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Google PixelはApple iPhoneを超えた!スマホがAIで構成される

Googleは独自に開発したスマホ「Pixel」を投入した。ハードウェア機能が格段に向上しただけでなく、AIが利用者とのインターフェイスとなる。PixelはGoogleが運営するMVNO (仮想モバイルネットワーク) で利用できる。Googleモバイル事業はAndroidとハードウェアとネットワークを垂直に統合したモデルに進化した。Pixelを使ってみると先進的な機能に感銘を受け、これが近未来のスマホの姿を示していると実感した。

出典: Google

独自ブランドのスマートフォン

Googleは2016年10月、Googleブランドのスマートフォン「Pixel」 (上の写真) の販売を開始した。手に取ってみるとPixelはiPhoneと見間違うほど似ている。よく見るとPixelの表面にはホームボタンはなく、背後に円形の指紋センサー (Pixel Imprint) が搭載されている。ここに指をあててデバイスをアンロックする。PixelはGoogleがゼロから開発したスマホで、台湾HTCが製造する。AppleのようにGoogleがスマホ全体を開発して製品を販売する。

PixelはAIスマートフォン

Pixelは最新基本ソフト「Android 7.1」を搭載し、そこには会話型AI「Assistant」が組み込まれている。AssistantはApple Siriに相当する機能で、言葉で指示するとコンシェルジュのように応えてくれる。AIがスマホ機能の中心となり、Pixelはソフトウェアと人工知能の交点として位置づけられる。

ハードウェアの完成度が格段に向上

Pixelはハードウェアとしての完成度が格段に向上した。iPhoneのような形状となり、薄くて軽くて快適に使える。Nexusシリーズと比較すると数世代分を一気に成長した感がある。ディスプレはAMOLEDでカメラは12.3MPの解像度とf/2.0の口径を持つ。Pixelカメラは「Software-Defined Camera」と呼ばれ、ソフトウェアが驚くほどきれいな画像を創りだす。Pixelカメラの性能はiPhone 7を超えたと評価されている。

Assistantが会話を通して生活をサポート

PixelはAIスマホとして位置づけられ、Assistantはコンシェルジュのように会話を通して生活をサポートする。Pixelに対し「Ok Google」と語り掛けるとAssistantが立ち上がり、これに続く言葉を認識する。「When does the San Francisco Moma close」と質問すると、「Moma is open now, it closes at 5 pm」と答える。美術館は5時に閉館するのでまだ開いていることが分かる (下の写真左側)。Assistantは声を聞き分ける生体認証機能があり、筆者のPixelに対して他人が「Ok Google」と呼びかけれも反応しない。

出典: VentureClef

Assistantで撮影した写真を探す

Assistantは写真検索で威力を発揮する。「Show me my photos in the rain」と指示すれば、雨の日に撮影した写真を表示する (上の写真中央上段)。「Show me my pictures taken at Google campus」と指示すると、Googoleキャンパスで撮影した写真を表示する (上の写真中央下段)。音声で操作できるのでスマホでサクサク検索できる。Pixelで撮影した写真はオリジナルサイズで写真アルバム「Google Photos」に格納される。ストレージ容量の制限は無く何枚でも格納できる。

Assistantでレストランを予約する

Assistantは情報検索だけでなく指示されたタスクを実行する。レストランを予約する時はAssistantと対話しながら場所や時間などを決めていく。最後に確認画面が表示され、Yesと答えるとレストランアプリ「OpenTable」で予約が完了する。電話で話すように驚くほど簡単にレストランの予約ができる。また、Assistantは一日のスケジュールを管理する。「What’s next on my calendar」と質問するとAssistantは次の予定を回答する。ここでは予約したレストランの概要が示された (上の写真右側)。

Assistantでアプリを操作する

AssistantはPixelアプリを操作できる。つまり、搭載しているアプリを音声で利用できる。Assistantに「Katy Perry on Instagram」と指示すると、インスタグラムのPerryのページを開く (下の写真左側)。また、「Open Snapchat」と指示すると、スナップチャットが起動してメッセージを読むことができる (下の写真中央)。Assistantに「Play music by Beyoncé」と指示すると、音楽アプリ「Google Music」が起動しビヨンセの音楽を再生する (下の写真右側)。Assistantの音声認識精度は高く、言葉でスマホを操作できるのはとても便利だ。

出典: VentureClef

カメラの性能が業界トップ

Pixelの最大の特長はカメラの性能が業界トップであることだ。カメラの性能は「DxOMark」のベンチマーク指標が使われる。これによるとPixelカメラは89ポイントをマークし、Apple iPhone 7の86ポイントを上回った。今までのトップはSamsung Galaxy S7 Edgeなどで88ポイントをマークしているがPixelがこれを追い越した。DxOMarkはカメラ、レンズ、スマホカメラの性能を評価するサイトでDxO Labs.が運営している。同社は光学関連のソフトウェアやデバイスを開発するフランス企業。

イメージング処理ソフトウェアの威力

Pixelカメラの性能がトップとなった理由はイメージング処理ソフトウェアのアルゴリズムにある。カメラはGoogle独自のハイダイナミックレンジイメージング機能「HDR+」を搭載する。この機能によりダイナミックレンジが広がり、明るい箇所から暗い箇所までバランスよく撮影できる。下の写真はその事例で、厳しい逆光のもとGoogle本社ビルを撮影したもの。肉眼では真っ黒に見えたガラス張りのビルが内部まで写っている。同時に、背後の青空とまぶしい雲がちゃんと写っている。HDR+の威力を感じる一枚となった。

