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ゼレンスキー大統領のフェイクビデオが登場、Metaは即時にこれを検知し記事を削除、AIを使ったデジタル戦が拡大

ウクライナ(Ukraine)政府はロシアがフェイクビデオを使って情報操作する危険性を表明し、国民に冷静な対応を呼びかけていた。実際に、ゼレンスキー(Zelensky)大統領のフェイクビデオがメディアに掲載された(下の写真)。偽の大統領は国民に、武器を捨ててロシアに投降するよう呼びかけた。MetaはこのビデオはDeepfakesであると判定し、プラットフォームから削除した。戦時下においてはAIを使った情報戦が展開されるが、今回はそのプロトタイプが登場し、デジタル兵器の攻防が始まった。

出典: Operational Report @ Telegram

ゼレンスキー大統領の偽ビデオ

3月16日、ゼレンスキー大統領がビデオメッセージで、国民に武器を捨ててロシアに投降するよう呼びかけた。これはウクライナに対する情報戦で、ビデオはアルゴリズムにより生成されたDeepfakesで、本人の演説ではない。Metaはこれをフェイクビデオであると特定し、プラットフォームから記事を削除した(下の写真)。ロシアがウクライナに侵攻した後、Metaは特別チーム「Special Operations Center」を形成し、24時間体制で情報操作をモニターしており、このフェイクビデオを即座に検知することができた。

出典: Meta

ロシアでビデオが拡散

このフェイクビデオはMetaのプラットフォームからは削除されたが、他のソーシャルネットワークで拡散している。メッセージングアプリ「Telegram」にこのフェイクビデオが掲載され、ここには、「ハッカーがウクライナのサイトにこのビデオを掲載した」とのコメントが添えられている (先頭の写真)。また、ロシアのソーシャルネットワーク「VK」にも同じビデオが掲載され、クレムリンを指示するグループで拡散している。

テレビ局のハッキング

これに先立ち、ウクライナのテレビ局「Ukraine 24」がハッキングされ、テレビ画面に偽のテロップが表示された。フェイク・テロップはニュース画面の下部に表示され、ゼレンスキー大統領からのメッセージと偽り、「戦闘を止め武器を捨てる」よう国民に訴えた(下の写真、最下部)。また、「大統領は交渉に失敗し、キエフを去った」とも伝えている。

出典: Ukraine Now @ Telegram

ゼレンスキー大統領の対応

フェイクビデオに対し、ゼレンスキー大統領はショートビデオを公開し、偽情報を打ち消した(下の写真、Instagramから配信)。ショートビデオで、拡散したビデオは偽情報で、つたない手法の攻撃であると非難した。大統領はオフィシャルサイトから、定常的に国民にメッセージをショートビデオで配信しており、今回も、このアカウントから真実の情報を伝えた。

出典: Zelensky @ Instagram

フェイクビデオの完成度

実際に、フェイクビデオを見ると、完成度は低く、これは本物ではないと感じる。頭部が体に比べて大きく、不自然さを感じる。また、喋っている時に、頭部は動くが、体は不動のままで、強い違和感を覚える。Deepfakesを生成する高度なGANが開発されているが、このビデオは技術的には未熟で、完成の域に達していないことが分かる。このフェイクビデオはプロトタイプと解釈することもでき、これから技術改良が進み、判別が困難になると予想される。

Metaの特別チーム

ロシアはフェイクニュースなどを使って情報戦を展開しており、西側諸国が被害を受けている。米国においては、2016年の大統領選挙で、ロシアは大規模な情報操作戦を展開し、これがトランプ大統領の当選に繋がったとされる。Meta(当時はFacebook)は、ネットワークに掲載された偽情報を削除するなどの措置は取らず、米国社会から強い批判を受けた。これを教訓に、2020年の大統領選挙では、特別チームを形成し、偽情報をリアルタイムでモニターし、ロシアのデジタル攻撃を防いだ。ロシアのウクライナ侵攻では、再度、独別チームを形成し、デジタル戦を防衛している。

戦時下におけるAIの役割、ウクライナ軍は顔認識システムでロシア兵士のIDを特定

ロシア軍によるウクライナ(Ukraine)への軍事侵攻が新たな局面を迎えている。ロシア軍は首都キエフ(Kyiv)に迫っているが、ウクライナ軍の反撃が続き、侵攻は足踏み状態になっている。ウクライナ軍は本土防衛のために、AIなどのハイテクを導入することを明らかにした。高精度の顔認識システムを導入し、ロシア兵士のIDを特定し、デジタルな防衛網を構築する。(ウクライナ政府は民間施設が攻撃されていることを示し(下の写真)、防衛のための寄付を暗号通貨で募っている。)

