カテゴリー別アーカイブ: ヘルスケア

新型コロナの感染をウェアラブルで検知する、AIが身体データを解析し症状が出る前に病気を把握

コロナ社会で安全に生活するには、感染者を把握し、拡大を防ぐことが必須条件となる。このためPCR検査を定期的に実施し、感染状態を把握し、コロナの封じ込めを試みている。感染者の特定には時間がかかるため、PCR検査に代わりウェアラブルで病気を把握する研究が始まった。ウェアラブルで被験者の動きをモニターし、収集したビッグデータをAIで解析し、発病前に感染の有無を判定する。

出典: Evidation Health

研究プロジェクト

これは米国政府の新型コロナに関する先進研究で、シリコンバレーの新興企業Evidation Healthが手掛けている。Evidation Healthはウェアラブルで被験者のデータを収集し、それを機械学習の手法で解析し、感染したことを判定する。研究資金は米国生物医学先端研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority)とビル&メリンダ・ゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation)はから拠出され、研究成果は一般に公開される。

Evidation Healthとは

Evidation Healthは医療分野におけるAI企業で、身体のビッグデータを機械学習の手法で解析し、新たな知見を得る研究を進めている。新型コロナの研究では同社のプラットフォーム「Achievement platform」でデータ解析が実行される(下の写真)。これは医療ビッグデータを解析するためのプラットフォームで、被験者から採取したデータをアルゴリズムで解析するための様々な機能を備えている。医療機関はこのプラットフォームを利用して新しいアルゴリズムやそソフトウェアを開発する。例えば、薬に対する反応を把握し、患者に最適な治療法を確立することが可能となる。

出典: Evidation Health  

新型コロナ感染を検知

この研究では300人の被験者から健康に関するデータを収集し、このプラットフォームで解析する。具体的には、ウェアラブルで睡眠状態や活動状態などの挙動に関するデータを収集し、また、被験者は健康状態を定期的にレポートする。対象者はコロナ患者を治療する医療従事者などで、感染リスクが高いグループの協力を得て進められる。

倫理的にデータを収集

この研究では4YouandMeが被験者のデータを収集するプロセスを担う。4YouandMeは非営利団体で、医療データの収集を倫理的に実行する。個人データはスマホとスマートリング「Oura Ring」(下の写真)で収取され、これらは匿名化して解析される。スマートリングは、心拍数、体温、活動状態、睡眠状態をモニターする。更に、被験者は毎日、健康状態に関する質問票に回答する。調査期間は最大6か月で、収集されたデータはEvidation Healthのプラットフォームで解析される。この研究ではアルゴリズムの検知精度がカギで、このためには大量の高品質なデータの採取が必須となる。

Oura Ringとは

Oura Ringはフィンランドの新興企業Oura Healthが開発したスマートリングで健康管理のために使われている。Jack Dorsey(Twitter創業者)やMarc Benioff(Salesforce創業者)などシリコンバレーの著名人が使っていることで有名になった。また、プロスポーツではNBA(男子プロバスケットボールリーグ)がOura Ringを使って選手の健康状態を管理することを発表した。シーズンが再開し、選手は定期的に体温測定やPCR検査を受けるが、Oura Ringを併用することで体調の異常を早期に検知する。

出典: Oura Health

スマートウォッチでコロナを検知

コロナと共棲する社会では常に感染のリスクがあり、これをリアルタイムに検知し、アウトブレークを抑え込むことが求められる。感染をウェアラブルで検知できれば、コロナ社会での安全対策の効率が格段に向上する。このため、スマートウォッチを使ってコロナ感染を検知する研究も始まった。スタンフォード大学はApple WatchやFitbitなどを使い、心拍数などのデータをAIで解析し感染者を特定する研究を進めている。