出典: VentureClef

HDRとは

HDR (High Dynamic Range) イメージングとは、異なる露出の複数枚の写真を組み合わせて一枚の写真を生成する技術を指す。一般にHDRは被写体に対して三枚の写真を使う。Underexposure (露出アンダー)、Overexposure (露出オーバー)、及びBalanced (適正露出) の三枚の写真を撮影し、ここから最適な部分を抽出し、これをつなぎ合わせて一枚の写真を生成する。

HDR+とは

これに対してPixelのHDR+は同じ露出の写真を多数枚組み合わせて一枚の写真を生成する。Pixelはカメラアプリを開いた時から撮影を始め、シャッターが押されたポイントを撮りたいシーンと理解する。露出を上げないので暗い部分はノイズが乗ることになる。しかし、暗い部分の写真を数多く重ね合わせることで数学的にノイズを減らす。この手法により、重ね合わせがシンプルになり、ゴーストが発生しないという特徴がある。下の写真はまぶしい雲を背景に星条旗が風にたなびいているが、ゴーストは発生していなく細部まで写っている。

出典: VentureClef

Software-Defined Camera

Pixelカメラは特殊なハードウェア機構は備えていない。Googleはコモディティカメラを使いソフトウェアでイメージング技術を向上させるアプローチを取る。これは「Software-Defined Camera」と呼ばれソフトウェアがカメラの性能や特性を決定する。一眼レフカメラは高価なハードウェアで1枚だけ撮影する。これに対しGoogleは安価なカメラで大量の写真を撮影してソフトウェアで最適化する。イメージング技術はAIを含むアルゴリズムが勝敗を決める。

音声で写真撮影

Pixelカメラは音声で写真を撮影できる。これはAssistantの一部で、フロントカメラで自撮りする時は、「Ok Google, take a selfie」と語るとシャッターが下りる。腕を伸ばして難しい姿勢でシャッターを押す必要はない。メインカメラで写真撮影をするときも、「Ok Google, take a picture」と言えばシャッターが下りる。タイマーを使う代わりに音声で集合写真を撮影できる。メインカメラからフロントカメラに切り替えるときは、Pixelを縦に持ち二回ひねる。

指紋センサー

Pixelをアンロックする時には指紋認証を使う。上述の通りPixelにはホームボタンはなく、背後の指紋センサーに指をかざす。片手で操作でき、かつ、スリープ状態から直接アンロックできるのでとても便利。Pixelは指紋認証の認識率が非常に高く、殆どのケースで1~2回程度でアンロックできる。指紋で認証できないときはPINなど従来方式の認証を行う。

Googleが独自のネットワークを運営

Pixelは米国最大のキャリアVerizonが販売している。また、Google独自のネットワーク「Fi Network」を使うこともできる。Fi NetworkはMVNO (仮想モバイルネットワーク) 方式のネットワークで、背後でSprintとT-Mobile USの4G LTEが使われている。Fi Networkを利用する時は専用のSIM Cardを挿入する。PixelはGoogleオリジナルのスマホをGoogleネットワークで運用する構造となっている。

Fi Networkの特徴

Fi Networkは単に通信網を提供するだけでなく、両者のうち電波強度の強いネットワークに自動で接続する。また、LTEやWiFiなど異なるネットワーク間で最適な通信網を選択し、サービスを途切れなく利用できる。屋内では通話やテキストメッセージはWiFi経由で交信する。屋外に出るとGoogleの移動体ネットワークFi Networkに接続される。

ネットワーク間での自動切換え

このためネットワーク間で途切れなくサービスを利用できる。自宅でWiFi経由で電話している時、屋外に出るとネットワークがLTEに切り替わる (下の写真左側)。通話は途切れることなくシームレスにハンドオーバーされる。通話だけでなくデータ通信でも自動でネットワークが切り替わる。自宅のWiFiでGoogleの音楽ストリーミングを聞きながらクルマで屋外に出るとFi Networkに切り替わる (下の写真中央)。

出典: VentureClef

クルマの中でAssistantが大活躍

クルマの中では言葉でAssistantに指示して好みの音楽を聴ける。電話やメッセージもAssistantに言葉で指示して発信する。ナビゲーションもAssistantに言葉で語り掛けて使う。少し大きめの声で語り掛ける必要はあるが、Assistantは運転中に絶大な威力を発揮する。今ではPixelはドライブに必須のインフォテイメントデバイスとなった。

シンプルで良心的な料金体系

Fi Networkの料金体系はシンプルで基本料金とデータ料金の組み合わせで構成される。基本料金は月額20ドルで、ここに通話、テキストなどが含まれる。データ通信は月額10ドル/GBで、例えば2GBで契約すると月額20ドルとなる。制限量まで使っていない場合は、翌月分の料金から差し引かれる、良心的な料金体系となっている。またデータ通信料はグラフで示され (上の写真右側) 使用量を明確に把握できる。(ロックスクリーン左上にFi Networkと表示される、下の写真左側。アイコンは小さめの円形になりホームスクリーンのデザインがすっきりした、下の写真右側。)

