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トランプ大統領のAIアクションプランで米国AI産業が激変!!OpenAIはGPT-5を連邦政府に無償で提供、モデルをオープンソースとして公開

ホワイトハウスは2025年7月、AI基本政策「AIアクションプラン(AI Action Plan)」を公表し、トランプ大統領は三つの大統領令に署名した。AIアクションプランと大統領令は三つの指針から構成され、AI開発の加速、インフラの整備、技術の標準化で、これを達成するためのアクション項目を規定する。OpenAIはAIアクションプランに沿って新たな事業戦略を相次いで発表した。GPT-5を連邦政府に無償で提供し、モデルをオープンソースとして公開した。米国AI企業はAIアクションプランに準拠するため事業戦略を大きく転換し、トランプ大統領の影響力の甚大さを映し出した。

出典: Generated with OpenAI GPT-5

AIアクションプランと大統領令

AIアクションプランはトランプ政権のAI基本政策を規定したもので、AI技術革新の加速、AI開発のためのインフラ整備、技術の標準化の三つの基軸からなる。トランプ大統領はAI基本政策に関する三つの大統領令に署名し、米国政府の新たなAI政策が起動した。AIアクションプランを制定した背景には中国との技術競争がある。トランプ政権はAI開発を1960年代の宇宙開発競争に例え、米国が勝利しなければならないとしている。

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連邦政府にAI導入を指示

トランプ政権はAIアクションプランで連邦政府に最新のAIモデルを導入することを求めた。AIによりワークフローを自動化し、内部プロセスを効率的に運用し、事務処理を軽減することを目的とする。これを受けて、General Services Administration (GSA)が連邦政府の窓口となり、このプログラムを実行する。GSAは連邦政府の独立機関で物品やサービスの調達など総務の業務を担う。

OpenAIの新戦略

トランプ政権のAIアクションプランに沿って、OpenAIは8月6日、AIモデルを連邦政府に無償で提供することを発表した。OpenAIはGSAと提携し「ChatGPT Enterprise」を来年一年間1ドルで提供する。ChatGPT Enterpriseは企業向けのライセンスで、チャットモードでAIモデルを使うサービスとなる。OpenAIは最新モデル「GPT-5」をリリースしており、連邦政府はこのモデルを無償で使うことができる。OpenAIとしては、フリーミアムのモデルで、無償でChatGPTを導入し、その後、有償モデルに切り替える狙いがある。

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AIモデルの安全基準

AIアクションプランは連邦政府がAIモデルを導入する際に守るべき安全基準を規定している。AIモデルが安全基準に準拠していることを条件に導入を認める構造となる。具体的には、AIモデルは「Truth-Seeking(真実を探求)」し、「Ideological Neutrality(イデオロギーに中立)」であることが要件となる。前者は、モデルの出力が正確で事実に基づいており、意図的にミスリードしないことを規定する。後者は、モデルが政治的にまた文化的に特定の方向に偏らないことを求めている。リベラルにバイアスするAIは「Woke AI」と呼ばれ、安全基準は中立なポジションを取ることを求めている。

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調達規定の制定

大統領令は連邦政府がAIモデルを購入する際の調達規定「Procurement Rule」を制定することを求めている。調達規定には上述の安全基準が含まれ、また、モデルのセーフティ規格などが設定される。大統領令は行政管理予算局(Office of Management and Budget 、OMB)に対し、具体的な調達規定を120日以内(2025年11月まで)に制定することを求めている。更に、国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology 、NIST)に対して、モデルの安全性を評価する技法の開発を求めている。これは国家安全保障の観点から、CBRNE(下の写真)やサイバー攻撃に関する危険性評価技法の開発を求めている。

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OpenAIがテストケース

OpenAIがAIアクションプランに沿って連邦政府にAIモデルを提供する最初のケースとなり、業界から注目されている。OpenAIはOMBにより制定される調達規定に従って安全なモデルを納入することが求められる。具体的には、OpenAIは調達規定に従ってAIモデルを検証し、その結果をドキュメントにまとめて提出し、OMBによる評価を受けるプロセスとなる。