オフィス再開と東京オリンピック

在宅勤務が終わり、これから社員がオフィスに戻るが、コロナ感染をどう検知するかが問われている。この切り札がウェアラブルで、社員の感染を症状が出る前にキャッチして、隔離措置を取る。更に、2021年は、コロナの中でオリンピックが開催されるが、選手を感染から守るためにも、感染をリアルタイムで検知するツールが求められる。コロナに感染すると、スマホやスマートウォッチに警告メッセージを表示することが可能となるのか、ウェアラブルとAIを組み合わせてコロナを検知する技法に期待が集まっている。

米国の新型コロナワクチン開発戦略、ハイリスクな技術で2021年1月までに十分な供給量を確保

都市閉鎖を解除して元の生活に戻るためには新型コロナウイルスのワクチンが必須条件となる。世界各国でワクチンが開発されており、その数は130を超える。通常、ワクチン開発には長い年月を要すが、米国政府はこれを大きく短縮する作戦「Operation Warp Speed」を発表した。連邦政府は100億ドルの予算を組み、民間企業に資金を供給し開発を加速させる。

出典: CNN

Operation Warp Speedとは

トランプ政権は2020年5月、Operation Warp Speedを発表した。これはワクチン開発と量産体制を同時に進めるもので、開発されているワクチンの安全性と有効性の目途がついた時点で、ワクチンを製造し、提供時期を早めるというもの。複数のワクチンを対象に、臨床試験の最終結果が出る前に、先行して製造し、配布ロジスティックスを準備する。このため、ワクチン開発に失敗すると、先行投資した製造施設や作り置きしたワクチンは無駄となる。

開発中のワクチン

WHOは世界で開発されているワクチンを集約しウェブサイトで公開している。ここに開発中のワクチン情報が集約され、全体像を把握することができる。これによると130種類のワクチンが開発されており、その中で10種類が臨床試験の段階に進んでいる(下のテーブル、臨床試験に進んだワクチン)。

出典: WHO

米国政府が出資しているワクチン

Operation Warp Speedはこの中で有望なワクチンを開発している会社に資金を提供し、開発のプロセスを加速している。実際に、ワクチン開発プロジェクト5社に出資しており(下の写真)、その中で臨床試験に進んでいるのはModernaとAstraZenecaの2社となる。これら二社が本命で、米国のパンデミックを抑止する切り札と期待されるが、ワクチン開発が成功するかどうかは予断を許さない。

本命のワクチン

Modernaは米国企業でワクチン「mRNA-1273」を開発しており、4億3000万ドルの出資を受けている。Modernaは革新的なアプローチで、ウイルスのmRNA(Messenger RNA)を投与し、体内でウイルスを生成する手法を取る。また、英国製薬大手AstraZenecaはオックスフォード大学と共同で「ChAdOx1」というワクチンを開発しており、12億ドルの出資を受けている。オックスフォード大学は遺伝子情報からウイルスを生成し、これをワクチンとして使う手法を取る。

出典: U.S. Department of Health & Human Services

ワクチン開発で連邦政府の役割

ワクチン開発では米国保健福祉省配下のBiomedical Advanced Research and Development Authority (BARDA)が製薬会社に資金を提供しワクチン開発を支援する。BARDAはバイオテロや感染症パンデミックなどの緊急事態に対応するために、医療品を短期間で開発し、これを備蓄することをミッションとする。新型コロナウイルスのパンデミックがこのケースに当たり、ワクチンや治療薬などの開発や製造を加速するために民間企業を支援している。

Modernaの開発状況

Modernaは世界で最初に臨床試験を始めた会社で、現在は第Ⅱ相で、来月から第Ⅲ相に進む。Modernaはアメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)と共同で開発を進めており、Anthony Fauci所長は2020年11月から12月ころに1億ドースのワクチンを製造するとしている。臨床試験の結果を待たず先行して作り置きしておき、その頃までにはワクチンの有効性が判明する。もし、臨床試験をクリアできなかったら、作り置きしておいたワクチンは廃棄処分となる。