出典: VentureClef

Samsungとの関係は微妙

Googleのモバイル事業はAndroidを開発しこれをパートナー企業に提供することで成り立っている。SamsungなどがAndroidを利用してスマホを販売している。このためスマホ事業はSamsungなどに依存しているだけでなく、Googleの収益構造が問われてきた。事業が拡大するのはSamsungでGoogleは大きな収益を上げることが難しい状態が続いている。GoogleがPixelでスマホ事業に乗り出すことで、Appleのような垂直統合型となり、収益構造も改善すると期待される。一方、Android陣営内でGalaxy顧客がPixelに乗り換えることも予想され、Samsungなどパートナー企業との関係が難しくなる。

ソフトウェア+デバイス+ネットワーク

Googleは基本ソフト (Android) とデバイス (Pixel) だけでなく、ネットワーク (Fi Network) を含めた垂直統合システムでモバイル事業を始めた。Appleのようにスマホを販売するだけでなく、それを運用するネットワークも提供する。キャリアが提供するネットワーク単体では技術進化が停滞している。Googleはデバイスとそれをつなぐネットワークを統合することでイノベーションを起こせるとしている。AIスマホを独自のネットワークで結び、Googleはスマホ事業の近未来の姿を示している。

NvidiaはAI自動運転車を公開、Deep Learningが人間の運転テクニックを模倣する

Nvidiaは半導体製造から自動運転車開発に軸足を移している。NvidiaはAIで構成される自動運転車の試験走行を公開した。Googleなどは自動運転技術の一部をAIで実装するが、NvidiaはこれをすべてDeep Learningで処理する。AI自動運転車は人間の運転を見るだけでドライブテクニックを学ぶ。

出典: Nvidia

自律走行のデモ

Nvidiaは2016年9月、自動運転車が自律走行する模様をビデオで公開した (上の写真、右側手前の車両)。このクルマは「BB8」と命名され、テストコースや市街地で走行試験が実施された。クルマはハイウェーを自動運転で走行できる。ハイウェーは自動運転車にとって走りやすい場所である。しかし、クルマは路面にペイントされている車線が消えているところも自動走行できる。

道路というコンセプトを理解

自動運転車の多くはペイントを頼りにレーンをキープするが、BB8は道路というコンセプトを理解でき、車線が無くても人間のように運転できる。このためBB8は道路が舗装されていない砂利道でも走行できる。路肩は明確ではなく道路の両側には草が生えている。この状況でもクルマは道路の部分を認識して自律的に走行する。

ニュージャージー州で路上試験を展開

クルマは工事現場に差し掛かると、そこに設置されているロードコーンに従って走行する。ドライバーが搭乗しないでクルマが無人で走行するデモも示された。BB8はカリフォルニア州で運転技術を習得した。一方、路上試験は全てニュージャージー州で実施された。クルマは学習した運転技術を異なる州で使うことができることを示した。ちなみにNvidiaはカリフォルニア州では路上試験の認可を受けていない。

Deep Learningを使った運転技術

これに先立ちNvidiaは自動運転技術に関する論文「End to End Learning for Self-Driving Cars」を発表した。この論文でDeep Learningを使った運転技術を示した。自動運転システムは「DAVE-2」と呼ばれ、ニューラルネットワークで構成される。システムはクルマに搭載されているカメラの画像を読み込み、それを解析しステアリングを操作する。

出典: Nvidia

データ入力から出力までをニューラルネットワークで処理

システムの最大の特徴はデータ入力から出力までをニューラルネットワークで処理することだ。カメラのイメージをネットワークが読み込み、それを解析しステアリング操作を出力する。システムが自律的に運転技術を学ぶので、教育プロセスがシンプルになる。カメラで捉えた走行シーンとドライバーのステアリング操作が手本となり、ネットワークがこれを学ぶ。このため、道路に車線がペイントされていなくても人間のように走行できる。また、駐車場で走行路が明示されていなくても、クルマは走ることができる (上の写真)。

ドライバーの運転データを収集して教育

このためドライバーの運転データを収集しネットワークを教育する。具体的には、カメラで撮影したイメージとそれに同期したステアリング操作を収集する。収集した運転データでニューラルネットワークを教育する。ネットワークを構成するConvolutional Neural Network (CNN) にカメラの映像を入力し、ステアリング操作を出力する。この出力を人間のドライバーが運転したときのステアリング操作と比較する。差分を補正することでCNNは人間のドライバーに近づく。

クルマが遭遇するすべての条件を再現

教育データは様々な明るさの状況のもと、また、異なる天候で収集された。データの多くがニュージャージー州で収集された。道路の種別としては二車線道路、路肩にクルマが駐車している生活道路、トンネル内、舗装していない道路が対象となった。気象状況としては、晴れの日だけでなく、雨、霧、雪の条件で走行データが集められた。また、昼間だけでなく夜間の走行データが使われた。つまり、クルマが遭遇するすべての条件が再現された。テスト車両はLincoln MKZとFord Focusが使われた。

車載スーパーコンピューター

教育したネットワークを車載スーパーコンピューター「Drive PX 2」(下の写真)にインストールすると自動運転車が完成する。Drive PX 2は自動運転車向けのAI基盤で自動車メーカーや部品メーカーに提供される。Drive PXはカメラ、Lidar、レーダー、ソナーなどのセンサーで捉えた情報を処理し、クルマ周囲の状況を理解する。これはSensor Fusionと呼ばれ、上述のConvolutional Neural Networkで処理する。ただし、Nvidiaの自動運転車はセンサーとしてカメラだけを使っている。定番技術であるLidarを使わないため、アルゴリズム側で高度な手法が求められる。

