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Apple iPhone Xは顔認証を導入し写真をドラマチックに仕上げる、AIチップで画像認識を強化

Appleは新本社で次世代ハイエンドモデル「iPhone X」を発表した。iPhone Xは顔認証方式「Face ID」を導入し、カメラに顔を向けるだけで認証ができる。顔認証は指紋認証より安全性が高く、Appleが導入したことで一気に普及が進む可能性を秘めている。

出典: Apple  

次世代モデル三機種を発表

AppleはiPhone次世代モデル三機種を発表した。最上位機種はiPhone X (上の写真、左端) で、デバイスの前面が全てディスプレイ (Super Retina HD Display) となりホームボタンが無くなった。iPhone 7の後継モデルとしてiPhone 8 (上の写真、右端) とiPhone 8 Plus (上の写真、中央) が発表された。三機種とも新型プロセッサ「A11 Bionic」を搭載しAIとグラフィック機能を強化している。

Face IDとは

iPhone Xは顔認証機能「Face ID」を備えており、デバイスのロックを解除するには顔をカメラにかざすだけ (下の写真)。顔がパスワードになりデバイスをオープンできる。また、Apple Payで支払いをする際も顔をカメラに向けるだけで認証が完了する。指をホームボタンに押し付ける操作は不要で、安全なだけでなく使いやすくなった。

出典: Apple  

顔認証のメカニズム

Face IDを使うためには事前に顔を登録する必要がある。システムの指示に従って顔をカメラに向け、ディスプレイに示された円に沿って顔を回す (下の写真)。iPhone Xは「TrueDepth Camera」と呼ばれる特殊なカメラを搭載している (先頭の写真左側、ディスプレイ最上部の黒いバーの部分)。顔を登録する時はTrueDepth Cameraのプロジェクター (Dot Projector) から3万個のドットが顔に照射され、これを赤外線カメラ (Infrared Camera) で読み込み顔の3Dマップを作成する。

出典: Apple  

この情報がプロセッサのストレージ (Secure Enclave) に暗号化して格納される。Face IDを使うときは光源 (Flood Illuminator) から赤外線が照射されこれを赤外線カメラで読み込み、登録した顔のマップと比較して認証を実行する。

利用者の風貌が変わると

顔認証では利用者の状態が変わるという課題を抱えている。髪を伸ばしたり眼鏡をかけると登録した顔のイメージと異なり本人確認が難しくなる。このためAppleは機械学習 (Machine Learning) の手法を使って両者のイメージを比較する方式を採用した。アルゴリズムは登録した顔が髪を伸ばし眼鏡をかけるとどう変化するかを機械学習の手法で学習する。様々な条件を事前に学習しておき利用者の外観が変わっても高精度に判定できる。また、顔を3Dで比較するので写真を使って不正に認証を受けることはできない。

カメラの特殊効果

TrueDepth Cameraは自撮り (Selfie) する際に特殊効果を出すために使われる。これは「Portrait Lighting」という機能でスタジオで撮影する時のように、あたかも光を調整したかのように特殊効果を出す。Natural Lightというオプションを選択すると自然光のもとで撮影したように写る (下の写真、左側)。Studio Lightを選択するとスタジオの明るい環境で撮影した効果が出る。Contour Lightは顔の凹凸を際立たせ (下の写真、中央) ドラマチックな仕上がりとなる。Stage Lightは背景を黒色にして顔を浮き上がらせる (下の写真、右側)。

出典: Apple  

カメラの性能はAIで決まる

TrueDepth Cameraはステレオカメラでオブジェクトを3Dで把握する。カメラが人物と背景を区別し、更に、AIが人物の顔を把握しここに光を当てて特殊効果を生み出す。メインカメラにもPortrait Lighting機能が搭載されており上述の機能を使うことができる。カメラは光学センサーが差別化の要因になっていたが、今ではキャプチャしたイメージをAIで如何に綺麗に処理できるかが問われている。iPhoneカメラはSoftware-Defined Cameraと呼ばれソフトウェアが機能を決定する。

絵文字を動画にしてメッセージを送る

TrueDepth Cameraを使うと絵文字の動画「Animoji」を生成して送信できる。カメラは顔の50のポイントの動きを把握し、これを絵文字キャラクターにマッピングする。笑顔を作るとキャラクターも笑顔になる (下の写真)。ビデオメッセージを作る要領で録画すると、キャラクターがその表情を作り出し音声と共にiMessageで相手に送信される。猫の他にブタやニワトリなど12のキャラクターが揃っている。

出典: Apple  

AIプロセッサ

これら機械学習や画像処理を支えているのがAIチップA11 Bionicだ。名前が示しているようにAI処理に特化したエンジン「Neural Engine」を搭載している。Neural Engineは機械学習処理専用のエンジンで人や物や場所などを高速で把握する機能を持つ。このエンジンがFace IDやAnimojiの処理を支えている。またAR (拡張現実) における画像処理もこのエンジンにより高速化されている。

価格と出荷時期 (米国)

