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トランプ政権の要請を受けAnthropicはFable 5などの運用を停止、規制緩和から厳格な規制に米国AI政策の歴史的転機

米国政府は安全保障のリスクを理由にAnthropicに「Fable 5」と「Mythos 5」の運用を停止するよう要請した。これを受け、Anthropicは両モデルのサービスを停止した。米国内だけでなく、日本を含む同盟国も両モデルへのアクセスが遮断された。トランプ政権はAI開発を促進する政策を取ってきたが、Anthropicのフロンティアモデルの運用停止を求めるなど、AI規制を極めて厳格に施行する方向に大転換した。

出典: Anthropic

米国政府の要請

Anthropicは6月12日、米国政府の要請を受け「Fable 5」と「Mythos 5」のアクセスをサスペンドすると発表した(上の写真、イメージ)。米国政府は国家安全保障を理由に、米国内外の非アメリカ人が両モデルにアクセスすることを停止することを求めた。Anthropicは即座に、両モデルの運用を停止した。

アクセス停止の理由

Anthropicは連邦政府から両モデルの運用停止を要請する書簡を受領したが、そこには要請理由は書かれていなかった。Anthropicは連邦政府との協議の中で、「ジェイルブレイク(Jailbreak)」がその要因であることを把握した。ジェイルブレイクとはプロンプトに特殊な文字列を挿入し、AIモデルの制御を奪う手法を指す。

出典: OpenAI GPT-5.5

Fable 5をジェイルブレイク

このケースでは、「Fable 5」に特殊なコードベースを入力することで、システムの制御を奪うことに成功した事例が報告された。Fable 5はMythos 5に強靭なガードレールを導入し、サイバー攻撃の機能を徹底的に抑止したモデルとなる。もし、Fable 5がジェイルブレイクされると、この強靭なガードレールが突破され、サイバー攻撃の武器となり、社会に甚大な被害をもたらす。

Anthropicの解釈

Anthropicはこのジェイルブレイクは「Narrow Jailbreak(限定的なジェイルブレイク)」であり、「Universal Jailbreak(広範囲なジェイルブレイク)」ではないとの見解を示している(下の写真、そのイメージ)。「Narrow Jailbreak」とはシステムの極一部の制御を奪うもので、サイバー攻撃の特定機能だけが使われるケースを指す。Fable 5のジェイルブレイクはこのケースに相当する。現実的に、「Narrow Jailbreak」を防ぐことは不可能で、このジェイルブレイクをOpenAI GPT-5.5に適用すると、ガードレールが突破されたことを明らかにしている。「Universal Jailbreak」はサイバー機能の全ての制御を奪うもので、Fable 5でこの事象は発生していない。

出典: OpenAI GPT-5.5

ジェイルブレイクの報告書

Fable 5がジェイルブレイクでガードレールが突破されたというインシデントはAmazonの研究者により発見され、CEOであるAndy Jassyが連邦政府に報告したとされる。ウォールストリートジャーナルなどが報道している。Andy Jassyが直接、ホワイトハウスと財務相長官Scott Bessentにコンタクトしこの事実を報告した。ホワイトハウスは緊急会議を開催し、セキュリティ専門家がこのジェイルブレイクを確認し、トランプ大統領が輸出管理令「Export Control Directive」を発行した。

米国社会で議論が白熱

Fable 5とMythos 5の輸出規制指示について、反対派と賛成派が激しく主張を展開し、国論が二分されている。規制反対派は、米国政府がジェイルブレイクを根拠に、両モデルの運用を停止させたことは過剰反応であると主張する。一方、規制賛成派は、Anthropicは政府にAI規制を求めており、実際に、規制が実施されると、今度は規制緩和を求めるのは、一貫性が無いと主張する。しかし、米国の世論は規制反対派が優勢で、連邦政府に輸出管理令の根拠を明らかにするよう情報公開を求めている。

トランプ政権はAI規制に急転換

トランプ大統領はAIのイノベーションを推進しAI規制を撤廃してきたが、Mythos Previewの出荷規制や今回のFable 5とMythos 5の運用停止命令で、AI政策が180度転換した(下の写真、イメージ)。トランプ政権はMythos Previewでサイバー攻撃の脅威を認識し、規制を導入する方向にピボットした。当面の課題は、Fable 5とMythos 5の運用停止措置が継続するのか、それとも、両者の協議で妥結に向かうのかが最大の関心事となる。

