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MetaはMRヘッドセット「Quest Pro」を投入、メタバースの構想が製品として結実、企業向けメタバースに比重が移る

Metaは開発者会議「Connect 2022」でメタバース開発の最新状況を公開した。Metaは、昨年、このイベントでメタバースの構想を示し、数年先のビジョンを提示した。今年は、直近のメタバースに焦点を当て、その適用法やソリューションを示した。イベントのハイライトは、MRヘッドセット「Quest Pro」(下の写真)の発表で、メタバースにアクセスする技術が大きく進化した。更に、Microsoftとの提携を発表し、メタバースで3Dビデオ会議「Microsoft Teams」を利用できる。Metaは企業向けのメタバースに比重を移していることが明らかになった。

出典: Meta

MRヘッドセット「Quest Pro」

MRヘッドセット「Quest Pro」は、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)を統合したMR(複合現実)機能を実装したウェアラブルとなる。Quest Proを着装すると、現実空間に仮想オブジェクトが組み込まれ、それを実際に手で触ることができる。例えば、オフィスで社員がQuest Proを着装すると、デスクの上に仮想のモニターが描写され、この画面で業務を遂行できる(下の写真)。価格は1,499.99ドルで、今月から出荷が始まる。

出典: Meta

仮想オフィス「Workrooms」

Metaは企業向けにメタバースを展開しており、コラボレーション・アプリ「Horizon Workrooms」を提供している。これはメタバースに構築された会議室で、社員はこの空間でコミュニケーションする。Metaは、これを大幅にアップグレードし、個人向けの仮想オフィス「Solo Workrooms」を開発している。仮想オフィスには三台の大型モニターがセットされ、ここが仕事空間となる(下の写真)。PCやMacBookを買う代わりに、Quest Proでタスクを実行する構想を描いている。

出典: Meta

3Dオブジェクト

3D仮想オフィスHorizon Workroomsの機能が強化される。これはデザイナーやエンジニア向けの機能で、会議室でオブジェクトを3Dで見ることができる。例えば、会議室において、開発中のヘッドセットを3Dで表示し、そのデザインを関係者で議論できる(下の写真)。

出典: Meta

MR会議室「Magic Room」

Metaは、現実社会と仮想社会の会議室をミックスしたMR会議室「Magic Room」を開発している(下の写真)。これは実社会の会議室に仮想の人物やオブジェクトを組み込んだ構成となる。Quest Proを着装して実社会の会議室に入ると、そこに遠隔地の社員がアバターとして参加する。また、この空間でホワイトボードに作図して会議を進めることもできる。

出典: Meta

Microsoftとの協業「Teams」

MicrosoftのCEOであるSatya NadellaはメタバースでMetaと協業することを明らかにした。その第一弾として、Microsoftのコラボレーションアプリ「Teams」をMeta向けに提供する。これによりQuest 2とQuest ProでTeamsを使うことができる(下の写真)。Microsoftもメタバース開発を進めており、Metaと競合する可能性があったが、この発表で両社は協調路線を歩むことが明らかになった。

出典: Meta

アバターに足を付加「Avatar Store」

Metaはアバターに足を付加し全身を描写できるようにした。現在のアバターは上半身だけで(上の写真)、足の部分は描かれていない。これに足の部分を付加し、完全な身体像を生成できるよう進化した(下のアバター)。手や腕の動きはヘッドセットのカメラで撮影し、それをアニメーションで表示するが、足の動きを捉えるのは難しい。足がテーブルや腕の陰になり、見えないケースが多く、そのイメージを捉えるのは難しい。このためMetaはAIを使い、アルゴリズムで足の状態を推定し、イメージを描写している。また、Metaは「Avatar Store」をオープンし、ここでアバター向けのファッション製品を販売している(下の写真)。

出典: Meta

入力モード「Electromyography(筋電図)」

Metaは研究開発中の技術についても、その概要を公表した。その一つがARグラスにデータを入力する方法で、Electromyography(筋電図)」という技法を開発している。これは筋肉で発生する微弱な電場をAIで解析し、動作の意図を推定するもの。手首にデバイスを装着し(下の写真右側)、指を動かして方向を指示すると、ゲームの中のキャラクターがその方向に動く(左側)。これはゲームのキャラクターを動かす事例であるが、その他に、ARグラスを着装して、指を動かして写真撮影をすることができる。