ハイエンドのiPhone Xの価格は999ドルからで11月3日から出荷が始まる。また、iPhone 8 Plusの価格は799ドルからでiPhone 8は699ドルからとなっている。両モデルとも9月22日から出荷が始まる。

iPhone発売から10周年

発表イベントは新設されたApple本社 (下の写真、左奥) に隣接するSteve Jobs Theater (下の写真、中央) で開催された。イベントの模様はライブでストリーミングされた。これはSteve Jobsを記念して建設されたシアターで円形のアーキテクチャになっている。一階部分は円盤状のロビーで、シアターは地階部分に設けられている。今年はiPhone発売から10周年の区切りの年になり、これを象徴してiPhone X (10) が登場した。

出典: Apple  

Google PixelはApple iPhoneを超えた!スマホがAIで構成される

Googleは独自に開発したスマホ「Pixel」を投入した。ハードウェア機能が格段に向上しただけでなく、AIが利用者とのインターフェイスとなる。PixelはGoogleが運営するMVNO (仮想モバイルネットワーク) で利用できる。Googleモバイル事業はAndroidとハードウェアとネットワークを垂直に統合したモデルに進化した。Pixelを使ってみると先進的な機能に感銘を受け、これが近未来のスマホの姿を示していると実感した。

出典: Google

独自ブランドのスマートフォン

Googleは2016年10月、Googleブランドのスマートフォン「Pixel」 (上の写真) の販売を開始した。手に取ってみるとPixelはiPhoneと見間違うほど似ている。よく見るとPixelの表面にはホームボタンはなく、背後に円形の指紋センサー (Pixel Imprint) が搭載されている。ここに指をあててデバイスをアンロックする。PixelはGoogleがゼロから開発したスマホで、台湾HTCが製造する。AppleのようにGoogleがスマホ全体を開発して製品を販売する。

PixelはAIスマートフォン

Pixelは最新基本ソフト「Android 7.1」を搭載し、そこには会話型AI「Assistant」が組み込まれている。AssistantはApple Siriに相当する機能で、言葉で指示するとコンシェルジュのように応えてくれる。AIがスマホ機能の中心となり、Pixelはソフトウェアと人工知能の交点として位置づけられる。

ハードウェアの完成度が格段に向上

Pixelはハードウェアとしての完成度が格段に向上した。iPhoneのような形状となり、薄くて軽くて快適に使える。Nexusシリーズと比較すると数世代分を一気に成長した感がある。ディスプレはAMOLEDでカメラは12.3MPの解像度とf/2.0の口径を持つ。Pixelカメラは「Software-Defined Camera」と呼ばれ、ソフトウェアが驚くほどきれいな画像を創りだす。Pixelカメラの性能はiPhone 7を超えたと評価されている。

Assistantが会話を通して生活をサポート

PixelはAIスマホとして位置づけられ、Assistantはコンシェルジュのように会話を通して生活をサポートする。Pixelに対し「Ok Google」と語り掛けるとAssistantが立ち上がり、これに続く言葉を認識する。「When does the San Francisco Moma close」と質問すると、「Moma is open now, it closes at 5 pm」と答える。美術館は5時に閉館するのでまだ開いていることが分かる (下の写真左側)。Assistantは声を聞き分ける生体認証機能があり、筆者のPixelに対して他人が「Ok Google」と呼びかけれも反応しない。

出典: VentureClef

Assistantで撮影した写真を探す

Assistantは写真検索で威力を発揮する。「Show me my photos in the rain」と指示すれば、雨の日に撮影した写真を表示する (上の写真中央上段)。「Show me my pictures taken at Google campus」と指示すると、Googoleキャンパスで撮影した写真を表示する (上の写真中央下段)。音声で操作できるのでスマホでサクサク検索できる。Pixelで撮影した写真はオリジナルサイズで写真アルバム「Google Photos」に格納される。ストレージ容量の制限は無く何枚でも格納できる。

Assistantでレストランを予約する

Assistantは情報検索だけでなく指示されたタスクを実行する。レストランを予約する時はAssistantと対話しながら場所や時間などを決めていく。最後に確認画面が表示され、Yesと答えるとレストランアプリ「OpenTable」で予約が完了する。電話で話すように驚くほど簡単にレストランの予約ができる。また、Assistantは一日のスケジュールを管理する。「What’s next on my calendar」と質問するとAssistantは次の予定を回答する。ここでは予約したレストランの概要が示された (上の写真右側)。

Assistantでアプリを操作する

AssistantはPixelアプリを操作できる。つまり、搭載しているアプリを音声で利用できる。Assistantに「Katy Perry on Instagram」と指示すると、インスタグラムのPerryのページを開く (下の写真左側)。また、「Open Snapchat」と指示すると、スナップチャットが起動してメッセージを読むことができる (下の写真中央)。Assistantに「Play music by Beyoncé」と指示すると、音楽アプリ「Google Music」が起動しビヨンセの音楽を再生する (下の写真右側)。Assistantの音声認識精度は高く、言葉でスマホを操作できるのはとても便利だ。

出典: VentureClef

カメラの性能が業界トップ

Pixelの最大の特長はカメラの性能が業界トップであることだ。カメラの性能は「DxOMark」のベンチマーク指標が使われる。これによるとPixelカメラは89ポイントをマークし、Apple iPhone 7の86ポイントを上回った。今までのトップはSamsung Galaxy S7 Edgeなどで88ポイントをマークしているがPixelがこれを追い越した。DxOMarkはカメラ、レンズ、スマホカメラの性能を評価するサイトでDxO Labs.が運営している。同社は光学関連のソフトウェアやデバイスを開発するフランス企業。