出典: OpenAI GPT-5.5

AI規制に向かうのならプロセスを定義

米国のセンティメントはフロンティアモデルに一定の規制を設けることに賛成の意見が多い。一方で、Fable 5の運用停止を唐突に要請したことで産業界に脅威と不安が広がっている。AI開発企業は次世代モデルの開発を進めており、どの基準を満たすと製品出荷が認められるのか、情勢を見極める姿勢に入った。AI規制に舵を切ることに共通の合意が形成されつつあり、次は、出荷基準のルール制定で、モデルの評価方法や安全基準などプロセスの構築が求められる。

AIがAIを開発するサイクルが始動!!AnthropicでClaudeが次世代Claudeを開発、性能進化が急激でリスク制御が不能となる、開発を中止せよとの声が高まる

Anthropicは今週、AIがAIを開発するサイクルが始まり、リスク制御が困難になる実態を報告書で公開した。このプロセスは「Recursive Self-Improvement」と呼ばれ、AIモデルが次世代のAIモデルを開発し、性能向上が循環的に起こる事象を意味する。エンジニアを介さず、AIモデルが超高速に進化し、人間がアラインメントを制御することが不能となる。Anthropicは「Claude Mythos Preview」の開発で、AIモデルがAIを開発するサイクルに突入した。

出典: Anthropic / OpenAI GPT-5.5

Recursive Self-Improvementとは

AI開発はエンジニアがプログラムをコーディングし、それを検証し製品化するプロセスで進められてきた。今では製品開発のプラクティスが激変し、AIモデルClaudeが次世代のAIモデルを開発し、循環的に性能や機能が向上する形態となった。エンジニアがコーディングし、それを検証するには時間がかかるが、AIモデルはこの過程を超高速で実行し、進化速度が脅威的に向上する。ソフトウェア開発ではエンジニアの作業がボトルネックとなり、この過程をスキップすることで高速開発を実現した。

AI開発のサイクル

AIがAIを開発するプロセスをAnthropicの製品で検証すると次のようになる(下の写真)。当初は、エンジニアがClaudeをチャットボットとして使い、プログラム開発を進めてきた。これがAIエージェントに進化し、今ではClaude Codeがプログラム開発の多くの部分を担う。将来はこのモデルが更に進化し、プログラム開発の全てのプロセスをAIエージェントが担い、人間の介入は必要なく、超高速で機能が成長する。このループを「Recursive Self-Improvement」と呼ぶ。

出典: Anthropic

Anthropicのプログラム開発の進化

  • チャットボット(最上段と二段目):エンジニアはチャットボットでシンプルなコードを生成
  • コーディング・エージェント(三段目):エージェントがプログラムの多くの部分をコーディング (2025年から2026年)
  • コーディング・エージェントの自動化(四段目):エージェントが多くのエージェントを使いプログラムを開発 (現時点のモデル)
  • コーディング・エージェントがソフトウェア開発を全自動化(最下段):エンジニアの介在無しにエージェントが多数のエージェントを使ってプログラム開発の全てを実行 (未来像)

Anthropicのモデル開発の速度

Anthropicはコーディング・エージェント「Claude Code」を使ってAIモデルの開発を実行しているが、AIの進化で開発速度が劇的に向上した。エンジニアのプログラム開発の効率を評価すると、2025年までの平均を「1.0」とすると、最新モデル「Claude Mythos Preview」の開発ではその指標が「8.0」と8倍に急増した(下のグラフ)。エンジニアは従来に比べ8倍の量のプログラムを生成できることを意味する。これはClaudeの機能進化によりコーディング・エージェントがプログラム開発の多くの部分を実行するためである。

出典: Anthropic

Claude Codeの機能の進化

コーディング・エージェント「Claude Code」がプログラムの多くの部分を開発できるようになったのは、タスク実行能力が大きく進化したことによる。AnthropicはClaude Codeの機能の進化についてそのデータ公表した(下のグラフ)。これはClaude Codeがタスクを実行した際の成功率の変遷を評価したもので、2026年に入り、成功率が格段に向上している。Claude CodeはAIモデルをブレインとしプログラム開発を実行する構成で、「Claude Mythos Preview」や「Claude Opus 4.7」で機能が著しく向上した。