出典: Meta

Dイメージ生成技法「Neural Radiance Fields

MetaはAIを使って3Dモデルを簡単に生成する技法を発表した。これは「Neural Radiance Fields」と呼ばれ、カメラで撮影した複数の写真をAIで繋げ、3Dイメージを構築する技法となる。例えば、クマのぬいぐるみを、スマホで複数の方向から撮影し、これをAIで繋ぎ合わせると、3Dのモデルを生成できる(下の写真)。3Dモデルを簡単に生成できるため、メタバースを構築する基礎技術として期待されている。

出典: Meta

リアリスティックなアバター「Codec Avatars」

Metaは、リアリスティックなアバターを生成する技術を公開した。このアバターは「Codec Avatars」と呼ばれ、人間の顔の形状や表面の質感を忠実に再現し、ビデオ撮影したものと区別がつかない(下の写真、Mark ZuckerbergのCodec Avatar)。特殊カメラ170台を使い、被写体の顔を異なる方向から撮影し、これらを合成して3Dモデルを生成する。ハリウッドの映画の特撮などで使われている。

出典: Meta

手軽に生成できるアバター「Instant Avatars」

これに対し、Metaはスマホで簡単に3Dアバターを制作する技法を公開した。これは「Instant Avatars」と呼ばれ、スマホカメラで複数の方向から顔を撮影し、このデータを元にAIが、高精度な3Dモデルを生成する(下の写真)。Codec Avatarは特殊カメラを使ってアバターを制作するが、Instant Avatarsはスマホで手軽に高精度な3Dモデルを生成できる点に特徴がある。

出典: Meta

企業向けメタバースにシフト

昨年の開発者会議では、Mark Zuckerbergは消費者を対象としたメタバースのビジョンを示した。今年は一転して、企業向けに現実の問題を解決するためのメタバースを提示した。ハードウェアではMRヘッドセットQuest Proを投入し、メタバースは構想の段階から製品化に進んでいることを印象づけた。ソフトウェアの観点からは、コラボレーションツールWorkroomsなどを中心に、企業向けのソリューションが示された。メタバースは企業の生産性に寄与することをアピールしたイベントとなった。

Metaは200言語を翻訳するAIを開発、これをオープンソースとして無償で提供、最終ゴールはユニバーサル機械翻訳AIの開発

MetaのAI研究所Meta AIは、単一モデルで200言語を翻訳できるAIを開発した。AI翻訳の対象は世界の主要言語に限られていたが、このモデルによりその数が一気に拡大した。MetaはこのAIをFacebookやInstagramに適用し、多言語の利用者を呼び込む。また、MetaはこのAIをオープンソースとして公開し、企業や大学はこれをベースに独自の翻訳システムを開発できる。Metaは社外の研究機関と共同で、ユニバーサル機械翻訳AIの開発を進める。

出典: Meta

プロジェクト概要

このプロジェクトは「No Language Left Behind (NLLB)」と呼ばれ、英語や中国語などメジャー言語以外の、マイナー言語(少数言語)のAI翻訳技術を開発することを目的とする。マイナー言語は、利用者数が少なく、AIを教育するためのデータが限られており、「Low-Resource Languages」とも呼ばれる。これがマイナー言語を対象とするAI機械翻訳技術の開発が進まない原因となっている。マイナー言語はアジアやアフリカに多く存在し、ビルマ語(Burmese、ミャンマーで使われている言葉、上の写真)がこれに含まれる。

AI機械翻訳の仕組み

このプロジェクトは、単一のAIモデルで多言語を翻訳する、ユニバーサル機械翻訳(Universal Language Translator)を開発することを目指している。2020年から開発を始め、今月、200言語を翻訳するモデル「NLLB-200」の開発に成功した。NLLB-200がマイナー言語を高精度で翻訳できる理由は、AIで教育データを創り出す技術にある。このシステムは、四つのコンポーネントから構成される(下のグラフィックス):

  1. マイナー言語を母国語とする開発者による研究
  2. 限られた言語情報からAI(LASER3)が大量の教育データを生成
  3. この教育データを元にAI機械翻訳モデル「NLLB-200」を開発
  4. NLLB-200の精度をベンチマークデータ(FLORES-200)を使って検証
出典: Marta R. Costa-jussà et al.