イメージング処理ソフトウェアの威力

Pixelカメラの性能がトップとなった理由はイメージング処理ソフトウェアのアルゴリズムにある。カメラはGoogle独自のハイダイナミックレンジイメージング機能「HDR+」を搭載する。この機能によりダイナミックレンジが広がり、明るい箇所から暗い箇所までバランスよく撮影できる。下の写真はその事例で、厳しい逆光のもとGoogle本社ビルを撮影したもの。肉眼では真っ黒に見えたガラス張りのビルが内部まで写っている。同時に、背後の青空とまぶしい雲がちゃんと写っている。HDR+の威力を感じる一枚となった。

出典: VentureClef

HDRとは

HDR (High Dynamic Range) イメージングとは、異なる露出の複数枚の写真を組み合わせて一枚の写真を生成する技術を指す。一般にHDRは被写体に対して三枚の写真を使う。Underexposure (露出アンダー)、Overexposure (露出オーバー)、及びBalanced (適正露出) の三枚の写真を撮影し、ここから最適な部分を抽出し、これをつなぎ合わせて一枚の写真を生成する。

HDR+とは

これに対してPixelのHDR+は同じ露出の写真を多数枚組み合わせて一枚の写真を生成する。Pixelはカメラアプリを開いた時から撮影を始め、シャッターが押されたポイントを撮りたいシーンと理解する。露出を上げないので暗い部分はノイズが乗ることになる。しかし、暗い部分の写真を数多く重ね合わせることで数学的にノイズを減らす。この手法により、重ね合わせがシンプルになり、ゴーストが発生しないという特徴がある。下の写真はまぶしい雲を背景に星条旗が風にたなびいているが、ゴーストは発生していなく細部まで写っている。

出典: VentureClef

Software-Defined Camera

Pixelカメラは特殊なハードウェア機構は備えていない。Googleはコモディティカメラを使いソフトウェアでイメージング技術を向上させるアプローチを取る。これは「Software-Defined Camera」と呼ばれソフトウェアがカメラの性能や特性を決定する。一眼レフカメラは高価なハードウェアで1枚だけ撮影する。これに対しGoogleは安価なカメラで大量の写真を撮影してソフトウェアで最適化する。イメージング技術はAIを含むアルゴリズムが勝敗を決める。

音声で写真撮影

Pixelカメラは音声で写真を撮影できる。これはAssistantの一部で、フロントカメラで自撮りする時は、「Ok Google, take a selfie」と語るとシャッターが下りる。腕を伸ばして難しい姿勢でシャッターを押す必要はない。メインカメラで写真撮影をするときも、「Ok Google, take a picture」と言えばシャッターが下りる。タイマーを使う代わりに音声で集合写真を撮影できる。メインカメラからフロントカメラに切り替えるときは、Pixelを縦に持ち二回ひねる。

指紋センサー

Pixelをアンロックする時には指紋認証を使う。上述の通りPixelにはホームボタンはなく、背後の指紋センサーに指をかざす。片手で操作でき、かつ、スリープ状態から直接アンロックできるのでとても便利。Pixelは指紋認証の認識率が非常に高く、殆どのケースで1~2回程度でアンロックできる。指紋で認証できないときはPINなど従来方式の認証を行う。

Googleが独自のネットワークを運営

Pixelは米国最大のキャリアVerizonが販売している。また、Google独自のネットワーク「Fi Network」を使うこともできる。Fi NetworkはMVNO (仮想モバイルネットワーク) 方式のネットワークで、背後でSprintとT-Mobile USの4G LTEが使われている。Fi Networkを利用する時は専用のSIM Cardを挿入する。PixelはGoogleオリジナルのスマホをGoogleネットワークで運用する構造となっている。

Fi Networkの特徴

Fi Networkは単に通信網を提供するだけでなく、両者のうち電波強度の強いネットワークに自動で接続する。また、LTEやWiFiなど異なるネットワーク間で最適な通信網を選択し、サービスを途切れなく利用できる。屋内では通話やテキストメッセージはWiFi経由で交信する。屋外に出るとGoogleの移動体ネットワークFi Networkに接続される。

ネットワーク間での自動切換え

このためネットワーク間で途切れなくサービスを利用できる。自宅でWiFi経由で電話している時、屋外に出るとネットワークがLTEに切り替わる (下の写真左側)。通話は途切れることなくシームレスにハンドオーバーされる。通話だけでなくデータ通信でも自動でネットワークが切り替わる。自宅のWiFiでGoogleの音楽ストリーミングを聞きながらクルマで屋外に出るとFi Networkに切り替わる (下の写真中央)。

出典: VentureClef

クルマの中でAssistantが大活躍

クルマの中では言葉でAssistantに指示して好みの音楽を聴ける。電話やメッセージもAssistantに言葉で指示して発信する。ナビゲーションもAssistantに言葉で語り掛けて使う。少し大きめの声で語り掛ける必要はあるが、Assistantは運転中に絶大な威力を発揮する。今ではPixelはドライブに必須のインフォテイメントデバイスとなった。