出典: Nvidia

アルゴリズムの安全性を確認

システムを教育した後は、路上で試験する前にシミュレータでアルゴリズムを検証する。教育データを入力し、シミュレータでクルマが自動運転できる割合を計算する。このケースでは600秒の運転で10回運転を補正する必要があった。自動運転車がレーンの中心をそれると、仮想ドライバーが元に戻す操作をする。実際の路上試験ではHolmdelからAtlantic Highlands (ニュージャージー州) まで自動運転で走行し、その98%を自動運転モードで運行できた。

AIがルールを学習する

この手法は人間がアルゴリズムに走行のためのルールを教えるのではなく、CNNが画像からそれを読み取る。例えば、CNNはカーブしている道路のイメージを読むと、そこから運転に必要な道路の特徴を把握する (下の写真)。上段がカメラが捉えた画像で、下段がCNNが把握した道路の特徴 (Feature Maps) を示している。CNNは運転に必要な道路の境界部分を捉えていることが分かる。これは人間が教えたものではなくCNNが自律的に学習した成果だ。100時間程度の運転データでCNNを教育すると様々な環境で運転できるようになる。

出典: Mariusz Bojarski et al.

ルールベースの自動運転車

これに対して、自動運転車の多くは画像を解析しルールに従って特徴を抽出する。アルゴリズムは車線ペイントなど道路の特徴や周囲のオブジェクトを把握し、進行経路を計算し、実際にクルマを操作する。これらは事前にプログラムのロジックで定義される。クルマは常に想定外の事象に遭遇するので、それらをIF-THENでプログラミングする。この条件の複雑さ (Curse of Dimensionalityと呼ばれる) が自動運転やロボット開発のネックとなっている。

自動運転技術のロードマップ

Nvidiaの自動運転技術開発は始まったばかりで、次のステップはアルゴリズムの精度を改良する。現在98%を自動運転できるが、この精度を向上させる。また、アルゴリズムの精度をどう検証するかが大きな課題となる。実際に試験運転して精度を測定するだけでなく、これを検証するシステムが必要になる。更にAI自動運転車で問題が発生するとその原因探求が難しい。AIというブラックボックスが周囲の状況を把握し運転する。このため、CNNが把握しているイメージの可視化精度を上げる必要がある。実際にCNNが認識しているイメージを人間が見ることでAIのロジックを理解する。これを手掛かりに問題を解決しアルゴリズムを改良する。

自動運転車はAIアルゴリズムの勝負

NvidiaはDeep Learning向けハードウェアや開発環境を提供する。自動運転車を重点市場としてDrive PXなどをメーカーに提供する。更に、上述のDeep Learningを駆使したソフトウェアも自動運転車開発キットとして提供する。既に80社以上がNvidia技術を使っており、自動運転車のエコシステムが拡大している。多くのメーカーがNvidiaプラットフォームを採用する中、AIアルゴリズムが自動運転市場での勝ち組を決める。

自動運転車のテストコースはビデオゲーム、AIがカーチェイス見て運転テクニックを学ぶ

最新のビデオゲームを見るとシーンが余りにもリアルで写真と区別がつかない。精巧に描写されたビデオゲームを自動運転車開発に利用するアイディアが登場した。長い年月をかけ市街地で走行試験を重ねる代わりに、ビデオゲームに描かれる街中を走りAIアルゴリズムを開発する。

出典: Stephan R. Richter and Vibhav Vineet and Stefan Roth and Vladlen Koltun

インテル研究所などが開発

この技法を開発したのはIntel Labs (インテル研究所) とDarmstadt University (ダルムシュタット大学) で、ビデオゲームを使って自動運転車を教育する。この研究ではビデオゲーム「Grand Theft Auto」が使われた。これは三人組がクルマで市街地を走り犯罪を重ねるビデオゲームで、ここから抽出したフレームでアルゴリズムを教育する。上のグラフィックがその事例で、雨が降る市街地を描写しているが現実世界と区別がつかない。この成果は論文「Playing for Data: Ground Truth from Computer Games」として発表された。

Deep Learningが自動運転技術を支える

自動運転技術開発で成否のカギを握るのがクルマ周囲のオブジェクトを正確に把握する技法だ。自動運転車は搭載しているカメラで周囲を撮影し、そこに何が写っているかを判定する。カメラがクルマの眼となり、乗用車、バス、歩行者、自転車、信号機、歩道、道路などを認識する。AIの一技法であるDeep Learningが自動運転技術を支える。

オブジェクトを識別する方法

AIがビデオからオブジェクトを識別するには二つの手法がある。一つは「Object Detection」と呼ばれ、写真に写っているオブジェクトを箱で囲って示す。オブジェクトの位置と大きさを示すとともに、その区別を表示する。もう一つは「Semantic Segmentation」と呼ばれ、写真の中のオブジェクトをピクセルレベルで表示する。オブジェクトの区別は色分けして示される。

Semantic Segmentationの事例

下の写真がSemantic Segmentationの事例で、左側の写真を処理すると右の側のグラフィックスとなる。道路、自動車、歩行者、建物などのオブジェクトが色分けして示される。前者より高度な技術で、自動運転車は進行方向に何があるのかを理解でき、ナビゲーションの信頼度が大きく向上する。(下の事例はUniversity of Cambridgeの研究成果で、写真をアップロードするとその意味を色分けして表示する。)

