カテゴリー別アーカイブ: トランプ大統領

緊急修正:米国政府はDeepSeek-V4を徹底検証、ベンチマーク手法に不備がありDeepSeekはモデルの性能を過大評価、米中間の技術ギャップは2か月ではなく8か月と判定

国立標準技術研究所(NIST)はDeepSeek-V4について多角的な分析を行いその結果を発表した。DeepSeek-V4はOpenAI GPT-5に匹敵する性能で、両者の技術ギャップは8か月と判定した。(DeepSeekは技術ギャップは2か月と発表)。また、DeepSeek-V4の運用コストはGPT-5.5 Miniの半分程度で、コストパフォーマンスが優れている事実を確認した。(DeepSeekはコストは米国モデルの1/10と発表)。 NISTはDeepSeekのベンチマーク手法に不備があり、モデルの性能が過大評価されていると判定した。NISTのミッションは中国モデルのモニターにあり、DeepSeek以外にも主要モデルを検証し技術進展状況をトラックしている。

出典: OpenAI GPT-5.5 Image

NISTとCAISIの役割

国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology, NIST)は商務省配下の組織で米国の計量技術標準化の研究を推進する。NISTがAI技術の標準化や開発推進を担い、連邦政府のAI技術ハブとなる。トランプ政権はNIST配下にAI推進室「Center for AI Standards and Innovation (CAISI)」を開設した(上の写真、イメージ)。CAISIはAIモデルを評価しその安全性を査定する任務を担う。更に、CAISIは敵対国のAI開発状況を監視する役割があり、DeepSeekなど中国の主要モデルを評価し開発状況をトラックしている。

DeepSeek-V4の評価結果

CAISIは最新モデル「DeepSeek-V4」を検証しその結果を公表した(下のグラフ)。それによると、DeepSeek-V4は中国モデルの中で最も高い性能をマークした。一方、DeepSeekはモデルの性能を実際より高く評価していると結論付けた。DeepSeekは、DeepSeek-V4はOpenAI GPT-5.4に匹敵すると評価し、両者のギャップは2か月と発表した。CAISIは、DeepSeek-V4はOpenAI GPT-5に相当し、両者のギャップは8か月と判定した。

出典: CAISI 

ベンチマーク方式

CAISIの評価手法は5つのドメインで9のベンチマークテストを実施し、それを標準化する手法でモデルを評価した。5つのドメインは、サイバー、ソフトウェア・エンジニアリング、科学、推論機能、数学でこれらを統合してモデルを総合的に評価した。この手法は「Item Response Theory (IRT)」と呼ばれ、隠れた能力(人間の知能や特性など)を評価する手法で、これをAIモデルのベンチマークテストに適用した。

インファレンスコストの試験

CAISIはDeepSeek-V4をクラウドベースのGPUプロセッサ「H200」と「B200」 で実行しそのコストを比較した。この際に、DeepSeek-V4はOpenAI GPT-5.4 Miniと同等の性能であることから、両者のインファレンスコストを比較した(下のテーブル)。その結果、中国モデルが格段に低コストではなく、測定項目により大きな差異がある。GPQA DiamondではDeepSeek-V4のコストが高く、GPT-5.4 Miniの1.4倍となった。その他のケースではDeepSeek-V4のコストが安く、GPT-5.4 Miniの0.47倍から0.83倍となった。

出典: CAISI 

ベンチマーク・コンタミネーション

CAISIはDeepSeekのベンチマーク手法は公正ではないと結論付けた。この根拠が「Benchmark Contamination(ベンチマーク・コンタミネーション)」で、モデルを教育するデータセットに試験データが混入していると判定した。モデルがベンチマークテストのデータで教育され、これらの試験項目で実力以上に高度な性能を発揮する問題となる(下のグラフ左側、モデルは事前に試験問題を知りテストで高性能を発揮)。CAISIはDeepSeek-V4を非公開のベンチマークテストで検証した。この結果、モデルの性能は大きく下がることを確認した。(下のテーブル右側、非公開のベンチマーク「ARC-AGI-2 Semi-Private」、「PortBench」、「CTF-Archive-Diamond」でDeepSeek-V4は事前に試験問題を知ることができず、性能は極端に低下した。) これらのデータからCAISIはDeepSeek-V4の評価手法は公正ではないと結論付けた。