シンプルで良心的な料金体系

Fi Networkの料金体系はシンプルで基本料金とデータ料金の組み合わせで構成される。基本料金は月額20ドルで、ここに通話、テキストなどが含まれる。データ通信は月額10ドル/GBで、例えば2GBで契約すると月額20ドルとなる。制限量まで使っていない場合は、翌月分の料金から差し引かれる、良心的な料金体系となっている。またデータ通信料はグラフで示され (上の写真右側) 使用量を明確に把握できる。(ロックスクリーン左上にFi Networkと表示される、下の写真左側。アイコンは小さめの円形になりホームスクリーンのデザインがすっきりした、下の写真右側。)

出典: VentureClef

Samsungとの関係は微妙

Googleのモバイル事業はAndroidを開発しこれをパートナー企業に提供することで成り立っている。SamsungなどがAndroidを利用してスマホを販売している。このためスマホ事業はSamsungなどに依存しているだけでなく、Googleの収益構造が問われてきた。事業が拡大するのはSamsungでGoogleは大きな収益を上げることが難しい状態が続いている。GoogleがPixelでスマホ事業に乗り出すことで、Appleのような垂直統合型となり、収益構造も改善すると期待される。一方、Android陣営内でGalaxy顧客がPixelに乗り換えることも予想され、Samsungなどパートナー企業との関係が難しくなる。

ソフトウェア+デバイス+ネットワーク

Googleは基本ソフト (Android) とデバイス (Pixel) だけでなく、ネットワーク (Fi Network) を含めた垂直統合システムでモバイル事業を始めた。Appleのようにスマホを販売するだけでなく、それを運用するネットワークも提供する。キャリアが提供するネットワーク単体では技術進化が停滞している。Googleはデバイスとそれをつなぐネットワークを統合することでイノベーションを起こせるとしている。AIスマホを独自のネットワークで結び、Googleはスマホ事業の近未来の姿を示している。

GoogleはAIメッセージング「Allo」をリリース、仮想アシスタントとの対話は近未来のライフスタイルを感じる

Googleは2016年9月、AIを搭載したメッセージングアプリ「Allo」をリリースした。AlloはLineのようにテキストやマルチメディアを使って会話するメッセンジャーとして位置づけられる。これに加え、Alloは仮想アシスタント「Google Assistant」を搭載しているのが最大の特徴 (下の写真左側)。仮想アシスタントとは会話型AIで、コンシェルジュのように対話しながら応対してくれる。使ってみると、まだまだ開発途上であるが、会話型AIが巨大ビジネスに成長する兆しを感じる。

出典: VentureClef

Googleはメッセージング市場で苦戦

メッセージング市場ではFacebook MessengerとSnapchatが先行し、AppleがMessageでこれを追っている。日本ではLineがトップを走り世界市場を目指している。Googleはメッセージングプラットフォーム「Hangouts」を運用しているが苦戦を強いられている。Googleは新たに、Alloを投入しAIを基軸に製品ラインアップを大幅に見直している。

メッセージングの表現力が豊かになる

この市場で勝つためには若者層を引き付ける必要がある。Alloは表現力が豊かで、メッセージをグラフィカルに示する。これは「Whisper or Shout」と呼ばれ、メッセージ欄のスライドを上下してテキストの大きさを変更できる。上にあげると文字やシンボルが大きくなる (下の写真右側上段)。またAlloオリジナルのStickerが数多く揃っており、メッセージで表現できる幅が広がった。 (上の写真右側下段)。

返信文を自動で生成

Alloは受信メッセージを読み、これを理解して、自動で返信文を生成する。これは「Smart Reply」と呼ばれる。「Do you like to drive」とのメッセージを受信すると、それに対してAlloはリアルタイムで「Sure」、「Yes」、「No」の返信文を生成する (下の写真左側)。自分でタイプする必要はなく、ボタンにタッチするだけで返信でき大変便利。Smart Replyは既にメール「Inbox」で導入され人気の機能となっている。

出典: VentureClef

写真に対しても返信文を生成

AlloのSmart Replyはテキストだけでなく写真に対しても使える。空港で撮影した飛行機の写真を受信すると、Alloは「Nice plane」、「Have a nice flight」、「Bon voyage!」と返信文を生成する (上の写真右側)。Alloは高度なイメージ認識能力を持っている。ひまわりの写真を受信すると、Alloは「Beautiful」、「Nice sunflower」、「Pretty」と返信文を生成する (下の写真左側)。Alloは花だけでなく、この花がひまわりであることを把握する。花の種別を判定するには高度な技術を要し、この背後にはニューラルネットワークが使われている。

出典: VentureClef

利用者のスタイルを反映した返信文

しかしAlloは食べ物の写真についてはうまく判定できない。サラダの写真に対し、「Yummy!」、「Wish I could try」と返信文を生成する (上の写真右側)。Alloはこれは食べ物であると理解するが料理の種類までは特定できない。Googleはイメージ認識技術で世界のトップを走っており、料理の種類を認識することは容易い。近々にこの機能がAlloに実装されると思われる。Alloは機械学習を重ねることで利用者の表現方法を学んでいく。利用者のスタイルを反映した返信文を作成できるようになる。

Assistantが手助けする

Alloの最大の特徴は仮想アシスタントGoogle Assistantをメッセージングに導入したこと。Assistantがコンシェルジュのように、会話しながら生活の手助けをする。Assistantは利用者同士のチャットを聞いており、手助けが必要と判断すると会話に割り込みアドバイスする。背後で会話を聞かれているのは奇異な気がするが、使ってみると便利な機能であることに気付く。