出典: VentureClef / University of Cambridge

自動運転技術開発のプロセスと障害

自動運転車が走行する時には、カメラで撮影したイメージを車載システムに入力しリアルタイムで周囲のオブジェクトを把握する。クルマがこの判定をできるようになるためには、事前にアルゴリズムを教育しておく必要がある。教育のためには大量の写真が必要となり、自動運転車は街中を走り回り、走行の様子をビデオで撮影する。次に、撮影された写真に写っているオブジェクトを人間が手作業で名前付けをする。つまり、写真と名前付けされたグラフィックス (上の写真の関係) から成る基準データ (Ground Truth) を整備するという大作業が発生する。これが自動運転車開発で大きな障害となっている。

効率的に教育データを生成する手法

Intel Labsらはこの作業をビデオゲームで行うことで効率的にアルゴリズムを教育する手法を開発した。ビデオゲームから抽出したフレームでSemantic Segmentationする技法である。実際にこの技法を使ってSemantic Segmentation処理をしたものが下のグラフィックスである。入力したフレームは先頭の写真で、色がオブジェクトのクラスを示し、ピクセルレベルで処理されているのが分かる。道路は紫色、建物はレンガ色、空は灰色、乗用車は群青色、トラックは水色、バスは桃色などで示されている。クルマは目の前のオブジェクトの意味が分かり、安全に走行できる経路を見つけ出す。この技法では一枚のイメージを処理する時間は平均で7秒と極めて短いのが特長。

出典: Stephan R. Richter and Vibhav Vineet and Stefan Roth and Vladlen Koltun

ビデオゲームのフレームを大量に使う

この研究ではビデオゲームから25,000枚のフレームが抽出された (下の写真はその一部)。ビデオゲームはロスアンジェルスをモデルにしている。カリフォルニアの太陽が降り注ぐ昼間だけでなく、様々な気象条件のフレームが使われた。雨が降り注ぐ幹線道路や雨上がりの交差点のフレームが使われた。また、霧が立ち込めたシーンなども登場する。

想定しうるすべての環境を学習

幹線道路だけでなく、商店がひしめき合う路地裏の狭い道路のフレームも使われた。更に、一日のうち異なる時間帯のフレームが使われた。夜間にヘッドライトを点けたクルマが行きかうシーンや、夕方に空が赤く染まったフレームなどが使われた。自動運転車にとってはオブジェクトの識別が難しい条件である。人間は初めて走る道路でも運転できるが、アルゴリズムは想定しうるすべての環境を学習する必要がある。

人間との共同作業

システムはイメージをすべて区別できる訳ではない。Semantic Segmentationで色付けできるところと、できないところが混在する。このため専任スタッフがマニュアルで名前付けをする。システムは名前が付けられるとそれを学習し、次のフレームから自分で名前を付けることができるようになる。システムは学習を重ね、オブジェクトを判定し名前付けができるようになる。

ビデオゲームを使った教育技法に大きな期待

アルゴリズムをビデオゲームで教育できることが示された。ただ、ビデオゲームだけで教育するにはまだ制約もある。ビデオゲームのフレームだけでアルゴリズムを教育するとオブジェクトの認識率は43.6%とあまり高くない。そこで、実際に市街地を撮影した写真をミックスして教育すると認識率は65.2%と大きく向上した。写真だけで教育した方法の精度を上回り、ビデオゲームを使った教育技法に大きな期待が寄せられている。

出典: Stephan R. Richter and Vibhav Vineet and Stefan Roth and Vladlen Koltun

フレームだけでなく一連の動きを把握

論文は研究のロードマップについても言及している。今回の成果はビデオで捉えたイメージからオブジェクトを判別する技術「Class-Level Segmentation」を示している。次のステップではフレームを重ね、動画の中でオブジェクトを判定する。更に、オブジェクトの判定だけでなく一連の動きが持つ意味「Instance-Level Segmentation」を抽出する。つまり、路上で自転車を把握するだけでなく、ライダーが右腕を水平に上げると、それは右折するというサインであることを把握する。アルゴリズムは他車や人の行動の意味を理解できるようになる。

AIは犯罪行為を学習するのか

Grand Theft Autoという犯罪を繰り返すアクションゲームで運転技術を学習すると、自動運転車はこの環境にバイアスした認識能力を獲得すると懸念される。クルマが赤信号の交差点を猛スピード横切るシーンが頻繁に登場するが、違法行為をどうフィルタリングするかなどが課題となる。

高度に進化したビデオゲームを利用する

一方、Grand Theft Autoはゲーマーが街のシーンを自由に設定できる。気象条件や時間帯だけでなく、都市部、郊外部、工業地帯など、ゲーム環境を自由に設定できる。クルマが道にあふれるニューヨーク都市部や、霧が立ち込めて運転しにくいサンフランシスコなどを簡単に再現できる。雨が降る街での走行試験のためにKirkland (ワシントン州) に出向く必要はなくなる。高度に進化したビデオゲームが自動運転車のシミュレーション環境として注目されている。

GoogleはAIメッセージング「Allo」をリリース、仮想アシスタントとの対話は近未来のライフスタイルを感じる

Googleは2016年9月、AIを搭載したメッセージングアプリ「Allo」をリリースした。AlloはLineのようにテキストやマルチメディアを使って会話するメッセンジャーとして位置づけられる。これに加え、Alloは仮想アシスタント「Google Assistant」を搭載しているのが最大の特徴 (下の写真左側)。仮想アシスタントとは会話型AIで、コンシェルジュのように対話しながら応対してくれる。使ってみると、まだまだ開発途上であるが、会話型AIが巨大ビジネスに成長する兆しを感じる。