出典: CAISI 

競争はコストパフォーマンス

CAISIはDeepSeek-V4のインファレンス・コストを比較し、対抗モデルGPT-5.4 Miniより格安で実行できることを確認した(下のテーブル)。トップレベルの性能ではDeepSeek-V4は米国モデルに及ばないが、そこそこの性能を極めて低価格で提供し、コストパフォーマンスの競争ではDeepSeek-V4が大きく先行している事実を明らかにした。米国ではコストパフォーマンスを考慮して、GPTやClaudeを使う代わりにDeepSeekやQwenを利用する流れが広がっているが、CAISIの報告書はこれを追認した形となった。

出典: CAISI 

中国製AIプロセッサ

DeepSeek-V4の衝撃はモデルの性能ではなく、中国製のAIプロセッサで開発されたことにある。DeepSeek-V4はHuaweiのAIプロセッサ「Huawei Ascend 950」で開発された。DeepSeek-V4の実行ではインファレンス・プロセッサ「Ascend 950PR」が使われ、教育プロセスの一部でトレーニング・プロセッサ「Ascend 950DT」が使われた。中国企業はNvidia GPUへの依存の度合いを下げ、国産プロセッサでAIモデルを開発する流れを加速している。

出典: OpenAI GPT-5.5 Image

今年のキーワードは「AIサイエンティスト」、研究室に配属されエージェントとして医薬品を開発、トランプ政権のジェネシス・ミッションが大きな追い風

2026年はAIサイエンティストが研究所で人間に代わりバイオ医薬品などを開発する年となる。AIサイエンティストとは科学技術に特化したAIエージェントで、研究者に代わり新薬の開発などを実行する。AIサイエンティストは科学に関する膨大なデータを解析し、仮説を立案し、それを検証することで、地上に存在しない新たなたんぱく質や抗体などを生成する。トランプ政権はジェネシス・ミッションで、AIサイエンティストを戦略技術と位置付けており、連邦政府がこのプロジェクトを支援する。

出典: Generated with Google Nano Banana Pro

AIサイエンティストとチャットボット

AIサイエンティストは最重要研究テーマで議論が白熱しハイプの状態が続いてきた。今年はこれがいよいよ技術として実装される年となる。AIサイエンティストはチャットボットとは機能も構造も大きく異なる。チャットボットは科学者の質問に回答し、アシスタントとして研究を支援する。これに対しAIサイエンティストは、与えられた研究テーマを人間の介在無く自律的に実行する。医薬品の開発では特定の機能を持つたんぱく質を創成するなど、人間の研究者レベルのタスクを実行する。

AIサイエンティストの機能

このように、AIサイエンティストは研究者として位置付けられる。人間がハイレベルな研究テーマを指示し関連するデータセットを提示すると、AIサイエンティストは独自で研究プロセスを展開する。具体的には、公開されている論文を読み研究の最先端情報を理解する。次に、提示されたデータセットを解析し、これらを統合して仮説を構築する。更に、構築した仮説を証明するために試験を実行する。

出典: Generated with Google Nano Banana Pro

AIサイエンティストの性能

最先端のAIサイエンティストは人間の研究者が半年かかる作業を半日程度で実行する。研究を実行するためには膨大な数の論文を読む必要があるが、AIサイエンティストは1,000を超える論文を読みこれを理解し研究の最先端情報を把握する。これらをベースに仮説を立案し、これを検証するプロセスを実行する。実際には、仮説を検証するためのプログラムを生成し、これを実行することで推論が正しいことを裏付ける。AIサイエンティストは膨大な情報を解析するだけでなく、これを前提し新たな仮説を生み出し、これが正しいことを証明する機能を持つ。

AIサイエンティストの恩恵

AIサイエンティストは医療において大きな進化をもたらすと期待されている。ニューロサイエンスの分野では、脳の加齢のメカニズムを解明し、アルツハイマー型認知症の治療薬の開発で大きな成果が期待される。また、エネルギーの分野では、ペロブスカイト太陽電池(perovskite solar cells)を効率化する技法の開発で使われる。