Assistantがレストランを教えてくれる

今日はイタリア料理を食べようと話していると、Assistantが気を利かせて近所のイタリア料理店を紹介する。友人に「Let’s go for Italian food」とメッセージを送ると、Assistantはコンテキスト理解してして「Italian food places nearby」と語り、近所のイタリア料理店を紹介する (下の写真左側)。ここではGoogle Knowledge Graph機能が使われている。

レストランのカードにタッチするとその詳細情報が表示され、店舗内の写真などをみることができる。気に入ればこのレストランをそのまま予約できる。ただ、レストランを予約するには専用アプリ「OpenTable」を起動し、ここから予約する仕組みとなる (下の写真右側)。まだ、Alloから直接予約することはできなくて、別アプリで実行することになる。Assistantと会話しながらタスクを実行できれば生活が格段に便利になる。

出典: VentureClef

Assistantとの直接対話

友人との会話を離れ、直接Assistantと対話することができる。Assistantに指示すれば有能な秘書のようにこれに答えてくれる。「Cute dog pictures」と指示すると、Assistantは「Check out these pictures」と述べ、可愛い犬の写真を探してくる。更に「Cute puppy images」と指示すると、子犬の写真を表示する。ここではGoogle Image Searchの検索結果が使われている。

Assistantがこなせるタスク

Assistantは対応できるタスクをカードとして示する。それらは「Subscription (ニュース購読)」、「Action (タイマーセットなど)」、「Fun (ゲームなど)」、「Translation (翻訳)」、「Weather (天気予報)」、「Travel (旅行案内)」、「Sports (スポーツニュース)」、「Answer (Q&A)」、「My Assistant (Assistantの自己紹介)」となる。

旅行案内で格安フライトを探す

Travelカードにタッチすると旅行関連の情報が表示される。フライトを探すときには「Flights to New York」と指示すると、現在地 (San Francisco) からNew Yorkまでの航空運賃が表示される。条件で絞り込んで希望のフライトを探す。また、到着地のホテルの検索もできる。ここでもフライトやホテルの予約はリンク先のウェブサイトで行う。まだ、Assistantから直接予約することはできない。

一日のスケジュールを管理

Assistantは利用者のスケジュールを把握しており、秘書のように会議予定などを管理をする。例えば、「Show my flights」と指示すると、予約しているフライト情報を表示する (下の写真左側)。また、「What’s my next meeting」と言えば、今日の予定を表示する (下の写真右側)。Assistantは忙しい生活の中でなくてはならない存在になりつつある。AssistantはGoogle Calendarとリンクしスケジュールを把握している。

出典: VentureClef

AlloとGoogle音声検索

Alloはメッセージング機能では目新しさを感じないが、Assistantの会話型AIは便利であると感じる。Assistantがインターフェイスとなり対話を通してGoogleを利用する。ただ、Assistant機能の多くはGoogle音声検索からも使える。Googleに「What’s my schedule today?」語り掛けると、今日のスケジュールを教えてくれる。音声検索とAlloでできることに大きな違いはないが、Alloは会話を通して利用者とインタラクションする点が大きく異なる。検索結果が表示されそこで会話が止まるのではなく、連続して対話が進む点が大きな特徴となる。

メッセージを暗号化して送る

Alloはセキュリティにも配慮している。匿名モード「Incognito Mode」を選択すると、Alloのメッセージは暗号化される (下の写真左側)。また、メッセージは指定時間だけ表示され、制限時間を過ぎると消去される。例えば、相手に送るメッセージは10秒間だけ表示されるよう設定することもできる (下の写真右側)。この方式はSnapchatなどで人気を呼び、ティーンエイジャーから圧倒的な支持を得ている。きわどい内容のメッセージでも記録に残らないので、安心して伝えることができるためである。

通常モードのメッセージの安全性

つまり、Alloの通常モードのメッセージは暗号化されているわけではない。ハッシュ処理 (HTTPSのプロトコール) で最低限のセキュリティは確保されるが、Alloはハッカーによる盗聴に対して弱点がある。ただ、Alloだけでなく、Facebook Messengerも同様に、暗号化オプション (Secret Conversation) を指定しない限りメッセージは暗号化されない。前述の通り、Alloは利用者のメッセージを背後で聞いており、メッセージが暗号化されるとこの機能が使えない。

出典: VentureClef

データ保存とAI開発

Googleは当初、Alloで交わされるメッセージを一時的に利用するが、長期的にサーバに保管することはないと述べていた。しかし、Googleはこの指針を変え、Alloで交わされたメッセージを長期間保管する。目的はアルゴリズムの開発で、保管されたデータを使ってAIを教育する。AIがインテリジェントになるためにはデータがカギを握る。メッセージングデータがAI開発の宝の山で、Googleは長期間保管に踏み切った。

プライバシー保護とクールな機能

これに対して市場からは懸念の声も聞かれる。米国国防総省諜報機関の元職員Edward SnowdenはAlloを使わないように呼び掛けている。Googleが保管するメッセージングデータが犯罪捜査などで利用されることを懸念しているためだ。個人のプライバシー保護に配慮するのは当然であるが、厳しすぎるとAIが提供する便利な機能の恩恵を受けられない。プライバシー保護とクールな機能のバランスが難しい。