翻訳精度

この方式により、NLLB-200は従来モデルに比べ、翻訳精度が44%向上した(下のグラフ)。MetaはNLLBモデルの開発を進めてきたが、当初は、100言語を対象にアルゴリズムを開発(水色の部分)。2022年は、対象言語の数を200に増やし、モデルを大幅に改良した(紫色の部分)。その中で、最新モデルがNLLB-200(右端のグラフ)で、翻訳精度が大きく向上した。(機械翻訳の精度は「BLEU」という指標で示される。この数値が大きいほど精度が高い。)

出典: Meta

機械翻訳の利用方法

Metaは、NLLB-200をFacebookやInstagramに適用し、マイナー言語を翻訳する計画である。NLLB-200が、メジャー言語とマイナー言語の懸け橋となり、数多くの人がコンテンツを楽しむことができる。(下の写真、クメール語(Khmer language、カンボジアの国語)で書かれた物語を翻訳して読むことができる)。また、メタバースでは世界各国の人々が、平等に交流する仮想社会の構築を目指しており、NLLB-200がコミュニケーションで重要な役割を担う。更に、MetaはWikipediaと共同で、記事を多言語に翻訳するプロジェクトを進めている。

出典: Meta 

オープンソース

Metaは、ユニバーサル機械翻訳の開発を最終ゴールとし、社外の研究機関と共同でプロジェクトを進める。これを目的に、NLLBで開発したAIモデルとデータセットをオープンソースとして公開しており、研究機関はこれを自由に利用して、独自の機械翻訳システムを開発できる。また、Metaは、非営利団体を対象に20万ドルを上限に助成金を出し、開発を支援することを表明している。オープンサイエンスの手法でAI機械翻訳技術を開発し、対象言語を増やす手法を取る。

世界の言語

因みに、世界では7,151の言語が使われており、その多くが、アジアとアフリカに存在している(下のマップ)。これらの言語の40%は、継承者が少なく、絶滅の危機に瀕しているといわれている。一方、23の言語が世界の半数以上の人により使われている。これらがメジャー言語で、英語、中国語・官話、インド・ヒンディー語がそのトップ3となる。これらメジャー言語については、多くの企業からAI機械翻訳技術が提供されている。

出典: Ethnologue

MetaはAIで本人そっくりのアバターを生成する技法を開発、また「アバター・ストアー」を開設しアバター向けに高級ブランド品を販売

MetaはリアリスティックなアバターをAIで生成する技法を公開した。スマホカメラで撮影した画像をもとに、AIが写真のようにリアルな3Dモデルを生成する。また、Metaは「アバター・ストアー」を開設することを発表し、アバター向けのファッションアイテムを販売する(下の写真)。ここには有名ブランドの衣料品が揃っており、メタバースでお洒落を楽しむことができる。

出典: Eva Chen

Metaのアバター開発の歴史

Metaは、早くから、VR向けに3Dアバターの開発を進めてきた。このアバターは「Codec Avatars」と呼ばれる種類で、人間の顔の形状や表面の質感を忠実に再現し、リアリスティックな3Dモデルとなる。特殊なカメラ「MUGSY」を使い(下の写真左側)、被写体の顔を異なる方向から撮影し(右側)、これらを合成して3Dモデルを生成する。MUGSYは171台のカメラから構成され、被写体を異なる方向から撮影する。

出典: Chen Cao et al.

スマホでアバターを制作

先月、MetaのAI研究所である「Reality Labs」は、スマホでリアリスティックな3Dアバターを制作する技法を公開した。特殊カメラを使う必要はなく、iPhoneで顔を撮影し(下の写真左側)、このデータを元にAIが、高精度な3Dモデルを生成する(右端)。今まではスタジオで特殊カメラを使ってアバターを制作していたが、スマホで手軽に高精度な3Dモデルを生成できるようになった。

出典: Chen Cao et al. 