出典: VentureClef

Googleはメッセージング市場で苦戦

メッセージング市場ではFacebook MessengerとSnapchatが先行し、AppleがMessageでこれを追っている。日本ではLineがトップを走り世界市場を目指している。Googleはメッセージングプラットフォーム「Hangouts」を運用しているが苦戦を強いられている。Googleは新たに、Alloを投入しAIを基軸に製品ラインアップを大幅に見直している。

メッセージングの表現力が豊かになる

この市場で勝つためには若者層を引き付ける必要がある。Alloは表現力が豊かで、メッセージをグラフィカルに示する。これは「Whisper or Shout」と呼ばれ、メッセージ欄のスライドを上下してテキストの大きさを変更できる。上にあげると文字やシンボルが大きくなる (下の写真右側上段)。またAlloオリジナルのStickerが数多く揃っており、メッセージで表現できる幅が広がった。 (上の写真右側下段)。

返信文を自動で生成

Alloは受信メッセージを読み、これを理解して、自動で返信文を生成する。これは「Smart Reply」と呼ばれる。「Do you like to drive」とのメッセージを受信すると、それに対してAlloはリアルタイムで「Sure」、「Yes」、「No」の返信文を生成する (下の写真左側)。自分でタイプする必要はなく、ボタンにタッチするだけで返信でき大変便利。Smart Replyは既にメール「Inbox」で導入され人気の機能となっている。

出典: VentureClef

写真に対しても返信文を生成

AlloのSmart Replyはテキストだけでなく写真に対しても使える。空港で撮影した飛行機の写真を受信すると、Alloは「Nice plane」、「Have a nice flight」、「Bon voyage!」と返信文を生成する (上の写真右側)。Alloは高度なイメージ認識能力を持っている。ひまわりの写真を受信すると、Alloは「Beautiful」、「Nice sunflower」、「Pretty」と返信文を生成する (下の写真左側)。Alloは花だけでなく、この花がひまわりであることを把握する。花の種別を判定するには高度な技術を要し、この背後にはニューラルネットワークが使われている。

出典: VentureClef

利用者のスタイルを反映した返信文

しかしAlloは食べ物の写真についてはうまく判定できない。サラダの写真に対し、「Yummy!」、「Wish I could try」と返信文を生成する (上の写真右側)。Alloはこれは食べ物であると理解するが料理の種類までは特定できない。Googleはイメージ認識技術で世界のトップを走っており、料理の種類を認識することは容易い。近々にこの機能がAlloに実装されると思われる。Alloは機械学習を重ねることで利用者の表現方法を学んでいく。利用者のスタイルを反映した返信文を作成できるようになる。

Assistantが手助けする

Alloの最大の特徴は仮想アシスタントGoogle Assistantをメッセージングに導入したこと。Assistantがコンシェルジュのように、会話しながら生活の手助けをする。Assistantは利用者同士のチャットを聞いており、手助けが必要と判断すると会話に割り込みアドバイスする。背後で会話を聞かれているのは奇異な気がするが、使ってみると便利な機能であることに気付く。

Assistantがレストランを教えてくれる

今日はイタリア料理を食べようと話していると、Assistantが気を利かせて近所のイタリア料理店を紹介する。友人に「Let’s go for Italian food」とメッセージを送ると、Assistantはコンテキスト理解してして「Italian food places nearby」と語り、近所のイタリア料理店を紹介する (下の写真左側)。ここではGoogle Knowledge Graph機能が使われている。

レストランのカードにタッチするとその詳細情報が表示され、店舗内の写真などをみることができる。気に入ればこのレストランをそのまま予約できる。ただ、レストランを予約するには専用アプリ「OpenTable」を起動し、ここから予約する仕組みとなる (下の写真右側)。まだ、Alloから直接予約することはできなくて、別アプリで実行することになる。Assistantと会話しながらタスクを実行できれば生活が格段に便利になる。

出典: VentureClef

Assistantとの直接対話

友人との会話を離れ、直接Assistantと対話することができる。Assistantに指示すれば有能な秘書のようにこれに答えてくれる。「Cute dog pictures」と指示すると、Assistantは「Check out these pictures」と述べ、可愛い犬の写真を探してくる。更に「Cute puppy images」と指示すると、子犬の写真を表示する。ここではGoogle Image Searchの検索結果が使われている。

Assistantがこなせるタスク

Assistantは対応できるタスクをカードとして示する。それらは「Subscription (ニュース購読)」、「Action (タイマーセットなど)」、「Fun (ゲームなど)」、「Translation (翻訳)」、「Weather (天気予報)」、「Travel (旅行案内)」、「Sports (スポーツニュース)」、「Answer (Q&A)」、「My Assistant (Assistantの自己紹介)」となる。

旅行案内で格安フライトを探す

Travelカードにタッチすると旅行関連の情報が表示される。フライトを探すときには「Flights to New York」と指示すると、現在地 (San Francisco) からNew Yorkまでの航空運賃が表示される。条件で絞り込んで希望のフライトを探す。また、到着地のホテルの検索もできる。ここでもフライトやホテルの予約はリンク先のウェブサイトで行う。まだ、Assistantから直接予約することはできない。