フロンティアモデルとの関係

AI開発企業からOpenAI GPT-5.2やGoogle Gemini 3などフロンティアモデルがリリースされているが、これらが単体でAIサイエンティストを構築することはできない。AIサイエンティストの開発では「Structured World Model(構造的世界モデル)」というアーキテクチャがキーとなる。AIサイエンティストは複数のAIエージェントから構成され、Structured World Modelがこれらを管理運用するフレームワークとなる。このフレームワークの元で、論文を解析するAIエージェントや提示されたデータを解析するAIエージェントなどが稼働しており、エージェント間で情報を共有する制御や、長時間にわたりコヒーレントな処理を保証する仕組みなどが必須の機能となる。

AIサイエンティスト市場

ビッグテックやスタートアップがAIサイエンティストの開発を進めている。その代表がGoogleで、AIサイエンティスト「AI Co-scientist」を開発している。AI Co-scientistは、膨大な量のデータセットをベースに、物理学、バッテリー素材、核融合発電などの分野をターゲットに、自律的に研究を実行する。GoogleはAI Co-scientistを米国エネルギー省の国立研究所に納入し、科学技術研究に寄与することを計画している。トランプ政権のジェネシス・ミッションに沿って、国立研究所と共同でサイエンスの研究開発を加速する。

出典: Google

研究所の自動化技術

AIサイエンティストはロボティックスと融合し、研究所のオペレーションを自動化する。これは「Self-Driving Labs (SDLabs)」と呼ばれ、AIサイエンティストが構築した仮説を、研究所においてロボットが実験を司り、人間に代わりこれを証明する。AIサイエンティストが研究所のロボットに、薬剤の混合や試験結果の検証などを指示し、AIとロボットのループで研究が進む。ジェネシス・ミッションではこの技法を「Robotics Labs」と呼び、この開発を重要アクション項目と定めている。

出典: World Economic Forum

サイエンスのブレークスルー

AIモデルはブラックボックスでアルゴリズムの判定理由が不透明で、これがハルシネーションの原因となる。AIサイエンティストは研究成果の精度が厳しく問われ、生成した仮説を裏付けるデータが必須となる。AIサイエンティストは研究成果をRobotics Labsで検証し、根拠となる実験結果を示すことで、高精度な研究成果を生み出す。今年はAIサイエンティストで米国の科学技術研究が急進し、大きなブレークスルーが起こると期待される。

トランプ大統領は州政府がAIを規制することを禁止する大統領令に署名、賛成派と反対派で全米が二つに分断され議論が白熱

トランプ大統領は12月11日、「One Rulebook(ワン・ルールブック)」と言われる大統領令に署名した(下の写真)。ワン・ルールブックとはAIに関する連邦政府のルールで、これを全米で適用することを目的とする。現在は50の州政府が独自のAI規制法を制定し、開発企業はこれらの基準に準拠することが求められ、これがビジネスにおける大きな負担となっている。しかし、ワン・ルールブックの実態は、連邦政府のAI規制ではなく、州政府にAI規制の停止を求める条項が記載されている。トランプ政権は州レベルでも規制を緩和しAI開発を後押しするポジションを取る。これによりAI開発が急進すると期待される一方で、AI規制法が撤廃されることで、AIのリスクを管理することが不能となり、社会に重大な問題をもたらすと懸念される。

出典: The White House

ワン・ルールブックのビジョン

トランプ大統領は米国において単一のAI規制フレームワーク「National Policy Framework for AI」(下の写真)を導入する大統領令に署名した。このフレームワークは「ワン・ルールブック」とも呼ばれ、米国における統一したAI規制政策となる。50の州が個別に異なる法令を導入すると、開発企業は50の規制に準拠する必要があり、AI開発で大きな負担となる。このため、ワン・ルールブックを導入することで企業のAI開発を支援する。

出典: The White House

ワン・ルールブックの実態

しかし、大統領令を読むと連邦政府のルールブックはAIを安全に開発運用するためのガイドラインを定めているのではなく、州政府が独自のAI規制を施行することを禁じた内容となっている。カリフォルニア州は2025年9月、AI規制法「SB 53」を制定し、企業に対しAIモデルに関する情報の公開を求めている。トランプ政権のワン・ルールブックはこれら州政府のAI規制法を撤廃することを求めている。

司法省の役割

大統領令は連邦政府内の省庁を対象にしたもので、州政府など地方政府には権限が及ばない。このため、大統領令は既存の法令を根拠に州政府のAI規制法を制限する手段を取る。その代表が司法省による州政府の監視と訴訟である。大統領令は司法省に対し、州政府を訴訟するためのタスクフォース「AI Litigation Task Force」の制定を求めている。タスクフォースは州政府のAI規制法を審査し、連邦政府の指針に反する法令を特定し、州政府を訴訟する任務となる。この根拠として、州を跨る通商「Interstate Commerce」を妨げる州政府のAI規制法は憲法に違反する、とのポジションを取る。