規制緩和と安全規格

トランプ政権はAIモデルの安全評価に関する規制を緩和したが、実際には独自のルールに従って安全性を確認する作業が求められる。OMBの調達規定がリリースされるまでは安全評価のプロセスは不明であるが、バイデン政権から制約が大きく緩和されるわけでは無い。AIモデルの出力精度が問われ、CBRNEやサイバー攻撃などモデルの安全性を検証する義務が課される。

オープンソース

AIアクションプランはAI開発企業にモデルをオープンソースとして公開することを求めている。スタートアップ企業やアカデミアはオープンソースを使うことで研究開発を加速する。また、オープンソースは米国の価値を内包するシステムで、これをグローバルに展開することで、”アメリカンAI”の普及を目指す。具体的には、ビジネスや基礎研究における国際標準規格をアメリカの技術で構築し、トランプ政権はグローバルな覇権を握ることを目論んでいる。

OpenAI gpt-oss

これに呼応してOpenAIは8月5日、オープンソースモデル「gpt-oss」を公開した。OpenAIはこれを「Open-Weight Reasoning Model (オープンウェイトの推論モデル)」と呼び、「gpt-oss-120b」と「gpt-oss-20b」の二つのモデルを投入した。オープンソースであるが性能は「o3」レベルで高機能なオープンソースとなる。OpenAIはビジネスモデルを大転換し、クローズドソースとオープンソースのハイブリッドな事業戦略を取る。

出典: OpenAI

トランプ政権のAI規制

OpenAIに続き、GoogleとAnthropicも行政管理予算局のベンダーリストに追加され、AIモデルを連邦政府に供給することが認められた。これら企業はAIモデルを倫理的に運用することを誓約し、また、連邦政府の安全基準に準拠することを確約した。OMBのルールブックが安全審査のガイドラインとなり、これに準拠することが求められる。OMBのルールブックは120日後にリリースされる予定で、これが米国の事実上の安全基準となり、トランプ政権下でAI規制の条件が確定する。

トランプ大統領は「AIアクションプラン」を発表、AI開発とインフラ整備を加速、企業にAIモデルをオープンソースとして公開することを求める、”アメリカンAI”を国際標準技術として輸出し世界で覇権を握る

ホワイトハスは7月23日、トランプ政権のAI基本政策「AI Action Plan」を公開した。これは米国連邦政府のAIに関する基本指針と計画書で、各省庁にこれに沿ったアクションを求める構造となる。AI活動指針は三つの柱から構成され、AI開発の加速、インフラの整備、技術の標準化で、これを達成するための活動項目を定めている。トランプ大統領はAI基本政策に関する基調講演を行い、アクションプランに関する大統領令に署名した(下の写真)。

出典: White House

トランプ政権のビジョン

活動指針「AI Action Plan」(下の写真)はAI開発を1960年代の宇宙開発競争に例え、米国が勝利しなければならないとしている。また、スタートアップ企業や大学研究機関の技術革新を支援するため、巨大テックはAIモデルをオープンソースとして公開することを求めている。更に、“アメリカンAI”を同盟国に輸出し、これをグローバル・スタンダードとすることで、米国が世界で覇権を握る構想を打ち出した。

出典: White House

バイデン政権からの転換

トランプ大統領は就任直後、大統領令「Executive Order 14179」に署名し、AI政策に関する新たな指針を明らかにした。これはバイデン政権のAI規制を撤廃し、AI開発を推進するための基本機軸を提唱したもので、90日以内に具体的なアクションプランを制定することを求めた。AI Action Planはこれに従って策定され、AI技術革新の加速、AI開発のためのインフラ整備、“アメリカンAI”のグローバル展開の三つの基軸からなる。

基本指針1:AI技術革新の加速

アクションプランはAI規制を緩和することでAI技術開発を加速することを基本指針とする。また、AIがバイアスすることなく公正であることを求め、NISTに対しこれを検証するための評価技法の開発を求める。更に、アクションプランはAI開発企業にモデルをオープンソースとして公開することを求める。これにより、スタートアップ企業は技術革新を生み出し、また、米国が標準技術を提供することで世界におけるAI開発のリーダのポジションを維持する。