出典: Ministry of Digital Transformation of Ukraine

顔認識システム

ウクライナ国防省は顔認識システムの利用を開始したことを明らかにした。これは米国新興企業Clearviewが開発したもので、通信社ロイターが報道した。Clearviewは世界で最大規模の顔データベースを構築し、その判定精度は業界のトップである。Clearviewはこのシステムを無料でウクライナ軍に提供し、ロシア兵のIDを特定するために使われる。

ロシア兵のIDの特定

顔認識システムはロシア兵士の身元を特定するために使われるが、具体的には、攻撃を行ったロシア兵士の氏名などを把握する。また、死亡したロシア兵士の身元の特定のためにも使われる。戦士のIDを特定するためには指紋が使われるが、顔認識システムだと、その場で顔写真から身元を特定できる。ロシア軍は工作員を市街地に送り込み、破壊作戦を展開している。このため、チェックポイントなどで顔写真から、ロシア兵士を特定するためにも使われる。

出典: CNN

難民の身元の特定

顔認識システムは難民の身元を特定するためにも使うことができる。多くの人が戦火を避け、ウクライナを離れ、ポーランドなど近隣諸国に避難している。難民の多くは家族が離散し、再会が難しくなる。このため、顔認識システムで身元を特定し、家族の再会に役立てる。また、ソーシャルネットワークに掲載されている顔写真を解析することで、情報操作のための偽装工作を見破ることもできる。

ロシア人の顔写真データベース

Clearviewは世界の人物の顔写真100億枚を収集し、これを顔認識システムのデータベースとして使っている。被験者の顔写真をこのデータベースで検索し、本人のIDを割り出す。ここには、ロシア人の顔写真20億枚が含まれており、ロシア人のIDを高精度で特定することができる。ロシアの人口は1.4億人で、単純計算で、一人当たり14枚の顔写真が格納されていることになる。

顔写真の収集方法

Clearviewはソーシャルネットワークに公開されている顔写真をスクレ―ピングしてデータベースを構築した。スクレ―ピングとは、顔写真やその属性などを、ウェブサイトからダウンロードする手法を指す。Clearviewはロシアのソーシャルネットワーク「VK」(下の写真)から顔写真をスクレ―ピングした。VKはロシア・セントペテルスブルグ(Saint Petersburg)に拠点を置く企業で、会員数は5億人を超え、ロシアで一番人気のソーシャルネットワークである。

出典: VK

倫理的な使い方

Clearviewのスクレ―ピングの手法は個人のプライバシー侵害にあたるとして問題視されている。米国では、集団訴訟が起こり、Clearviewの手法が法廷で問われている。イギリス政府は、Clearviewは個人情報保護法に抵触するとして制裁金を科した。カナダやオーストラリア政府は、Clearviewに対し、個人情報を削除することを求めている。多くの問題を抱えているが、戦時下においては国防に役立つとして、Clearviewの技術に期待が寄せられている。

ハイテクを導入

顔認識システムとは別に、ウクライナのデジタル・トランスフォーメーション省は、米国のAI技術を導入することを計画している。既に、欧米企業はウクライナ政府にインターネット通信機器やサイバーセキュリティ・ツールを提供している。SpaceXは衛星通信システム「Starlink」の受信装置(下の写真右側)を提供している。ウクライナで地上の通信網が被害を受けているが、衛星通信でインターネットを再構築する。実際に、ウクライナ副首相は、Starlinkの受信装置 (左側)を受領したとツイートし、Elon Muskに謝意を示した。

出典: Mykhailo Fedorov / Starlink

サンフランシスコでの反戦集会

世界各地でウクライナを支援する集会が開催されているが、サンフランシスコでは市庁舎の前で反戦集会が開かれた。ベイエリアには多くのウクライナ人が暮らしており、数百人が反戦集会に参加し、プーチン大統領にウクライナから撤退するよう呼びかけた。サンフランシスコ市はウクライナを支援する意思を表明するために、市庁舎を国旗の色にライティングしている(下の写真)。

出典: Andy Soluk

顔認識AIの危険性が暴露、我々の顔写真が全米の警察で使われている!!(続々報)

顔認識AIを開発している新興企業Clearviewは、1000億枚の顔写真を収集する計画であることが明らかになった。写真は顔認識AIのデータベースに格納され、被験者を特定するためのインデックスとして使われる。世界の人口は約79億人で、一人につき12枚の写真が収集される勘定になる。このAIを使うと、世界の全ての人物の身元を特定することができる。