商務省の役割

大統領令は商務省に対しては州政府への助成金をカットするアクションを求めている。連邦政府は地方のブロードバンドの整備のためのプログラム「BEAD (Broadband Equity Access and Deployment) Program」を運用している。商務省は州政府のAI規制法を精査し、この内容が連邦政府の指針に沿っていない場合は助成金の支給を停止するとしている。

例外事項

大統領令は州政府のAI規制法の中で次の項目については対象外としている。その代表が子供をAIの危険性から守る法令「child safety protections」で、州政府が制定している児童を対象としたディープフェイクの規制は例外事項となり、このまま運用することができる。また、データセンタ建設に関する認可や、州政府がAI調達に関する法令は継続して運用できる。

連邦議会のアクション

同時に、大統領令は将来プランとして連邦政府がAI規制法を制定するための準備を求めている。実際には、AIと暗号通貨の責任者(David Sacks)に対して、ワン・ルールブックを法令で制定するための準備作業を求めている。AI責任者がAI規制法のドラフトを製作し、これを議会に提出する内容となる。これが米国におけるAI規制法となり、全米で統一した法令が制定されることになる。ただし、その内容はAI規制を緩和し、州政府のAI規制を禁止する内容になるとみられている。

出典: Wikipedia

賛成派と反対派で議論白熱

米国は大統領令に賛成するグループと反対するグループに二分され議論が白熱している。OpenAI、Google、Meta、Nvidiaなどは公式のコメントを発表していないが、大統領令を強く支持していると報道されている。更に、これら企業はロビー活動により、この大統領令を実現したとも言われている。一方、州政府はこの大統領令に強硬に反対し、このワン・ルールブックは州の権利を規定している憲法に違反するとして訴訟する準備を開始した。連邦政府が主張する「州を跨る通商」と州政府が主張する「州の権利」が法廷で裁かれることになる。

トランプ大統領は”AIアポロ計画”を創設、エネルギー省のスパコンで先端AIを開発しバイオテックや核融合研究を加速させる

トランプ大統領は11月24日、高度なAIをサイエンス分野に適用し、バイオテックや核融合などの基礎研究を加速させる構想「Genesis Mission(ジェネシス・ミッション)」を明らかにした。これはアポロ計画の構想をAIに適用したもので、サイエンス分野で新発見を生み出しブレークスルーを起こすことを使命とする。米国エネルギー省が運営しているスーパーコンピューターを統合し、ここで科学に特化したAIモデルを開発する。中国は国家プロジェクトとして科学基礎研究を推し進め、そのレベルが米国に肉薄している。トランプ政権はジェネシス・ミッションで高度なAIを生成し、科学分野でリーダーの地位を固めることを目論む。

出典: Generated with Google Gemini 3 Pro Image

ジェネシス・ミッションとは

ジェネシス・ミッション」は大統領令で規定されイニシアティブで、科学的な発見や技術イノベーションを加速することを目的とする。このための基盤技術としてサイエンスに特化したAIを開発し、AIエージェントが共同研究者となりブレークスルーを目指す。ジェネシス・ミッションは1960年代のアポロ計画と対比され、科学技術の進化を政府が後押しし、世界における覇権を維持するとともに、米国の経済発展を支えるインフラを構築する。

プロジェクト構成

ジェネシス・ミッションはエネルギー省(Department of Energy)が主導するプロジェクトで、科学技術政策局(Office of Science and Technology Policy)が事務局となり省庁間のコーディネーションを司る。このプロジェクトはエネルギー省に設置されているスーパーコンピューターを使い、科学技術研究開発に特化したAIエージェントを開発する。AIエージェントが研究者のアシスタントとなり、研究プロセスを自動化し開発速度を加速する。(下の写真、ローレンスリバモア研究所に設置されている世界最高速のスーパーコンピューター「El Capitan」)

出典: Lawrence Livermore National Laboratory

プラットフォーム

大統領令はこのミッションを支えるプラットフォーム「American Science and Security Platform」を構築することを求めている。プラットフォームはスーパーコンピューターやAIエージェントなどから構成され、科学基礎研究のエンジン「Scientific Discovery Engine」を支える(下の写真)。プラットフォームの構成要素は:

  • スパコン:エネルギー省は多数のスーパーコンピューターを運営しており、ここでサイエンス向けのAIモデルやAIエージェントを開発する
  • AIエージェント:AIエージェントは共同研究者となり科学研究のプロセスを自動化する。AIエージェントが研究テーマを検索し、研究成果を評価し、研究プロセスを自動化する
  • AIファウンデーションモデル:科学研究に特化したAIファウンデーションモデルを開発する。バイオテックや核融合に最適化されたモデルが生み出される
  • データ:エネルギー省が保有している大量のデータをAI開発向けに公開する。AIファウンデーションモデルはこれらのデータを使って教育される
  • ロボティックス:新たな挑戦としてロボットを科学技術研究に導入する。AIエージェントがデザインしたプロジェクトをロボットが実験室で実行する。この試みは「Robotic Laboratories」と呼ばれ、研究者に代わりロボットが実験を代行する
出典: Generated with Google Gemini 3 Pro Image

タイムライン

大統領令はプロジェクトのアクションアイテムとその完了日を規定している。270日以内にプロトタイプを構築する計画で、主なマイルストーンは:

  • 90日以内:プラットフォームを構成するコンピュータ、ストレージ、ネットワークを特定する。また、民間からパートナー企業を選定する
  • 120日以内:AI教育で利用するデータセットを選定する
  • 240日以内:ロボット研究室を設立するための技術要件を評価する
  • 270日以内:プラットフォームのプロトタイプ(“Initial Operating Capability)のデモを実施する

サイエンスの重点領域

ジェネシス・ミッションはサイエンスにおける基礎研究をAIエージェントで加速することを使命とする。大統領令は対象領域を規定しており、バイオテック、核エネルギー(核分裂と核融合)、宇宙探査、量子情報科学、物質科学、半導体の分野で基礎研究を加速させる。これらの領域で、AIエージェントが科学者と共同で研究を進め、シミュレーションや研究成果評価の過程を自動化する。実際に、AIモデルは核融合の研究開発の必須要件で、Google DeepMindは核融合ベンチャー「Commonwealth Fusion Systems」と共同でトカマク型(Tokamak)核融合炉の開発を進めている(下の写真)。

出典: Google DeepMind

ミッションへの期待と限界

ジェネシス・ミッションは科学技術発展に大きく寄与すると期待されている。一方、ミッションは大統領令で規定されたプロジェクトで、政権の権限が及ぶ範囲が限定される。予算に関しては連邦議会が権限を持ち、ジェネシス・ミッションは設定された予算内で進められる。具体的には、現行予算や研究者を再配分してプロジェクトを進めることになる。エネルギー省の限られた予算と研究者でどれだけの成果を得ることができるのかが最大の課題となる。

出典: Generated with Google Gemini 3 Pro Image 

AIアポロ計画

トランプ政権はジェネシス・ミッションをAI世代のアポロ計画と呼ぶ(上の写真、イメージ)。停滞しているサイエンス基礎研究を推し進める起爆剤として位置付ける。アポロ計画は、米国と旧ソビエト連邦の冷戦の中で、宇宙開発における覇権を目指す構図となった。ジェネシス・ミッションは、米国と中国でし烈なAIレースが進む中で、安全保障の観点から科学技術を加速させ、サイエンス分野で世界の覇権を握ることを使命とする。

Anthropicとトランプ政権のバトル!! 企業側はAI規制を求め政権側は自由な開発を促進、AI規制緩和が進む中Anthropicは重大な懸念を表明

AIフロンティアモデルを開発しているAnthropicはトランプ政権に対し、AI製品を出荷する前に、政府が試験を実施し安全性を確認することを提唱した。一方、政権側はAI基本指針「AIアクションプラン」に基づき、AI規制を緩和し開発を促進する政策を取る。AnthropicはAI規制緩和に重大な懸念を表明し政府に対策を求めた。政府側はAnthropicが過度に危機感を煽っていると解釈し、両者でAI政策を巡るバトルが勃発した。

