Metaは10月12日に旗艦モデル「Muse Spark Wonder」を、15日にはオープンモデル「Muse Spark Open」を公開した。Metaが本格的にオープンウェイト市場に参入することで、米国のオープンAI市場が一挙に活性化した。これに先立ち、Thinking Machines Lab、Nvidia、Reflection AIといった企業がオープンAIモデルを投入しており、米国は本格的なオープン時代に突入した。オープンウェイトモデルは中国企業が独占的に供給してきたが、この流れが大きく変わることになる。

| 出典: Generated with OpenAI GPT-6.1 Sol |
オープンウェイトとは
システム情報が公開されているAIモデルは「オープンソース(Open Source)」と呼ばれてきたが、用語の定義には注意が必要となる。AIモデルにおいては「オープンウェイト(Open Weights)」の方式が主流となっている。オープンソースとオープンウェイトは同じではなく、それぞれ異なるモデルとなる。オープンウェイトとは、学習済みのパラメータ「重み(Weights)」が指定された条件のもとで公開されるモデルを指す。一方で、オープンソースの定義はさらに厳格で、これに加え、関連するソースコードやデータの情報、更に、システムを自由に使用、変更、共有できる権利が含まれる。現在公開されているAIモデルの殆どがオープンウェイトであり、本記事ではオープンウェイトの動向について詳しく解析する。
Meta Muse Spark Open
Metaはオープンウェイトモデル「Muse Spark Open」をリリースした。Muse Spark Openは、コーディング及び長期にわたるタスクを実行するエージェント向けに設計されたモデルとなる。パラメータ数は8,160億(816B)と大規模で、「Mixture-of-Experts (MoE)」アーキテクチャを取り、活性化されるパラメータの数は420億(42B)となる。また、100万(1M)トークンのコンテキストウィンドウ(データ処理容量)をサポートしている点も大きな特徴となる。この「Mixture-of-Expert」により、各ステップで消費される計算量が抑えられ、巨大モデルを効率的に処理できることが大きなメリットとなる。
巨大モデルをApple Mac Studioで稼働させる
Metaは巨大モデル「Muse Spark Open」をデスクトップ環境で稼働させることに成功した。 Appleの2台の「M5 Ultra Mac Studio」を連結して、Muse Spark Openをローカルで稼働させる(下の画像)。M5 Ultra Mac Studioは、それぞれ最大512GBのユニファイドメモリを搭載し、MLXフレームワーク(Appleシリコン向けの機械学習フレームワーク)を使用してモデルを稼働させる。これはハイエンドなワークステーション構成となるが、ローカル環境でAIエージェントの可能性を模索する開発者にとっては、極めて実用的な価値を持つオプションとなる。

| 出典: Mark Zuckerberg |
Meta Muse Wonder
Metaはこれに先立ち、10月12日、フラッグシップモデル「Muse Wonder」と「Muse Wonder Full」を発表した。 Muse Wonderは「Muse Spark」とは異なる独立したシリーズとなる。Metaはこれらをクローズドソースモデルとし運用する。これらのモデルは高度なエージェントタスクを実行するためのブレインとして位置付けられる。AI評価機関Artificial Analysisのベンチマークによると、Muse Wonderの性能は劇的に向上し、一気に業界第三位のポジションにランクインした(下のグラフ、左から3番目、Muse Wonder Full)。

| 出典: Artificial Analysis |
Metaのオープンウェイト戦略
「Muse Spark Open」と「Muse Wonder」のリリースは、Metaのオープンウェイト戦略を端的に示している。Metaはミッドレンジでオープンな普及戦略を取り、ハイエンドではプレミアムサービスを提供し、これら二つのモデルを組み合わせたハイブリッド事業を探求する。Mark Zuckerbergは、個人がAIの恩恵を享受できるよう、高度なAIは広く分散されるべきだと主張している。「Muse Spark Open」は、その主張を具体的な形で実装したものと言える。しかし、ビジネスの観点からは、旗艦モデルでプレミアムサービスを提供することで、利益を探求する筋書きを描く。
米国のオープンウェイト市場
米国市場では既に、水面下でオープンウェイトモデルの開発が早いペースで進んでいる。現時点におけるオープンウェイトモデル開発企業と製品の位置づけを纏めると次の通りとなる。

| 出典: VentureClef |
米国企業と中国企業の激突
オープンウェイトモデルは中国、クローズドソースモデルは米国、という構図が大きく変わることになる。米国はクローズドソースからオープンウェイトに大きく舵を切り、市場内で両者が共存する関係となる。組織は、高度なタスクや使用頻度の低いタスクにはクローズドモデルを使用する一方で、日々のワークフローにはオープンウェイトモデルをダウンロードして、これを最適化して利用する。また、極めて機密性の高いタスクの実行では、オープンウェイトモデルをローカルに展開する。その際に、中国モデルを使う代わりに、Muse Spark OpenやNvidia Nemotronなどが選択肢となる。米国企業はオープンウェイトモデルの開発で、正面から中国企業と激突することになる。