AstraZenecaの開発状況

BARDAは、英国企業AstraZenecaに最大12億ドル出資し、開発を支援するが、その見返りとして2020年10月までに3億ドースのワクチンの供給を受けると発表した。AstraZenecaチームの臨床試験は続いており、ワクチンは事前に作り置きしておくが、治験をクリアするとワクチンを接種できる。一方、開発に失敗するとワクチンは廃棄される。Operation Warp Speedはワクチンを選定する基準やワクチン評価に関する情報を公開しておらず、なぜけた違いに大きい資金を出資するのかについては明らかにされていない。

中国のワクチン開発状況

BARDAは世界の有望なワクチン開発プロジェクトに出資しているが、中国とは提携していない。中国ではCanSino BiologicsやWuhan Institute of Biologicalなど四団体がすでに臨床試験を進めている。その中で先頭を走るのがCanSino Biologicsで、治験第Ⅱ相に進んでおり、被験者の体内で抗体が生成されたと報告している(下の写真、CanSino Biologicsが開発したワクチン)。カナダ首相Justin Trudeauは、カナダの研究機関で治験が実施されることを明らかにしており、開発が成功するとCanSino Biologicsからワクチンの供給を受ける。

出典: CanSinoBIO

ワクチンの成功確率は

Operation Warp Speedはワクチン出荷時期について楽観的な見通しを示し、経済復興は意外に早いとの解釈もある。しかし、Anthony Fauci博士は、議会公聴会の中で、ワクチンが成功するかどうか予想は難しいとの見解を示している。多くのワクチンを並列で開発し、その中のどれかが成功するとの見通しを示している。

米国政府は8社に賭ける

Operation Warp Speedは8社程度に出資する予定で、この中のどれかが成功するとみている。事実、ワクチンの治験を始めて第Ⅲ相をクリアする確率は16%程度との統計情報もあり、多くのプロジェクトにベットしておく必要がある。専門家の間では、2021年初頭までにワクチンを提供するのは難しいとの意見が多い。先行してワクチンは製造されるが、臨床試験でそれまでにワクチンの有効性を証明するのが難しい。Fauci博士はワクチン開発には12か月から18か月必要との見方を維持しており、このシナリオで進むと、ワクチン接種は来年後半ごろから始まる。つまり、このタイミングで市民生活や経済活動が戻ることになる。

【ワクチンの原理と種類】

ワクチンの仕組み

ワクチンは病原体(Pathogen)から作られた抗原(Antigen)から成り、これを体内に投与し、病原体に対する抗体(Antibody)を生成し、感染症に対する免疫を得る(下のグラフィックス)。具体的には、人体の細胞(Antigen Presenting Cells)がウイルスを取り込み、ヘルパーT細胞(T-Helper Cells)を活性化する。これによりB細胞(B Cell)が抗体を生成する。更に、キラーT細胞(Cytotoxic T Cell)がウイルスに感染した細胞を壊す。つまり、ワクチンはウイルスの感染を防止する機能と感染した細胞を破壊する機能がある。

出典: Nature

ワクチンの種類

ワクチンは体内に抗原を投与し病気にさらすが、これで病気を発症するのではなく、体内の免疫システムを起動し、本当のウイルスが侵入したときに、これをブロックし、また、破壊する。また、病気に感染し回復すると体内に抗体が生成され、これが免疫となり再度感染することを防ぐ。ワクチン開発の技術基盤(Platform)は大きく分けて四種類ある。

Platform 1:ウイルス(Virus Vaccines)

ワクチン開発の伝統的な手法で、病原体であるウイルスを直接投与する。二つの方式があり、弱毒化したウイルスを使う手法(生ワクチン、Weakened Virus)と、化学処理などで感染しなくしたウイルスを投与する手法(不活化ワクチン、Inactivated Vaccine)。中国のバイオ企業Sinovac Biotechや中国研究機関はこの手法を採用している。

