予測もある。

ブロックチェーンはトライアルから実用段階へ

ブロックチェーンはBitcoinなど暗号通貨だけでなく、サプライチェインなどで適用が広がっている。ただ、多くの企業はブロックチェーンを試しに使ってみるだけで、これは「Blockchain Tourism(ブロックチェーン観光)」と揶揄されてきた。しかし、今年からブロックチェーンをアプリに組み込み基幹業務に適用するケースが増えてきた。ブロックチェーンはトライアルの段階を抜け実用段階に進んできた。技術の成熟度に敏感な新興企業はブロックチェーンを使ったアプリの開発を始め、今年はブロックチェーンが開花する予兆を感じた。