AIモデルの概要

AIでアバターを生成するが、その手順は次のようになる。最初に、ベースモデル「Universal Prior Model」を生成する(下のグラフィックス、左側)。ベースモデルの生成では、多数の顔写真を教育データとし、アルゴリズムは顔の構造とその表情を学習する。具体的には、上述の専用カメラMUGSYを使い、255人の顔を25方向から撮影し、その際に、被写体は65の表情を造る。これらの顔写真から、アルゴリズムは人間の顔の構造とその表情を学習する。

出典: Chen Cao et al. 

AIモデルでアバターを生成

次に、このベースモデルを使って、利用者のアバターを生成する。スマホカメラを使い、顔を異なる方向から撮影し、これをベースモデルに入力する(上のグラフィックス、中央)。アルゴリズムは顔の構造とその表情を学習しており、数枚の顔写真から高精度な3Dアバターを生成する。更に、スマホカメラで異なる表情の顔写真を撮影すると、アバターの品質を大きく向上させることができる(上のグラフィックス、右側)。

印象型アバター

Zuckerbergは、これに先立ち、二種類のアバターを開発していることを明らかにした。これらは、「印象型アバター(Expressionist Avatar)」と「現実型アバター(Realistic Avatar)」と呼ばれる。前者はアバターをアニメのキャラクターとして生成する方式で、利用者の顔の表情をグラフィカルに再現する。既に、VRゲームやオンライン会議(下の写真)などで使われている。

出典: Meta

現実型アバター

現実型アバターは、利用者の顔をビデオ撮影したように、リアリスティックに生成する。これは特殊カメラを使って生成されてきたが、上述の手法を使うと、iPhoneカメラで誰でも手軽に作れるようになった。(下の写真、左端は入力した写真で、その他は生成されたアバター。中央はアバターの深度を表示)。但し、メガネをかけたアバターを高精度で生成できないなど、制限事項があり、完成までにはもう少し時間を要す。

出典: Meta

アバター・ストアーを開設

今週、MetaのCEOであるMark Zuckerbergは、「アバター・ストアー(Avatars Store)」を開設することを発表した。アバター・ストアーとはアバター向けのファッションハウスで、ここで洋服を買って、自分のアバターに着せる(下の写真)。FacebookとInstagramとMessengerで、プロフィール写真の代わりに、3Dアバターを使うことができ、ストアーで洋服を買って華やかなアバターを生成する。また、メタバースでは、本人に代わりアバターでお洒落を楽しむことができる。アバター・ストアーのモデルはMark Zuckerbergとファッション担当のEva Chenが務めている。

出典: Meta

三つの高級ブランド

アバター・ストアーは有名ブランドのファッションアイテムを販売する。これを買って自分のアバターに着せ、メタバースでお洒落な生活を楽しむ。三つの高級ブランド、「バレンシアガ(Balenciaga)」、「プラダ(Prada)」、「トムブラウン(Thom Browne)」が公開された。

  • バレンシアガはフランス・パリに拠点を置くファッションハウスで、規格にとらわれず、常に先進的なファッションを生みだしてきた。個人にフィットしたファッションデザインである、オートクチュール(haute couture)というコンセプトを生み出したことで有名。アバター・ストアーでは、モトクロス・レザー(motocross leather)スタイルを公開した(上の写真左端)。
  • プラダはイタリア・ミラノに拠点を置く高級ファッションブランドで、ハンドバッグやシューズを販売する。ファッションでは既製品であるプレタポルテ(prêt-à-porter)を専門とする。アバター・ストアーでは、スポーツ・ファッションブランド「Linea Rossa」を公開(上の写真左から三番目)。Zuckerbergは「上から下までプラダを着るのは勇気がいるが、メタバースならこれができそう」と述べている。
  • トムブラウンはアメリカ・ニューヨークに拠点を置くファッションブランドで、スポーティなブレザーなどを販売する。アバター・ストアーでは、四本のストライプが入ったジャケットを公開(上の写真右から二番目)。Zuckerbergは、「実社会でジャケットを着ることはないが、メタバースではトムブランを選ぶ」としている。