インターフェイスに温かみを感じる Alloは「Preview Edition」と表示されているように、使ってみると開発途上のベータ版との印象を受ける。まだまだ生活するうえでの必須ツールとは言い難い。一方、Alloは人間とマシンの関係で大きな将来性を感じる。Assistantと対話できることでインターフェイスに温かみを感じる。音声検索で機械的に結果を表示されるのとは異なり、言葉を交わしながら目的を達成できるのはフューチャリスティックでもある。対話型AIが巨大ビジネスに成長する兆しを感じる。

Appleの人工知能戦略、SiriはiOS 10でボイスクラウドに進化

Appleは2016年9月13日、iPhone向け基本ソフトiOS 10をリリースした。早速使ってみたが、Siriが大きく成長する兆しを感じた。Siriの機能が一般に公開され、企業は音声で操作するアプリを作ることができる。SiriはもはやOS機能ではなく、ボイスクラウドとして位置づけられる。AIで足踏みをしているAppleが巻き返しに転じた。

出典: VentureClef

メッセージングが劇的に機能アップ

iOS 10を使って驚いたのはメッセージング「Messages」の機能が飛躍的に向上したこと。絵文字やマルチメディアが使えるだけではなく、画面いっぱいのアニメーションが目を引く。お祝いメッセージの背後で紙吹雪が舞い散る (上の写真左側)。沢山の風船が舞い上がり、夜空に大輪の花火が上がるシーンもある。文字も大文字でジャンプしながら表示され、インパクトのあるメッセージを送ることができる。Apple Watchで登場した心臓が鼓動するアニメーションやキスマーク (上の写真右側) が使え、メッセージが格段にカラフルになった。Messengerはお洒落でハイセンスでAppleらしい製品に仕上がっている。ヒットすること間違いない。

メッセージングに若者が集う

ここにはFacebook MessengerやSnapchatに対抗するAppleの姿勢がうかがえる。ソーシャルメディアは伸び悩み、若者はメッセージングに集っている。ここが人気スポットで、生活の基盤であり、買い物をする場所でもある。ビジネスとして大きな可能性を秘め、Appleが全力でキャッチアップしている姿勢が見て取れる。

オープンなプラットフォーム

iOS 10の最も重要なポイントはプラットフォームが広範囲にわたり公開されたこと。音声アシスタントSiriはApple製アプリだけで使われてきたが、iOS 10ではサードパーティが開発したアプリから利用できる。企業はSiriの機能を組み込んだアプリを開発できるようになり、ユーザインターフェイスが格段に向上した。音声操作のアプリが勢いを増す中で、Siriを組み込んだボイスアプリのエコシステムが広がっている。

写真を言葉で検索する

Apple製アプリについてもSiriがカバーする範囲が広がった。特に便利なのは写真アプリ「Photos」を言葉で操作できる機能。「Show my photos from airports」と言えば空港で撮影した写真を表示する (下の写真左側)。旅行で撮影した写真を探すときは「Find my pictures from my trip to San Francisco」と言うと、サンフランシスコで撮影した写真を表示する (下の写真右側)。Deep Learningでイメージ検索技術が格段に向上し、質問に対しズバリ結果を表示する。使ってみてとても便利と感じる。

出典: VentureClef

電車の乗り換えを教えてくれる

Siriは電車の路線案内ができるようになった。現在地からサンフランシスコ空港に行くには「Give me public transit directions to San Francisco Airport」と言えば、バスと電車を乗り継いで空港に行く経路を示す (下の写真左側)。また、クルマの中で目的地までの道順を尋ねるときは「Give me directions to San Jose Airport」と指示する。ナビゲーションが始まるので、それに沿って運転する。

出典: VentureClef

Appleのスマートホーム

iOS 10からスマートホームアプリ「Home」が登場した (下の写真)。このアプリがハブとなり開発キット「HomeKit」で定義された家電を操作する。Siriに「Turn on the living light」と言えばリビングルームの電灯が灯る。Homeでは家の中の雰囲気を設定する「Scene」という機能がある (下の写真左側、中央部)。Siriに「Set my movie scene」といえば、テレビで映画を見るために最適な暗さになる。電灯の輝度が落ちうす暗くなる。

また、Automationという機能を使うと、家の中の家電を自動制御できる (下の写真右側)。家の中が暗くなったら自動で電灯が点灯する。「At Sunset」という機能を使うと日没時に電灯がオンとなる。また、「When I Arrive Home」という機能を使うと、自宅に到着すると部屋の電灯が灯る。シンプルな機能だが電灯が自動でオンオフするのは便利と感じる。

出典: VentureClef

Siriでクルマを呼ぶ

iOS 10の最大の特徴はパートナー企業がSiriの機能を組み込んだアプリを開発できること。企業はSiri開発キットである「SiriKit」でアプリを開発する。SiriKitで開発されたアプリはSiriの機能を実装し、利用者が音声でアプリを操作できる。

ライドシェア「Lyft」はSiriKitでアプリを開発した。Siriに「Get me a ride to San Francisco Airport」というとLyftのクルマを呼ぶことができる (下の写真左側)。Siriの画面にLyftアプリのウインドウが表示され、近所にいるLyftのクルマがマップ上に表示される。Siriはクルマは7分で来ますが呼びますかと尋ねる。これにYesと答えるとクルマが配車される。ライドシェアではLyftの他にUberも使える。