Platform 2:ウイルスベクトル(Viral-Vector Vaccines)

遺伝子情報からウイルスを生成し、これをワクチンとして使う手法。人工的に生成したウイルスを投与する方法で、ウイルスが体内で増殖する方式(Replicating Viral Vector)と、体内で増殖しないタイプ(Non-Replicating Viral Vector)方式がある。オックスフォード大学やCanSino BiologicsがReplicating Viral Vector手法を採用している。

Platform 3:核酸(Nucleic-Acid Vaccines)

ウイルスの核酸(Nucleic Acid)を細胞内に注入する方式。核酸はリボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)の二種類があり、それぞれが細胞内に入り、そこでウイルスを構成するたんぱく質を生成する。ModernaはRNAの手法を取る(下の写真)。この方式ではウイルスを生成する必要はなく、ウイルスの特定部分(スパイクたんぱく質)のmRNAを生成するだけで、開発期間が大きく短縮される。一方、この方法で成功したワクチンはなくハイリスクなアプローチとなる。

出典: Moderna  

Platform 4:たんぱく質(Protein-Based Vaccines)

ウイルスのたんぱく質をワクチンとして投与する手法で、数多くの研究機関がこの手法で開発を進めている。二つの手法があり、ウイルスの特定のたんぱく質を使う方式(Protein Subunits)と、ウイルスの外殻を使う方式(Virus-Like Particles)。米国企業NovavaxはProtein Subunitsの手法でワクチンを開発しており、大きな進展があったとしている。

コロナと共棲する社会の「健康パスポート」、Googleはカリフォルニア州で新型コロナ検査クラウドを構築

Google系Verilyはカリフォルニア州で新型コロナウイルスの検査体制を構築した。Verilyの専用サイトで検査を申し込み、ドライブスルーでPCR検査を受けることができる。都市閉鎖が解除され、コロナと共棲する社会となり、感染のリスクが高まっている。これからは、定期的に検査を受けて健康を確認することが求められるが、このサイトが健康パスポートの役割を担う。

出典: Verily

健康管理のダッシュボード

このシステムはVerilyがカリフォルニア州政府や連邦政府と共同で開発したもので、サンフランシスコ地区の住民はここでPCR検査を受けられるようになった。このプロジェクトは「Baseline COVID-19 Program」と呼ばれ、新型コロナウイルスの健康管理台帳として機能する。住民は会員登録するとダッシュボードが開設され、ここにCovid-19関連情報が示される。

PCR検査の申し込み

実際に、ダッシュボードからPCR検査を申し込み、検査を受けた。ダッシュボードに示される質問に回答すると(下の写真、左側)、PCR検査を受ける条件を満たしているかが判定される。条件を満たしていると、近隣の試験サイトを選び、試験日時を予約する。メールで確認書が送られ(下の写真、右側)、当日は、これを持参して検査を受ける。

出典: VentureClef

ドライブスルー検査場

予約した時間に検査場に出向き、ドライブスルーでPCR検査を受ける(下の写真)。会場入り口で本人確認が行われ、検査(Nasal Swab Test)が実施される。鼻にSwabが挿入され、検体が採取される(先頭の写真)。全ての工程はクルマに座ったままで進み、感染のリスクは最小限にとどめられる。会場到着から10分程度で検査が終わり、意外なほど簡単に進んだ。

出典: VentureClef

検査結果とダッシュボード

検査結果は四日後にダッシュボードに表示された(下の写真、左上の部分)。検査結果は陰性であり、次に取るべきアクションが示された。また、結果が陽性であれば医療関係者から連絡があり、Contact Tracingが実施される。その後、ダッシュボードには次のPCR検査についての情報が示され、同じ手順で検査を受けることができる。コロナ社会で安全に生活するには、PCR検査を定期的に受診する必要がある。