基本指針2:AI開発のためのインフラ整備

アクションプランはAI開発のためのインフラ整備にかかる認可のプロセスを簡素化し短期間で施設建設できるよう求めている。これにより、データセンタの建設、半導体工場の建設、及び、送電網の整備における認可の手順が簡素化され、短期間で開発インフラを整備する。また、セキュリティの強化を求めており、AIのインシデントを管理する組織「AI ISAC」を創設し、情報を連邦政府で一元管理する体制の構築を求めている。

基本指針3:アメリカンAIのグローバル展開

アクションプランは米国がアメリカ製AI「American AI」を同盟国に提供し、国際社会で連携することを求めている。中国がAIモデルをオープンソースとして公開し、国際社会で存在感を拡大している。これに対抗する政策で、米国がAIプロセッサやAIモデルなど「AIスタック」を同盟国に輸出することでリードを維持する戦略となる。また、米国政府は民間企業と共同で、フロンティアモデルが内包するリスクを検証する。具体的には、サイバー攻撃への脆弱性やCBRNE兵器製造の危険性を査定する。

出典: Generated with Google Imagen 4

オープンソース

アクションプランはAI開発企業にモデルをオープンモデル(オープンソース及びオープンウエイト)として公開することを求めている。スタートアップ企業やアカデミアはオープンモデルを使うことで、技術革新を加速する。また、連邦政府はオープンモデルを導入することで、機密データを組織内で処理することで、安全にAIモデルを運用する。また、オープンソースモデルは米国の価値観を内包するシステムで、これをグローバルに展開することで、ビジネスや基礎研究における国際標準規格を構築し、グローバルな覇権を握る。

モデル評価技法

アクションプランはAIモデルの性能と機能を評価する技術の開発を求めている。バイデン政権はAI開発企業にモデルの安全評価を実施することを義務付けたが、トランプ政権はこの規制を撤廃した。アクションプランは連邦政府がモデルを評価するためのガイドラインの策定を求めている。また、コンソーシアム「NIST AI Consortium」を設立し、ここで測定科学に関する技法の開発を求めている。更に、長期的な視点では、アクションプランは連邦議会がAIモデルの性能や機能を測定する法令の制定を求めている。

著作権とフェアユース

トランプ大統領はアクションプランの発表イベントで講演しAIの基本指針を明らかにした(下の写真)。その冒頭で大統領はAIモデルの開発と著作権の関係についての解釈を示した。AIモデルの開発で教育データとして様々なコンテンツを読み込むが、これはフェアユースであり著作権を侵害するものではないとの見解を明らかにした。AIモデルは著作物をコピーするのではなく、その意味を学習するもので、常識的な解釈が必要になると述べた。

出典: White House

バイアスに関する解釈

アクションプランはバイアスについてトランプ大統領のビジョンを反映した解釈を示している。バイデン政権ではAIモデルのバイアスは消費者を差別する判断など個人の権利の保護を指標とした。これに対し、トランプ政権ではバイアスとは「Woke AI」を指し、リベラルなAIを廃絶する指針を示した。多様性・公平性・包括性を評価するAIは過度にリベラルとし、これを制限し中立なAIモデルの開発を求めている。

中国とのAI競争に勝利する

トランプ大統領はグローバルなAI開発競争で中国に勝利し主導的な立場を維持することを最重要指針とする。AI市場で覇権を握るためには、エコシステムを拡大し、米国がAIにおける標準技術を定め、これを世界市場に提供する戦略を取る。これにより国内では、経済効果を高め防衛能力を拡大する。米国が宇宙開発競争で勝利したように、AI開発において同盟国と提携し、この競争を勝ち抜く。アクションプランが勝利のための戦略を規定し、米国は官民が連携しAI技術革新を加速する。

トランプ氏はサイバーセキュリティを強化する大統領令に署名、規制や義務を軽減するが基礎技術はバイデン政権の政策を踏襲、関税政策で混乱するなかIT政策では論理的な指針を示す