MetaはマルチタスクAIを開発、単一のアルゴリズムがイメージとテキストとボイスを理解する、メタバース開発のブレークスルーとなるか

MetaのCEOであるMark Zuckerbergは、メタバースを生成するためのAIについて明らかにした。メタバースは、イメージやテキストやボイスなど、マルチメディアで構成される仮想空間で、これらがAIにより生成される。異なる媒体を処理するためには、異なるAIが使われるが、Metaはこれを統合し、単一のAIがイメージやテキストやボイスを処理できるモデルを開発している。これは「Unified Model(統合モデル)」と呼ばれ、アルゴリズムがマルチメディアの世界を理解し、3D仮想社会をリアルに生成する。

出典: Meta

Unified Modelとは

Unified Modelとは、AIの異なるモードを統合した単一のAIモデルを指す。このAIは「Data2Vec」と命名され、イメージやテキストやボイスなど、異なる媒体のデータを処理することができる。現在は、媒体が異なると、それぞれ専用のAIモデルを使う。例えば、イメージを処理するためには「NASNet」など画像処理専用のアルゴリズムを使う。また、テキストの解析であれな「GPT-3」など、自然言語解析のアルゴリズムを使う。これに対し、Unified Modelは、単一のアルゴリズム「Data2Vec」が、イメージやテキストやボイスを処理する機能を持ち、統合型のモデルとなる。

Unified Modelの仕組み

Data2Vecは「Transformer」をベースとするニューラルネットワークで、「教師モード(Teacher Mode)」と「生徒モード(Student Mode)」の二つのモードで構成される(下の写真)。教師モードは先生で、生徒モードである生徒にスキルを伝授する。まず、教師モードは入力データ(写真、音声、文字)を学習し、その結果(Latent Representations)を得る(上段)。次に、生徒モードは、一部が欠けているデータを読み込み、その処理を実行し、それが何であるかを判定する(下段)。生徒モードの処理結果と教師モードの処理結果を比較し、生徒は先生が示す手本に近づくようスキルを磨く。

出典: Meta

データをマスクして教育

生徒モードの教育では、入力データとして一部がマスクされているデータを使う。生徒モードのアルゴリズムは、このマスクされたデータから、オリジナルのデータを推測する。例えば、写真であれば、イメージの一部がマスクされたものを使い(下の写真左側)、ここから元の写真のイメージを推測する(中央)。正解のイメージ(右端)と比較して、生徒モードのアルゴリズムは精度を上げていく。同様に、スピーチやテキストでも、データの一部がマスクされ、生徒モードのアルゴリズムは、欠けている部分を推測することで判定精度を向上する。

出典: Meta

Self-Supervised Learning

これは「Self-Supervised Learning」という学習方法で、AIが人間の介在無しに自分で学習し、スキルを習得する。MetaはSelf-Supervised Learning をAI開発の基本戦略とし、インテリジェントなAIを開発している。一般には、「Supervised Learning」という学習モデルを使ってAIが開発されている。Supervised Learningとは、人間がアルゴリズム教育のためのデータ(タグ付きデータ)を用意し、これを使ってAIを開発する方式を指す。これに対し、Self-Supervised Learningは、タグ付きの教育データを用意する必要はなく、アルゴリズムが人間の介在なく、独自で学習する。このため、大量のデータを教育データとして使うことができ、大規模なアルゴリズムの開発が可能となる。MetaはSelf-Supervised Learningが、インテリジェンスを得るための手法として、この方式のAI開発を重点的に進めている。

出典: Meta

リアルな仮想社会

Metaはメタバースのコンセプトを発表したが、Unified Modelがこれを支えるプラットフォームとなる。Metaは、メタバースで遠隔地の友人とフェンシングをするイメージをを公開した(上の写真)。ARグラスと触覚技術を着装すると、目の前に遠隔地の対戦者が描写され(左側の人物)、剣が触れ合う感触が、リアルに生成される。これは、マルチメディアに触覚情報を加えたもので、剣で仮想の相手を突いた時の感触が再生される。メージとテキストとボイスの次はセンシングデータで、Unified Modelがこれらのメディアを理解し、リアルな仮想社会を描き出す。