出典: VentureClef

抗体検査プログラム

Verilyはサンフランシスコ地区でコロナ感染者の実態を把握するための研究プログラム「COVID-19 Research Project」を開始した。これは抗体検査とPCR検査を併用し、域内の感染状況を把握することを目的とする。更に、抗体があれば再び感染することがないのか、また、抗体はどれだけの期間体内に留まるのかも調べる。

研究プロジェクトへの参加

ダッシュボードにはこのプログラムに関する情報が掲載され(上の写真、右カラム)、被験者を募集している旨が示された。研究の目的や意義に賛同すれば、そのままダッシュボードで契約書に署名し、研究プロジェクトに参加できる。(実際に、この研究プロジェクトに申し込んだが、8週間にわたり抗体とウイルスの状態がモニターされる)。

トランプ大統領の記者会見

PCR検査のインフラはトランプ大統領の記者会見で発表された。大統領は国民全員がウイルス検査を受ける体制を構築すると述べ、ホワイトハウス専任チーム「Coronavirus Task Force」のDeborah Birx博士がその概要をパネルで説明した(下の写真)。パネルで示されたプロセスをVerilyがクラウドに実装し、各地の試験センターを運営するかたちとなっている。

出典: White House

Verilyとは

VerilyはAlphabetの子会社で、先進医療の研究をミッションとする(下の写真)。その中心が「Project Baseline」で、先進医療を健康管理に応用する研究を進め、被験者の身体に関するデータを収集し、それをAIで解析することで健康に関する知見を得る。PCR検査はこのスキーマの中で実施され、住民のウイルス感染情報を大規模に収集し、それを健康管理に役立てる。

出典: The Business Journal

コロナと共棲するために

全米で都市が再開され、日常生活が徐々に戻ってきた。ソーシャルディスタンシングを取りながら仕事や買い物をするが、感染の危険性は常にある。安全に暮らすためには定期的にPCR検査を受診しウイルス状態をチェックする必要がある。Amazonは自社で社員のPCR検査を定期的に実施する施設を準備しているが、一般市民は様々な公的機関でPCR検査を受けている。このためにVerilyのBaseline COVID-19 Programが健康管理で必須のインフラとなる。

新型コロナウイルスに関する偽情報のパンデミック、デマの発生源はどこ?デマを拡散しているのは誰?

新型コロナウイルスに関する偽情報が世界を駆け巡っている。Bill Gatesが新型コロナウイルスを広めている。5Gの電波が新型コロナウイルスに対する免疫を弱める。漂白剤を飲めば病気が治る。新型コロナウイルスは嘘で病院には患者は一人もいない。ソーシャルメディアで新型コロナウイルスに関するデマや陰謀説が拡散しているが、その経路をたどると偽情報を発信する団体とその目的が見えてくる。

出典: NBC News

世界危機における情報伝達の特性

データサイエンス企業Graphikaはソーシャルメディアを解析し、新型コロナウイルスに関する偽情報(Misinformation)の発信源を可視化し、その結果を公開した。これによると、感染が拡大する中、大量の偽情報がソーシャルメディアを通じて拡散しているが、その発信源は際立った特性を示している。これを見ると社会が危機に瀕した際に、デマがどのように広がるかを理解でき、フェイクニュース対策に応用できる。

ツイッターを追跡調査

この調査は2020年1月から3月まで、ツイッターに掲載されたツイートを対象に、新型コロナウイルスに関する情報を発信する団体を追跡した。これによると、ソーシャルメディアで新型コロナウイルスに関する偏った情報が伝わり、これが特定のグループで増幅され、偽情報が拡散するプロセスとなる。新型コロナウイルスについて、同じテーマの記事が繰り返し大量に生成され、ハッシュタグが異常な速さで伝わっている。

米国の右翼団体がデマを拡散

具体的には、ツイッターのハッシュタグを分析し、ツイートがどの集団で発信されているかを可視化した(下の写真)。2020年2月は、米国の右翼団体(US Right Wing、下の写真左側、緑色の部分)や香港の団体(Hong Kong、下の写真左側、黄色の部分)で、メガクラスター(Mega Cluster)ができており、これらの集団が大量のツイートを発信していることを意味する。米国においては右翼団体が偽情報を大量に拡散し、新型コロナウイルスに関するデマを使って活動を活発に進めている。