一日のスケジュールを管理

Assistantは利用者のスケジュールを把握しており、秘書のように会議予定などを管理をする。例えば、「Show my flights」と指示すると、予約しているフライト情報を表示する (下の写真左側)。また、「What’s my next meeting」と言えば、今日の予定を表示する (下の写真右側)。Assistantは忙しい生活の中でなくてはならない存在になりつつある。AssistantはGoogle Calendarとリンクしスケジュールを把握している。

出典: VentureClef

AlloとGoogle音声検索

Alloはメッセージング機能では目新しさを感じないが、Assistantの会話型AIは便利であると感じる。Assistantがインターフェイスとなり対話を通してGoogleを利用する。ただ、Assistant機能の多くはGoogle音声検索からも使える。Googleに「What’s my schedule today?」語り掛けると、今日のスケジュールを教えてくれる。音声検索とAlloでできることに大きな違いはないが、Alloは会話を通して利用者とインタラクションする点が大きく異なる。検索結果が表示されそこで会話が止まるのではなく、連続して対話が進む点が大きな特徴となる。

メッセージを暗号化して送る

Alloはセキュリティにも配慮している。匿名モード「Incognito Mode」を選択すると、Alloのメッセージは暗号化される (下の写真左側)。また、メッセージは指定時間だけ表示され、制限時間を過ぎると消去される。例えば、相手に送るメッセージは10秒間だけ表示されるよう設定することもできる (下の写真右側)。この方式はSnapchatなどで人気を呼び、ティーンエイジャーから圧倒的な支持を得ている。きわどい内容のメッセージでも記録に残らないので、安心して伝えることができるためである。

通常モードのメッセージの安全性

つまり、Alloの通常モードのメッセージは暗号化されているわけではない。ハッシュ処理 (HTTPSのプロトコール) で最低限のセキュリティは確保されるが、Alloはハッカーによる盗聴に対して弱点がある。ただ、Alloだけでなく、Facebook Messengerも同様に、暗号化オプション (Secret Conversation) を指定しない限りメッセージは暗号化されない。前述の通り、Alloは利用者のメッセージを背後で聞いており、メッセージが暗号化されるとこの機能が使えない。

出典: VentureClef

データ保存とAI開発

Googleは当初、Alloで交わされるメッセージを一時的に利用するが、長期的にサーバに保管することはないと述べていた。しかし、Googleはこの指針を変え、Alloで交わされたメッセージを長期間保管する。目的はアルゴリズムの開発で、保管されたデータを使ってAIを教育する。AIがインテリジェントになるためにはデータがカギを握る。メッセージングデータがAI開発の宝の山で、Googleは長期間保管に踏み切った。

プライバシー保護とクールな機能

これに対して市場からは懸念の声も聞かれる。米国国防総省諜報機関の元職員Edward SnowdenはAlloを使わないように呼び掛けている。Googleが保管するメッセージングデータが犯罪捜査などで利用されることを懸念しているためだ。個人のプライバシー保護に配慮するのは当然であるが、厳しすぎるとAIが提供する便利な機能の恩恵を受けられない。プライバシー保護とクールな機能のバランスが難しい。

インターフェイスに温かみを感じる Alloは「Preview Edition」と表示されているように、使ってみると開発途上のベータ版との印象を受ける。まだまだ生活するうえでの必須ツールとは言い難い。一方、Alloは人間とマシンの関係で大きな将来性を感じる。Assistantと対話できることでインターフェイスに温かみを感じる。音声検索で機械的に結果を表示されるのとは異なり、言葉を交わしながら目的を達成できるのはフューチャリスティックでもある。対話型AIが巨大ビジネスに成長する兆しを感じる。

Appleの人工知能戦略、SiriはiOS 10でボイスクラウドに進化

Appleは2016年9月13日、iPhone向け基本ソフトiOS 10をリリースした。早速使ってみたが、Siriが大きく成長する兆しを感じた。Siriの機能が一般に公開され、企業は音声で操作するアプリを作ることができる。SiriはもはやOS機能ではなく、ボイスクラウドとして位置づけられる。AIで足踏みをしているAppleが巻き返しに転じた。

出典: VentureClef

メッセージングが劇的に機能アップ

iOS 10を使って驚いたのはメッセージング「Messages」の機能が飛躍的に向上したこと。絵文字やマルチメディアが使えるだけではなく、画面いっぱいのアニメーションが目を引く。お祝いメッセージの背後で紙吹雪が舞い散る (上の写真左側)。沢山の風船が舞い上がり、夜空に大輪の花火が上がるシーンもある。文字も大文字でジャンプしながら表示され、インパクトのあるメッセージを送ることができる。Apple Watchで登場した心臓が鼓動するアニメーションやキスマーク (上の写真右側) が使え、メッセージが格段にカラフルになった。Messengerはお洒落でハイセンスでAppleらしい製品に仕上がっている。ヒットすること間違いない。

メッセージングに若者が集う

ここにはFacebook MessengerやSnapchatに対抗するAppleの姿勢がうかがえる。ソーシャルメディアは伸び悩み、若者はメッセージングに集っている。ここが人気スポットで、生活の基盤であり、買い物をする場所でもある。ビジネスとして大きな可能性を秘め、Appleが全力でキャッチアップしている姿勢が見て取れる。

オープンなプラットフォーム

iOS 10の最も重要なポイントはプラットフォームが広範囲にわたり公開されたこと。音声アシスタントSiriはApple製アプリだけで使われてきたが、iOS 10ではサードパーティが開発したアプリから利用できる。企業はSiriの機能を組み込んだアプリを開発できるようになり、ユーザインターフェイスが格段に向上した。音声操作のアプリが勢いを増す中で、Siriを組み込んだボイスアプリのエコシステムが広がっている。