出典: Anthropic

このペースでAI開発が進むと

AnthropicはAI開発の未来像を予測し、開発企業や社会が取るべきアクションを提案した。AIモデルは人間のエンジニアの能力を凌駕し、AIが設計や開発や検証を実行し、自身で次世代のAIを開発する「Recursive Self-Improvement」のサイクルがフルに実行される。人間の介入なくAIモデルが開発され、リスク管理や人間とのアラインメントなど、安全機能がどのように実現されるのか予測不能となる。AIモデルがブラックボックスとなり、人間が制御することが極めて困難となる。

AI開発を停止するには

AIが高度に進化しリスクが増大することを抑止するため、AI開発を一旦停止せよとの声が高まっている。AnthropicはAI開発中止の議論について懐疑的な見解を示している。Anthropicが次世代モデルの開発を停止しても、競合他社の開発が続きリスクを抑制することはできない。また、中国のAI開発は継続して進み、米国は安全保障で大きな負債を背負うことになる(下の写真、そのイメージ)。AnthropicはAI開発を停止するためには国際間でフレームワークを構築し、関係国と同調することが不可欠としている。米国と旧ソビエトで核戦力全廃条約が締結され、中距離ミサイルを廃棄し、核攻撃の脅威を低減した。これと同様に、AI開発のリスクを制御するにはグローバル社会における国家間の合意形成が必須となる。

出典: OpenAI GPT-5.5

半導体チップの過激なアーキテクチャ、CerebrasはウェーファサイズのAIプロセッサを開発、インファレンス性能で業界トップレベルに到達

シリコンバレーに拠点を置く企業Cerebras Systemsは独自の手法でAIプロセッサを開発している。Cerebrasは5月14日、ナスダック市場に新規上場し、調達額は55億5000万ドルと、今年最大の新規上場となった。CerebrasはAI処理に特化した半導体を開発しており、ウェーファ全体を単一のプロセッサとする過激なアプローチを取る(下の写真)。これを実現することは不可能と言われたが、多くのイノベーションでブレークスルーを達成した。ウェーファサイズのプロセッサはGene Amdahlにより提唱されたが、40年後、Cerebrasがこのビジョンを実現した。

出典: Cerebras Systems

Cerebrasとは

Cerebrasはカリフォルニア州サニーベールに拠点を置く企業で先進的な手法で半導体を開発してきた。このプロセッサは「Wafer Scale Engine (WSE)」と呼ばれ、単一のウェーファに多数の演算ユニット「コア(Core)」を搭載する構造となる。WSEはスパコンのエンジンとして使われ、CerebrasはG42と共同でAIスパコン「Condor Galaxy 3」を開発した(下の写真)。また、CerebrasはWSEを機械学習のエンジンとして市場拡大を狙ったが、アプリケーションはニッチで低迷を続けてきた。

出典: Cerebras Systems 

インファレンス・コンピューティング

大規模言語モデルや推論モデルの急速な普及がCerebrasの大きな転機となった。WSEはこれらモデルの実行(インファレンス)で高い性能を達成し、Cerebrasはフロンティアモデルの実行エンジンに対象市場を絞り込んだ。WSEはフロンティアモデルの処理をGPUに比較して15倍から20倍の速度で実行する。Artificial Analysisのベンチマークによると、最新プロセッサ「WSE-3」でKimi 2.6を実行すると、その性能はオープンソースの中でトップの性能をマークした(下のグラフ)。また、Googleなどのトップ集団に迫る性能を達成した。

出典: Artificial Analysis

WSE-3のアーキテクチャ

WSE-3はウェーファに複数のチップ「ダイ(Die)」を搭載し、ウェーファ全体が単一のプロセッサとなる。通常、半導体製造ではウェーファに複数のチップを生成し、これを分離して利用する。これに対し、Cerebrasはチップを切り分けないで、これらをワイヤーで連結しウェーファスケールの巨大なAIプロセッサを生み出した。WSE-3は84のチップで構成され、ここに演算装置「コア(Core)」を13,860ユニット搭載する。ウェーファ全体では900,000を超える演算装置が実装される。WSE-3の特徴は各演算装置に大容量メモリ(44GBのSRAM)を実装しており、フロンティアモデルのインファレンス処理を高速で実行できることにある。(下の写真、WSEとDieとCoreの関係、WSE-2のケース)