出典: Graphika

偽情報の発信量が少なくなる

一方、2020年3月は、メガクラスターはなくなり、小さなクラスターに分散していることが分かる(上の写真、右側)。これは、右翼団体の活動が弱まり、偽情報の発信量が少なくなっていることを示す。この理由は、政府機関や報道各社から正しい情報が大量に発信され、市民の啓もうが進み、偽情報が打ち消されているため。また、ソーシャルメディアは偽情報を発信するアカウントを削除したことも影響している。3月には偽情報の封じ込めに一定の成果があったことを示している。

米国の右翼団体とは

米国には右翼団体が数多く存在するが、その中で注視されているのが「QAnon(キュー・アノン)」という団体である。QAnonは極右思想(Far-Right Politics)を持つ団体で、2017年ころに設立され、トランプ政権を支える活動を展開している。政界のエリート集団「Deep State」がトランプ大統領を政権から引き下ろす工作をしているが、QAnonがこれを守るために活動している。Deep Stateは根拠のない陰謀説であるが、トランプ支持者の多くがこれを信じ、活動に参加している。

陰謀説1:Bill Gateが新型コロナウイルスを拡散

QAnonを筆頭とする極右団体はマイクロソフト創業者Bill Gatesが新型コロナウイルスを広げているとの偽情報を発信している。ツイッターで、Gatesが出資する研究機関が新型コロナウイルスに関する特許を持っており、ワクチンが開発されているとのデマが広がっている。極右団体は、新型コロナウイルスを治療するワクチンが開発されると、特許を持つGatesとそれを製造する製薬会社が巨万の富を得ると考えている。

デマが生まれた原因

このデマが生まれた背景には重大な事実誤認がある。Gatesが出資している研究機関は、英国のPirbright Instituteで、ここでは新型コロナウイルスではなく、別の種類のコロナウイルス(Infectious Bronchitis Virus)の研究を進めており、弱毒化ワクチン(Attenuated Vaccine)を開発した。これは鶏が感染するのを防ぐもので、いま蔓延している新型コロナウイルスとは無関係である。世界一の富豪であるGatesはワクチン開発などで慈善活動を展開しているが、極右団体から攻撃を受け続けている。

陰謀説2:Anthony Fauci博士が製薬会社と結託

また、極右団体は、米国アレルギー感染症研究所のAnthony Fauci所長が新型コロナウイルスの感染拡大に責任があるとのデマを流している。極右団体は、Fauci博士は新型コロナウイルスの危険性を説いているが、これは大手製薬会社とグルになり、医薬品の売り上げを伸ばすためであるとの陰謀説を流し、博士をホワイトハウスの新型コロナウイルス対策チームから外す運動(#FireFauci)を展開している。更に、与党共和党上院議員候補者Shiva Ayyaduraiはインタビューでこの旨の発言をし(下の写真、右側の人物)、このビデオは4月10日にYouTubeに掲載されたが、一か月で730万回再生されている。極右団体だけでなく共和党支持者の中でもこの陰謀説が広まっている。

出典: YouTube

陰謀説3:Gが新型コロナウイルス感染の原因

欧米で5Gネットワークが新型コロナウイルス感染の原因とのデマが拡散している。これは陰謀論を唱えるDavid Ickeが発信源とされ、5Gネットワークは人間に有害で、5Gのシグナルが身体細胞の抵抗力を低下させ、これにより新型コロナウイルスが拡大したと述べている。更に、中国・武漢は最初に5Gネットワークを運用した都市で、ここから新型コロナウイルスの感染が始まったと主張。この陰謀論は数多くの事実誤があるが、Ickeはこれをソーシャルメディアで拡散し、閲覧回数は3000万回を超えている。