トランプ大統領令は6月6日、サイバーセキュリティを強化するための政策に関する大統領令(Executive Order)に署名した。大統領令はバイデン政権の大統領令を修正するかたちで制作され、過度な規制や義務を軽減し、サイバーセキュリティの基礎技術の開発を強化する。最大の脅威は中国とし、サイバー攻撃を防御するため技術開発に関するアクションを規定した。トランプ政権はサイバーセキュリティ政策についてバイデン政権の方針を大きく変更すると述べているが、実際に大統領令を読むと、技術開発については多くの部分を継承している。

出典: Getty Images

サイバーセキュリティ大統領令の概要

トランプ政権の大統領令(EO 13800)はオバマ政権の大統領令(EO 13694)とバイデン政権の大統領令(EO 14144)を修正する構造となっている。大統領令はサイバー攻撃への耐性を高めるために各省庁が取るべきタスクを定めている。対象は、ソフトウェア、AI、量子技術で、安全技術の開発を強化するためのアクション項目と開発スケジュールが規定された。特に、NIST(National Institute of Standards and Technology、国立標準技術研究所)が重要な役割を担い、このプロジェクトの中心組織となる。

出典: The White House

最大の脅威は中国

大統領令は中国(People’s Republic of China)が米国にとって最大の脅威になるとの認識を示している。中国が米国政府や民間企業に対し継続してサイバー攻撃を展開しており、最大の脅威となり、ロシア、イラン、北朝鮮がこれに続く。この情勢の下で、大統領令は国家のデジタルインフラやサービスを守るためのサイバーセキュリティ技術の開発を規定する。対象は、ソフトウェア、量子技術、AIシステムなどで、これらの分野で安全技術を強化するための具体的なアクションを定めている。

ソフトウェア

大統領令はセキュアなソフトウェアを開発するためのフレームワークの開発を規定している。このフレームワークは「Secure Software Development Framework」と呼ばれ、バイデン政権下で商務省配下のNISTが開発したもので、大統領令はこれをアップデートして機能を強化することを求めている。大統領令はアクションのスケジュールを定めており、フレームワークの初版を2025年12月1日にリリースし、その後120日以内に最終版を公開することを規定している。

量子技術

大統領令は量子コンピュータの登場に備え、暗号化技術を強化することを求めている。量子技術の開発が進み、量子コンピュータにより現在利用している暗号技術が破られることになる。この量子コンピュータは「cryptanalytically relevant quantum computer (CRQC)」と呼ばれ、暗号技術を強化する必要がある。既に、米国政府は量子コンピュータに耐性のある暗号技術「post-quantum cryptography (PQC)」の開発を進めている。大統領令はこの研究開発を強化し、安全技術の適用を推進するためのアクションを定めた。具体的には、2025年12月1日までにCISA(Cybersecurity and Infrastructure Security Agency、サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁)を中心にPQCの製品カタログをアップデートし、連邦政府内でPQCの導入を推進する。

出典: NIST

AIシステム

大統領令はAIシステムのセキュリティを強化することを規定している。AIシステムはサイバー攻撃を防御するツールとなり、同時に、AIシステムがサイバー攻撃への耐性が低いという課題を抱えており、この二つの側面を強化するためのアクションを規定している。AIシステムはサイバー攻撃を検知するための有効な防衛技術で、大統領令は連邦政府の研究成果を大学研究機関に公開することを求めている。また、AIシステムはサイバー攻撃に対する脆弱性を含んでおり、この情報を省庁内で共有することでサイバーセキュリティを強化することを規定している。NISTなどが中心となり、これらのアクションを2025年11月1日までに完了する。

過度な負担の軽減

大統領令は同時に、サイバーセキュリティに関する過度な規制条項を削除した。その事例がデジタルIDで、バイデン政権はこの技術の開発普及を規定した。トランプ政権の大統領令はこの規定を削除し、このプロジェクトを停止した。デジタルIDとは電子証明システムで、運転免許証など証明書をデジタル化するプログラムとなる。具体的には、州政府がデジタルな運転免許証を発行するプログラムを支援し、また、連邦省庁で電子証明システムを開発運用することを規定した。トランプ政権は、このプログラムは過度な負荷をかけるとしてこの条項を停止した。