出典: Cerebras Systems 

イノベーション

WSEの開発では半導体製造における歩留まりが最大の課題となる。WSE-3はTSMCの5nmノードで製造されるが、コアで規格を満たさない不良品が発生する。通常の半導体であれば、これらを除外して規格を満たした良品だけを製品として出荷する。Cerebrasはウェーファで不良品コアが発生することを予測して、バックアップのコアを搭載する冗長性のアーキテクチャを取る。不良品のコアが発生すると、バックアップのコアが組み込まれ、これを置き換える仕組みとなる(下の写真)。冗長性の構造で歩留まりを上げる構造となる。

出典: Cerebras Systems 

主要ユーザ

WSE-3は業界の主要企業が導入を始めている。OpenAIはCerebrasと提携しWSEを導入することを発表した。OpenAIはWSEをインファレンス処理で使い、短い遅延時間が求められるAIモデルを実行する。合計で750MWの容量を購入し、2028年までに段階的に導入する。この他に、AWSもWSEをアマゾン・クラウドで利用することを明らかにした。クラウドのAIワークロードはトレーニングからインファレンスに移っており、WSE-3の性能が注目されている。

出典: OpenAI

Gene Amdahlのビジョン

ウェーファサイズのプロセッサはGene Amdahl(ジーン・アムダール)により発案された。Gene Amdahlはコンピュータ・アーキテクトで、IBMで汎用機「IBM System/360」を生み出し世界的に有名となった。Amdahlはその後IBMを去り、Amdahl Corp(アムダール社)を設立し、プラグコンパチブルの汎用機を開発することに成功した。その後、1985年、Trilogy Systemsを立ち上げ、ここでウェーファサイズのプロセッサの開発を始めた(下の写真、「Wafer Scale Integration」と呼ばれた、ウェーファの直径は10センチメートル)。汎用機の全てのプロセッサをシングルウェーファに実装するという壮大なビジョンで業界や投資家が注目した。しかし、その当時は半導体製造技術が低く、ウェーファ内で多くの不良個所が発生し、その構想は実現しなかった。40年後、Gene AmdahlのビジョンがCerebrasで実現された。

出典: Wikipedia

ヒューマノイド・ロボットのブレークスルー、Figure AIはロボットのソーティング作業をライブ配信中、9日間連続でタスクを実行、記録がどこまで伸びるのか全米が注目

シリコンバレーに拠点を置くスタートアップ企業Figure AIはヒューマノイド・ロボット開発で業界のトップを走っている。最新モデルは「Figure 03」で信頼性が格段に向上し製造工場で活躍している。Figure AIはヒューマノイド・ロボットの性能をベンチマークするために、ソーティング作業を実施し、その様子をライブで配信している(下の写真)。今日は九日目で、24万超のパッケージを処理し、長時間にわたり正常に稼働している。Figure 03は何日間稼働できるのか、米国でこのトライアルが話題になっている。

出典: Figure AI

Figure AIとは

Figure AIはカリフォルニア州サンノゼに拠点を置くスタートアップ企業で、高度なAIモデルをベースにヒューマノイド・ロボットを開発している(下の写真)。このロボットは「Figure 03」と呼ばれ、第三世代のモデルとなる。ハードウェアの改良とAIの進化でエラー率が大きく低下し信頼性が格段に向上した。このモデルは製造工場などに導入され人間に代わりタスクを実行している。Figure 03はプロトタイプの段階からプロダクションモデルに進化し、Figure AIは増産体制に入り年間100万台を生産する。

出典: Figure AI

ソーティング・ベンチマーク

Figure AIはヒューマノイド・ロボットの性能を検証するため、ソーティング・タスクの公開試験を実行している。ベンチマークの状況はライブで配信され、ロボットの稼働状況を見ることができる(下の写真)。このベンチマークは正式には「Continuous Endurance and Autonomy Test」と呼ばれ、ロボットが連続してタスク実行する耐性と自律性が試験される。ロボットが配送センターでベルトコンベアで送られるパッケージをソーティングしその機能が検証される。

出典: Figure AI

検証されるスキル

ロボットはコンベア・ステーションに配置され、ベルトの上を流れるパッケージをハンドリングする。これは配送センタにおける典型的な作業を模したもので、ロボットはパッケージを認識し、それを取り上げ、住所が印字されている面を上に向ける作業となる。パッケージは様々な形状で、ロボットはこれらを認識し作業を進める。特に、プラスティック袋に詰められた柔らかい素材のパッケージはロボットにとって最難関のタスクとなる。パッケージの形状は状況により大きく変わり、ロボットは汎用的なスキルが求められる。