Metaはメタバース向けAIの研究成果を公表、リアルな仮想社会を生成するにはイメージ・ボイス・テキストなどマルチメディアを理解するAIが必要不可欠

Metaはメタバース向けに高度なAIを開発していることを明らかにした。メタバースは3D仮想社会で、ここに人々が集い、ビジネスが興隆する。仮想社会は、イメージやボイスやテキストなど、マルチメディアで構成される。AIがこれらを理解し、リアルな仮想空間を生成する。

出典: Meta

言葉で仮想社会を生成

Metaは音声でイメージを生成する技術「Builder Bot」を開発している。話し言葉で、海や砂浜やヤシの木を描くよう指示すると、Builder Botはこれに従って作画する(下の写真)。この機能はメタバースで仮想空間を生成するための基礎技術となる。また、この技術は人間のデジタルツインであるアバターを生成するためにも使われる。話し言葉でアバターの洋服をデザインでき、「Paint me a style of Gauguin」と指示すると、ゴーギャン風のファッションが生成される。

出典: Meta

125の言語を同時通訳

Metaは多言語を翻訳するシステム「LASER (Language-Agnostic SEntence Representations)」を開発した。言語翻訳でAIが使われているが、主要言語が対象で、翻訳できる言語の数は限られている。Metaは翻訳する言語の数を一気に125に拡張した。言語モデルの開発では、数多くの教育データが必要だが、LASERは数少ないサンプルで教育できることが特徴となる。メタバースでは、ARグラスを介し、言語をリアルタイムで翻訳し、異なる国の人々がコミュニケーションできる(下の写真)。これによりメタバースでは世界の国境がなくなる。

出典: Meta

高度な会話型AI

Metaは人間のように会話するAIモデル「Project CAIRaoke」を開発した。会話型AIは一般にBotと呼ばれ、AIは人間の秘書のように、対話を通じて指示された内容を実行する。一般に、会話型AIは、自然言語解析(Natural Language Understanding)、会話ポリシー管理(Dialogue Policy Management)、自然言語生成(Natural Language Generation)など複数のモジュールから形成される。Project CAIRaokeはこれらを統合し、単一のAIで形成されていることに特徴がある。Project CAIRaokeは、タスクを実行することを目的に開発され、指示された内容をアクションに移すために使われる。(下の写真、AIにレストランの予約を指示している様子。)

出典: Meta

ARグラス向けコンピュータビジョン

Metaは人間の視線で周囲の状況を把握するAI「Ego4D」の開発を進めている。人間の視線で捉えたデータでアルゴリズム教育すると、AIは実社会でインテリジェントな能力を発揮する。これをARグラスに搭載することで、AIがアシスタントとなり利用者の視覚や聴覚をエンハンスする。例えば、ARグラスを着装してスープを調理すると、Ego4Dは食材を把握し、その使い方を教えてくれる(下の写真)。

出典: Meta

センサーのデータを解析

メタバースでは、イメージやボイスやテキストの他に、センサーが収集する情報の処理がカギとなる。リストバンドを着用すると、指を動かすだけでエアータイプできる(下の写真)。リストバンドから筋肉のシグナルを読み取り、AIがその意図を把握し、どのキーボードが押されたかを把握する。また、触覚センサーを着装して、仮想オブジェクトに触ると、AIがその感触をフィードバックする。この処理では、AIがセンサーの情報を読み込み、それを解析して、感触を出力する。

出典: Meta

AI開発はメタバースにシフト

MetaはAI研究を「Meta AI」に集約し、ここでFacebookとメタバース向けのAI基礎研究が進められている。Facebook向けのAI研究は「Facebook Artificial Intelligence Research (FAIR)」で行われてきたが、Meta AIがこの組織を継承した。MetaはAI開発戦略を見直し、ソーシャルメディアからメタバースに開発の比重をシフトしている。今では、MetaのAI研究者の1/3がメタバースの開発に携わっているとされる。AI基礎研究でもMetaは、ソーシャルメディア企業からメタバース企業に転身している。