出典: VentureClef

Siriでお金を送る

Siriから送金することができる。「Send money with Venmo」と指示すると、無料の送金アプリ「Venmo」の送金プロセスが起動する (下の写真左側)。Siriは誰に送るのか、また、金額と添えるメッセージを聞いてくるので、これらに応えると確認画面が表示される (下の写真右側)。ここで「Yes」と答えると送金が完了する。Venmoの他に「Square Cash」で送金することもできる。

出典: VentureClef

Siriからメッセージを送り電話をかける

Siriからメッセージアプリ「WhatsApp」を起動しメッセージを送信できる。「Send a WhatsApp message to Alice..」と指示する (下の写真左側)。また、ソーシャルネットワーク「LinkedIn」で友人にメッセージを送信できる。「Send a LinkedIn message to John..」と指示する (下の写真右側)。この他にSiriから「Skype」や「Vonage」を使って電話をかけることができる。

出典: Apple

Apple WatchからSiriを利用すると便利

SiriはApple Watchからも利用できる (下の写真左側)。家の中や外出先では、iPhoneを取り出す代わりにApple WatchでSiriを使うのが便利。Apple Watchに「Hey Siri, Set my movie scene」と語り掛けタスクを実行する (下の写真右側)。iPhoneでも「Hey Siri、」と呼び掛けてSiriを起動できるが、その際はiPhoneを電源に接続しておく必要がある。

出典: VentureClef

SiriKitで音声アプリを開発

前述の通り、SiriKitは開発者向けのツールで、これを利用してSiriの音声機能を組み込んだアプリを開発する。SiriKitは業務領域「Domain」ごとに提供される。DomainはVoIP calling、Messaging、Payments、Photo、Workouts、Ride bookingなどから構成される。SiriKitがユーザとのやり取り全てを担う。音声認識や自然言語解析などのAI機能はSiriKitが提供する。ただし、開発者は業務に固有の言葉を登録し、Siriのボキャブラリーを増やす必要がある。

Siriは輝きを取り戻すか

新しくなったSiriを使うと利用できるシーンが増えてとても便利になったと感じる。同時に、Siriの音声認識精度についてフラストレーションを感じることも少なくない。GoogleやAmazonと比べるとその差が歴然としてきた。iOS 10からはSiriの機能が公開され、ボイスクラウドに進化した。この基盤上でクールなアプリが登場しようとしている。AIに対して及び腰であったAppleであるが、Open Siriで機能アップが期待される。最初にSiriを使った時の驚きは鮮明で、SiriKitはこの輝きを取り戻す切っ掛けになるのかもしれない。

感情を理解するAI ~ 声のトーンから心情を読む、Apple Siriが優しくなる?

マシンが人間の感情を理解してヒューマンタッチな振る舞いをする。マシンが話し言葉からその場の空気を読むことができる。いまマシンと人間の関係が変わろうとしている。人間の感情を理解するAIが登場している。マシンとの信頼関係が生まれる日もそう遠くはない。

出典: White House

人の声を解析して感情や特質を抽出

人間の声はコンテンツを伝えるだけでなく、その人の心情を映し出す。会話で伝達される情報の多くは声のトーンや顔の表情や体の動きにある。イスラエルに拠点を置くベンチャー企業「Beyond Verbal」は、人の声を解析して感情や特質を抽出する技術を開発している。この技法は「Emotions Analytics (感情解析)」と呼ばれ、マーケットリサーチに応用されている。また、声から病気を診断する研究で大きな成果が報告されている。これらの研究は人間のように振る舞うマシンに繋がると期待されている。

オバマ大統領の広島スピーチ

この技術を我々も使うことができる。Beyond Verbalはスマホ向けのアプリ「Moodies」をリリースした。このアプリはEmotions Analyticsの技法を実装している。アプリに向かって喋ると、声のトーンを解析しそこに含まれる感情を抽出する。このアプリでオバマ大統領の演説を解析してみた。これは広島平和公園でのスピーチで、最初の3分間をアプリに入力した。「Seventy-one years ago, on a bright cloudless morning, death fell from the sky and the world was changed…」で始まる演説で、重々しい口調で進行する (上の写真)。

アプリで大統領の心情を読む

戦争の悲惨さを訴える演説であるが、アプリの解析は異なる見解を示した。オバマ大統領の心情は、冒頭の部分は「Motivation (鼓舞)」と判定した (下の写真、左側)。聴衆を動機づける演説であり、同時に、問題に対する解を模索していると解釈した。演説のトーンは時間ごとに変わり、このほかに「Dominance (威厳)」や「Hope(希望)」や「Friendliness(親しみ)」などの評価が続く (下の写真、右側のグラフが心情の変化を表す)。

出典: VentureClef

高揚感と失望感が交錯

総合評価として、解を求めて進む点が心情的にポジティブと評価された (上のグラフの緑色の分部)。一方、希望を伝えようとするが現実は異なると感じている点が感情的に落ち込んでいると評価された (上のグラフで谷の分部)。我々には重く苦渋に満ちた演説と聞こえたが、オバマ大統領の心中は、世界に平和を呼びかける高揚した気持ちと、プラハ宣言以来進まない核兵器廃絶への挫折感が交錯したものになっていたことが分かる。