出典: The White House

サイバーセキュリティの組織体制

大統領令の実行にあたってはNIST(国立標準技術研究所)やCISA(サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁)が中心組織となり他の省庁をリードしていく。NISTは商務省配下の組織で、計量学、標準規格、産業技術の育成などの任務を担ってる。NISTはAIの研究や標準化を進め、信頼されるAIが経済安全保障に寄与し、国民の生活を豊かにするとのポジションを取る。CISAは国土安全保障省配下の組織で、連邦政府のサイバーセキュリティの司令塔となり、サイバー攻撃を防衛する役割を担う。

セキュリティ政策ではバイデン政権の指針を踏襲

トランプ大統領は強硬な関税政策を打ち出し、世界経済に大きな影響を与え、投資やビジネスにおける不確実性が異常に高まっている。これに対しセキュリティ政策は、規制緩和を大きな柱とし、技術開発を推進する構造となっている。バイデン政権の政策から大きく転換するとしているが、公表された大統領を読むと、修正はマイナーチェンジに留まり、基本指針を継承している。IT政策では理にかなった政策を打ち出し、過去の研究成果が継承されている。

トランプ政権はAI規制からAI安全技術標準化と開発支援に方向転換、「AI Safety Institute」を「Center for AI Standards and Innovation」に改名しAI製品の安全検査を企業の判断に委ねる

トランプ政権は6月3日、米国のAI政策を大幅に見直し、規制強化から安全技術の標準化とイノベーションを促進する方向に大転換した。商務省のハワード・ラトニック(Howard Lutnick)長官が明らかにした。現行の「AI Safety Institute(AI安全管理室)」の名称を「Center for AI Standards and Innovation(AI標準化・技術推進室)」に改名した。新組織は、AIモデルの安全を検証するベンチマーク試験などの安全技術の開発を重点的に進める。AI開発企業は安全基準に準拠することを自主的に検証する。トランプ政権は米国がAI技術で世界をリードする政策を展開しているが、今回の組織改正はこのビジョンを反映したものとなる。

出典: US Commerce Department

組織名称の変更

国務長官はAI安全政策を大きく見直し、組織名称を「AI Safety Institute(AISI、AI安全管理室)」から「Center for AI Standards and Innovation(CAISI、AI標準化・技術推進室)」に改名することを明らかにした。AISIはバイデン政権で設立された組織で、AIを安全に開発運用するための技術開発をミッションとした。これに対し、CAISIは、AISIで開発された安全技術を継承し、これにAI開発を推進するミッションを追加する。

安全技術の標準化

国務長官はAI規制を義務化することはAI開発の妨げになるとして、企業が自主的に規定に準拠すべきとの立場を取る(下の写真)。国務長官は「安全規格への準拠を義務付けることが技術革新の妨げとなっており、イノベーションの障害とならない標準技術を制定する」と述べた(先頭の写真)。このためにCAISIはAI安全技術の標準化を進め、企業はこれを使ってAI製品の安全性を検証する。具体的には、安全試験の実施は企業の判断に委ね、また、試験結果を非公開とすることで、企業の知的財産権を保護する。

出典: Reuters

安全なAIを開発するためのアクション

CAISIは連邦政府における民間企業との窓口となり、安全技術や新技術を共同で開発する。この目的に沿って、CAISIが実施すべきアクションプランが規定された:

  • 安全ガイドラインの制定:AIシステムのセキュリティを評価する技法とそれを改良する手法について、ガイドラインやベストプラクティスを制定する。民間企業と共同で安全検査技術を開発しこれを標準化する。
  • 民間企業との契約:民間企業がAI製品の安全性を検査することに関する契約を制定する。安全検査の実行は企業の判断に委ね、また、検査結果は非公開とする。AI製品のリスクをサイバーセキュリティやバイオセキュリティなど、国家安全に関連するものと位置付ける。
  • AIシステムの評価報告書:米国や敵対国のAIシステムの能力に関する報告書を作成する。国際社会におけるAI開発競争の状況をモニターしこれを報告する。
  • セキュリティの脆弱性の検知:敵対国のAIシステムによる攻撃に対する脆弱性や情報操作などの攻撃を把握する。AIを悪用したサイバー攻撃の検知を強化する。
  • 連邦省庁との連携:国防省など連邦省庁と連携しAIシステムの評価技法を開発し、この技法に従って評価を実行する。
  • 他国のAI規制との整合性:他国のAI規制から米国のテクノロジーを守るための代表部門となる。米国のAI技術が国際標準となるよう研究開発を進める。

安全検査を自主規制

バイデン政権ではAI開発企業が製品を出荷する前に安全検査を実施することを義務付けたが、トランプ政権はこの規制を緩和し、安全検査の実施を企業の判断に任せるとしている。また、安全検査の方式を官民共同で開発し、これを安全性評価のための標準技術とする。標準技術の制定では、企業や関係団体から意見をヒアリングし、これらを反映した内容とする。

出典: US Commerce Department

EUとの整合性

EUは既にAIを運用するための規制法「EU AI Act」を運用しており、欧州で事業を展開するためには、この規制に準拠することが求められる。これに対し商務長官は、アメリカの技術を外国政府が不当に規制することから防衛すると述べており、CAISIがこの任務を担うことになる。CAISIがアメリカ政府を代表する組織として、EUなどとAI規制に関する運用条件を調整することになる。

AI規制を緩和すると言うが。。。

CAISIによりAI製品を評価するためのベンチマークなど安全評価技術が開発され、この規定がAI企業に大きな影響を与える。安全評価テストの実施は企業の判断に委ねるとしているが、大手企業はこれに準拠する公算が強い。EU AI ActはAIモデルを運用する企業に厳しい規定を課しており、米欧間のAI規制の互換性の調整が大きな課題となる。一方、トランプ政権はAIの規制緩和を推進すると表明しているが、商務省の発表内容を読むと、バイデン政権の指針と大きな差異は認められない。ただ、AI規制の詳細はこれから制定されるので、実際にどのような枠組みとなるのか詳細をフォローしていく必要がある。

アメリカ政府のAI政策が規制強化から開発促進に大転換!!OpenAIは一転してAIの規制緩和を求める、連邦議会は特区を設立しAI開発を後押し

アメリカ議会上院は公聴会を開催し、AI政策に関しOpenAI、AMD、Microsoftなどから意見を聴取した。公聴会の目的は、アメリカがAI開発で勝利するための政策の立案で、規制緩和、技術革新、中国との競争などで意見が交わされた。トランプ政権となり、アメリカ政府はAIの規制から推進に政策を一転した。OpenAIは、前政権では規制強化を求めたが、公聴会では一転して、規制緩和を主張した。連邦議会は開発特区(サンドボックス)を設立し、ここでAIをフリーハンドで開発させる構想を明らかにした。

出典: National Park Service

公聴会の概要

アメリカ連邦議会上院は、AI競争で勝利することをテーマ「Winning the AI Race: Strengthening U.S. Capabilities in Computing and Innovation」に公聴会を開催し、主要企業から意見を聴取した。公聴会には、OpenAIのSam Altmanなどが出席し意見を陳述した(下の写真)。AltmanはAI開発の規制を緩やかにすることを求めた。また、トランプ政権期間中に人間の知能を超えるAIモデルAGI(Artificial General Intelligence )が生まれるとの見通しを示した。公聴会の委員長であるTed Cruz上院議員は、新たなAI法案「AI Regulatory Sandbox」の構想を明らかにした。

出典: U.S. Senate Committee on Commerce, Science, and Transportation

単一の緩やかな規制

Altmanは連邦政府が全米をカバーする法令を制定し、緩やかなAI規制を実施することを求めた。現在は、全米50州が異なるAI規制法を制定し、開発企業はこの複雑な規則に準拠することを求められている。Altmanは、AI製品を出荷する前に安全検査を義務付けている現行法式は、企業の大きな負担となるとして、緩やかな規制を求めた。ただし、規制の内容については回答を控えた。