連続作業のチャレンジ

現行のヒューマノイド・ロボットは長時間連続してタスクを実行することができない。一般にロボットは、数時間稼働するとハードウェアで問題が発生し、モーターやアクチュエータなどがオーバーヒートする問題を抱えている。また、センサーがオブジェクトをトラッキングする機能が劣化し正常に稼働できなくなる。Figure 03は信頼性が格段に向上し、今日現在で196時間(9日間)連続で稼働している。

出典: Figure AI

バッテリー交換

このベンチマークでは三台のFigure 03が交代で作業を実行する仕組みとなる。ロボットは5時間おきにバッテリーを交換する必要があり、ベルトコンベアを止めて、背後にスタンバイしているロボットと交代する。バッテリー交換は「ホット・スワッピング(Hot Swapping)」と呼ばれ、

バッテリー・ユニットを取り外し、充電された新しいバッテリーを着装する。バッテリーが取り外された時は、予備電源がキックインしロボットシステムは継続して稼働する仕組みとなる。

Figure 03の構造

Figure 03は身長が172センチメートル(5フィート8インチ)で、体重が61キログラムと標準的な人間の形状をしている。20キログラムの荷物を持つことができる。家庭環境においてトライアルが進められており、Figure 03が食器のかたずけやテーブルのクリーニングなどを実行する(下の写真)。また、二台のFigure 03が共同で、寝室を整える作業を実行する。今までのヒューマノイド・ロボットは動作が遅かったが、Figure 03は人間レベルの速度で作業をすることができ、技術の進化を実感できる。

出典: Figure AI

ロボットのブレイン

Figure 03を制御するAIは「Helix」と呼ばれ、単一のニューラルネットワークで構成される。Figure 03は「Vision-Language-Action (VLA)」というアーキテクチャを採用し、カメラで捉えたイメージをAI(Helix)で解析し、ロボットを操作するアクションを出力する(下の写真)。Helixは二系統のニューラルネットワークで構成され、それぞれ、「System 2」と「System 1」と呼ばれる。System 2は大型のAIモデルで複雑な命令(タオルを折り畳むなど)を解析し、サブタスクに分解する。System 1がサブタスクを受け、これをアクションに変換し、ロボットを制御する。Figure 03がソーティング作業を人間レベルのスピードで実行できるのは、カメラがステレオビジョンにアップグレードされ、指先の触感センサーが改良されたことによる。

出典: Figure AI

年間100万台生産

Figure AIはヒューマノイド・ロボットを量産する体制を整備した。生産工場は「BotQ」と呼ばれ、ここでロボットを製造する(下の写真)。今年初旬には一日に1台のロボットを製造するペースであったが、今では1時間に1台のロボットを製造している。Figure AIは年間100万台のヒューマノイド・ロボットを製造するとしている。価格は公開されていないが、Figure 03は13万ドルと言われている。

出典: Figure AI

予想外のペースでロボット技術が進化

今年はヒューマノイド・ロボットが大きくブレークし、実用化に向かって大きく前進する年となる。BMWはFigure 03でクルマの組み立て作業のトライアルを実施してきたが、今年からこれをスケールアップし実用段階に進む。Figure AIはヒューマノイド・ロボットを生産工場だけでなく、家庭や公共施設に展開するビジョンを描いている。ロボットが配送のラストマイルを担い、また、ホテルの運営を全てロボットが取り仕切る(下の写真)。フロンティアモデルの進化でヒューマノイド・ロボットの機能が急成長し、人間と共生する社会が生まれている。

出典: Figure AI

AIエージェントが小売店舗を経営、AIが従業員を採用しベンダーから商品を仕入れる、“AI店長”は利益を上げることができるか

サンフランシスコにAIエージェントが経営する小売店舗「Andon Market」がオープンした(下の写真)。AI店長「Luna」が店舗の経営を取り仕切り、三年間で経営を黒字化することがミッションとなる。AI店長が従業員を雇い入れ、日々のオペレーションを実行する。AI店長はベンダーと交渉し商品を仕入れる。これはスタートアップ企業「Andon Labs」の企画で、AIエージェントが人間に代わり小売店舗を経営できるかを評価するベンチマークテストとなる。