出典: Clearview

顔認識AIの開発

このAIを開発しているのはClearviewという新興企業で、世界最大規模の顔データベースの構築を計画している。投資家向けの資料がネットに流出したことで明らかになった。この資料によると、Clearviewは、現在、100億枚の顔写真を格納したデータベースを運営している。これを、1000億枚に拡充するために、資金の調達を進めている。

データベースの規模と判定精度

この規模のデータベースを使うと、AIは顔写真から、世界の殆どの人物の身元を正確に特定できる。具体的には、世界の人口の98%を、99.5%の精度で判定することができる。現在、Clearviewは100億枚の顔写真を格納したデータベースを運用しており、カバー範囲は75%となる。1000億枚の顔写真を使うと、世界の殆どの人を特定できる顔認識AIが生まれる。

利用目的

Clearviewは高精度な顔認識AIを開発し、米国政府を中心に、治安維持を目的に使われている。Clearviewの顔認識精度は、他の製品に比べひときわ高く、犯罪捜査で顔写真から容疑者の身元を特定するために使われる。昨年の米国連邦議会襲撃事件では、900超の顔写真をClearviewで解析し、350人の身元を特定することができた。このシステムは、FBI(連邦捜査局)や国土安全保障省などで使われている。

出典: Clearview

ベンチマーク結果

Clearviewは世界でトップレベルの性能を持っている。米国では、NIST(国立標準技術研究所)が顔認識AIのベンチマーク結果を公開しており、世界のベンダーの判定精度を知ることができる。これによると、中国Sensetimeがトップで、Clearviewは二位の判定精度となる。しかし、Clearviewは、Sensetimeより大きなデータベースを持ち、実効性能で上回るとしている。因みに、第三位はロシアVisionLabsで四位もロシアNTechLabとなる。

データベースの規模

世界でトップレベルの判定精度を持つClearviewであるが、その開発手法が社会問題となっている。AIが被疑者の写真から本人の身元を特定するためには、解析した写真と同一の人物を、データベースから見つけ出す。このため、データベースの規模が大きいほど、マッチングの確度が上がる。

データ収集の手法

Clearviewは世界のウェブから顔写真を収集する手法でデータベースを開発してきた。Facebookなどソーシャルネットワークに掲載されている顔写真を、本人の許可なくダウンロードし、これをデータベースに格納する。これは、スクレ―ピングという手法で、個人のプライバシーを侵害するとして、米国社会で問題視されている。実際に、全米各地で集団訴訟が起こり、Clearviewの手法は法廷で問われることになる。

ビジネスモデル

Clearviewの顔認識AIは、治安当局による犯罪捜査で使われている。Clearviewは、データベースの規模を10倍に拡大するとともに、顔認識AIの新しいビジネスモデルを計画している。対象を政府官庁から企業に拡大し、顔認識AIで、セキュリティや顧客サービスなどのソリューションを開発する。特に、金融機関やギグ・エコノミー(Gig Economy)向けを重点分野とし、事業開発を進める。

出典: Clearview

金融機関向けソリューション

Clearviewは顔認識AIを金融機関向けに提供することを計画している。これは、マネーロンダリングを検知するためのソリューションで、顔認識AIで利用者が犯罪者リストに登録されているかどうかを検知する。これは「One-to-Many Analysis」と呼ばれる手法で、利用者の顔写真でデータベースを検索し、身元を特定する。偽名を使った犯罪行為を検知できる。

ギグ・エコノミー向けソリューション

Clearviewはギグ・エコノミー向け顔認識AIに対する需要が大きくなると予想している。ギグ・エコノミーとは、ネットを通じた雇用制度で、契約社員として単発で働く方式を指す。Uberなどのライドシェアがギグ・エコノミーの代表となる。企業側はギグ・ワーカーを採用する際に、顔写真を顔認識AIで解析し、過去の履歴を確認する。この他に、Walmartなど小売店舗は、万引き防止のために、顔認識AIで容疑者の身元を特定するなどの活用法が検討されている。

出典: Clearview

治安維持かプライバシー保護か

米国ではサンフランシスコなど主要都市が顔認識技術の使用を禁止したが、連邦政府レベルではこれを規制する法令は無い。顔認識技術の利用について、統一したガイドラインは無く、運用の可否は各政府機関に任されている。顔認識技術を提供するAmazon、IBM、Microsoft、Googleは、無用の混乱に巻き込まれるのを恐れ、自主的にビジネスを停止している。Clearviewは、独自の解釈で、顔認識AIを提供する方針を貫いている。高精度な顔認識AIが犯罪捜査に寄与し、社会の治安が保たれていることは事実である。一方、Clearviewは、個人の顔写真を無断で使っており、これがプライバシー侵害に該当するのか、法廷で審理が進んでいる。