写真を言葉で検索する

Apple製アプリについてもSiriがカバーする範囲が広がった。特に便利なのは写真アプリ「Photos」を言葉で操作できる機能。「Show my photos from airports」と言えば空港で撮影した写真を表示する (下の写真左側)。旅行で撮影した写真を探すときは「Find my pictures from my trip to San Francisco」と言うと、サンフランシスコで撮影した写真を表示する (下の写真右側)。Deep Learningでイメージ検索技術が格段に向上し、質問に対しズバリ結果を表示する。使ってみてとても便利と感じる。

出典: VentureClef

電車の乗り換えを教えてくれる

Siriは電車の路線案内ができるようになった。現在地からサンフランシスコ空港に行くには「Give me public transit directions to San Francisco Airport」と言えば、バスと電車を乗り継いで空港に行く経路を示す (下の写真左側)。また、クルマの中で目的地までの道順を尋ねるときは「Give me directions to San Jose Airport」と指示する。ナビゲーションが始まるので、それに沿って運転する。

出典: VentureClef

Appleのスマートホーム

iOS 10からスマートホームアプリ「Home」が登場した (下の写真)。このアプリがハブとなり開発キット「HomeKit」で定義された家電を操作する。Siriに「Turn on the living light」と言えばリビングルームの電灯が灯る。Homeでは家の中の雰囲気を設定する「Scene」という機能がある (下の写真左側、中央部)。Siriに「Set my movie scene」といえば、テレビで映画を見るために最適な暗さになる。電灯の輝度が落ちうす暗くなる。

また、Automationという機能を使うと、家の中の家電を自動制御できる (下の写真右側)。家の中が暗くなったら自動で電灯が点灯する。「At Sunset」という機能を使うと日没時に電灯がオンとなる。また、「When I Arrive Home」という機能を使うと、自宅に到着すると部屋の電灯が灯る。シンプルな機能だが電灯が自動でオンオフするのは便利と感じる。

出典: VentureClef

Siriでクルマを呼ぶ

iOS 10の最大の特徴はパートナー企業がSiriの機能を組み込んだアプリを開発できること。企業はSiri開発キットである「SiriKit」でアプリを開発する。SiriKitで開発されたアプリはSiriの機能を実装し、利用者が音声でアプリを操作できる。

ライドシェア「Lyft」はSiriKitでアプリを開発した。Siriに「Get me a ride to San Francisco Airport」というとLyftのクルマを呼ぶことができる (下の写真左側)。Siriの画面にLyftアプリのウインドウが表示され、近所にいるLyftのクルマがマップ上に表示される。Siriはクルマは7分で来ますが呼びますかと尋ねる。これにYesと答えるとクルマが配車される。ライドシェアではLyftの他にUberも使える。

出典: VentureClef

Siriでお金を送る

Siriから送金することができる。「Send money with Venmo」と指示すると、無料の送金アプリ「Venmo」の送金プロセスが起動する (下の写真左側)。Siriは誰に送るのか、また、金額と添えるメッセージを聞いてくるので、これらに応えると確認画面が表示される (下の写真右側)。ここで「Yes」と答えると送金が完了する。Venmoの他に「Square Cash」で送金することもできる。

出典: VentureClef

Siriからメッセージを送り電話をかける

Siriからメッセージアプリ「WhatsApp」を起動しメッセージを送信できる。「Send a WhatsApp message to Alice..」と指示する (下の写真左側)。また、ソーシャルネットワーク「LinkedIn」で友人にメッセージを送信できる。「Send a LinkedIn message to John..」と指示する (下の写真右側)。この他にSiriから「Skype」や「Vonage」を使って電話をかけることができる。

出典: Apple

Apple WatchからSiriを利用すると便利

SiriはApple Watchからも利用できる (下の写真左側)。家の中や外出先では、iPhoneを取り出す代わりにApple WatchでSiriを使うのが便利。Apple Watchに「Hey Siri, Set my movie scene」と語り掛けタスクを実行する (下の写真右側)。iPhoneでも「Hey Siri、」と呼び掛けてSiriを起動できるが、その際はiPhoneを電源に接続しておく必要がある。

出典: VentureClef

SiriKitで音声アプリを開発

前述の通り、SiriKitは開発者向けのツールで、これを利用してSiriの音声機能を組み込んだアプリを開発する。SiriKitは業務領域「Domain」ごとに提供される。DomainはVoIP calling、Messaging、Payments、Photo、Workouts、Ride bookingなどから構成される。SiriKitがユーザとのやり取り全てを担う。音声認識や自然言語解析などのAI機能はSiriKitが提供する。ただし、開発者は業務に固有の言葉を登録し、Siriのボキャブラリーを増やす必要がある。

Siriは輝きを取り戻すか

新しくなったSiriを使うと利用できるシーンが増えてとても便利になったと感じる。同時に、Siriの音声認識精度についてフラストレーションを感じることも少なくない。GoogleやAmazonと比べるとその差が歴然としてきた。iOS 10からはSiriの機能が公開され、ボイスクラウドに進化した。この基盤上でクールなアプリが登場しようとしている。AIに対して及び腰であったAppleであるが、Open Siriで機能アップが期待される。最初にSiriを使った時の驚きは鮮明で、SiriKitはこの輝きを取り戻す切っ掛けになるのかもしれない。