移民によるAI人材の確保

AltmanはAI研究者やエンジニアの採用を容易にするための政策を求めた。アメリカが科学技術で世界のリーダーとなっている大きな要因は移民政策にある。優秀な研究者やエンジニアがアメリカに移民し、ハイテク産業の基盤を支えている。AIにおいては、研究者やエンジニアがビザを取得するプロセスを簡素化することを要求した。

スケーリングとAGIの登場

Altmanはスケーリングの法則は継続しており、AIモデルのインテリジェンスは幾何級数的に向上しているとの見解を示した。AIモデルの教育プロセスにおけるスケーリングは緩やかになったが、インファレンスのプロセスでは実行時間を長くすると性能が向上している。また、AIモデルで特定の性能に到達するためのコストは1年ごとに1/10となり、インテリジェンスの価格が低下している。更に、AIモデルが人間レベルの知能に達成するための開発期間は急速に短くなっており、Altmanはトランプ政権期間内に「AGI」が登場するとの見解を示した。

製品出荷ロードマップ

AltmanはOpenAIの製品開発ロードマップを示し、今後3年以内にAIモデルで大きな技術進化があると述べた。OpenAIの製品リリース計画は:

  • 2025年:AIエージェント、実社会の複雑なタスクを処理するモデル、病院における予約業務など
  • 2026年:科学分野でブレークスルー、気候変動や医療などの分野でAIモデルの活躍が期待される
  • 2027年:ロボティックス、AIモデルを搭載したロボットの登場、工場など実社会で生産性が向上する

米国技術を世界に拡散させる

MicrosoftのBrad Smith社長はアメリカがAI競争で勝つためにはAIのイノベーションとエコシステムの両方が必要であるとの考え方を示した(下の写真)。エコシステムとは、インフラ、プラットフォーム、アプリから構成されるAIシステムの全体モデルを示す。AI競争を優位に展開するためには、これらをアメリカの技術で提供する必要がある。特に、アプリのレイヤーでは、AIモデルが世界各国に拡散(Diffusion)すること必須で、多くの人に利用されることで、最終的な勝利者となる。このために、政府は過度な輸出規制を導入するのではなく、最小の規制で製品拡散を後押しすべきとの見解を示した。

出典: U.S. Senate Committee on Commerce, Science, and Transportation

アメリカ連邦議会の構想

公聴会で委員長のTed Cruz上院議員はAI規制法に関する構想を明らかにした(下の写真)。この法案は「AI Regulatory Sandbox」と呼ばれ、AI開発における規制を最小限に留め、技術革新を後押しする構造となる。AI開発を推進するための特別地区「サンドボックス(Sandbox)」を制定し、企業はここで製品を最小の制限の元で開発する。サンドボックスは法令に関する特別なエリアで、企業は政府機関(連邦取引委員会や司法省など)から法的な責任を問われることなく、自由にAI開発を進める。これはインターネットが登場した当初のアメリカ政府の政策を模したもので、黎明期のAI技術の開発を民間企業や個人が自由に進められる環境を提供する。

出典: U.S. Senate Committee on Commerce, Science, and Transportation

公聴会を聴くと

公聴会はOpenAIがAI政策を大転換した場となった。2023年に開催された公聴会では、Altmanは政府が厳格なルールを設定し、AIを安全に開発する政策を提言した。今回の公聴会では一転して、ライトタッチ(Light-Touch)な規制を導入することを提言した。企業が幅広い自由度を持ち、技術革新を優先できる環境の整備を求めた。同時に、DeepSeekなど中国企業がAI技術を急速に伸ばしており、連邦議会は米国企業に開発のペースを速めることを迫っている。民間企業と連邦政府はAI競争で勝利することを共通の目標としており、アメリカはAIを規制する政策から、開発を促進する方向に進み始めた。