AIに口説かれると落ちる!?アルゴリズムで造られる音声は人間より豊かな表現力を持ち聞き手に感動を与える

Apple Siriが急に色あせてきた。AIにより生成されるボイスの品質が進化し、今では人間の表現力を上回る。AIで生成される音声は「Synthetic Voice」と呼ばれ、人間のように流暢な喋りができるだけでなく、多彩な感情を表現できる。アニメやゲームの中でアバターが喋る言葉はAIで合成され、人間のように感情がこもった会話が交わされる。

出典: Sonantic

感情豊かなAIボイス

多くの企業がAIボイスを開発しているが、英国に拠点を置く新興企業Sonanticは、感情豊かな合成音声を開発している。生成された音声は人間のものと区別がつかないだけでなく、声優のように、感情に富んだ会話ができる。AIボイスと言えば、Apple SiriやAmazon Alexaが普及しているが、声はモノトーンで機械的な会話となる。新興企業から新世代のAIボイスが登場し、Google Assistantなどの魅力が色あせてきた。

デモビデオ

Sonanticが開発するAIボイスは聞き手を会話に引き込む魅力を持っている。Sonanticはデモビデオを公開しAIボイスの進化をアピールしている(https://www.youtube.com/watch?v=gS1m_TIxEW0)。ビデオで、女性が視聴者に語り掛けるが、これらはAIにより生成されたもので、言葉の端々に微妙な感情表現が窺える。また、言葉ではない、笑いや息遣いが混じり、人間らしさがひときわ際立つ。

微妙な感情表現

微妙な感情表現は「Subtle Emotions」と呼ばれ、人間らしさを演出する技術となる。その一つが、男女関係における駆け引きで、相手の気を引こうとして媚びた感情を表現する。現実社会の会話でも、これは高度なテクニックになるが、AIボイスはこれをマスターし、なまめかしく魅力的な声で男性を誘惑する。また、目立たないようにする控えめな表現や、相手の好奇心をくすぐる表現もできるようになった。

言葉にならない表現

AIボイスを人間らしいと感じるのは、言葉以外の発声が混じるためである。これらは、「Non-Speech Sounds」といわれ、息遣いや、咳払いや、笑いなどを指す。また、「あー」とか「えー」など、無駄な発声もこの区分となる。人間は、スピーチするときには、これらの口癖を矯正するように教えられるが、AIボイスはあえてこれらを取り込み、人間臭さを演出する。(下の写真、発声の最後に咳ばらいを挿入する操作。)

出典: Sonantic

AIボイスの生成方法

AIボイスはダッシュボードでインタラクティブに生成する(下の写真)。アバターが発声するテキストを入力し、それに感情を付加するプロセスとなる。例えば、「The enemy fleet is attacking」というテキストを入力すると、音声が合成される。その際に、シーンに応じて、言葉に感情を与える。ここでは、「怒り」、「恐怖」、「幸せ」、「悲しみ」、「絶叫」などの要素を注入できる。また、声のピッチやタイミングなどを設定できる。

出典: Sonantic

ゲームで使われている

ゲーム開発会社Obsidianはアバターが喋る言葉をSonanticで合成している(下の写真)。今までは、声優がシーンに合わせて音声を吹き込んでいたが、今では、Sonanticの技術を使っている。AIボイスは声優のレベルに達し、人間がマニュアルで声を吹き込む必要がなくなった。また、AIボイスはゲーム開発の進行に応じて、シーンの変更があれば、何度も作り直すことができ、コンテンツ開発が効率化された。

出典: Obsidian

ニューラルネットワーク

Sonanticはニューラルネットワークを人間の声で教育し、AIボイスを生成する手法を取る。人間らしいAIボイスを生成するためには、教育データの品質がカギとなる。このため、声優に様々な感情を含む声を録音してもらい(下の写真)、それを教育データとして使った。しかし、「Non-Speech Sounds」については、この方法では高品質なAIボイスを生成できなかった。このため、SonanticはNon-Speech Sounds向けに独自のニューラルネットワーク開発し、AIボイスが息遣いをマスターした。

出典: Sonantic

声優の役割

声優はゲームやアニメや映画で欠かせない存在であるが、いまその役割がAIボイスで置き換えられている。声優は、声の吹込みから、AI開発のための教育データの生成に、その役割が変わってきた。長年、エンタメ業界を支えてきた声優の職をどう守るかが問われている。

会話の表現方法

会話はその内容より話し方など表現方法が意思伝達で重要な役割を担う。会話の中で伝達された情報より、それがどのような形で伝わったかが、発言者の意図を把握する手段となる。このため、高度なコミュニケーションを構築するには、AIボイスが感情を表現できることが必須の技術となる。