デマを広げる理由

このデマが広がる背景には消費者のハイテクに対する潜在的な恐怖感がある。スマホの電波がガンを発症する原因であるとの議論があり、医学的には証明されていないが消費者は一抹の不安を覚える。また、このデマはレントゲン検査のX線の危険性を5Gのシグナルに対比し、危機感を煽っている。陰謀論家がセンセーショナルな発言を繰り返す理由は様々であるが、注目度が上がり、YouTubeでビデオの閲覧回数が増え、広告収入がぐんと増えることも事実だ。

出典: World Health Organization

陰謀説4:とんでもない治療法

ソーシャルメディアには治療法に関する都市伝説が数多く掲載されている。医療用の銀を含んだ溶液(Colloidal Silver)が新型コロナウイルスを治すとのうわさが広まり、テレビで製品のコマーシャルが流れている。産業用の漂白剤(Miracle Mineral Solution)が新型コロナウイルスを治すとのうわさもあり、実際に服用して病気になったケースが報告されている。他に、ビタミンCを大量に摂取すると新型コロナウイルスに効くとの偽情報も流れている。実際に、中国で治験が行われていることは確かだが、その効果は確認されていない。

デマのパンデミック

新型コロナウイルスに関する偽情報が世界で急速に拡散し、デマのパンデミックになっている。WHOはこの現象を「Infodemic」と呼んで注意を呼び掛けている。同時に、WHOはソーシャルメディア企業と連携し、デマをフィルタリングし、偽情報を駆逐するファクトの発信に力を入れている(上のグラフィックス、辛い物を食べても感染予防にならない)。新型コロナウイルスの感染者数は増え続けているが、偽情報の件数は減少に転じた。

サンフランシスコで都市再開に向け新型コロナウイルス感染者の追跡調査が始まる、Facebook慈善団体がこれを主導

サンフランシスコ地区で都市閉鎖解除に向けた準備が進んでいる。都市再開では住民の感染状態を継続して把握することが必須要件で、これに向け新型コロナウイルス感染者の追跡調査が始まった。この調査はChan Zuckerberg Initiative(CZI)が主導し、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などの大学病院が実施する。CZIはFacebook創業者Marc Zuckerbergと妻のPriscilla Chanが設立した慈善団体で、健康や教育に関する研究を進めている。

出典: CNN

追跡検査の概要

この調査はサンフランシスコ地区で新型コロナウイルスの感染状態を正確に掴むために実施される。試験は9か月間継続して実施され、感染状態をスポットで把握するのではなく、被験者を定期的に検査することで感染のトレンドを把握することが目的となる。調査は住民向けの検査と、医療従事者向けの検査の二つのパートから成る。調査結果は都市を再開すると感染がどの程度増えるかを評価する指標となる。

多くの疑問点に答える

新型コロナウイルスでは感染者の多くが無症状(Asymptomatic)といわれ、この調査で実際の感染状況を把握する。また、感染者のウイルスのRNAを解析することで、感染経路を特定する試みがなされる。更に、新型コロナウイルスの抗体検査も同時に実施され、抗体と免疫の関係を検証する。抗体ができれば再び病気に感染することはないかの議論に答えがでる。

地域住民を対象とした調査

新型コロナウイルスの感染状態について、幅広い層の住民を対象に検査を実施する。検査結果は都市再開の基礎データとして使われ、都市閉鎖を安全に解除するためのプロセスを策定するための基本情報となる。また、都市を再開して新しい生活に移行したあとも検査は続けられ、住民の間で感染が広まっていないかを確認し、再び感染が広がると経路を解明し対策が取られる。