出典: Andon Labs

Andon Labsのベンチマーク

Andon Labsはサンフランシスコに拠点を置くスタートアップ企業で、物理社会におけるフロンティアモデルの性能や機能を評価する研究を進めている。Andon Labsは自動販売機をAIエージェントで運営管理するベンチマーク「Vending-Bench」を投入し、OpenAIやAnthropicが参加し、評価が続いている(下の写真)。Andon Marketは自販機管理を拡大したもので、小売店舗をAIエージェントが運営管理する機能を評価する。

出典: Andon Labs

Andon Marketのシステム構成

Andon MarketではAIエージェント「Luna」が店長となり、物理社会における小売店舗を運営するスキルを評価する。AIエージェントは「Anthropic Claude Sonnet 4.6」がブレインとなり、小売店舗「Andon Market」を運営管理する。AIエージェントはクレジットカードを持ち、仕入れた商品の支払いを実行する(下の写真、店舗で販売している商品)。AIエージェントはインターネットに接続され、ネット上で情報を検索する。AIエージェントは電話番号を持ち、従業員の採用で応募者と面接を行った。

出典: Andon Labs

従業員の採用

AIエージェントはサイバー空間で稼働するため、物理社会の小売店舗で作業をすることができない。このため、AIエージェントは従業員を二人雇い、人間が日々のオペレーションを実行する。AIエージェントは従業員を採用するプロセスを全て実行した。求人広告を掲載し、候補者と電話で面談し人物の査定を行った。これら一連のプロセス全てをAIエージェントが実行し、独自の判断で採用を決定した。

出典: Andon Labs

小売店舗の経営と判断

AIエージェントは小売店舗の経営に関する意思決定を人間の介入無く実行する。プロジェクト開始早々に、AIエージェントは従業員採用のための求人広告を掲載した。次に、小売店舗のデザインや商品の品揃えなど、販売方針を決定しこれを実行した。AIエージェントは自身でアートワークを生成し、これを商品として採用した(上の写真)。AIエージェントは商品を仕入れるために候補ベンダーにメールを発信し、店舗のコンセプトなどを説明し、取引の折衝を行った (下の写真)。

出典: Andon Labs

ギグワーカの利用

AIエージェントは小売店舗内装のデザインを決定し壁を塗り替えた。これらの作業でAIエージェントはペイント専門のギグワーカを雇い実行した。ギグワーカはスポットの仕事を請け負う専門職で、インターネットで「TaskRabbit」など多くのサービスが提供されている。これらのサービスを利用し、壁のペイントや窓のクリーニングなど、物理タスクを実行した。

トライアルの目的

Andon Labsはこのプロジェクトの目的はAIエージェントが小売店舗を経営できるかを評価するものであると述べている。AIエージェントが達成できる機能と不足している機能を把握することが目的で、フロンティアモデルの物理社会におけるスキルを査定する。AIエージェントが人間の経営者を置き換えることが目的ではなく、AI倫理についての議論が活性化することを期待している。

出典: Andon Labs

AIエージェントの課題

AI店長Lunaはデジタル空間のソフトウェアで、従業員と対面で会話することができない。Lunaは人間の感情を理解できるが、従業員がLunaの感情を読み取ることはできない。従業員はAI店長とのソフト面での絆を形成することが難しく、仕事のモーティベーションなどで課題が予測される。Andon Marketは3年間のトライアルを通してAI店長のプラス面とマイナス面を明らかにし、フロンティアモデルが物理社会で活躍できるための研究開発を進める。

ビジネスの拡張性

Andon LabsはAIエージェントで経営者を置き換える計画は無いと表明しているものの、実際には、AIエージェントでビジネスを拡張する多くの選択肢がある。米国には「Bodega」と呼ばれる小型小売店舗が数多く存在する。多くの店舗が家族経営で地域の生活を支えている。ここにAIエージェントを導入することで、データサイエンスの観点で経営を実行し、高い収益を目指す。また、コンビニなどの小売チェーンにAIエージェントを導入するという選択肢もある。店舗スタッフはそのままで、店長の役割をAIエージェントが代行する。AI店長「Luna」のベンチマークで、フロンティアモデルが物理社会で店舗を経営するスキルが試され、黒字化できるのかその手腕に注目が集まっている。