出典: Generated with Google Gemini 3 Pro Image

Anthropicと政権のバトル

AnthropicのCEOであるDario Amodei(下の写真、左側)は講演会などのイベントで、AIフロンティアモデルは理解できていないリスクを内包しており、安全対策が必要と主張する。これに対し、トランプ政権のAI責任者David Sacks(右側)は、Anthropicは過度に恐怖を駆り立て、政府にAI規制を導入することを求め、事業を優位に展開する作戦であると主張する。この戦略は「Regulatory Capture(社会の利益より特定企業の利益を優先する政策)」で、AI規制が導入されるとスタートアップ企業などはこれに準拠することができず、Anthropicが優位にビジネスを進めることができると解析する。

出典: Generated with Google Gemini 3 Pro Image 

Anthropicの提言

これに対し、Anthropicは会社としての公式な見解を公表し意図を明らかにした(下の写真)。また、米国がAI市場でリーダーのポジションを維持するために必要な項目を提示した。この中で、連邦政府が統一したAI規制政策を示すことが重要としている。州政府が独自にAI規制を施行すると、全米で50の規制政策が運用されることになり、企業にとって大きな負担となる。

出典: Anthropic 

安全試験の実施を求める

更に、AnthropicはAI製品を出荷する前に安全試験を実施すべきと提言している。対象はAIフロンティアモデルを開発している大企業で、スタートアップ企業などを除外する。Anthropicの他に、OpenAIやGoogleなどが安全試験の対象となる。この指針は先に制定されたカリフォルニア州のAI規制法「SB 53」を踏襲するもので、年収が5億ドル以上の企業を対象とする。

Anthropicは公共営利法人

Anthropicは営利団体であるが「Public Benefit Corporation(公共営利法人)」として設立された。Anthropicは利益を上げることを目的とするが、同時に、公共の営利を探求することをミッションとする。実際に、AnthropicはAIモデルの安全技術開発を最重要項目と位置付け、信頼できるAIモデルを開発している。AIフロンティアモデルの判断ロジックを解明する研究や、アルゴリズムが人間の価値にアラインする研究を展開し、その成果を一般に公開している。

米国政府との共同作業

Anthropicと政権側で指針について意見が対立するが、実際には、Anthropicは米国政府とフロンティアモデルの安全性に関し共同プロジェクトを進めている。トランプ政権はAI開発を推進しリスクを評価する部門として「Center for AI Standards & Innovation (CAISI)」を設立した。AnthropicはCAISIと共同で安全評価プログラムを実施しその成果を公開した。また、Anthropicは英国政府の「UK AISI」と提携し、安全試験を実施しており、米英両国間でAIセーフティに関するコラボレーションを進めている。

出典: Generated with Google Gemini 3 Pro Image 

安全試験のプロセス

このトライアルは安全試験の標準テンプレートを確立することを目的としている。AI安全試験は政府側CAISIが実施し、Anthropicは出荷前のAIモデルへのアクセスを許諾し、試験に必要な情報を提供する。CAISIはモデルに対しストレス試験を実施しシステムの脆弱性を洗い出す。この方式は「Red-Teaming」と呼ばれ、開発者がモデルに対しジェイルブレイクなどのサイバー攻撃を展開する。また、攻撃チームは生物兵器製造に関する危険性を検証する。検証結果はAnthropicと共有し、この情報を元にモデルを強化する。

自主規制

安全試験の標準プロセスが確定したら、各企業は自主的にこれを適用し安全性を確認することができる。Anthropicは製品出荷前の安全試験はあくまで自主規制で法令で縛るべきでないとのポジションを取る。OpenAIなどの大企業がこの安全試験に自主的に参加しAIフロンティアモデルの安全性を担保することを目標とする。企業としては、政府と安全試験を実施することで、事実上の政府認証を受けることになり信用度が向上する。また、この安全試験プロトコールをベースとして、安全評価技術の標準化が進むと期待される。

Anthropicが孤軍奮闘

トランプ政権はAIアクションプランでAI規制を緩和しイノベーションを推進する政策を取る。AI開発企業はこの政策が強い追い風となり、開発の自由度が増し、実際にAI技術開発が急進している。一方、業界の中でAnthropicだけがこの指針に異を唱え、政府に全米を統括するAI規制を求めている。AnthropicはAIフロンティアモデルの安全性に関し重大な懸念を示し、政府に対応を求めているが、他のAI開発企業は目立った動きを示していない。Anthropicとトランプ政権のバトルはどう決着するのか業界が注目している。