出典: Meta

倫理的な使い方

AIボイスは聞き手の感情を操作する能力を持ち、その使い方には注意を要す。メタバースでは、自身のデジタルツインを介してコミュニケーションするが、会話の相手は人間だけでなく、AIとの対話が始まる。AIが多彩な表現力を駆使して、消費者に高額な商品を販売し、危険な契約を結ばせる。AIボイスを使ったヘイトスピーチや虐めが始まると、今以上にダメージが深くなる。高度なAIボイスが悪用されると、その被害は甚大で、倫理的な使い方のガイドラインの制定が必須となる。

Meta(Facebook)は世界最速のスパコンを開発、AIとメタバースは高性能プロセッサが勝敗を分ける

Meta(Facebook)は、今週、スパコンを開発していることを明らかにした。最大性能は5 Exaflopsで世界最速のマシンとなる。Metaが独自でスパコンを開発するのは、AIとメタバースの開発で、大量の演算処理が必要になるため。AI開発ではアルゴリズムの規模が巨大化し、その教育には高速プロセッサが必須となる。メタバースはAIと密接に関連し、3D仮想社会を生成するには、高精度なコンピュータビジョンが求められる。

出典: Meta

スパコンの概要

Metaは、スパコンを「AI Research SuperCluster(RSC)」(上の写真)と呼び、AI研究のための高速計算機と位置付ける。今年中旬の完成を予定しており、演算性能はExaflopsを超える。(Exaflopsとは1秒間に10の18乗(10^18)の演算を実行する性能。) 現在、最速のマシンは442 Petaflops (0.442 Exaflops)で、ついにスパコンがExaの領域に入ることになる。

研究テーマ

スパコンは、名前が示しているように、AI研究で使われる。Metaは、自然言語解析(Natural Language Processing)やコンピュータビジョン(Computer Vision)の開発をスパコンで実行する。これらAIモデルはアルゴリズムが巨大化し、その教育で大規模な演算が発生する。パラメータの数が1兆個を超え、もはや、スパコン無しにはAIを開発することができない。

自然言語解析:有害コンテンツを検知

自然言語解析はソーシャルネットワークの有害情報(Harmful Contents)を検知するために使われる。FacebookやInstagramで、フェイクニュースやヘイトスピーチが拡散し、社会問題となっている。今では、ワクチンに関する偽情報が拡散し(下の写真)、ワクチン忌避者が増えている要因とされる。これら有害情報をAIで正確に検知する技術は確立されておらず、ソーシャルネットワークの責任が厳しく問われている。

出典: Meta

Few-Shot Learning

AIが有害情報を正確に検知できない理由は、教育データが不足しているため。アルゴリズムを教育するには、大量のデータを必要とするが、有害情報に関するデータは少ない。例えば、ワクチンに関する偽情報は、少ないだけでなく、その内容は短期間で移り変わる。このため、Metaは少ない事例でAIを教育する「Few-Shot Learning」という技法を開発している。このモデルで判定精度を上げるためには、アルゴリズムのサイズを大きくする必要があり、AIが巨大になる。大規模なモデルを教育するためにスパコンが必須のインフラとなる。

コンピュータビジョン:メタバースの開発

次世代プラットフォームであるメタバースを開発するために、スパコンが必要となる。メタバースは3D仮想社会で、利用者はアバターを介し、オブジェクトとインタラクションする(下の写真)。メタバースにアクセスするためにAR・VR・MRグラスが使われ、デバイスに仮想社会が生成される。高品質な仮想社会を生成するためにコンピュータビジョンが重要な役割を果たし、この開発でスパコンが必須となる。

出典: Meta

システム構成

スパコンのプロセッサにはNvidiaのAIシステム「NVIDIA DGX A100」(下の写真)が使われる。このシステムはNvidiaの最新プロセッサ「A100」を8台搭載した構成で(①の部分)、高速ネットワーク「InfiniBand」で通信する。スパコンは16,000台のA100を搭載し、最大性能は5 exaflopsとなる。スパコンはDGXを連結したクラスタ構成で、AI Research SuperClusterと呼ばれる。

出典: Nvidia

巨大テックがAIスパコンを開発

アルゴリズムが巨大化の道をたどり、AI開発ではスパコンが必須の計算環境となる。Googleは大規模アルゴリズムの開発でAIクラスター「Cloud TPU」を使っている。Microsoftは独自でAIスパコンを開発し、大規模言語モデルを開発している。これからは、メタバースの開発で高速プロセッサが必須となり、スパコンの用途が拡大することになる。