毎月PCR検査と抗体検査を実施

この試験はサンフランシスコ地区の住民4000人を対象に、2020年12月まで、毎月、PCR検査(PCR Diagnostic Test)と抗体検査(Serological Test)が実施される。PCR検査で感染の広がりを把握し、一方、抗体検査で被験者の過去の感染状態を把握し、感染者数を正確に計測する。毎月これらの検査が実施され、都市再開の前後で感染者数がどのように変わるのかトレンドを把握する。

出典: Chan Zuckerberg Biohub

ウイルスの遺伝子解析

更に、PCR検査で検出されたウイルスはChan Zuckerberg Biohubで遺伝子解析を実施する。遺伝子配列を把握することで、ウイルスのRNAの変異から種別が分かり、これをたどり地域における感染経路を特定する。また、ウイルスはどこからサンフランシスコ地区に侵入したのかも解明する。感染経路の特定にはContact Tracingの手法が使われるが、遺伝子検査でこの作業を補完することを目指している。Chan Zuckerberg Biohubとはカリフォルニア大学サンフランシスコ校やスタンフォード大学などが参加する生物学研究所でMarc Zuckerbergの寄付金で設立された(上の写真)。

医療従事者向けの調査

もう一つの調査は医療従事者を対象として実施され、新型コロナウイルスが病院に及ぼすインパクトを査定する。具体的には、被験者の抗体検査とPCR検査を継続して実施する。新型コロナウイルスに感染すると抗体ができるが、この抗体がいつまで存続するかを調べる。また、抗体があれば再び新型コロナウイルスに感染することはないのかを解明する。

抗体は社会復帰のパスポート?

この検査は医療従事者3500人を対象に、12週間にわたり、毎週PCR検査と抗体検査が実施される。また、抗体検査で陽性であった被験者は、2020年12月まで、新型コロナウイルスに再度感染しているかどうかが検査される。WHOは抗体ができても免疫ができるかは不明としており、この疑問に答えを出すことになる。都市を再開して社会に復帰するときに、抗体がパスポートになるのかが分かる。

出典: VentureClef

疫学の観点からの調査

米国で、新型コロナウイルスに関する虚偽の記事が数多く発信され、社会が不安定になっている。特に、都市再開に向けては医学的な議論より政治的な主張が優勢で、正しい判断の妨げになっている。このため、研究者や著名人などがテレビ番組に登場し、国民に正しい情報を発信し続けている(先頭の写真)。番組の中でPriscilla Chanは、都市閉鎖を解除するには新型コロナウイルスの発生や流行状態など疫学(Epidemiology)の観点から検査を行うことが最低条件と述べている。

都市再開のための基礎データ

今は、住民の何人がウイルスに感染しているのかなどの基礎データが揃っていない。また、無症状の感染者の実態が分からないため、誰がスプレッダーであるのかを特定できない。更に、抗体が社会復帰のためのパスポートになるのかも定かでない。これらの基礎データをそろえない限り、都市再開を安全に進めることはできない。(上の写真:Farmers’ Marketでソーシャルディスタンシングを保ちながらの買い物)

Chan Zuckerberg Initiativeとは

このプロジェクトを主導するChan Zuckerberg InitiativeはPriscilla Chan(下の写真)とMark Zuckerbergにより2015年に設立された慈善団体で、医療や教育や科学の分野で、人間の可能性を伸ばし平等な社会を実現することをミッションとする。今世紀末までに病気をなくすことを目標に研究を進めている。CZIは従来の慈善団体と異なり、テクノロジー使って社会の問題を解決するアプローチを取る。

出典: Chan Zuckerberg Initiative

IT企業創業者の役割

米国ではこの危機を救うためにIT企業の創業者が重要な役割を果たしている。Bill Gatesは同氏の慈善団体Bill & Melinda Gates Foundationを通じて3億ドルを寄付し、新型コロナウイルスのワクチン開発を支援している。Twitter創業者Jack Dorseyは10億ドルを新型コロナウイルス対策に寄付することを表明している。多くのIT企業創業者は格差社会を是正する慈善活動を進めているが、新型コロナウイルスでこの流れが加速している。