トランプ大統領候補者の演説を分析

Beyond VerbalはEmotions Analyticsを使って大統領選候補者Donald Trumpの演説を分析した結果を公開した。これは公開討論会でFox NewsのMagen KellyがTrumpに質問する形式で進められた (下の写真)。Emotions Analyticsの解析によると、この演説は「Charisma(カリスマ)」で「Creativity(クリエイティブ)」で「Playfulness(遊び心に富む)」と評価された (写真最下部のキャプション)。

この討論会をテレビで見ていたが、Trumpの発言はとても面白く、聴衆を惹きつける魅力を持っていると感じた。Emotions Analyticsでの解析結果の通り、機知に富み遊び心が豊かで、エンターテイナーとしての偉大な能力を感じた。しかし、発言の内容は不適切な言葉遣いや偏った解釈も多く、政治家としてのTrumpの評価は必ずしも高くはない。政治的な手腕については疑問視されるものの、Beyond VerbalはTrump人気の秘密は言葉の情緒的な面にあると指摘する。

出典: Beyond Verbal

自分の心情を正しく理解できない

このアプリは日常生活で健康管理のツールとして利用できる。自分の感情を正しく理解するのは極めて難しいと感じることが多い。筆者は電話での会話などをアプリで解析し、その時の心情がどうであったかを把握している。自分では活気に満ちた話し方をしたと思っていたが、アプリで計測すると「Loneliness (寂しい)」や「Unhappy (楽しくない)」と判定されたことも少なくない。自分が思っている心持と、実際の評価が異なることに驚いた。

健康管理に利用できる

元気のない時は少し大きめの声で音程を揚げて話すように努めてきた。しかし、アプリで分析するとこの作戦は全く通用しないことが分かった。心情は声の大きさや音程とは相関関係がなく、このような小手先の技で相手を欺くことはできない。元気のな時は抜本的な対策が必要と感じる。これは人により異なるが、筆者の場合は好きな音楽を聴いた後はアプリの判定はポジティブとなることが多い。声から自分の心理状態を判断することで、健康な生活を送る手がかりをつかめる。

マーケットリサーチで利用されている

Beyond Verbalは企業向けのソリューションを提供しており、マーケットリサーチなどで活用されている。企業が商品のブランドやデザインについて調査する際にEmotions Analyticsを利用する。また、広告効果を検証する際にも利用されている。被験者に対象物に関する情緒的な質問をして、その回答を録音する。この音声をEmotions Analyticsで解析し、被験者の対象物に対する評価を査定する。解析するのは言葉の意味ではなく、音声に含まれている感情を読み取る。人間が発する言葉は真実と異なることが多々あるが、音声に含まれるシグナルは嘘をつかない。

病気の判定で効果を上げる

この技法は医療分野で成果を上げている。Beyond VerbalはMayo ClinicやScrippsなど米国の先端医療機関と共同研究を展開している。最新研究によると、声は感情を含むだけでなく、健康状態を内包することが分かった。被験者の声が心臓疾患に関連するシグナルを含んでいることが判明した。音声シグナルが心臓疾患のバイオマーカーになり、音声を録音するだけで病気を判定できる。これに先立ち、音声は自閉症やパーキンソン病と関連性があることも解明されている。また、音声とうつ病やディスレキシア (難読症) との関係も解明されている。我々が喋る言葉は健康を映し出す鏡でもある。

Appleの臨床試験プラットフォーム

音声と疾患の関係を医学的に解明したのはBeyond Verbalが初となる。いまスマートフォンやウェアラブルで病気を診断をする技術が登場している。Appleは臨床試験のためのプラットフォーム「ResearchKit」を提供している。医療機関はこのプラットフォームを利用して短時間で大規模な臨床試験を実施できる。臨床試験に参加する被験者はResearchKitで提供されるアプリで簡単な試験を行う。

パーキンソン病の臨床試験アプリ

パーキンソン病に関する臨床試験アプリ「mPower」が注目されている (下の写真)。これは非営利団体「Sage Bionetworks」により開発され、被験者はこのアプリをiPhoneで利用する。アプリの指示に沿って操作すると、パーキンソン病を判定できる。三つの操作を指示され、被験者は指でボタンをタップし、マイクにあ~と発声し、また、記憶力を試す問題に答える。被験者の試験結果を集約することで、大規模なパーキンソン病の臨床試験を展開できる。

出典: Sage Bionetworks

マシンに感情を理解させる

Beyond Verbalの最終目標はマシンに人間の感情を理解させることにある。今のマシンは人間の感情を理解することができなく、Emotional Blindといわれる。Beyond Verbalの目的はマシンが感情のレベルで人間とコミュニケーションすることにある。このためには、マシンが人間の感情をリアルタイムで把握することが必要となる。この情報をマシンにフィードバックすることで、マシンは利用者の感情に沿った対応ができる。

Apple Siriが感情を理解すると

Apple Siriに「What am I doing?」と質問すると「Interesting question」と受け流される。もしSiriが感情を理解すると、人間のような反応が期待できる。仕事が忙しく疲れていると把握すると、Siriは「少し休憩してお茶を飲みましょう」と提案する。落ち込んでいる時はSiriが好きな曲を再生してくれるのかもしれない。Siriだけでなく、Amazon EchoやGoogle Homeも声に含まれている感情を理解し、ヒューマンタッチな機能を開発しているのは間違いない。Beyond Verbalの技術が感情を理解するマシンの基礎となる。